TAM、SAM、SOMとは?ターゲティングを絞り込む上で知っておくべきこと

2022/01/10
BtoBマーケティング TAM SAM SOM TAM、SAM、SOMとは?ターゲティングを絞り込む上で知っておくべきこと

新規に事業を立ち上げたり、製品・サービスを開発したりする際には、潜在的なニーズやビジネスの収益予測をかかすことはできません。

新規ビジネスの正当性を投資家にアピールするためには、十分な市場規模があるかどうか、見込み客はどのくらいいるのかを予想して、具体的に数値化させることが求められます。

スタートアップ企業が増加してCVC数が増加しているように、市場環境を定義し、投資家に対して論理的に説明できるようになることが、新規事業の協力者を増やすためには必要になってきます。この市場環境を定義し、新規事業や製品・サービスを提供する先を明確にするための指標がTAM、SAM、SOMです。

本記事では企業のマーケティングや営業の担当者様向けに、TAM、SAM、SOMのそれぞれの概要や計算方法、ターゲティングを絞り込む上で知っておくべきことを解説します。TAM、SAM、SOMを活用する際にお役立てください。

TAM(Total Available Market)とは? 

TAMとは、『ある市場で獲得できる可能性のある最大の市場規模』のことで、『Total Available Market』の略です。具体的には、ある製品・サービスが100%の対象となる市場を獲得した際に、得られる架空の年間収入を表すために使用されます。

TAMにはそれぞれ、以下の意味があります。

  • Total →全体の
  • Available →利用可能な
  • Market→市場

TAMは、事業自体が持っている最大規模のポテンシャルを把握できる指標です。ポイントは実現可能な最大市場規模を計測することで、いまここに存在する市場だけではなく、将来的な市場の意味合いも含んでいます。

そのため1年間の市場全体で、どれだけのお金が動くのかを表せます。TAMの対象範囲は以下の2点です。

  • 同じ製品・サービスでも違うアプローチのものは含む
  • 製品・サービスが異なっていても同じ市場のものは含む

上記のとおり、かなり幅広い対象が市場規模になります。直接的ではないけれど、間接的なライバルも把握できるところが大きな特徴です。TAMは同じニーズを満たす代替品なども、商品の市場規模の中に含んできます。

例えばSaaS企業の場合だと、TAMの時点では業界型のSaaSと水平型SaaSの競合が市場規模ではなく、SaaSという大きな括りが市場規模の中に入ってきます。

また、基本的にTAMは投資家や外の人に、自分の事業領域が魅力的であることを伝えるための数値です。自社が行っている事業で、これだけのお金が動いているということを、わかりやすく伝えることができます。

SAM(Serviceable Available Market)とは?

SAMとは『Serviceable Available Market』の略で、顧客セグメントの需要を示す指標です。具体的には、TAMの中でターゲティングした部分の需要を表しています。その市場に関わる特定の製品・サービスが獲得し得る市場規模のことです。

TAMは製品・サービスに関わる市場の全てが対象であるのに対し、SAMは自社が関わる市場のみに限定したときのポテンシャル評価になります。例えば、TAMは現時点では1番非現実的な市場規模を数値化したものですが、実際は同じ事業領域でも、現実的に自社では実現できない製品・サービスがあります。

SAMはそれらを排除して、より現実的かつ具体的に、自社製品・サービスのフルポテンシャルを明示したものです。

SOM(Serviceable obtainable Market)とは

SOMは『Serviceable obtainable Market』の略です。実際に製品・サービスを持って市場に参入したときに、自社でアプローチして獲得できるであろう市場規模を表した数値で、言い換えると自社の売上目標ともいえます。

SAMは自社が関わる市場規模のことですが、SOMはその中では自社がアプローチ可能な市場範囲に限定したものです。一言で表現すると『シェア率』とも言い換えられるでしょう。SOMは自社が実際に到達できる市場規模を示した、もっとも現実的な数値になります。

これがそのまま売上目標として扱われることがありますので、投資家などの外向けにも、社内などのうち向けにも、直近で目指すべき最大売上目標として明確に示すことができる数値です。

それぞれの関係性

TAM、SAM、SOMはそれぞれ、市場規模を表す指標です。TAM、SAM、SOMは包括関係にあり、TAMという大きな括りの中に、SAMがあり、さらにSAMという括りの中にSOMがあるという関係性です。

