リッチコンテンツとは、テキストだけでなく、画像や動画、インタラクティブな要素を組み合わせて情報を伝えるコンテンツ形式を指します。
BtoBにおいても、デジタルならではの特性を活かしたリッチコンテンツを活用する企業が増えています。リッチコンテンツは、デジタルマーケティングに携わるすべての人にとって、ユーザーの関心を引きつけ、エンゲージメントを高めるうえで欠かせない知識です。
しかし、多くの人が「コンテンツ=ブログ」と考えがちで、情報伝達の手段が文章に限られると誤解しているのではないでしょうか。この結果、競合との差別化やユーザー体験の向上に苦戦し、せっかくのマーケティング施策が効果を発揮できないケースも少なくありません。
本記事では、BtoB企業やSaaS企業のマーケティング担当者に向けて、リッチコンテンツの基本的な定義から具体例までを解説し、なぜブログだけでは不十分なのか、その理由を明らかにします。また、リッチコンテンツを活用することで得られる成果や、マーケティングの可能性を広げる方法についても深掘りします。
この記事を通じて、リッチコンテンツの本質を理解し、多様な形式を活用することで、情報伝達の効率化やユーザーエンゲージメント向上を実現しましょう。
リッチコンテンツとは、テキストや静止画像に加え、動画、音声、アニメーション、CGなどの要素を組み合わせて構成される、表現力豊かなコンテンツを指します。Google Helpによると、リッチコンテンツはユーザーの関与を高める高度な機能を備えたデジタル広告に用いられる用語であり、製品やサービスを効果的にアピールする手段として活用されています。
リッチコンテンツは一般的にBtoC企業での活用が目立つイメージがあるかもしれませんが、その特性を考えると、BtoB企業との相性も極めてよいといえます。ビジュアルや音声を用いることで、複雑な製品やサービスを直感的に訴求できるためです。
デジタルマーケティングが進んでいる企業は、積極的にリッチコンテンツを活用し、ユーザーとの関係を深め、購買プロセスをスムーズに進めています。
2000年代、動画コンテンツといえばFLASHが主流でした。しかし、通信速度の遅さが課題となり、読み込みに時間がかかってしまったため、ユーザーが快適に視聴するのは困難でした。
その後の通信技術の進化によって高速通信が可能になり、YouTubeの人気も相まったことで、動画コンテンツが普及しました。ユーザーは短時間で多くの情報を得られるようになり、「短時間で理解する」ニーズが新たな標準となりました。
このニーズに応える形で、動画やアニメーション、インフォグラフィック、360度ビュー、インタラクティブなクイズやツールといったリッチコンテンツが急速に活用されるようになったわけです。
現代では、特にSNSやYouTubeなどの動画中心のプラットフォームが台頭し、リッチコンテンツがマーケティングの主役となっています。従来のテキスト中心のコンテンツは、この視覚的でインタラクティブなコンテンツに取って代わられ、視覚や聴覚を刺激しながら情報を伝える手法が標準化しつつあります。
(引用元:https://www.soumu.go.jp/main_content/000755994.pdf)
さらに、リッチコンテンツの市場規模の成長も目覚ましいものがあります。
2021年に総務省が発表した「メディア・ソフトの制作及び流通の実態に関する調査」によれば、2015年から2019年の間、コンテンツの市場規模は一貫して増加してきました。なかでも音声系と映像系ソフトの割合が大きく、2019年の時点で全体の75%を占めています。
また、電通の「2023年 日本の広告費」によれば、動画広告は前年比115.9%の6860億円となり、広告種別の中で最も高い成長率とのことです。このデータは、リッチコンテンツが今後も重要な役割を果たし続けることを示しているといえます。
リッチコンテンツが現代のデジタルマーケティングで注目される理由は、主に ユーザーエクスペリエンス(UX)の向上 と SEO効果の向上にあります。これらの特性により、リッチコンテンツはオンラインでの競争力を強化するために欠かせない存在となっています。
まず、リッチコンテンツはUX向上の強力な手段です。重機業界のリーダーであるキャタピラーでは、修理用パーツの検索を効率化するリッチコンテンツを導入しています。
