プロダクトポートフォリオマネジメントとは?プロダクトマーケティング担当者が考えて知っておくべきこと

2022/01/26
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御社のプロダクトは、戦略的に市場で展開されているでしょうか? 現在のプロダクトポートフォリオでは、どのプロダクトに最も経営資源を投下しており、どのプロダクトが安定的収益を上げていて、撤退検討すべきプロダクトがどれか把握できているでしょうか?

経営者やプロダクトマーケティング担当者は、社内のプロダクトの全体像を俯瞰し、相互関係を理解する必要があります。もちろん前提としてマクロな市場環境、業界内の競合他社の動きまで考慮し、最適なプロダクトマーケティング戦略を描かなければいけません。

本記事では、プロダクトポートフォリオマネジメントという概念について解説します。あわせて、代表的なプロダクトポートフォリオマネジメント「アマゾンマトリクス」「BCGマトリクス」「GEビジネススクリーン」について深掘りしていきます。

プロダクトポートフォリオマネジメントとは?

プロダクトポートフォリオマネジメント(Product portfolio management、略してPPM)とは、企業が複数の製品・サービスを展開する際に、各プロダクトに最適な資源を投下するためのポートフォリオを決めるマネジメント手法です。

プロダクトポートフォリオマネジメントは、おもに新製品開発、既存製品・サービスのマーケティング戦略などを決める際に活用します。本記事はプロダクトマーケティング担当者向けなため、既存プロダクトのポートフォリオについて記載します。

プロダクトマーケティングマネージャーは、社内の全製品・サービスのプロダクトライフサイクルを管理し、現在のシェア、収益性、今後の成長可能性などをもとに、各プロダクトに最適なマーケティング予算を割り当て、マーケティング施策を企画します。

多くの企業は、予算が無尽蔵にあるわけではありません。投資してリターンを得られるプロダクトを優先する必要があります。とはいえ中長期的な視点で考えれば、未来の事業の軸となるプロダクトは赤字でも投資を続けなければなりません。常に以下の点を検討しながら、最適なプロダクトポートフォリオマネジメントを行う必要があります。

  • 当社のプロダクトポートフォリオはどのような状態が理想か
  • どのプロダクトに最大の投資をすべきか
  • コア製品の段階的な改善をどのようにすべきか
  • 隣接する市場にスライドできるか
  • 急成長する市場にどのようにシフトすべきか
  • どうすればよりシェアを拡大できるか?

(参照:tcgen.com/

発展の背景

プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)」というコンセプトは、1970年代に、米国系戦略系コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ (Boston Consulting Group) が開発しました。

ボストンコンサルティングのフレームワークは、横軸に経験曲線効果に基づく「相対的市場シェア」、縦軸に製品ライフサイクル理論に基づく「市場成長性」を数値指標とする4象限のマトリクスです。

実は「プロダクトポートフォリオマネジメント」という名称は使わないものの、それ以前もプロダクトのポートフォリオに活用できるフレームワークは存在しました。

ただ、世界的なコンサルティングファームであるボストンコンサルティンググループが提唱した影響は大きく、現代においても「BCGマトリクス(ボストンコンサルティングファームマトリクス)=プロダクトポートフォリオマネジメント」と解釈されるケースは珍しくありません。

また、ボストンコンサルティンググループの提唱以降も、さまざまなプロダクトポートフォリオのフレームワークが開発されています。

1970年代には、米国戦略系コンサルティングファームのマッキンゼー&カンパニーがゼネラル・エレクトリック(GE)とともに「GEビジネススクリーン」というプロダクトポートフォリオマネジメントを提唱しました。こちらはBDGマトリクスの短所を改良して生まれたフレームワークといわれます。

各プロダクトポートフォリオはそれぞれの視座が異なり、長所と短所があります。プロダクトポートフォリオのフレームワークも目的にあわせて活用したり、複数を組み合わせて活用したりすることが望ましいといえます。

