オペレーショナルエクセレンス(Operational Excellence)とは?ビジネス上の意味と使い方、事例を紹介

2025/03/02
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ビジネスの世界では、一時は成功してもてはやされた企業が消えていくことは珍しくありません。一方で、何十年も強者で居続ける企業も存在します。

一体違いは何でしょうか? ビジネスモデルでしょうか? 現実にはビジネスモデルにおいて優位性が強くないように見えて勝ち続ける企業もありますし、そもそもビジネスモデルなど、すぐ真似されてしまう時代です。

1995年に、米国のCSCインデックス社の経営コンサルタントMichael Treacy(以下、マイケル・トレーシー)氏、Fred Wiersema(以下、フレッド・ウィアセーマ)氏が、先進国の高実績の会社を調査した結果では、ほぼあらゆる市場において、リーダー企業が以下3つの価値基準を優先していると報告しています。

  • オペレーショナル・エクセレンス
  • 製品リーダーシップ
  • カスタマー・インティマシー

今回は、まずオペレーショナルエクセレンスの定義、複数のモデル、事例などを紹介します。オペレーショナルエクセレンスは、製造業において発展してきた概念ですが、現在はあらゆる業界で重視されています。Amazonも最近はバリューに「オペレーショナル・エクセレンス」を追加しています。SaaS業界の方にもきっと役立つでしょう。

オペレーショナルエクセレンスとは

オペレーショナルエクセレンスとは、企業活動の実行・運用レベル、たとえばサービスの品質、人材レベル、価格、対応スピードなどを、競合他社が真似できない卓越したレベルまで磨きあげ、競争優位を確立することを指します。

耳慣れないカタカナ用語ですが、意味はシンプルです。

  • オペレーショナル:運用、実行レベルのという意味 ※オペレーションの形容詞
  • エクセレンス:上等、優れている

オペレーショナルエクセレンスを有する企業の特徴は、現場の末端の社員までが事業活動の流れを理解しており、オペレーションを向上させる意識と改善できる役割をもち、継続的にオペレーションを改善している点です。

オペレーショナルエクセレンスを実現している企業の代表例としては、トヨタ、マクドナルド、スターバックスなどがよくあげられます。


オペレーショナルエクセレンスの構成要素

オペレーショナルエクセレンスの構成要素

考えと発展の背景

オペレーショナルエクセレンスという概念・定義は、1980年代に米国が日本企業の功勢に苦しんでいた時代、日本企業を研究する中で生まれました。

もっとも、戦後の日本に品質管理のノウハウを指導したのは米国なのですが、日本が急速に成長したため、米国は今度は日本を研究し優れたところを積極的に学びました。それが、オペレーショナルエクセレンスという概念で、日本に再輸入されたかたちです。

言葉の定義はさておき、オペレーションの改善は産業革命以降、多くの企業で研究されており、その延長線上にオペレーションエクセレンスは生まれています。

特に影響を与えたのが、ホーソン実験で有名なテイラーの科学的管理、フォードの組み立てラインの開発、トヨタ生産方式の開発、米国のジョセフ・M・ジュラン博士3部作(品質計画、品質管理、品質改善)といわれます。

オペレーショナルエクセレンスのモデルにはJuran Model(ジュランモデル)、Shingo Model(新郷モデル)などがありますが、これらは偉大な先人の名前に由来しています。

オペレーショナルエクセレンスがなぜ重要か

それでは、なぜオペレーショナルエクセレンスを追求するべきなのでしょうか。ここでは、その3つの理由を詳しく見ていきましょう。

オペレーショナルエクセレンスがなぜ重要か

競争優位性の確立

テクノロジーの発展により、技術や製品のコモディティ化が進む中、革新的な製品を市場に投入しても、すぐに模倣されるようになりました。その典型例がスマートフォンです。革新的な機能を投下しても、数カ月後には他社に模倣され、一般的な機能になってしまいます。

このような状況で、競争優位性を確立するには、他社が容易に真似できない内部オペレーション、つまり「品質」「コスト」「スピード」の3つの要素の最適化が有効です。

コストを抑え、迅速に市場へ高品質な製品やサービスを投入できれば、他社との差別化を図れます。それでいて、他社は内部状況を簡単に把握できないため、「なぜ伸びているのだろうか?」と悩むことになります。

技術や製品サービス、認知度で競争優位性を確立できないならば、まずはオペレーショナルエクセレンスの要素である品質、コスト、スピードで優位性を築くとよいでしょう。

顧客満足度の向上

オペレーショナルエクセレンスの効率的な業務運用により、高品質な製品やサービスを適切なタイミングで届けられれば、顧客の期待に応えられ、結果的に顧客満足度の向上へとつながります。

その好例がAmazonです。

倉庫の自動化、AIによる需要予測、最適化された配送ネットワークを駆使して、短納期配送を実現しています。プライム会員向けの当日配送や翌日配送は、単なるスピード競争ではなく、「注文してすぐに届く」という付加価値を創出し、ブランドロイヤルティの強化につながっています。

また、ミスを最小限に抑え、返品率を低くすることで、顧客の信頼を獲得し、効率よくリピーターを増やせているのです。

また、オペレーショナルエクセレンスはカスタマーサポートの強化にも寄与します。チャットボットやAIを活用した問い合わせ対応の自動化により、顧客は24時間365日、悩みを解決できます。迅速な対応はクレームの削減にもつながり、企業のブランド価値を高める要因となるでしょう。

