クラスター分析とは?目的と分析方法を事例を用いてわかりやすく解説!

2023/08/08
BtoBマーケティング クラスター分析 クラスター分析とは?目的と分析方法を事例を用いてわかりやすく解説!

クラスター分析によって、Z世代を4タイプに分類」「あなたはどのタイプ? キャリジョクラスター分析」「日本人の遺伝的集団構造をクラスター分析」など、身近な話題からアカデミック領域まで幅広く活用されているクラスター分析。

マーケティング領域でも顧客セグメンテーションや新たなペルソナの発見、市場調査などにすでに活用している人も多いでしょう。マーケティング担当者はデータをいかに読み取り、分析し、活用するかも能力のひとつです。できるだけ有用な幅広い分析手法を知って使いこなす必要があります。

本記事では、マーケターが知っておくべきクラスター分析の基本、特徴、クラスター分析の活用例を紹介します。

クラスター分析とは?

クラスター分析とは、さまざまな特徴を持つ混在したデータを、客観的な数値基準、類型性によっていくつかの集団(クラスター)に分ける機械学習・データマイニング手法のひとつです。

簡単にいえば、大量のデータから似たもの同士を複数のグループに分ける手法です。

クラスター分析は科学的な分析手法であり、人の思い込み、バイアスに影響されない結果が出るところが特徴です。「教師なし学習」といって明らかな分類基準を指定せず、データから近似性を見つけ出して分類します。

たとえば、男性、30代など明確な基準をもとにデータをセグメントするような一般的な方法とは異なり、何万件とあるデータからまったく参照指標なしに似た特徴を持つ類似データを抽出するため、思いもよらない結果が出てくることがあります。

クラスター分析を活用すると、購買履歴が近似している、行動パターンが似ている、アンケートの発言内容(アンケート等)が近似しているなど、さまざまな角度から対象をグルーピングできます。マーケティング領域での主な活用例は以下のとおりです。

マーケティング領域活用例:

  • 買い手の特性ごとにグループ分けが可能
  • 買い手の生活エリア(商圏)の特性分析
  • 新しいペルソナグループの発見
  • ブランドのポジショニング分析
  • ダイレクトメールの配信先のカスタマイズ
  • リターゲティング広告配信先のカスタマイズ
  • プロモーションやその他のマーケティングメッセージの調整
  • さまざまなペルソナのニーズに合わせて、製品をより良くカスタマイズする
  • アンケートや市場調査などのデータ分析を行う
  • 投稿時間のクラスター分析によるX(旧Twitter)ユーザの年齢層推定

また、クラスター分析の分析対象は人だけでなく、生物、商品、地域、企業、イメージなども対象にできるため、幅広い領域で活用されています。

たとえば、画像解析、情報検索、バイオインフォマティクス(遺伝子配列、タンパク質構造、生物学的ネットワーク、進化生物学、複雑な生態系など、多くの異なる形式のデータを扱うこと)、データ圧縮、コンピュータグラフィックス、そして機械学習などです。

マーケティング領域以外での活用例:

  • 疾患の分類
  • 市町村の分類
  • 文化圏の分類
  • 考古学で発掘された人骨や遺物の分類
  • ヒトの祖先の推定
  • 政府統計

クラスター分析の目的

クラスター分析を行う主な目的として、以下4点が挙げられます。

データの理解と解釈

大量のデータを扱う際、それらをいくつかのグループに分けることで、データの全体像を理解しやすくなります。各クラスターの特性を分析することで、データのパターンや構造を解釈することが可能です。

意思決定の支援

ビジネスの文脈では、クラスター分析は意思決定を支援する重要なツールとなります。たとえば、顧客の購買行動をクラスター分析することで、顧客のセグメントを明確にし、それぞれのセグメントに対する最適なマーケティング戦略を立てることができます。