ユーザーはシリアルナンバーやモデル番号を入力するだけで、膨大な選択肢の中から最適なパーツを見つけることが可能です。このように、リッチコンテンツは複雑な情報を整理し、直感的に提供することで、ユーザー満足度を大幅に向上させます。
(出典:CAT)
さらに、SEO効果の観点でもリッチコンテンツは有効です。
動画やインタラクティブな要素を含むコンテンツは、ユーザーの関心を引きつけ、滞在時間を延ばし、検索エンジンの評価を向上させます。また、画像や動画などの視覚的要素は通常の検索結果だけでなく、画像検索や動画検索の上位にも表示される可能性があります。これにより、検索結果での露出が増え、サイトへの流入をさらに促進することが可能です。
(弊社のブログ記事に設置した動画ダイジェスト)
このように、リッチコンテンツは単なる情報伝達手段ではなく、ユーザー体験を高めながら検索エンジンからの評価を向上させるツールとして、デジタルマーケティングにおいて重要な役割を果たしています。その特性を活かすことで、デジタル空間での競争力を強化し、顧客とのエンゲージメントを深められるでしょう。
リッチコンテンツを活用するために、メリットとデメリットを把握しておきましょう。
リッチコンテンツには、情報の効率的な伝達、ユーザーの関与促進、コンバージョン率向上といったメリットがあります。まずは各メリットの詳細を見ていきましょう。
現代人の集中持続時間は平均でわずか8秒といわれており、年々短くなっています。こうした背景から、限られた時間内で効果的に情報を伝える手段として、リッチコンテンツが注目されています。YouTubeやTikTokといったショート動画の人気も、短時間で多くの情報を視覚的に伝えられることが理由のひとつでしょう。
ある研究によれば、脳はテキストの6万倍の速さでビジュアルを処理します。また、1分間に含まれる情報量は180万語に相当するとのこと。リッチコンテンツは文章だけでは伝えきれない膨大な情報を含むため、ユーザーにとって直感的でわかりやすいコミュニケーション手段となるのです。
Zapierは複数のWebサービスやアプリケーションを統合・自動化するツールですが、その操作性や利便性を文章だけで伝えるのは容易ではありません。そこで、Zapierでは操作動画を設置し、視覚的にわかりやすい形で価値を訴求しています。ユーザーはツールの使い方を直感的に理解できるでしょう。
(出典:Zapier)
また、インフォグラフィックや前後比較のビジュアルコンテンツも、情報伝達を効率化する上で有効です。美容製品やリフォームサービスなどでは、使用前後の変化を示す画像が、商品の効果を一目で伝える手段となります。
リッチコンテンツを効果的に活用することで、ユーザーはただ情報を受け取るだけでなく、内容を深く理解し、次のアクションへとつながりやすくなります。
リッチコンテンツは、ビジュアルやインタラクティブな仕組みを活用し、ユーザーの興味を引き、コンテンツへのエンゲージメントを大幅に高めます。
Demand Metric社の調査では、マーケターの70%が「インタラクティブコンテンツは購買意欲を高める効果がある」と回答しており、その効果の高さが証明されています。視覚的な演出と動きのある要素は、ユーザーの注目を集める大きな要因です。短い動画やアニメーションは、静的なテキストや画像よりもはるかにわかりやすく、感情に訴える力を持ちます。
コラボレーションソフトウェアを開発するAtlassianは、マネジメント層や経営者を対象にしたクイズコンテンツを制作することで、リッチコンテンツの力を効果的に活用しています。
このクイズでは、ユーザーが7つの質問に回答するだけで、自身のリーダーシップスタイルを把握できる仕組みが組み込まれています。結果画面には、ユーザーがより深く学べる関連コンテンツへの遷移を促すCTAが表示されるため、ユーザーが自然と次のステップへ進める設計です。
(出典:Atlassian)
ユーザーが自ら選択や操作を行う体験を提供するため、受動的な情報消費とは異なり、情報が深く記憶に刻まれる効果があります。また、リーダーシップスタイルに関する興味深い結果が得られるため、クイズへの参加意欲を高めると同時に、Atlassianの提供する製品やサービスへの関心も自然と喚起されます。
このように、リッチコンテンツは、単にユーザーの関心を引きつけるだけでなく、深いエンゲージメントを生み出し、購買やブランドへのロイヤルティを促進する効果的なツールといえます。
