営業の要「セールスオペレーション(SalesOps)」とは?その意味と役割をわかりやすく解説

2021/11/12
BtoBマーケティング セールスオペレーション 営業の要「セールスオペレーション(SalesOps)」とは?その意味と役割をわかりやすく解説

近年、米国では「セールスオペレーション(SalesOps)」という組織を立ち上げる企業が増えてきました(LinkedInの調査では、2018年~2020年の間だけでも38%アップしています)。

「ちょっと前までセールスイネーブルメントがトレンドだったのに次はこれ? 」「営業改革はもっと腰を据えて……」と思った方もいるかもしれません。

しかし、米国企業のビジネス環境のトレンドに合わせた組織改革、その根底にある現状を否定できるマインドには見習うべき点が多々あります。

営業現場が高度化、複雑化しているのは事実です。営業の成果を最大化する目的は同じでも、目的に向かう手法、オペレーション、規模は変化させる必要があります。

米国と日本では組織のありようや人材配置の手法が異なるため、すべて型どおり真似る必要はありませんが、要所要所に自社の営業体制を見直すヒントがあるはずです。

本記事では、セールスオペレーションの意味、目的や役割、セールスオペレーション導入のステップをわかりやすく解説します。

セールスオペレーションとは?

セールスオペレーションとは、営業部門の能力を最大化させるためにできる、さまざまな戦略~実行を指します。仕事の領域は各社によって定義に多少ばらつきはありますが、概ね営業部門の包括的な支援を行う部門という位置づけです。

こちらはHubSpotの定義です。

  • 「セールスオペレーションはリードの管理、営業戦略、テリトリーの構成と調整から、セールスプロセスの最適化、報酬プラン、セールスオートメーション、トレーニング、データの分析と報告まで、すべてを担当します。」(出典:HubSpot

営業の高次な領域を担うという定義です。Business2community.comのブログにセールスオペレーションの構成要素のわかりやすい図があります。

セールスオペレーションの概念図

(出典:Business2community.com

せールスオペレーションが生まれた背景

2018年の米国CSOinsightの調査では、63.9%の企業がセールスオペレーションの専門チームを導入しています。また、前述のようにLinkedInの調査では2018年以降も急増しています。

なぜ、ここまでセールスオペレーションの導入企業が増えたのでしょう?Ambition.comによると、セールス・オペレーション・チームの増加を促進した5つのトレンドが指摘されています。

  • エンタープライズ・テクノロジー。SaaSツール
  • CRM(Customer Relationship Management)
  • マーケティング・オートメーション
  • SlackなどBtoBコミュニケーションツールの普及
  • データ分析

(参考:Ultimate Guide to Sales Operations - LinkedIn

自社の営業現場を見ていただければ、納得していただけるかと思います。

今の営業マンは顧客ごとに違うコミュニケーションツールを使いこなし、自社のCRMなりSFAを入力、データをもとに自分の行動管理を徹底しています。顧客へはインサイトのある営業をするなど、スーパーマンのような活躍が求められているのです。

もちろん、一部の営業マン以外は無理です。セールススキル、ITリテラシー、アナリティクススキル、戦略マインド、実行力をかねそなえている人材など、日本の会社なら営業部門に限らず社内でもわずかではないかと思います。

近年のこのような状況の中、営業担当者を営業に集中してもらい生産性を高めるために、セールスオペレーション、セールスイネーブルメントとなど営業現場を支援する組織に注目が集まってきました(両者の違いは後述)。

セールスオペレーションの米国での現状

2021年に公表されたLinkedInの米国内の500人のセールス・オペレーション専門家を対象に行った調査レポート「The State of Sales Operations」によると、セールスオペレーションの専門家の数は、2018年から2020年の間に38%増加しました。

なんと同じ期間に、Sales Operationは営業部の4.8倍の速さで増加しています。

セールスオペレーションの増加

(出典:LikedIn

また、セールスオペレーションの領域はどんどん進化しています。

米国ガートナー社のブログによると、米国におけるセールスオペレーションは、リアクティブ(事後のソリューションに対処)→プロアクティブ(能動的に対処)→プレディクティブ(予測的なソリューション)と移行し続けています。(The Evolution of Sales Operations - Gartner

LinkedInのデータにもどると89 %が、自分たちがより頻繁に計画を立てることで、営業チームがより大きな成功をおさめられ、ビジネス全体にポジティブな影響を与えられると考えています。

しかし36%のセールスオペレーション部門は、人材の採用を課題と感じており、51%が自分の仕事について十分なリソースが不足していると答えています。

セールスオペレーションの課題

(出典:LinkedIn

今のところ、セールスオペレーション導入で企業収益がどのくらい増加したかについて、相関関係を示す統計数字は出ていません。成果については様子見の段階ですが、当事者たちが手ごたえを感じていることはうかがえます。

