有名なマーケティング理論・分析法・考え方を一覧化!知識を深めるおすすめの本もご紹介

2022/10/14
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マーケティング領域にはたくさんのフレームワーク、分析手法、マーケティング理論があります。基本知識として重要なマーケティング理論を「こんな考え方があるんだ」と知っていると、いざ壁にぶつかったときに活用できます。

また、日々の仕事の捉え方が俯瞰的になり、考えが深くなることや、思考のブレイクスルーができるなど、さまざまなメリットがあるでしょう。

マーケティング理論は、天才的な頭脳を持った人たちの研究成果がわかりやすく体系化されたものです。幸いマーケティングは実学なのでフレームワークとして構造化されており、誰にでもわかるくらいブレイクダウンされています。

ほとんどの理論はエクセルほど難しくありません。ただし、自力で考えつくことは難しいでしょう。使えるかどうかは、知っているか知らないかだけですがその差は大きいのです。今回はマーケティング担当者が押さえておくべきマーケティング理論をまとめました。

マーケティング理論とは

マーケティング理論とは、企業が売上げを最大化するためには、市場における自社の製品やサービスの位置づけを、どのように展開していくか研究した上で打ち立てられた理論です。

マーケティングが学問として成立したと言われる1900年代以降、さまざまな学者が独自のマーケティング理論を提唱してきました。


簡単に言えば、売る仕組みをさまざまな観点から研究した理論です。なぜ売れるのか、なぜ普及するのか、なぜ長く商売できるのか、顧客心理はどう動くのか、地域制は影響するのかなどなど、実に多様な切り口の理論があります。

アカデミックな理論が単なる意見と違うのは、研究調査によるエビデンスがあり、再現性が高いというところです。思い付き、個人の経験則とはここが異なります。

そもそもなぜマーケティングが重要視されるのか

マーケティングとは、少しかじった方ならわかると思いますが、広大で複雑な世界です。売る仕組みを作ることと表現されますが、つまりは事業活動そのもの。

変化するトレンド、景気、世界のあちこちでおこる紛争、人々の価値観の変化、地球の資源の枯渇、各国のビジネス方針等々、さまざまな変数があるなか、都度最適な意思決定をしなければなりません。成功した経営者が「1勝9敗」「8勝7敗」など、類まれな経営者でも何度も失敗していると語るほど厳しい世界です。

このようは変数の多い、ビジネス上の意志決定の成功可能性を高めるためにマーケティングが必要なのです。

日本と欧米のマーケティングの違い

外資系にいた経験から言うと、マーケティングの日米間のレベルの差は野球で言うなら大リーグと地方リーグくらい差があります。

これは、マーケティングという学問がそもそも米国で確立したことや、欧米はジョブ型雇用なので3~4年で違う部署に異動したりせず、マーケティングを希望する人間がマーケティングの専門性を極められるカルチャーがあることも影響しています。

常にマーケティングのプロがマーケティングしている欧米。あまり経験のない人が(例外はありますが)マーケティング業務をしていて、さらに3年ほどたったらまたいなくなってしまう世界では当然スキルの差はあるでしょう。

また、いわゆるデマンドジェネレーション(需要創出)を担っていたのが、日本の場合営業本部、営業企画部などにあたるため、マーケティング部門が新規を生み出す仕事をしてこなかった歴史もあります。

有名なマーケティング理論一覧

ここでは、マーケターが知っておくべき有名なマーケティング理論を紹介します。

イノベーター理論

イノベーター理論

概要:イノベーター理論とは、1962年に米国のスタンフォード大学のEverett M. Rogers(エベレット、ロジャース)氏が提唱した理論です。

ロジャース氏は、新しいアイデアやプロダクトが社会に普及していく要因や段階を時間軸で分析しました。そのため「普及学」とも呼ばれます。

イノベータ―理論によると、革新的なアイデアや製品はまず「イノベーター層」が飛びつきます。次に「アーリーアダプター」「アーリーマジョリティー」という新しいものへの感度が高い層、その次がマジョリティ層、最後に頑固で保守的な層に広がると説明しています。

なお、これはあくまで広く普及する場合であり、多くの商品・サービスはそこまでヒットせず、市場から撤退します。ロジャースは初期のイノベーター2.5%とアーリーダブター13.5%(合計で16%)が鍵になると「普及率16%の論理」を提唱しています。