リッチコンテンツは、購買プロセスにおけるユーザーの疑問や不安を解消し、コンバージョン率を大幅に向上させます。
2025年のWyzowlの調査では、エンドユーザーの98%が製品やサービスの動画を視聴し、そのうち87%が視聴後に購入を決断した経験があると報告されています。また、Demand Metricのデータでは、インタラクティブコンテンツがコンバージョン率を70%高めるとのこと。このようなデータからも、リッチコンテンツが購買促進に与える効果の大きさは明らかです。
リッチコンテンツがコンバージョン率を向上させる理由は、購買プロセスの重要な段階でユーザーに具体的な価値を伝え、購買意思決定を後押しする点にあります。
たとえば、製品の使い方やメリットを視覚的に示す動画や画像は、ユーザーに使用シーンをイメージさせ、信頼感を高めます。A社が製品使用イメージを動画で提供している一方、B社がテキストと画像のみで訴求している場合、ユーザーが選ぶのは視覚的に情報を伝えるA社の可能性が高いでしょう。
さらに、インタラクティブなツールを活用することで、ユーザーが自身の状況に応じた具体的な価値を把握できる仕組みも有効です。複数のSaaSアプリ管理プラットフォームを提供するZluriでは、ウェブサイトにROI計算機を設置し、顧客が従業員数や年間利用データを入力することで、節約できる費用や時間をリアルタイムで表示しています。
このような具体的な数値を提示すれば、特に費用対効果が重要なBtoB分野では、顧客の意思決定を強力にサポートできます。
(出典:Zluri)
また、360度ビュー機能や動画レビューなどのリッチコンテンツは、製品を細部まで確認できる機能を提供し、購入の不安を解消します。
リッチコンテンツには多くの利点がありますが、実際に導入する際にはいくつかのデメリットや課題も存在します。ここでは主な2つのデメリットについて詳しく解説します。
リッチコンテンツは、画像や動画、インタラクティブな要素を多く含むため、そのファイルサイズが大きくなりがちです。この特性は、ウェブページの読み込み時間に直接影響を及ぼします。Googleの調査によれば、モバイルページの読み込み速度が1秒から5秒に遅延すると、直帰率が最大90%増加することが報告されています。
(出典:Think with Google)
どれほど訴求力の高いリッチコンテンツであっても、読み込み速度が遅ければ、表示される前にユーザーがサイトを離脱してしまい、本来の効果を発揮できません。モバイル環境での閲覧が主流となる中、速度の遅延は直帰率の増加やユーザーエクスペリエンスの低下を引き起こす重大な問題となります。
この課題を解決するには、いくつかの技術的な対策を講じる必要があります。
まず、画像や動画の圧縮を行い、ファイルサイズを最小限に抑えましょう。次に、コンテンツ配信ネットワーク(CDN)を活用すれば、地理的に分散されたサーバーからコンテンツを配信して、読み込み速度の拘束を実現できます。
また、Lazy Load(遅延読み込み)を導入することで、ページ全体を一度に読み込むのではなく、ユーザーがスクロールするタイミングで必要な部分だけを読み込む仕組みを構築できます。
これらの工夫により、読み込み速度の影響を最小限に抑えることが可能です。
高品質なリッチコンテンツを制作するには、専門的なスキルやツールが必要です。その結果、制作にかかるコストや労力が増加するという課題があります。
具体的なコストには以下のようなものがあります。
特に中小企業やスタートアップの場合、限られたリソースの中でリッチコンテンツ制作に予算や人材を割くことが難しくなるケースもあります。そのため、優先順位を明確にし、効果的なリッチコンテンツを絞り込む必要があります。
コンテンツマーケティングを効果的に行うためには、リッチコンテンツの活用が欠かせません。
BtoB企業やSaaS企業が意識すべき、コンテンツマーケティングとリッチコンテンツの関係について、詳しく解説します。
コンテンツマーケティングは、ユーザーにとって有益な情報を発信することで自社のファン(見込み客)を増やし、将来的に購買へとつなげるマーケティング手法です。
企業の売り込みによってではなく、ユーザー自らが主体的に検索して企業や製品サービスにたどり着く「顧客主導」の風潮が強まってきたことが、発展の背景として挙げられます。この風潮をGoogleは「Zero Moment of Truth(ZMOT)」と呼んでいます。