セールスオペレーションとセールスイネーブルメントの違い

ここでは、簡単に「セールスオペレーション」と「セールスイネーブルメント」の違いを解説します。いずれも、近年のビジネス環境の変化に伴い重視されてき概念であり、営業成果を最大化する同じ目的を持っています。

企業によっては、この2つを同じと解釈するなど定義はばらついていますが、比較的多数派の見解として「総合レビューサイトG2」の分け方を紹介します。ひとつの目安になるで、以下の比較表をご覧ください。

  • セールスオペレーション:
    セールスチームが現在行っていること、過去に行ったことに焦点を当てます。データを分析し、営業チームが現在実施しているプロセスや戦略を改善するための意思決定を行う。
  • セールスイネーブルメントチーム:
    その決定事項を実行し、展開します。戦略策定部門と実行部門という位置づけです。

セールスオペレーションとセールスイネーブルメントの違い

(出典:G2

HubSpotのセールス戦略・オペレーション担当副社長であるチャニング・フェラーは、セールスオペレーションの役割を "生産性を最大化するために、セールス組織を計画し、組織化し、強化すること "と表現し、「私は、セールスイネーブルメントはセールスオペレーションの一部だと考えています」と同様の見解を示しています(HubSpot

図にするとこんな感じでしょう。

セールスイネーブルメントとセールスオペレーションの図解

仕事内容を区別してみると、以下の分け方ができると思います。もちろん、部署のネーミングと仕事内容は企業の自由なので(また人的リソースの問題もあるので一つの部門に統合する選択もあります)。両部門を設置するのなら、役割分担を決める際の参考にしてください。

セールスオペレーション:

  • 営業戦略構築
  • 販売地域の計画とアカウントの割り当て
  • 提案と契約の管理
  • 販売報酬とインセンティブ
  • 売上げ予測とレポート
  • CRMなどのデータとシステムの管理

セールスイネーブルメント:

  • 営業スタッフのトレーニング
  • 営業プロセスの円滑化
  • 実績データの報告
  • 営業スタッフとのコミュニケーション
  • リードジェネレーション領域の支援
  • コンテンツの作成とシエア

セールスオペレーションの役割とは?

セールスオペレーションチームはかなり幅広い領域をカバーしますが、主な役割は以下の4点です。

  • 戦略
  • テクノロジー
  • オペレーション
  • パフォーマンス

Strategy

営業部隊の戦略、計画、目標、目的の評価。営業部隊とテリトリーのサイジング、構造化、調整を最適化するための専門知識を提供する。戦略的な機能としては、以下のようなものがあります。

  • 営業戦略の構築、計画、目標設定
  • セールスプロセスの最適化
  • セールスカバレッジモデルとテリトリープランニング
  • プレゼンテーション、レポート提出

(対経営陣、取締役会)

Technology

ここ数年で、企業が利用できるSaaSアプリケーション、セールス系ツールは急激に増加しています。しかし、ベンダーがいうほどテクノロジーは使いやすくなく、操作を覚えるだけで大変でかつ入力に時間をとられます(初期のセールステック類は実際満足度がかなり低かったのも事実です)。

セールスオペレーションは常に自社にとって最適なITツールを選択し、営業マンをトレーニングし、運用を管理します。

  • セールステクノロジーの評価
  • アプリやツールの統合
  • CRMの導入とカスタマイズ
  • データ管理とレポート
  • 営業タスクの自動化
  • テクノロジーの更新と営業マンのトレーニング

Operations

日々の営業部門の実績の分析と報告、テリトリーの調整、CRMシステムとプロセスの管理 、他部門とのコミュニケーションなど。

  • 製品トレーニング
  • セールストレーニング
  • 優秀な人材の採用とオンボーディング
  • 契約とSLA
  • KBマネジメント

Performance

セールスオペレ―ション部門は、営業部門の管理・運営業務の負担を引き受けることで、営業部門全体の高いパフォーマンスと専門性の向上に貢献します。

  • 営業方法論とベストプラクティスの導入
  • KPIと販売指標の特定
  • 報酬とインセンティブプラン
  • リードマネジメント
  • 四半期ごとの営業インセンティブ報酬プランと目標設定プロセスの管理

Analysis 

セールスオプスチームは、ほぼすべてデータ分析・管理業務をサポートします。

営業担当者が時間を有効に活用しているか、顧客が最大限の生涯価値を提供しているか? ロイヤル顧客の推移はどうなっているか? 営業マンの離職率は? どのようにすると下げられるか? 