代表的な3つのプロダクトポートフォリオマネジメント

ここでは、代表的な3つのプロダクトポートフォリオマネジメント「アンゾフマトリクス」「BCGマトリクス(PPMと呼ばれることもある)」「GEスクリーン」を紹介します。

アンゾフマトリクス

アンゾフマトリクスの図

(出典:経済産業省

アンゾフマトリクスとは、米国の経営学者、事業経営者であるIgor Ansoff(以下アンゾフ)氏が1960年代に提唱したフレームワークです。提唱者のアンゾフ氏の名前にちなんで「アンゾフマトリクス」と呼ばれます。また、「アンゾフの成長マトリクス」「事業拡大マトリクス」と呼ばれることもあります。

アンゾフマトリクスの特徴は、市場を2つに区分し(既存の市場と新しい市場)、製品も2つに区分(既存の市場と新しい市場)して、事業の成長可能性を4象限に分類することです。

既存市場と新規の市場はビジネスの進め方がかなり異なります。新製品と既存製品の売り方も同様です。今なら当たり前に思える話ですが、アンゾフ以前は、このように切り分けて考えるフレームワークはありませんでした。

事業家でもあったアンゾフ氏が開発したアンゾフマトリクスは、現場の人間が理解しやすい実践的なフレームワークです。事業を成長させたい経営者、プロダクトマーケティング担当者が戦略をたてるときも有用でしょう。

アンゾフマトリクスの4象限

第1象限「市場浸透」  既存製品×既存市場

第1象限の「市場浸透」は、既存の製品・サービスを既存の市場に深耕させていく活動であり、多くの企業が日々実践している活動があてはまります。4象限の中でもっともリスクの小さい手法です。

既存市場から売上げを上げていく方法には、現在の既存顧客1社あたりの売上げを増やすか、既存市場内で新規顧客数を増やすかです。既存顧客からのリピート受注を増やす(アップセル、クロスセルにつなげる)手法は、」1:5の法則で知られるようにコストが新規顧客開拓の5分の1で、収益率が高い方法です。

既存市場でさらなる新規開拓を行う場合も、すでに導入実績のある企業が存在するため、営業活動が行いやすいメリットがあります。

第2象限「新製品開発」 新規製品×既存市場

第2象限の「新製品開発」は、既存市場に新商品を次々と出して成長していく方法です。一例をあげると、Microsoft、オラクル、SAP社などの大手オンプレミス事業ベンダーは、IT業界のトレンドがSaaSにシフトした2010年あたりから、SaaSを次々と市場に展開しました。

SaaS業界の顧客層とオンプレミスの顧客層は同じなので、既存顧客、既存市場相手に新規製品であるSaaSを出したかたちです。すでに顧客のニーズも把握しており、既存事業と利益相反するリスク以外は問題のない選択肢だったのでしょう。

当初はセールスフォース社などSaaS専業ベンダーが中心だった業界も、今やシェア上位に大手ベンダーがずらりと並びます。このように既存市場に新規製品を投入する方法は、比較的リスクの小さい手法です。

第3象限「新市場開拓」 既存製品×新規市場

第3象限の「新市場開拓」とは、既存の商品を新市場に出して成長していく考え方です。国内→海外、一地方→全国展開と地理的に市場を広げる戦略や、男性向け→女性向け 高級品→同じプロダクトの廉価版、大手企業向け→中堅中小企業向けといったように、顧客の層を変える方法があります。

市場を広げるにあたり、水平展開して開拓していく手法と、垂直方向に展開していく手法があります。最近の例をあげると、大塚家具株式会社のお家騒動で、創業者の社長が高級路線を主張し、2代目の女性社長が富裕層から一般層への路線変更を主張し対立しましたが、株主は市場を広げることに同意しました。こちらは、垂直方向(下流へ)に市場を広げようとした戦略です。