BtoBの製品サービスは、購入までの検討期間が長い傾向にあります。大掛かりな基幹システムや社内体制を構築し直す必要のある管理システムでは、製品サービスの仕組みや導入メリットを十分に理解してもらう必要があります。
コンテンツマーケティングは、リードジェネレーションやリードナーチャリングの段階で特に有効です。ユーザーは製品サービスの理解を深められ、企業との信頼関係が構築されていきます。
導入コストが大きい製品サービスであるほど、コンテンツマーケティングが必要不可欠だといえるでしょう。
(引用元:https://backlinko.com/hub/content/b2b)
BtoBの製品サービスでは、ユーザーの70%が企業のWebサイトから、67%がインターネット検索から情報収集しています。
こうしたユーザーに効果的にアプローチするためには、インターネット検索からの流入が見込めるオウンドメディアを運営することが有効です。BtoC企業だけでなくBtoB企業にとっても、オウンドメディアを運営する意義は大きいといえます。
リッチコンテンツを活用することで、以下の効果が期待できます。
(SansanのCM公開ページ)
企業データベースなどを手掛けるSansan株式会社のCMは、リッチコンテンツを活用した好例です。企業内の困り事がSansanのサービスを使うことでどのように解消されるのか、わかりやすくインパクトのある動画を通じてユーザーに伝えています。
著名なマーケティングコンサルタントであるDan Kennedy(ダン・ケネディ)氏の言葉に「人は感情で買い、理論でそれを正当化する」があります。これはBtoBやSaaSの製品サービスにおいても有効な考え方です。
コンテンツマーケティングによって企業に対するよいイメージや信頼感を醸成しておくことで、見込み客の感情に訴えることができ、購買へとつながりやすくなります。
BtoB企業やSaaS企業が活用しやすいリッチコンテンツが動画です。コンテンツマーケティングの手段として、多くの企業がYouTubeでの動画配信に取り組んでいます。
BtoB企業やSaaS企業が制作する動画には、主に以下の種類があります。
コンテンツマーケティング全体の戦略を考えたうえで、どの種類を選んで制作するかを決めることが大切です。
(SalesforceのYouTubeチャンネル)
YouTubeを用いたコンテンツマーケティング事例のひとつが、顧客管理ソフトなどを販売するSalesforceのYouTubeチャンネルです。自社製品の設定方法や使い方を動画で配信しており、「製品の導入後にマニュアル動画を見ながら操作できる」という安心感をユーザーに与えています。
動画コンテンツを制作する際には、以下の点に注意しましょう。
コンテンツに一貫性がなかったり、ユーザーにとって有益でない内容であったりすれば、せっかく制作しても無駄になってしまう恐れがあります。コンテンツマーケティングの全体戦略を立てたうえで、ターゲット設定を綿密に行い、コンテンツを提供し続けることが大切です。
ここまでで、リッチコンテンツの理解を深めていただけたと思います。続いて、実践編としてリッチコンテンツの作成手順を見ていきましょう。
リッチコンテンツを効果的に作成するには、まずその目的や達成したい成果を明確にする必要があります。そのためには、自社が直面している課題と、ターゲットとする顧客層を具体的に定めなければいけません。
お客様が抱える課題やニーズを明確にすることで、リッチコンテンツの方向性が決まり、ユーザーにとって価値のあるコンテンツを設計できます。自社の集客は成功しているものの、製品ページからのコンバージョン率が極端に低い場合、顧客が購入を決断するために必要な情報が不足している可能性があります。
このケースでは、製品の価値や使い方を直感的に伝えられるリッチコンテンツ、具体的には製品の使用感を示す動画、競合商品との違いを可視化する比較ツール、または費用対効果を計算できる計算ツールなどが効果的です。
このように目的が明確になると、コンテンツの設計や形式、配信先を効果的に選択できるようになります。
リッチコンテンツを効果的に活用するためには、企画段階で目標に最適な形式や内容を慎重に検討することが不可欠です。このプロセスでは、リッチコンテンツの形式選定、顧客目線での設計、そして視覚化による具体化が重要な要素となります。