TAM、SAM、SOM、それぞれの関係性についての画像

音声コンテンツの例でいうと、音声コンテンツの市場全体がTAMになります。音声コンテンツという定義の元では、ラジオアプリやVoicy、Podcastなどの音声プラットフォーム、オーディオブック、音声配信サービス、配信アプリなど幅広い競業が数値の指標となります。

次にSAMは、実際にその中で自社がアプローチできるであろうターゲットが対象です。TAMで設定した市場規模から、さらに絞り込むイメージです。最後にSOMは、アプローチした上で獲得できそうな市場規模を設定します。

そのため、TAMでは市場全体を包括し、SAMではアプローチする市場を選定して、SOMでアプローチした後に集客できそうな市場規模を確認するということです。

TAM、SAM、SOMを利用するシーン

TAM、SAM、SOMは以下のようなシーンで利用されます。

  • 投資家の投資基準
  • 新規事業を立ち上げる際の市場把握
  • SaaS 事業のTAM分析

それぞれ解説します。

投資家の投資基準

TAM、SAM、SOMは投資家の判断基準に関わる重要な数値。投資家にとって事業を見るときの重要なポイントは以下の2点です。

  • 高い成長性が期待できる事業か
  • 想定されるリスクはできるだけ減らせるか

TAM、SAM、SOMはこれらの投資基準に関わります。そのため、経営者にとっても投資家にとっても、市場の認識の相違を防ぐために活用されます。また事業のアッパーを決めたり、ダウンサイドを決めたりする際の判断材料にもなります。

(引用:https://coralcap.co/2018/05/how-to-create-a-defensible-market-size/

投資家はもちろん、事業の製品・サービスを作る側からしても、前例のない新しい製品・サービスを見積もる際に、TAM、SAM、SOMは重要な指標となります。その理由は、スタートアップ企業がこれらの指標を正しく把握していないと、資金提供の確らしさを正当化することが難しくなるからです。

ただし一方で、TAM、SAM、SOMはどのようにでも切り出すことが可能、ということもできます。たとえば、マネーフォワードのIR情報資料を見ていただく、想定市場規模がとてつもなく大きいことがわかります。

マネフォワードのIR資料

マネフォワードのIR資料より

一方で、2021年年末時点で最も時価総額の高いSaaS企業である株式会社ラクスのIR情報では、非常にTAM、SAM、SOMが限定的に書かれていることが見て取れます。

ラクスのIR資料

ラクスのIR資料より

このように、企業によってTAM、SAM、SOMの定義や粒度は異なる置き方をすることを理解し、完全なる精度でTAM、SAM、SOMを作らなければいけない、という考え方は必ずしも必要ではないことを覚えておくことも重要です。

SaaS 事業のTAM分析

『SaaS』とは『Software as aService』の略で、必要な機能を必要なときに利用できるソフトウェアサービスのことです。このSaaSのマーケット分析を行う際に、TAM、SAM、SOM分析が利用されます。

例えばキャリアメールやGmail、SMS、LINEなどのメッセージ手段は、インターネット上でいつでもアクセス可能です。そのためわざわざソフトを購入して、クライアントにインストールしてもらう必要はありません。

SaaSサービスはすでに、インフラと言えるほど一般化されているものもあります。このような分野に参入する際、市場規模を予測するには先行サービスを参照する必要があるのです。

また、画期的で斬新なメールサービスを新たに提供しようとした際、パソコンやスマートフォン、タブレットなどの通信媒体を持つ全ての人を、顧客対象とするのは無理があるでしょう。この場合は、SAM、SOMの指標を参考に、まずはキャリアメールの何割のユーザーを獲得できそうかなど、既存の市場からできるアプローチを考えます。

TAM、SAM、SOMの計算方法

TAM、SAM、SOMの計算方法をそれぞれ解説します。

TAMの計算方法

TAMとは、その製品・サービスの市場における全ての需要を足した数値です。そのため計算式は以下のようになります。

  • TAM =単価×ユーザー数×購入回数(年間)