データ解析とそのサポートこそ、近年のセールスオペレーションでもっとも比重が高くなってきた領域だといえるでしょう。

  • 四半期ごとの営業インセンティブ報酬プランと目標設定プロセスの管理。
  • SFA、CRMシステムプロセスの管理。
  • データ、分析、モデリング、レポーティングの提供
  • 売上げ予測

(参考allbound.comLucidchartfreshworks.combusiness.linkedinsaleshackerforrester.com

セールスオペレーションチームの構成について

企業組織の中でセールスオペレーションをどこに位置づければよいかについて、組織図を2例紹介します。

企業規模、成長のフェーズ、現在の営業体制、マーケティング部門、営業企画部門などの力関係などにより、ベストなポジションは異なります。

営業部門の権力が強い日本の企業で導入する場合、営業部門のトップの下にセールスオペレーションがあったほうがうまくいくケースは多いと考えます(企画部門が強い場合はもちろん逆です)。

1.営業に関連するすべての人が、営業VPの下にある組織

セールスオペレーション組織例1

(出典:blog.close.com

2.セールスとマーケティングのトップの下にセールス、セールスオペレーション、マーケティングが並列に並ぶパターン。

セールスオペレーション組織例2

(出典:Smartsheet.com

日本の会社の場合、米国のようにトップダウンで組織をドラスティックに変革し、必要な人材をヘッドハンティングで調達することは、雇用カルチャーの違いから難しい面があります。

ベンチャー企業でCEO中心にセールスオペレーションを進めるというパターン以外の企業は、むしろ現状の営業支援部門を軸に考えると、比較的スムーズに導入できるでしょう。

セールスオペレーションを導入するステップ

ここではセールスオペレーションの導入ステップについて解説します。

以下のサイトなどに本格的な導入ステップが解説されています。ゼロベースから本格的に導入する場合の参考になるでしょう。

The 6-Step Process to Build Your Sales Operations Department in 2021

The only kick-ass guide to sales operations you'll ever need

ただ、前述のとおり日本の中規模企業ならすでに営業支援、営業企画、営業統括、営業サポートなど名称はさまざまですが、セールスオペレーションに相当する部門があるかと思います。

その部門を強化する(例:データ分析、ITツールの運用等不足している領域)、あるいはその部門と領域がかぶらないセールスオペレーション部門を立ち上げる流れにすると、比較的軋轢もなく導入できるのではないかと思います。

以下、基本的なステップを記載します。

【ステップ】

  • STEP1:現状を把握する(新設か現部門の強化か決定)
  • STEP2:社内でのセールスオペレーション部門の位置づけを決める(組織図参照)
  • STEP3:人材を選定・採用(少なくとも以下2人が必要)

【セールスオペレーションマネージャー】:営業経験があり、データや先端のITツールにも強く、戦略性と実行力のあるマネージャー。

【ITスキルの高い営業経験者】:CRMや他のソースからのデータを統合し、セールスパフォーマンスを向上させるための提案を行う。強力なデータとエクセルのスキルが必要。セールステックの選定ができる人材。

  • STEP4:セールスオペレーション部門の目標とKPIの設定
  • STEP5:適切なセールステクノロジー選定
    オンライン商談ツール、SFA、CRM、マーケティングオートメーション、レポートツール、他。
  • STEP6:各種トレーニングの実施
  • STEP7:運用(PDCA)

新しい部門を立ち上げるには、目的の明確さや実現できる人材がいるかがポイントになります。

セールスオペレーションの立ち上げにあたっては、今後の自社の営業部門はどうあるべきか、成果を上げるにはどのような課題を解決すべきかという視点から構想を描き、営業で優秀な人材を上げたマネージャーを配置することが大切です。

スタッフのITオペレーションを担う人材は、採用に苦戦する可能性があります。社内から素養のある若手を抜擢し、育てていくくらいの気概をもって部署を立ち上げましょう。

(参考:HubSpotallbound.comblog.close.comuplead.com

まとめ

ハーバード・ビジネス・レビューによると1970年代、最初のセールスオペレーション・グループを設立したゼロックス社のリーダーJames Patrick Kelly(ジェイムズ・パトリック・ケリー)氏は、以下のように述べています。

「優れたセールスフォースを作るために必要な、やりたくない、しかしやらなければならない厄介なことを処理していた」

そこから時代は変わり、近年はデジタル化によりビジネス環境が激変し、活用できるテクノロジーも増加。そしてセールスオペレーションができる範囲が広がり、戦略部門という位置づけにする企業も出てきました。

スタートラインは企業ごとに違います。いまだ営業現場が旧態依然としている組織なら、まずは優れた営業経験のあるマネージャーとITに強いスタッフ、マーケティングセンスのある営業出身者の2~3人体制で小さく始めても問題ないでしょう。

セールスオペレーション部門と営業部門のパートナーシップを大事にしながら、営業現場を支援していきましょう。

戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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