  • イノベーター:革新的採用者
  • アーリーアダプター:初期採用層
  • アーリーマジョリティ:初期多数派
  • レイトマジョリティ:後期多数派
  • ラガード:遅滞層

このように、同じ商品であっても普及する過程で顧客層の特性はかなり変わるので、マーケティングメッセージも変えていく必要があります。

おすすめ書籍:『イノベーションの普及』by エベレット・ロジャーズ (著)

ホールプロダクト理論ホールプロダクトの概念図

概要:ホールプロダクト理論とは、1983年に米国のハーバード・ビジネス・スクール名誉教授Theodore M. Levitt(以下セオドア・レヴィット)氏が提唱した概念です。特にハイテク・マーケティングにおいて有用と言われます。

ホールプロダクト理論とは、ベンダーが最初に提供する製品・サービスの価値と、顧客がマーケティングを通してイメージしていた期待する価値とはギャップがあるので、段階的に埋めていく必要があるという考え方です。

レヴィット氏は、上の図のように完成度を4つのレベルに分け、このギャップを埋めて「Whole Product(完全な製品)」にする必要があると提唱しました。

SaaSを例にするとホールプロダクトへの展開は以下のよう流れでしょう。

  • コアプロダクト:基本となるSaaS
  • 期待プロダクト:機能向上、コンサルティング、データ統合など付随サービス充実
  • 拡張プロダクト:エコシステム(隣接SaaSとAPI連携)の充実
  • 理想プロダクト:AIデータ分析による業務支援

おすすめ書籍:『ノヤン先生のマーケティング学 』by 庭山 一郎  (著)

プロスペクト理論

損は得の2.25倍-1

概要:プロスペクト理論とは、1979年に米国のDaniel Kahneman(ダニエル・カーネマン)、Amos Tversky(エイモス・トヴェルスキー)の両氏が提唱した理論です。簡単に言うと、人は不確実な状況ではバイアスの作用で「不合理な選択をする」メカニズムを説いた理論です。

理論の3つの柱は以下のとおりです。

  • 損失回避性
    プロスペクト理論では、何かを得たときに感じる価値の大きさと、失ったときに感じる価値の大きさは失ったときが大きく、図のように損をしたことに2.25倍の価値を感じるとしています。そのため、人は買い物、投資など金銭を使うとき、何かを選ぶときに損を必要以上に大きく感じできるだけ回避しようと非合理な判断をする傾向があります。
  • 参照点依存症
    参照点の違いによって人の価値判断が変化することを指します。例えば、セール品などがよく定価5000円が2980円などの赤札を出していると安く感じる心理です。実際は年中閉店セールをする店もあるわけですが、それでも何となく安く感じるのはそのためです。
  • 感応度逓減性(かんのうどていげんせい)
    扱う金額が大きくなると損得のインパクトが減少する心理のことです。日頃節約をしている人が、株で100万円儲けたり溶かしたりするときにそれほどショックを受けていないように見えるのも、そのためでしょう。

おすすめ書籍:Hardcover – March 1, 2011 by ダニエル カーネマン  (著),

マーケティングミックス

マーケティングミックス

概要:マーケティングミックスとは米国ハーバード・ビジネススクールの教授Neil H.Borden(ニール・H・ボーデン)氏が、経営者を「材料を混ぜる人」と表現したことから生まれた概念です。

簡単に言えば、商品・サービスを最大限売るために、さまざまな要素を考慮して精度の高い意志決定するという意味です。その後、米国のマーケティング学者であるEdmund Jerome McCarthy(E.ジェローム・マッカーシー)氏によって4つの要素をミックスして考える「マーケティングミックス(4P)」が確立されました。

4Pは「Product(製品)」「Price(価格)」「Placement(場所)」「Promotion(プロモーション)」の4つの重要な要素を組み合わせて戦略を練る考え方です。

どの要素が重要かは業界によっても多少異なります。その後、7P、8P、1990年代には4Cという顧客視点の要素をミックスする概念も登場しています。業界によっては7PのPが違う意味の場合もあります。汎用的なマーケティングミックスは4P、4C、7Pですが、用途に応じて活用しやすい手法を選んで問題ありません。

おすすめ書籍:コトラーのマーケティング・コンセプト 』by フィリップ・コトラー  (著)