異常値の検出

クラスター分析は、データセット内の異常値(稀に発見される、極度に逸脱した異常な数値)を特定するために使用される場合もあります。

特定のデータが他の任意のクラスターに該当せず、単独で存在している場合、それは異常値である可能性を示しています。

異常値の発生源は多岐にわたる可能性があります。特定の異常値出現の背景に関して、「計測エラーだった」等、確実に特定できる場合を除き、異常値の存在とそれがデータから除去されるべきか否かを決定するためには、その背景を深く理解する必要があります。

予測モデルの改善

クラスター分析を行うことで、データの内部構造を把握し、それを用いて予測モデルを最適化できます。

予測モデルは、過去のデータに含まれるパターンに基づき、未来の出来事を予想するためのツールです。過去のデータに基づく「小売店における需要予測」「来店者数予測」などがその一例。

スーパーマーケットに当てはめれば、来店者の過去の購買データから、未来の購買傾向を予測し、それぞれに合った商品を提案することが可能になるのです。

クラスター分析によって、過去の顧客の購買データから「節約派」「健康志向」「贅沢派」など、共通の特徴を持つグループを見つけることが可能。これによって、データの構造やパターンを理解しやすくなります。

そして、クラスター分析でグループ化されたデータを使用すると、予測モデルが効率的になります。同じグループ内のデータは似た特徴を持つため、予測の精度を高めることができるのです。

つまり企業は、クラスター分析を使用して顧客をセグメント化し、それぞれのグループごとに、より精度の高い予測モデルを構築することができます。

クラスター分析の特徴

クラスター分析は、大規模なデータ集合を、似た特性を持つグループに分割する手法です。

一方、明確な分類基準が存在する情報、たとえば、顧客の年齢、性別、住所などをグルーピングする際には、クラスター分析とは呼びません。

それよりも、消費者の行動パターンや傾向といった、明確な分類基準が存在しないデータに対してクラスター分析が適用されます。

この方法を用いることで、消費者の特性に基づいたグループ化が可能になります。

さらに、店舗で取り扱う商品の分析や、消費者の居住地域(商圏)の特性分析にも用いられます。新商品開発の際のブランドポジショニング分析などにも活用されるのがこの手法の特徴です。

クラスター分析は広範にわたる業界で利用されており、顧客の行動や嗜好を理解し、それに基づいてマーケティング戦略を策定するための強力なツールとなっています。

以下に、クラスター分析がマーケティングに活用されている具体例として、米小売大手・ウォルマートの例を紹介します。

小売業界

ウォルマートは、クラスター分析を用いて店舗の配置と商品の配置を最適化しています。

具体的には、データ分析に基づいて、鮮度の高い生鮮食品を十分に売場に取り揃えておいた場合、人々はより長く店内を回遊することがわかりました。

これが、顧客にウォルマート店舗でより多くの商品を購入させる秘訣であることを、データを根拠に確信したうえで売場作りを行っています。

また、顧客の購買行動や地域の人口統計データを基に、どの地域にどのような商品を配置すべきかを決定しています。

[参考]How Big Data Analysis helped increase Walmart’s Sales turnover?

マーケティング業界

無料オンラインアンケートツール「SurveyMonkey」を提供しているMomentive Global Inc.が行った研究によると、クラスター分析を用いて、クレジットカードユーザーをグループ化し、ユーザーグループ間のさまざまな行動や好みについての理解が深まった、と述べています。

以下は、Momentiveの研究による、4つの重要な発見です。

  • アメリカの若者は、高齢者に比べて利用できるクレジットカードの数が少ないかもしれません。しかし、カードを申請したり、カードを大量に解約したりする率は高くなります。
  • 新規でカードを申請する理由は、収入によって異なります。高所得の成人は信用限度額を増やすために新しいカードを開設しますが、中低所得の成人は信用履歴を構築することが動機となっています。
  • クレジットカードに関連する最も重要な機能は、キャッシュバック、年会費、年利です。最も重要ではない機能は「限定イベントへの招待」や「航空旅行特典の利用」であることもわかりました。
  • 若いアメリカ人は、デジタル決済プラットフォームを使用する傾向が高く、PayPal などの今すぐ購入して後で支払うオプションを利用する傾向があり、PayPalは最も人気のあるプラットフォームです。