まず、コンテンツの形式を決める際には、目標やターゲットユーザーのニーズをもとに、適切な選択を行いましょう。選択する形式が目的に合致していることが、コンテンツの効果を最大化する鍵となります。
次に、顧客目線での企画が必要です。
ターゲット顧客が何を求めているのか、どのような課題を抱えているのかを徹底的に考え抜き、それらを解決するコンテンツを設計します。
たとえば、製品やサービスがどのようにユーザーの課題を解決し、生活や業務を改善するのかをストーリー仕立てで示すことで、ユーザーの関心を引きつけるとともに、感情に訴えるコンテンツが完成します。リッチコンテンツの強みである、ビジュアル要素や感情訴求力を活かした企画が、ユーザー体験の質を大きく向上させます。
最後に、企画の具体化と視覚化を行いましょう。ワイヤーフレームやスケッチを作成し、コンテンツ全体の構造やデザインの方向性を視覚的に整理することで、関係者間の認識の共有がスムーズになります。また、完成形をイメージしやすくなるため、制作段階での無駄を省き、効率的に進められます。
リッチコンテンツを成功させるためには、必要なリソースを事前に確認し、計画的に活用することが重要です。内部リソースと外部リソースを適切に組み合わせることで、効率的かつ高品質な制作が可能になります。
まず、自社で対応可能なスキルやツールを確認します。
動画編集やグラフィックデザイン、CMSの設定など、内部でまかなえる作業を明確にし、技術や人材の不足があれば外部リソースを検討しましょう。専門的な3Dグラフィックや高度な動画編集が必要な場合は、制作会社やフリーランスに依頼することで、完成度を高められます。
次に、制作スケジュールと予算を慎重に策定します。必要な作業工程と期間を見積もり、優先順位を明確にしてリソースを集中させます。制作費用を段階ごとに細分化し、コストパフォーマンスを最大化することで、限られた予算内でも効果的なコンテンツ制作を行えるでしょう。
事前にリソースを的確に把握し、内部と外部のバランスを取ることで、計画的でスムーズな制作が可能になります。この準備段階が、リッチコンテンツの品質と成果を大きく左右する重要な要素です。
リッチコンテンツ制作の要は、企画段階で練り上げたアイデアを的確に形にし、完成度を最大限に高めることです。各プロセスを段階的に進め、ユーザーに価値を届けるコンテンツを作り上げます。
まずはプロトタイプの作成から始めます。完成版の前に試作品を用意し、全体の流れや視覚的構成を確認することで、方向性が明確になり、関係者間の認識のズレを防げます。動画ならストーリーボードや短いクリップを、デザインならワイヤーフレームを活用し、初期の課題を洗い出しましょう。
次に、素材制作に移ります。高解像度の画像や動画、アニメーション、インフォグラフィックなど、コンテンツを構成する要素を丁寧に仕上げます。製品紹介であれば、実際の使用感を伝える映像や視覚的に優れたグラフィックが不可欠です。この段階では、ターゲットユーザーに響く品質と演出が求められます。視覚的な訴求力を強化しながら、コンテンツの目的に即したメッセージを伝えることが肝要です。
最後に、編集とフィードバックを繰り返しながら、コンテンツを洗練させます。全体の統一感を保ちつつ、細部まで徹底的に仕上げましょう。効果的なテキストや音声の配置、ビジュアルエフェクトの活用により、ユーザーの興味を引きつける要素を追加します。
リッチコンテンツ公開後は、効果測定と分析を丁寧に行い、コンテンツ効果の最大化に取り組みます。
パフォーマンス測定では、閲覧数、エンゲージメント率、コンバージョン率といったKPIを追跡し、コンテンツが目標を達成しているか数値で評価します。動画コンテンツであれば、視聴完了率やクリック率を確認することで、ユーザーの興味や行動への影響を把握できます。こうしたデータは、強みを活かし、課題を明確にするための重要な基盤です。
また、ユーザーからのフィードバックも有益な示唆をもたらします。コメントやアンケート、レビューなどを通じて、コンテンツへの直接的な意見を把握し、改善のヒントを得ましょう。「わかりやすかった」「もっと詳しい情報がほしい」などの具体的な声は特に有用です。加えて、SNSでの反応やシェア数も、ユーザーの共感度や拡散力を測る指標として活用できます。
これらの測定結果やフィードバックをもとに、継続的な改善を行いましょう。
リッチコンテンツの種類とその特徴を、事例と共に5つ紹介します。