コミュニケーションミックス

コミュニケーションミックス

概要:コミュニケーションミックスとは、効果的なコミュニケーションを行うために最適な、コミュニケーション手段の組み合わせ。コミュニケーション手段は主にいかの5つです。

  • 広告:インターネット、テレビ、新聞、雑誌、ビルボードなど
  • 販売促進:マーケティングキャンペーン、無料トライアル、リベート、割引など
  • 人的販売:セールススタッフ、販売スタッフ
  • パブリックリレーションズ:メディアの取材記事など(費用発生なし)
  • ダイレクトマーケティング:DM、テレマーケティング、メール、Webサイトなど

自社のマ―ケットの特性や、見込み客の特性、購買心理のステージでどの手段が効果的を考えてマーケティング施策を設計します。また、企業イメージ、予算などをふまえて自社に最適なコミュニケーションを組み合わせる戦略を指します。

マズローの欲求5段階説

マズローの5段階欲求説

概要:マズローの欲求5段階説とはアメリカの心理学者Abraham Maslow(アブラハム・マズロー。以下マズロー)氏が、1954年に提唱した説です。「自己実現理論」とも呼ばれます。

マズローは、人間の欲求には「生理的欲求」「安全欲求」「所属と愛」「社会的欲求」「自尊心」「自己実現」という階層があり、低次元の欲求が満たされることで、次の欲求が行動を支配するという欲求5段階説を提唱しました。

  1. 自己実現の欲求 (Self-actualization)
  2. 承認(尊重)の欲求 (Esteem)
  3. 社会的欲求 / 所属と愛の欲求 (Social needs / Love and belonging)
  4. 安全の欲求 (Safety needs)
  5. 生理的欲求 (Physiological needs)

マズローは1~4つの欲求を「欠乏欲求 」、自己実現欲求を「成長欲求 」と分類し、欠乏欲求を十分に満たした経験があると、自己実現のために欠乏欲求が満たされずとも活動できるようになると述べています。また、1~5までは一方通行ではなく状況によって位置が変わることも指摘しています。

おすすめ書籍:『人間性の心理学』by A.H. マズロー (著)

GEビジネススクリーンGEビジネススクリーンの活用図

概要:GEビジネススクリーンとは、米国のマッキンゼーアンドカンパニー社ゼネラルエレクトリックス(GE)社が開発したたポートフォリオマネジメントツールです。「GEマトリクス」「9ボックスマトリックス」とも呼ばれます。

おもに、巨大企業や事業部の多い大手企業が、自社のリソースの投資に優先順位をつけるために、各ビジネスユニットの成長性や競争力を把握するためのツールです。GEビジネススクリーンの指標は「業界の魅力」と「ビジネスユニットの競争力」の2つ。

業界の魅力度の指標例:

  • 市場規模と成長率
  • 収益性
  • 競争環境
  • マクロ環境(PEST)
  • 参入障壁や撤退障壁
  • インフレへの対応他

業界での地位(COMPETETIVE)の指標例:

  • 市場シェア
  • 市場シェアの成長可能性
  • ブランド認知度
  • ビジネスの利益率
  • 顧客ロイヤルティ
  • プロダクトの独自性
  • 自社の強み弱み

縦軸・横軸を「高、中、低」に分類し掛け合わせることで9つのマトリックス上にビジネスユニットをマッピングします。GEビジネススクリーンは指標を自在に設定できるため、分析の目的に応じて最適なポートフォリオを描くことができます。

アンゾフマトリクス

アンゾフマトリクス

(出典:経済産業省

概要:アンゾフマトリクスは1957年にイゴール・アンゾフ氏が、1965年『Corporate Strategy(邦訳:企業戦略論)』において提唱したフレームワークです。別名「成長マトリクス」「事業拡大マトリクス」とも呼ばれます。

アンゾフマトリクスは、事業収益拡大を以下の4種類のアプローチに分類しているマトリクスです。

  • 新規市場×新規製品=多角化戦略
  • 既存市場×新規製品=新規市開拓戦略
  • 既存製品×既存市場=市場浸透化戦略
  • 新規市場×既存製品=新製品開発戦略

既存の市場に新しいプロダクトを投入する、あるいは既存製品を浸透させる、新規市場に既存製品を投入させる、新規市場に新規製品を投入する(多角化)などは、それぞれの実現可能性が見えやすくわかりやすいフレームワークです。