クラスター分析で発見できたこと

クラスター分析は、クレジットカードのどのような機能が最も重要であるか、若いアメリカ人がクレジットカードをどのように使用しているか、新しいクレジットカードを申請する理由など、それぞれについて独自の洞察を提供しました。

これらのセグメントの識別は、将来クレジットカード会社にとって、重要な役割を果たす可能性があります。

特定のクレジットカードのターゲットがどのセグメントであるかに応じて、マーケティングの対象を絞り込むことができます。たとえば、クレジットカード会社が新規顧客をターゲットにしたい場合、マーケティング施策は、他の特典ではなくキャッシュバックに重点を置くべきだとわかります。

このように、クラスター分析を用いることで、具体的なマーケティング戦略をデータを根拠に立案できるようになるのです。

クラスター分析ロジスティック回帰分析との違い

ロジスティック回帰分析とは、さまざまな要素から、「ある事象の発生率(「はい/いいえ」や「合格/失敗」のように、結果が2つだけの状況の確率を予測)」を分析できる方法です。

ロジスティック回帰分析の図

例:喫煙と飲酒の量とがんの発生

友達が毎日ビールを飲んでタバコを吸っているとします。その友達ががんになる確率はどれくらいでしょうか? ロジスティック回帰分析を使えば、この問いに答えることができます。

まず、人々の飲酒と喫煙の量と、がんになったかどうかのデータを集めます。たとえば、「毎日500mlのアルコールを飲んで10本のタバコを吸って、がんになった人」や「毎日60mlのアルコールを飲んで6本のタバコを吸って、がんにならなかった人」などの情報です。

集めたデータを使って、特定の飲酒と喫煙の量でがんになる確率を計算します。たとえば、「毎日350mlのアルコールを飲んで9本のタバコを吸うと、がんになる確率は何%?」といった予測ができます。

この分析では、不完全なデータや差が大きくないデータは使えません。また、分析には単純でかつ大量のデータが必要となります。そのため、機械学習という、コンピュータが自動的にデータを学習する手法が最適です。

クラスター分析とマーケットバスケット分析(バスケット分析、アソシエーション分析)分析との違い

マーケットバスケット分析は、商品の組み合わせがどれだけ売れるかを予測する手法です。別名バスケット分析やアソシエーション分析とも呼ばれます。

これは、「これを買った人は、あれも一緒に買っているだろう」というような予測を具体的な数値で表現するものです。あまり関連性がなさそうな商品が一緒に買われる傾向があることを見つけ出せるため、オンラインショップでおすすめの商品を表示する際に利用されます。

一つの例として、よく引き合いに出されるのが「おむつとビール」の例です。アメリカの大手スーパーマーケットでは、おむつを買う人がビールも一緒に買うことが多いという結果が出ました。

調べてみると、大きくてかさばるおむつを夫が買うことが多く、その際にビールも一緒に買ってしまうという現象が起こっていたようです。その結果、おむつ売り場にビールを置くと、ビールの売り上げが増えたといいます。

つまり、マーケットバスケット分析は、ある商品を買う人が何を一緒に買いやすいかを調べるツールということです。これを使うと、より良い商品の提案や配置が可能になります。

マーケットバスケット分析

分析との違い

これらの手法は、それぞれ異なる目的と問題解決のために使用されます。どの手法を使用するかは、解決すべき問題や利用可能なデータ、そして目的によります。

補足:データマイニングとは

データマイニングとは、大量の情報の山から価値ある知識を見つけ出す「探検」のようなものです。この探検では、パターンを見つけたり、統計を使ったり、機械学習(コンピュータが自動的に学習する技術)などが使われます。