(ALL STAR SAAS FANDのポッドキャストコンテンツ)
ポッドキャストを利用することで、見込み客が知りたい情報を音声形式でお届けし、「ながら聞き」による効率的な情報収集が可能になります。文章よりも発信者の人柄や思いを伝えるのに適しており、ユーザーとの感情的なつながりを構築できる点も音声コンテンツのメリットです。
事例としては、SaaS企業向けベンチャーキャピタルALL STAR SAAS FANDによるポッドキャストコンテンツが挙げられます。SaaSに精通したスピーカーが専門的な内容を語ることで、他社には真似できないオリジナルなコンテンツを生み出しています。
ポッドキャストで有益な音声コンテンツを継続して提供することで、信頼感の構築やブランドイメージの向上につながるでしょう。
(anybotで作成したアンケート:「ferret」の記事から引用)
画像付き予約・アンケートフォームは、写真やイラストを用いることで、ユーザーが選択や入力に迷わないようにサポートします。文字だけでは伝わりにくい情報を補足することで、ユーザーが快適に回答しやすくなるのです。
接客ツールの開発・販売を行っているエボラニ株式会社は、画像付き予約・アンケートフォームを導入できるツール「anybot(エニーボット)」を提供しています。このツールを利用することで、LINEなどで使える予約・アンケートフォームを簡単に作成できます。
ユーザーが使いやすいフォームを提供することで、予約数の増加やアンケートの回答率向上といった効果が見込めるでしょう。
(KANTARが制作したケーススタディ動画)
ケーススタディ動画は、自社が手掛けた事例を紹介するために利用する動画です。自社に発注した際のイメージを見込み客に持ってもらうことで、お問い合わせなどの行動につなげやすくなります。
市場調査やコンサルティングなどを行うKANTARグループは、サムスングループと協業したケーススタディをアニメーションのコンテンツとして制作・公開しました。複雑なコンセプトを、わかりやすくインパクトのあるアニメーションで、生き生きと表現しています。
すでにケーススタディを文章の記事として公開している企業であれば、あらためて動画でも作成し、YouTubeなどで公開する方法もあります。動画にすることで、より多くの見込み客にアプローチすることが可能です。
(「マンガで分かる!ニットーはこんな会社です」)
マンガは視覚的に目立ちやすく、気楽に読めるため、ユーザーに興味を持ってもらいやすいコンテンツです。また、複雑な事柄をわかりやすく整理したり、ストーリーを伝えたりするのにも適しています。
金型などの設計開発を行っている株式会社ニットーは、マンガコンテンツ「マンガで分かる!ニットーはこんな会社です」を自社サイトで公開しています。
BtoB企業やSaaS企業にとって、会社紹介のページをじっくりと読んでもらうのは、一般的に難しいといえるでしょう。しかし、ニットーではマンガコンテンツを取り入れることで、訪問者に興味を持ってもらう工夫をしているのです。
(トーガシの展示会ブースの3Dモデル)
3Dモデルを活用することで、まるでその場にいるかのような感覚をユーザーに味わってもらえます。見込み客に現地へ足を運んでもらうことが難しい場合に、活用すると効果的です。
展示会の運営サポートなどを行っている株式会社トーガシは、展示会の自社ブースを3Dモデルとして公開しています。Webサイト上で操作することで、ブースの中を移動したり興味のある展示を詳しく見たりできて、実際に展示会を訪れるのと似た体験が可能です。
多くのBtoB企業やSaaS企業にとって、展示会は見込み客と接する貴重な機会です。特に地理的な制約や忙しさから現地訪問が難しい場合でも、3Dモデルを活用すればオンライン上で効果的にアプローチできます。この技術は、見込み客へのリーチを広げるだけでなく、直接の来場を補完するツールとして有効です。
リッチコンテンツの活用は、ただ製品やサービスを紹介するだけでなく、ユーザーとのエンゲージメントを深める重要な手段です。特に、複雑な情報や専門性の高い商材を扱うBtoB企業やSaaS企業にとって、リッチコンテンツは製品価値を視覚的かつ直感的に伝えるツールとして効果的です。
リッチコンテンツは、デジタルマーケティングのあらゆる段階で力を発揮します。認知拡大からエンゲージメント向上、そして最終的なコンバージョンへとつなげる強力な手段として、積極的に取り入れていきましょう。