おすすめ書籍:『アンゾフ戦略経営論(新訳)』byH.イゴール・アンゾフ(著)

BCGマトリクス

BCGマトリクスの図

概要:BCGマトリクスとは、ボストンコンサルティンググループ (BCG)が開発した、事業分析フレームワークです。「相対的市場シェア」と「市場成長率」の2軸で、ポートフォリオ上で事業を以下の4種類に分類します。

  • 金のなる木:少ない投資でも利益を生み出し続けている
  • 問題児:市場は伸びているのに自社は伸びていない
  • スター(花形):市場もシェアも成長中
  • 負け犬:市場は頭打ち、シェアも低い

※横の評価軸は業界トップ企業シェアに対する「相対的な市場シェア」です。自社の事業をすべてマッピングすると、どの事業が会社の稼ぎ頭で、次の柱になる事業はどこか(投資すべきところはどこか)? どの事業の投資コストを押さえるべきかがわかります。

PESOモデル

PESOモデル

概要:PESOモデルは、2014 年、デジタル マーケティングの専門家 Gini Dietrich (ジニ・ディートリッヒ)氏が提唱したモデルです。

PESOは、Paid、 Earned、 Shared、Ownedの頭文字からの略です。以下の4つの特性を持つマーケティングチャネルを上手に組みあわせてマーケティング効果を上げる手法です。4種類のチャネルはそれぞれユーザーに違ったに、違う切り口でアプローチできます。4種類をバランスよく活用することで、相乗効果が期待できます。

  • Paid(有料):広告、展示会など有料チャネル
  • Earned(獲得):レビューサイト、SNSなど第3者の評価チャネル
  • Shared(共有):SNSなどシェアされるチャネル
  • Owned(所有):オウンドメディア、ウェビナー、eブック、ニュースレターなど

古い企業だとオウンド メディアとSharedメディアの活用が進んでいないケースがあります。しかし、これらの勢いのあるメディアを活用し、相乗効果を出すことも大切です。マーケティングの全体最適化を考える際に、PESOモデルを理解しておく必要があります。

バリュープロポジション

バリュープロポジション

概要:バリュープロポジションは、1988年に米McKinsey & Companyのマイケル・ラニング氏とエドワード・マイケルズ氏の論文で提唱された概念です。バリュープロポジションについては、複数の定義がありますが、現代は「製品・サービスを購入することによって顧客が受けるメリットを明確したステートメント(声明文、文章)」という解釈が一般的です。

バリュープロポジションは、事業戦略の核、自社の優位性の源泉となるものです。バリュープロポジションを明確にすることで、製品・サービスの独自性、マーケティング、サービス、組織カルチャーなどを強く世に打ち出すことができます。

もし、バリュープロポジションが明確になっていない場合、顧客は機能比較で商品・サービスを選ぶため、価格競争に巻きこまれやすくなります。バリュープロポジションを導き出すフレームワークは複数ありますので、自社なりの強みを見出してみましょう。

おすすめ書籍:『バリュー・プロポジション・デザイン 顧客が欲しがる製品やサービスを創る』 by アレックス・オスターワルダー  (著), イヴ・ピニュール (著), グレッグ・バーナーダ (著),

デマンドウォーターフォール

3種類のデマンドウォーターフォール

概要:デマンドウォーターフォールとは、米国のSiriusDecisions(以下、シリウスディシジョンズ社)が提唱したBtoB企業の案件創出~成約までのパイプライン管理、収益予測などを行うフレームワークです。

シリウスディシジョンズ社は図のように3種類のデマンドウォーターフォールを発表しています。現在、2006年版、2012年版、2017年版の3種類があります。現状では、2012版がもっとも普及していると言われます。

目的に応じてどのモデルを活用しても問題ありません。ただ、中小企業で部署も多くなければシンプルな2006年版が活用しやすいでしょう。2012年版のマーケティング、営業の分業が進んでいる組織に適しています。顧客層が大手企業でABMを導入している場合は2017年モデルも適しています。

ファイブフォース分析

5forces

概要:5Forces(ファイブフォース)分析とは、米国の経営学者Michael E. Porter(以下ポーター)氏が提唱したフレームワークです。市場における企業競争の状況を、成長性や収益構造を以下の5つの競争要因の力関係をひもとくので業界分析によく活用されます。