具体的に言うと、データマイニングでは、大量の情報の中から、何が何と関連しているのか、どんな流れがあるのかなどを見つけ出します。

たとえば、スーパーマーケットの販売データから、「この商品を買う人はあの商品も一緒に買うことが多い」というようなパターンを見つけることが可能。これを利用すれば、どの商品をどこに配置するべきか、どの商品をどのように宣伝すべきかという戦略を考えるのに役立ちます。

データマイニングは、ビジネスでの重要な決定を助ける道具です。また、医療や科学の研究、政府の政策を決める場面など、さまざまな場面で活用されています。

  • 金融商品の提供

顧客のニーズを把握し適切なタイミングで商品を提供する

  • 製造現場における機器のメンテナンス効率化

どのようなタイミングで、どのような箇所に故障が生じやすいのかをデータマイニングで把握できれば、効率的なメンテナンスが可能

  • 医療における診療データの分析

膨大なデータを分析し、「このようなデータの時はあの病気である可能性が高い」といった関連性を発見できれば、経験の浅い医師でも正確な診断が可能

  • 教育における生徒データの分析

膨大な生徒の成績データを分析し、それぞれの得手不得手を把握。

また、過去の生徒から得られたデータを踏まえれば、現在の生徒の成績が今後どのように推移するかを予測することも可能。

例えて言うなれば、データマイニングは、情報の海から宝石のように有用な知識を探し出すための道具箱といえるでしょう。

クラスター分析の2分類の事例

クラスター分析の2分類の事例クラスター分析には大きく分けて「階層クラスター分析」と「非階層クラスター分析」の2つの手法があります。

階層クラスター分析

階層クラスター分析は、すべてのデータ間の類似度を算出した後で、一定の基準に従って自動的にクラスターを形成していく方法です。

データの類似度を出す計算・分析手法には「ウォード法」「群平均法」「最短距離法」「最長距離法」などの手法があります。

一般に活用されているのは、計算量が多くて精度が高い「ウォード法」「群平均法」です。いずれの計算方法でも、分類の過程で下記のような階層構造(樹形図)ができるため「階層クラスター分析」と呼ばれています。

樹形図と呼ばれるトーナメント表のような図は、視覚的にわかりやすく、クラスター同士の距離、クラスターの数などが一目瞭然なところが特徴です。

クラスター分析結果の例

クラスター分析結果の例

(出典:政府統計局

一般的に階層クラスター分析は、顧客セグメンテーション、市場セグメンテーション、商品のクラスタリングなど、さまざまなマーケティングの課題に対して使用されています。データ分析をして、顧客や市場、商品を意味のあるグループに分けることで、企業はより効果的な販売戦略を展開し、市場での競争力を高めることができます。

例:ウォルマート

ウォルマートは過去の取引に基づいて、顧客の性別、年齢、年収、支出スコア、買い

物した商品カテゴリなどの顧客データを収集していると考えられています。

ウォルマートは、これらすべての変数を利用できるため、同社のマーケティングチームは顧客の購買行動についてデータから十分な裏付けを得ることが可能です。

ここで、ウォルマートが高級品に興味のある顧客をターゲットにしたキャンペーンを

開始すると想像してください。

彼らを店舗に呼び込むために特別なオファーを用意していますが、すべての顧客が高級品に興味があるわけではないため、すべての顧客に向けてキャンペーンを展開することは意味がありません。

この課題解決のために、クラスター分析を利用することで、顧客データを使用して高級品を購入できる類似のユーザーをグループ化できます。

顧客をさまざまなセグメントにクラスタリングし、キャンペーンの対象となる潜在的な顧客のクラスターを選択できるということです。  

<クラスター分析を行うメリット>

  • 高級品に興味を持つ顧客だけに特別なオファーを提供でき、マーケティングの効率と効果の向上が期待できる。
  • 顧客の興味やニーズに合わせたパーソナライズされたサービスを提供でき、顧客満足度向上が期待できる。
  • 高級品に興味はあるが、まだ購入していない顧客層を特定し、彼らに向けた新しい戦略を展開することも可能。