第4象限 「多角化」 新規製品×新規市場

新しい市場に新商品を出していく考え方です。市場に対する知識もあまりなく、実績がない新しい製品・サービスを売り込む難易度は高いのですが、例えばSaaS業界のように業界自体が新しく大きく伸びている市場が登場した場合、うまくニーズにマッチすれば大きな成長を遂げられます。

新しい市場が古くからある業界の場合は、かなり革新的な新製品が必要になります。あるいはその市場内のニッチを見つける力が必要です。要は真似されにくい価値ある製品・サービスでないと厳しいでしょう。真似されやすい製品・サービスだと、古くから先行している業界上位企業もすぐ対抗製品・サービスを出すため、無効化されるリスクがあります。

最もリスクの高いハイリスクハイリターンの選択肢ですが、はまれば大きく飛躍する可能性が高いため、スタートアップ企業が好む象限でもあります。

BCGマトリクス

BCGマトリクスの図

  • 縦軸:市場成長率
  • 横軸:自社の相対的マーケットシェア

「BCGマトリクス」とは、ボストン・コンサルティング・グループが1970年代に提唱したプロダクトポートフォリオマネジメントです。「PPM」「Boston Box」「Boston matrix」とも呼ばれます。

BCGマトリクスは縦軸に市場成長率、横軸に自社の相対的マーケットシェア(一般的な業界内のシェアではなく業界内競合他社と比較したシェア)とし、プロダクトや事業を以下の4象限に分類します。

BCGマトリクスの4象限

花形(STAR)

「市場成長率:高 シェア:高」に該当するプロダクトです。市場が伸びており、製品・サービスのシェアも高いので、今後も投資することでさらにシェアを確保し収益を上げられる可能性があります。競合他社にシェアを侵食されないように対策を練る必要もあります。プロダクトライフサイクルで説明すると市場の成長期にあたります。

金のなる木(cash cow)

「市場成長率:低 シェア:高」に該当するプロダクトです。市場が成熟期に入っており成長率は低いため、事業の大きな成長は難しいものの、自社プロダクトのシェアが高いことで安定した収益が上げられる事業です。

過度に投資するとキャッシュフローが悪化するので、シェアを維持するのに適切な投資を行い利益を最適化します。できるだけ成熟期を延長して利益を獲得し続け、ここで得たキャッシュを「花形(Star)」「問題児」の象限に相当するプロダクトに投資します。

問題児(question mark)

「市場成長率:高 シェア:低」に該当するプロダクトです。 市場は大きく伸びているのに、シェアは低いプロダクトです。ローンチしたタイミングにもよりますが、市場が伸びており、製品・サービスに対する市場の反応もまずまずであれば、赤字先行でも投資して花形に育てていくことを目指します。業界の成長の波にのって、売上げはそれなりに伸びる可能性はあります。

しかし、そもそも製品・サービスの競争力が低く、市場からの反応もおもわしくない状況が続いていれば「負け犬」になる可能性があります。プロダクトの営業・マーケティングを担当している当事者たちとしては大化けするという方向で考えて業務にあたり、経営陣はシビアに両方の線を考えるといったところでしょう。

負け犬(dog)

「成長率:低、シェア:低」に該当するプロダクトです。市場の成長率も低く、製品・サービスのシェアが低い状態なので、このまま事業を続けても収益を上げられる可能性は低く、撤退も検討する必要もある象限です。製品ライフサイクルにおける衰退期にあたります。

しかし、企業によっては当初から「このプロダクトは赤字でよい」というプロダクトが存在します。別の製品・サービスの補完的な位置づけで、もしこの負け犬に相当するプロダクトがないと、他社が自社顧客に入り込む隙ができ、順調な他製品・サービスにマイナスの影響を与える可能性がある場合などです。

とかく、現実の企業内では業績の悪い他部署に冷たい傾向があり「あの部署は赤字を垂れ流すだけ」と言われたりしますが、経営的視点で捉えると必要な負け犬プロダクトもあります。また、顧客目線であれば各社のサービスを組み合わせて活用するより、1社でまとめて提供してくれるとありがたいという希望もあります。