  1. 競合企業の脅威(Rivalry)
  2. 代替品の脅威(Substitutes)
  3. 新規参入者の脅威(Entry)
  4. 供給者の脅威(Suppliers)
  5. 購入者・顧客の力(Buyers)

業界内でシェアを拡大するための戦略構築に役立ちます。また、新規参入を検討している業界の成長性把握、参入して成功できる可能性の分析にも適しています。

SaaS市場の場合、新規参入者もいまだ非常に多く、ある領域では提携相手、ある領域では競合と関係性も複雑です。このような複雑で移り変わりやすい業界の分析に5Forces分析は適しているでしょう。

おすすめ書籍:『[新版]競争戦略論Ⅰ』by マイケルE. ポーター (著)

PEST分析

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概要:PEST分析とは、米国の一般管理学者 Francis Aguilar(フランシス・アギラー)氏の研究がベースと言われています。世に広く普及したのは米国の経営学者Philip Kotler(以下コトラー)氏などが有効性を説いたことが影響しています。

PEST分析は、外部環境をPolitics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つの要因で分析するマクロ環境分析のフレームワークです。自業界に大きな影響をもたらす変化をつかみ、新たに投資すべき市場、撤退すべき市場を見極めることができます。

「市場を再定義する」とコトラー氏は表現していますが、それまでの市場をより俯瞰してらえることで、チャンスや危機、世界の大きな潮流を可視化できるフレームワークです。

  • Politics(政治):政治体制、規制の強化・緩和、税制
  • Economy(経済):為替、金利、GDP、インフレ率
  • Society(社会):人口動態、自然災害、ライフスタイルの変化
  • Technology(技術):インフラ、技術トレンド、革新的テクノロジー

SWOT分析

SWOT分析

概要:SWOT分析は、企業の外部環境(機会、脅威)と内部環境(自社の強みと弱み)を分析するフレームワークです。SWOT分析の起源に複数の見解がありますが、現在のSWOT分析は、米国の経営学者Henry Mintzberg氏が提唱し、ハーバード・ビジネススクールにおいて確立された戦略策定フレームワークです。以下の4要素を分析します。

  • Strength(強み)
  • Weakness(弱み)
  • Opportunity(機会)
  • Threat(脅威)

SWOT分析は一つのフレームワークで内部環境と外部環境を分析できる便利なフレームワークであり、マーケティング戦略、製品企画、営業戦略、競合他社分析と対策など幅広い用途に活用できます。

RMF分析

RMF分析

概要:RFM分析は米国の通信販売会社がカタログを発送する顧客を選別するために導入した手法です。Recency (直近の購入日)、Frequency (購入頻度)、Monetary (購入金額)の3指標で顧客を分類します。

  • Recency(リーセンシー):直近でいつ製品・サビスを購入したか
  • Frequency(フリークエンシー):どれくらいの頻度で購入しているか
  • Monetary(マネタリー):どのくらい金額を使っているか

RFM分析の目的は顧客の分類です。日本では優良顧客の発掘目的によく活用されます。RMFの3指標がすべて高スコアの顧客は企業が大事にすべき「ロイヤル顧客」です。また、顧客層を細かくカテゴライズし適したマーケティング施策し売上げ拡大につなげる際も役立ちます。米国は、以下のように11タイプにカテゴライズする場合もあります。

  1. Champions(チャンピオン)
  2. Potential(ポテンシャル顧客)
  3. Loyalists(ロイヤリスト)
  4. Recent Users(最近の顧客)
  5. Can't Lose them(失ってはならない顧客)
  6. Needs Attention(注意すべき顧客)
  7. Loyal Customers(ロイヤルカスタマー)
  8. Price sensitive(価格に敏感な顧客)
  9. About to Sleep(休眠しかけている顧客)
  10. Hibernating(休眠顧客)
  11. Lost Customers(失った顧客)
    (参考:moengage.com

PPM分析

PPM分析

概要:プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)というコンセプトは、1970年代に、米国系戦略系コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ (Boston Consulting Group) が開発しました。

そのため、PPM=BCGマトリックスという解釈はかなり一般的です。しかし広義では、PPM(製品ポートフォリオ管理)は、企業が提供するすべての製品を対象にそれが企業の目標にどれだけ合致しているかを確認するプロセスです。