非階層クラスター分析

非階層クラスター分析は、事前にクラスター数をいくつに設定するかを決めてグループ分けします。代表的手法に各クラスターに含まれる「超体積法」「k平均法(k-means法)」があります。

非階層クラスタリング図

非階層的クラスタリング図

(出典:政府統計局

非階層クラスター分析は、集団全体から、似たもの同士が同じクラスターに入るように分割する方法で、階層的な構造はありません。個体数が多い場合に適しています。

非階層クラスター分析は、特にマーケティングリサーチにおいて、消費者のセグメンテーション(顧客の分類)に有用であるとされています。この手法を用いることで、企業は消費者の嗜好や行動パターンを理解し、それに基づいて製品やサービスをマーケットに合わせて調整することが可能になります。

例:企業の新商品発売

ある企業が新製品を市場に投入する際に、非階層クラスター分析を用いてターゲットとなる消費者群を特定できます。

たとえば、新しいスニーカーを発売するとします。非階層クラスター分析の活用を想定してみましょう。

  • まず、消費者の年齢、性別、趣味、ライフスタイルなどのデータを集める。
  • 消費者を、似た特徴を持つグループに分る。

「スポーツ愛好者」「ファッション重視者」「価格重視者」など

  • 新しいスニーカーがどのグループに合うかターゲットを特定。

たとえばデザインが斬新で高価なスニーカーなら、「ファッション重視者」に合うかもしれません。

  • ターゲットを決めたら、そこに照準を合わせて、価格、広告、プロモーションなどを調整。たとえば「ファッション重視者」に向けて、有名なファッション雑誌で広告を出すなど。

この分析により、企業は製品の特性や価格設定、プロモーション戦略などを、特定の消費者群のニーズや期待に合わせて最適化することができます。

例:消費者の行動・嗜好を把握する

また、非階層クラスター分析は、消費者の行動や嗜好が時間とともに変化することを捉えるのにも有用です。企業はこの分析を定期的に行うことで、市場の動向を追跡し、製品やサービスを常に最新の消費者のニーズに合わせて更新できます。

このように、非階層クラスター分析は、ビジネスやマーケティングの現場で、消費者の理解を深め、製品やサービスの最適化に役立てる重要なツールとなっています。

階層クラスター分析と非階層クラスター分析の違いを事例を用いて解説

階層クラスター分析と非階層クラスター分析はそれぞれ長所・短所があります。

マーケティングの人たちが知りたいことは、雑多な情報からまとまりを見つけたい場合が多いので、多くの場合、非階層クラスター分析が適していますが、階層クラスター分析の長所も理解し、目的によって使い分けましょう。

階層クラスター分析のメリット・デメリット

類似度が高いものから低いものへ自動的にクラスターが形成されていきます。階層構造図によってクラスター同士の近さがわかりやすく、全データの階層構造を俯瞰して理解できるメリットがあります。また、クラスターを任意に分割して活用できます。

階層クラスタリング図

ただし、分類対象のデータが膨大だと計算に時間がかかり、階層の構造がいくつもできるため視覚的にもわかりづらくなります。階層クラスター分析は膨大なビッグデータの解析やマーケティングオートメーションでの分析には向いていません。

階層クラスター分析のメリット・デメリット

(出典:総務省

マスクを購入する際、重視するポイントを消費者に聞いてみて、回答データを収集し、その後分析・解釈をした事例を紹介します。

例マスクを購入する際に重視するポイント-1

「非常に重要」=7点

「重視」=6点

「やや重視」=5点

「どちらでもない」=4点

「あまり重要ではない」=3点

「重要ではない」=2点

「まったく重要ではない」=1点

とします。

3名にアンケートをとったところ、下記のようなデータが得られました。

例マスクを購入する際に重視するポイント-2 (1)

3人の回答者それぞれに、マスクを購入する際に重視するポイントに関して考え方の差があることが分かります。たとえば「性能を重視するかどうか?」という視点について、AさんとCさんとでは5ポイントも差異があることが分かります。