TAMの場合、計算しても大雑把な数値にしかならないのが特徴です。そのためTAMの正確な計算は難しいケースが多く、予想も含んだ数字になります。

SAMの計算方法

SAMはTMAの中で狙うべきターゲットを絞った市場規模です。そのため、計算式は以下のようになります。

  • SAM=関心を持っているユーザー数×払う動機がある金額

上記のとおり、ターゲットを絞ることで、TAMよりもサイズダウンした市場規模の結果となります。広範囲な製品・サービスジャンルの中で絞り込むこともあれば、ターゲット属性で絞り込むこともあるでしょう。

SOMの計算方法

SOMはSAMの市場の中で、実際に獲得できる市場規模のことになります。具体的な算出方法は以下のとおりです。

  • SAM=関心を持っているユーザー数×払う動機がある金額

実際には、対象となる顧客のニーズや購買行動、実際の支払意思、資料やデータを参考にしながら必要な計算式を構築していきます。SOMは短期的なアクションプランとなるため、基本的にはSAMの市場規模の『38.2%』といったように計算して事業計画に反映させます。

計算へのアプローチ方法

TAM、SAM、SOMの計算へのアプローチ方法は、マクロな視点から計算する『トップダウンアプローチ』と『ボトムアップアプローチ』の2種類があります。それぞれ具体的に見ていきましょう。

トップダウンアプローチ

トップダウンアプローチについての画像

(引用元:https://www.thepowermba.com/en/blog/tam-sam-som

トップダウンアプローチとは、マクロの視点から考える分析方法のことです。市場全体のターゲットから対象としない市場を除いていくため、主にTAMの計算の際に使われます。例えば市場データの中から、獲得したい割合を計算していく流れです。

また、トップダウンアプローチでTAM、SAM、SOMを計算する際には2つの注意点があります。

①自分の認識と調査内容がズレていないか

②使用する情報やデータは新しいか

それぞれ解説します。

①自分の認識と調査内容がズレていないか

調査対象の会社によっては、調査カテゴリーの分類が一般的でなかったり、言葉のニュアンスが異なっていたりする場合があります。その場合は計算結果にズレが生じるため、調査方法などを十分に精査した上でデータを使用することが大切です。

②使用する情報やデータは新しいか

トップダウンアプローチは公表されているデータを活用しますが、例えばこのデータが20年雨のものであると、信憑性がなくなります。その結果、実用性のデータとして使うことはできないでしょう。数値を算出する場合は、比較的新しいデータを使用するのが大切です。

ボトムアップ アプローチ

ボトムアップアプローチとは、ミクロな視点から考える分析方法のこと。製品・サービスの需要の大きさを顧客ひとり単位のデータから計算する方法です。

主にSAMやSOMを算出するときに利用します。具体的には顧客にアンケート調査を行い、実際に顧客になりそうなターゲット層の潜在ニーズを把握して、その数値を分析して計算します。

ボトムアップアプローチを行う際に注意したい点は以下の2つです。

①アンケートの規模は大きすぎないか

②質問内容は曖昧でないか

それぞれ解説します。

①アンケートの規模は大きすぎないか

数値を算出さる際に、はじめから大きな規模でアンケートを行うと、本質的な質問ができなかったり、内容に偏りが出てしまったりします。

アンケートは1度行うと、同じ人にもう1度答えてもらうのは難しいため、ある程度は対象の属性を絞る必要があります。そのため、大規模なアンケートは注意する必要があるのです。

②質問内容は曖昧でないか

人によって解釈が異なる質問内容では、正確なデータを収集できません。例えば『いまは、▲▲に興味を持っていますか』などの曖昧な質問は、人により解釈が異なります。質問内容は誰が見ても同じ解釈ができるように注意を払う必要があるのです。

まとめ

新規事業で市場規模を把握し、具体的なアクションを起こすためのフレームワークとしてTAM、SAM、SOMは有効な指標です。TAMとは『獲得できる可能性のある最大規模』のことで、大きな括りの市場規模が対象となります。

また、SAMは『実際にその製品・サービスがアプローチできる市場規模』のことです。ボトムアップアプローチで計算していきます。SOMは『実際にその製品・サービスが獲得できる、もしくはすでに獲得している市場規模」のことで、直近で目指すべき売上目標として使われます。

それぞれは包括関係にありTAMの中にSAMがあり、SAMの中にSOMがあるという関係性です。市場が伸びているか、その市場の中で勝てる見込みはあるか、競合は強いのか弱いのかといった要素を分析できます。ぜひ、今後のビジネスにぜひお役立てください。

戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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