また、企業の成長、コスト削減、その他の目標に向けた将来の製品戦略を構想するためのツールであり、BCGマトリクス、GEビジネススクリーン、アンゾフマトリクスなどのポートフォリオマネジメントはその中の1種類という位置づけです。

(参考:https://www.tcgen.com/product-portfolio-management/

STP分析

STP分析

(出典:Oxford College of Marketing)

概要:STP分析(STP理論)とは「マーケティングの神様」と称される米国のPhilip Kotler(フィリップ・コトラー)氏が提唱したマーケティング理論です。STP分析は非常にシンプルでわかりやすく、本質的なフレームワークです。

マーケティングを「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」というステップで考える理論であり、マーケティングの基本戦略を決める段階で以下のステップで活用します。

ステップ1:Segmentaion(セグメンテーション)- 市場を分類する

手法例:

  • 人口統計学的セグメンテーション:年齢、性別、収入、職業、教育など
  • サイコグラフィック・セグメンテーション:社会階級、性格的特徴による分類
  • 行動セグメンテーション:製品知識、態度、使用、反応による分類

ステップ2:Targeting(ターゲティング)- 有望な市場を特定する

効果的な市場セグメントの特徴は以下のとおりです。

  • 測定可能性:市場セグメントの規模、購買力、利益をどの程度達成できるか?
  • アクセス性:市場セグメントに到達し、サービスを提供できる可能性は?
  • 持続可能性:市場セグメントの充足度、収益性は?
  • 実行可能性:効果的なマーケティング・プログラムを展開できるか?

ステップ3:Positioning(ポジショニング)

ステップ1、2と広大な市場をセグメンテーション(分類)し、自社のターゲット市場を特定したあとに、市場内での自社のポジショニングを構築していきます。

(参考:Researchgate

クラスター分析

クラスター分析

 

概要:クラスター分析とは混在したデータを、客観的な数値基準、類型性によって集団(クラスター)に分けるデータマイニング手法のひとつです。

クラスター分析は「教師なし学習」といって、人間が分類基準を指定しなくてもデータから近似性を見つける分類手法です。そのため、人のバイアスに作用されません。政府統計、考古学、DNA分析などにも活用されている科学的分析手法です。

マーケティング領域での主な活用例は以下のとおりです。

  • 顧客の特性ごとにグループ分けが可能
  • 新しいペルソナグループの発見
  • ブランドのポジショニング分析
  • ダイレクトメールの配信先のカスタマイズ
  • リターゲティング広告配信先のカスタマイズ
  • マーケティングメッセージの調整
  • アンケートや市場調査などのデータ分析

クラスター分析には大きく分けて「階層クラスター分析」と「非階層クラスター分析」があります。階層クラスター分析はデータ間の類似度を算出した後で、一定の基準に従って自動的にクラスターを形成する方法。非階層クラスター分析は、事前にクラスター数を決めてグループ分けします。それぞれのメリット・デメリットは以下のとおりです。

階層・非階層クラスター分析のメリット・デメリット

まとめ

日本企業の(特に中小企業)の多くはマーケティング部といっても1人もしくは少数で、大抵の場合は社内に詳しい上司、先輩もおらず、しかし経営者からは成果を出してほしいといわれるなか、何か意味ありげで実はそれほどの内容ではないカタカナマーケティング用語と向き合いつつ、どうやって成果をあげるべきか奮闘していると思います。

そんなマーケターにマーケティング理論がなぜ役立つかというと、私たちビジネスフィールドの人間が仕事上ああでもない、こうでもないと悩み苦しんでいるテーマが、当の昔に研究領域では解が出ていることが少なくないからです。しかもマーケティングは実学なので、かなりわかりやすくフレームワーク化されています。

すべて完璧に頭にいれる必要はありませんが、ざっとこんなものがあると知っておきましょう。いざ必要なときにゼロベースから学ぶよりも、日ごろからある程度理解してくと使うときにパッと活用できるでしょう。

マーケティングは科学と言われても、変数が多いので物理実験と違い再現性100%ではありません。応用が大事なのはもちろんです。それでも、基本の戦い方、市場の分類方法、ポジショニングなどのマーケティング理論を知っているか知らないかは、成果に大きな差を生むでしょう。

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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