値が小さいほど距離が近い=類似度が高いことを表します。類似度が最も高いものから順にクラスターに結合していきます。樹形図を用いるのは、その計算・統合の過程をグラフに表すためです。

非階層クラスター分析のメリット・デメリット

非階層クラスター分析は、計算量が少ないためビッグデータのような膨大なデータ数を扱えるところがメリットです。データ数が増えてもクラスター構造に問題が生じにくく、信頼性の高い分析結果を得られます。

ただし、分析者が最初にクラスター数を設定する必要があり、階層分析のように後から任意のクラスター数に分割できません。そのため、最初のクラスター設定数によって分析結果が規程してされてしまうところが難点です。

クラスター分析にはさまざまな分類方法があるものの、一般的なクラスター分析手法は「k-meansクラスター分析」のことを指すと言われるほど活用されています。

非階層クラスター分析のメリット・デメリット

(出典:総務省

米国内に拠点を構えている、ある繊維会社が、配送コストを最小限に抑えて経費を削減する必要があるとします。その一手段として、流通業者に近い場所に倉庫を移す方法を検討。その会社はニューヨーク州全域で118の流通業者を雇用しています。

ここで、非階層クラスター分析を活用できます。

販売店をクラスタ化された 5 つの地域にセグメント化し、次に Centroid関数(重心を求めるための関数)を使用して、最適な倉庫の場所を特定する方法をシミュレートします。

繊維会社は、地図上のどの座標に自社倉庫をプロットすれば最適なのか、計算で求めることができるのです。

階層クラスター分析と、非階層クラスター分析の長短を比較すると、それぞれ、以下のとおりです。

階層・非階層クラスター分析の比較表2

(※)初期シード…K-means法における「初期シード」とは、クラスタリングの開始点となるデータのこと。つまり、どのデータを最初の中心点(クラスタの中心、代表)とするかを決めること。たとえばあなたがクラスの人たちを何かの基準でグループ分けするとき、最初にどの人を中心にするかを決めることが「初期シード」です。その人を中心に、他の人たちがそのグループに入るかどうかを決めていきます。この「初期シード」はランダムに選ばれます。選び方によっては結果が大きく変わることがあります。そのため、何度も繰り返し計算を行い、最も良い結果を選ぶことが一般的です。

参考:ITエンジニアのための機械学習理論入門 第6章 k 平均法

マーケティングでクラスター分析を活用するには?

マーケティングにおけるクラスター分析の目的は、一般に顧客を正しくクラスターに分けて、それぞれのニーズ、嗜好に合わせたマーケティング施策を提供することです。

顧客をどう定義するかは、実は単純ではなく、自分の想像のおよばない共通項で一つの顧客グループがある可能性はあります。そのような新しい顧客層を見つけるのに、クラスター分析は有効です。

具体例1:顧客の行動パターンをクラスター分析

オンライン上では顧客の顔は見えませんが、閲覧回数や頻度、購入している製品・サービス、閲覧するページなどさまざまなデータがあります。そして、類似した行動をとる人たちが存在します。

たとえば、非階層クラスター分析のK-means手法を活用すれば、以下のような顧客の行動パターンで顧客をクラスタリングすることができます。年齢や性別などの属性バイアスに捕らわれない新たな顧客層を発見できる分析手法です。

  • 顧客の閲覧行動
  • 顧客の出現頻度、頻度、金銭的価値
  • 顧客が購入した商品
  • オフラインでの顧客行動
  • 製品の使用例
  • キーワードの順位
  • 難易度スコア

K-means手法

(出典:improvado.io/blog

銀行で、マーケティングキャンペーンの対象とすべき顧客グループを特定する

米・ニューヨーク市に所在する、とある銀行では、過去 6 か月間の顧客に関する広範なデータを保有しています。

銀行のマーケティングチームは、顧客を少なくとも 3 つの異なるグループに分けて、ターゲットを絞った広告マーケティングキャンペーンを開始したいと考えていました。

保有しているデータセットには、過去 6か月間のアクティブなクレジットカード所有者約 9000人の使用状況が含まれ、「購入するために口座に残っている残高」「一度に行われる最大購入額」「購入が行われる頻度」など、18個の行動変数が含まれています。