GE/マッキンゼーマトリクス or GEビジネススクリーン

GEビジネススクリーンの図

縦軸:「業界の魅力度」 横軸:「業界の地位」

「GE/マッキンゼーマトリクス、GEビジネススクリーン(以下、GEビジネススクリーン)」は、ゼネラルエレクトリックス(以下、GE社)と、マッキンゼーアンドカンパニー社によって開発されたプロダクトポートフォリオマネジメントのフレームワークです。

GEビジネススクリーンは縦軸を「業界の魅力度」、横軸を「業界の地位」と取ります。アンゾフマトリクスとBCGマトリクスが2×2の4象限だったのに対し、GEビジネススクリーンは対象のプロダクトを3×3の9象限に分類できます。

また、前述の2マトリクスの縦軸・横軸の指標が決まっていましたが、GEビジネススクリーンの場合、縦横の軸の指標を評価者が選択できるため、目的にあわせた柔軟な活用が可能です。

一方、自ら指標を設定できるため「かえって難しい」という意見もあります。どちらかというとマーケティング中級者以上に適しているかもしれません。また、製品・サービスの種類が多い大企業にとって活用しやすいフレームワークです。

GE社が1980年代にJack Welch(ジャック・ウェルチ)CEOのもと、このGEスクリーンを開発して多くの事業を精査し、世界No.1もしくはNo.2になれる事業だけに絞り込み、業績を大きく伸ばしたことは有名です。GEスクリーンで活用できる指標には以下があります。

縦軸の「業界の魅力度」に活用する指標

プロダクトの成長可能性は、業界の大きさや成長可能性に比例するものです。また、業界内の競合他社の数、サプライヤー、バイヤーの力など業界の魅力に影響するさまざまな変数があります。GEスクリーンの縦軸「業界の魅力度」の指標の例には以下があり、それぞれの指標は「高、中、低」に分けられます。

  • マクロ環境(政治、経済、社会、技術)
  • 市場規模と成長率
  • 収益性
  • 競争環境
  • 参入障壁の高さ

横軸の「業界の地位」に活用する指標

企業が業界での競争上の優位性を持っているか評価する指標を活用します。それぞれの指標は「高、中、低」に分けられます。

  • 市場シェア
  • 成長の可能性
  • ブランド認知度
  • ビジネスの利益率
  • 顧客ロイヤルティ
  • 製品・サービスの独自性
  • 自社の強み

まとめ

マーケティングは1日あれば学べる。しかし、使いこなすには一生かかる」とはマーケティングの神様と言われるPhilip Kotler(フィリップコトラー)氏の言葉です。

今回紹介したアンゾフマトリクスやBCGマトリクスは、シンプルでわかりやすいフレームワークなためマーケティング初心者でも比較的理解しやすく、マーケティング中級者であればGEビジネススクリーンも理解できるでしょう。

しかし、使いこなすには実践の場で訓練を重ねるしかありません。ビジネスは、マクロトレンドが急転直下したり、予期せぬ競合企業の動きが出たり、年々変わる人々の価値観など変数が多いため、フレームワークが果たす役割はあくまである角度、視座からの思考の枠組みにすぎないからです。

複数のプロダクトポートフォリオで自社プロダクトのラインナップを俯瞰してみたり、プロダクト戦略を考えたりすることによって、自社プロダクトの位置づけ・最適な戦略が見えてくるでしょう。さらには自社の経営方針に関する理解があって、最適なプロダクトマーケティングが行えます。

経営戦略上、マクロ的な観点から赤字先行でも続けるべきプロダクトは間違いなくあります(資金的に許されるのなら)。しかし、ぐずぐずと撤退を先延ばししているだけで、早期撤退すべきプロダクトもあるのではないでしょうか。 

この見極めは経営者でも難しいものです。だから、サラリーマンはできなくてもよいではなく、だからこそ、このような判断ができる経営幹部を目指していただければと思います。

戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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