この銀行では顧客データからクラスター分析を実施することで、顧客のクレジットカード利用行動について以下のような点を明らかにしました。

  • 口座残高の平均は1500ドル(約21万円)
  • ほとんどの顧客は頻繁に「口座残高」を確認している
  • 「購入が行われる頻度」には、異なる2タイプの顧客グループが存在する
  • ほとんどのユーザーは「一括払い」や「分割払い」を頻繁に行うわけではない
  • クレジット利用残高を「一括払い」で支払う顧客は非常に少数
  • 与信限度額の平均は約4500ドル(約63万円)
  • 顧客の、現在の勤務先への勤続年数は「平均約11年」

顧客の過去の行動データを根拠に、いくつかのグループに分けることに成功。その後は各セグメントに即したメッセージング、訴求内容を届けることができました。

具体例2:アンケートを因子分析とクラスター分析

クラスター分析は、他の分析手法と組みあわせることでよりマーケティングに役立つ結果を得られます。

たとえば顧客アンケートでは、取得データの変数の背後に共通する原因を見出す「因子分析」を行い、抽出された因子によるクラスター分析を行うことで、価値観、嗜好などによるグループ分けも可能です。自社の顧客の新しいグループの発見、なぜ、自社製品・サービスが購入されているかなどの理解につながります。

以下は性格タイプとSDGsへの関心についてのアンケート調査をした例です。

興味のあるSDGsと性格特性は関係がある?

SDGsへの関心

性格タイプ

因子について

(出典:政府統計局

20の性格についての項目は、5つの因子で表すことができました。

SDGsの項目ごとの興味関心は、興味があるかどうかの5段階で聞きました。

その関係性を「相関係数(二つの変数の関係性の強さを示す数値)」の算出で把握してみたところ、各項目と、SDGsへの興味関心の相関は下記のようになりました。

SDGsへの興味関心の相関

「外向性や開放性の高いクラスター」に属する人はSDGs の認知も興味関心度合いも高く、協調性の低いクラスターではSDGsへの認知度も興味関心度合いも低い結果となりました。

こちらはシンプルな例ですが、SDGsは今後、企業が国からも顧客からも厳しくチェックされていくポイントのひとつです。

自社の顧客の価値感を捉えるためにSDGsについてのアンケートを実施することで、自社顧客の方針を理解し、それをもとに現在のサービスを改善したり、新たな製品・サービス、たとえば資源をむだにしない商品開発などに生かしたりできるでしょう。

消費者が「加湿器を買う際に重視するポイント」から、顧客を理解する

例加湿器を購入する際に重視するポイント

加湿器を買う際に重視するポイントについて数名の消費者にアンケートを実施し、その回答を分類すると、

Aさん・Bさん:全ての項目において数字が高いため「高関心層」

Cさん・Dさん:デザイン性を重視しているので「デザイン重視層」

Eさん・Fさん:機能性を重視しているので「機能性重視層」

というように、消費者の趣味嗜好に沿ってグループ分けできます。分析の結果、どのようなクラスター(顧客層)が作成されて、それぞれにどのような特徴を持っているか理解を深めることで、効果的なマーケティング戦略立案に寄与します。

具体例3:クラスター分析で市場をセグメント

クラスター分析で市場をセグメント

(出典:clusteranalysis4marketing.com/

米国のマーケティング関連サイトClusteranalysis4marketing.では、無料のクラスター分析Excelテンプレートを用いてサンプルデータで分析する手法を公開しています。

サンプルデータのマーケティング変数は以下の4つです。

  • 顧客のロイヤルティ
  • 広告認知度
  • 製品使用のレベル(ヘビー)
  • 製品の使用レベル(ライト)

結論として、以下のセグメントが導きだされています。

  • セグメント1:平均以上のロイヤルティを持つ。販売促進には敏感なものの広告はほぼ認識していない層。
  • セグメント2:製品・サービスの使用率が低い。販売促進によって購入の動機付けが高まるようなロイヤルティがほとんどない層。
  • セグメント3:ロイヤルティと製品・サービスの使用レベルは平均以上。広告認知度や販売促進策への反応は平均以下。長期的なロイヤルティが期待できない層。
  • セグメント4:ロイヤルティと製品・サービスの使用レベルは平均程度。広告を認識している。広告によって使用量が影響を受ける可能性がある層。

このマーケティング変数を変えることで、さまざまな分析結果が得られます。

こちらをダウンロードで試してみると、クラスター分析の感覚がつかめるでしょう。

小売において、特定の広告に反応する可能性の高さに基づいて、各世帯にパーソナライズされた広告やセールスレターを配信する

小売業においては多くの場合、クラスター分析を活用して、互いに類似した世帯のグループを特定しています。

たとえば、小売会社は世帯に関する次の情報を収集する場合があります。

  • 世帯収入
  • 世帯規模
  • 世帯主の職業
  • 最寄りの市街地からの距離

次に、これらの変数を分析に用いることで、次のクラスターを識別できます。

  • クラスター 1: 少人数の家族、高額支出者
  • クラスター 2: 大家族、高額支出者
  • クラスター 3: 少人数の家族、支出の少ない人
  • クラスター 4: 大家族、支出の少ない人

その後、同社は、特定の種類の広告に反応する可能性の高さに基づいて、各世帯にパーソナライズされた広告やセールスレターを送信できます。

この手法の良い点は、顧客のニーズに対してよりターゲットを絞ったアプローチが可能になることです。しかし、一方で、データ収集・分析には時間とコストがかかるため、小規模企業にとってはハードルが高いかもしれません。

また、クラスター分析によるセグメンテーションは、市場の変化に素早く対応する必要があるため、定期的な分析の更新が求められます。これにより、企業は常に最新の顧客動向に対応したマーケティング戦略を展開できるでしょう。

ストリーミングサービスでどんなユーザー群に多くの広告費を費やすべきか特定する

ストリーミングサービス(たとえばNetflixなど)では、クラスター分析を使用して、同様の行動を取る聴者を特定することがよくあります。

たとえば、ストリーミング サービスは個人に関する次のデータを収集する場合があります。

  • 1 日あたりの視聴時間(分)
  • 週あたりの合計視聴セッション数
  • 1 か月あたりに視聴されたユニークな番組の数

これらの変数を使用して、クラスター分析を実行して、ストリーミングサービス使用率の高いユーザーと、使用率の低いユーザーを特定し、誰に広告費の多くを費やすべきかを知ることができます。

この手法を活用することで、広告費の効率的な配分ができ、ROI(投資対効果)の最大化を図れる点が大きなメリットだと言えます。特定のユーザー群に焦点を当てることで、広告のリーチとエンゲージメントを高めることが可能です。

まとめ

マーケティング担当者が扱うデータは大抵の場合雑多であり、つかみどころがなく膨大です。

クラスター分析は、大量のデータから似た特徴を持つデータをグループとしてまとめてくれるため、マーケティング担当者にとって大変役立つ分析手法です。まるで、見ることができない海の中の魚類をグループ分けしてくれるような有能さです。

膨大なデータから何かの共通項を読み取ってペルソナを特定する作業は、個人の脳の力だけでは不可能。データが少数であっても思い込みや決めつけが発生するリスクがあります。
直感や経験値ももちろん大切ですが、クラスター分析をはじめ複数の分析手法を活用することがマーケティングの精度を高めます。

フラットにデータから顧客グループを浮かび上がらせたり、階層的に顧客クラスタを整理したりしてみましょう。新しい顧客グループに出会えるかもしれません。

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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