持続的な成長の実現

市場環境が常に変化する中で、企業が持続的に成長し続けるためには、オペレーショナルエクセレンスを一時的な施策ではなく、企業文化として根付かせることが不可欠です。単なる業務改善にとどまらず、継続的に改善を推進する仕組みを構築することで、変化に柔軟に対応し、競争力を維持できます。

スターバックスの事例を見てみましょう。

2024年、同社は深刻な顧客離れに直面しました。しかし、オペレーショナル・エクセレンスの強化により、その影響を抑えることに成功。特に注力したのが、メニューの簡素化です。

顧客離れが進んだ要因のひとつに、サービスの提供スピードの遅さがありました。多様なメニューの存在が調理や提供の複雑さを増し、従業員の負担を高めていたのです。

そこで、スターバックスはメニューの整理を行い、オペレーションを効率化しました。その結果、従業員の業務負担が軽減され、顧客の待ち時間が短縮されることで、サービスの質が向上しました。

オペレーショナルエクセレンスの徹底は、企業の競争力を高めるだけでなく、市場の変化に適応する力を養うことにもつながります。変化が激しい時代において、こうした継続的な改善の積み重ねが、持続的な成長を実現する鍵となります。

オペレーショナルエクセレンス(Operational Excellence)はどのようなときに必要なのか

オペレーショナルエクセレンスは、市場環境の急速な変化、業務プロセスの非効率性、顧客満足度の低下や品質問題の発生時に必要となります。以下では、各ケースの詳細を詳しく解説します。

オペレーショナルエクセレンスはどのような時に必要なのか

市場環境の急速な変化への対応

AI、IoT、クラウドコンピューティングなどの技術革新により、既存のビジネスモデルや社会構造が破壊される「デジタル・ディスラプション」が進んでいます。

この急激な変化に適応できなければ、競争力を失うことになるでしょう。そこで重要になるのがオペレーショナルエクセレンスの実践です。

たとえば、新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの企業が業務プロセスの見直しを迫られました。オペレーショナルエクセレンスを既に実践していた企業は、標準化された業務プロセスと迅速な意思決定により、短期間でDXへの移行や新しい業務フローに適応し、被害を最小限に抑えることに成功したかもしれません。

KPMGのレポート「成長のための柔軟性(Flexibility for Growth)」によると、市場の変化に対応するためには、プロセスの自動化やデータ分析を活用し、迅速な意思決定を行うことが重要であるとされています。AIや自動化を導入することで、業務のボトルネックを可視化し、継続的な改善を行うことができます。

業務プロセスの非効率性の解消

企業の成長を妨げる大きな要因のひとつに、業務プロセスの非効率性があります。無駄な業務や重複する作業が発生すると、生産性が低下し、コストが増大します。その結果、市場競争力を失い、事業の拡大が難しくなってしまいます。

こうした課題を解決し、企業が持続的な成長を遂げるためには、オペレーショナルエクセレンスが有効です。業務の標準化と最適化を進めることで、コスト削減・品質向上・スピード改善を同時に達成できます。

IT業界やソフトウェア開発の分野では、アジャイル手法が広く活用されています。アジャイルとは、小さな単位で素早く開発を行い、顧客のフィードバックをもとに柔軟に改善を重ねる開発手法です。

従来のウォーターフォール型開発では、最初に仕様を決め、その後は順番に工程を進めるため、途中での変更が難しく、開発期間が長くなる傾向がありました。一方、アジャイル開発では、短期間で小さな機能を開発しながら、ユーザーの意見を反映して改善を繰り返すことで、スピーディかつ柔軟な開発が可能になります。

【アジャイル手法の特徴】

  • 短い開発サイクル(イテレーション):1〜2週間ごとに成果を出し、フィードバックを得る
  • 継続的なユーザーテスト:ユーザーの意見をもとに改善を重ねる
  • チームの自己管理:開発チームが自主的に計画・調整し、柔軟に対応する
  • 最小限の製品の提供:完璧な製品を作るのではなく、まずはシンプルな機能から提供する

Netflixは、アジャイル開発を活用し、新機能を素早くテストしながら、ユーザーニーズに適応しています。たとえば、新しいUIを複数のユーザーグループに試し、反応を見ながら改良を重ねることで、最適なユーザー体験を実現しています。

このように業務非効率性の解消を考えたら、オペレーショナルエクセレンスを実践するとよいでしょう。

顧客満足度の低下や品質問題の発生時

顧客満足度の低下や製品・サービスの品質問題は、ブランドの信頼を大きく損なう要因になります。SNSの普及により、品質問題や不満の声が瞬時に拡散される現代において、一度失った信頼を回復することは容易ではありません。

小さなトラブルでも大きな炎上につながりかねないため、企業はあらかじめリスクを最小限に抑えるための対策を講じる必要があります。

品質問題や顧客満足度の低下を防ぐためには、業務プロセスの継続的な改善が不可欠です。オペレーショナルエクセレンスを実践すれば、プロセスや業務のボトルネックの特定およびその仕組み化を構築し、安定的で高品質な製品やサービスの提供が可能になります。

後ほど詳しく見ていきますが、Amazonやトヨタ、マクドナルドなどの成功企業は仕組み化を賢く活用し、顧客の期待を超える体験を提供し続けています。

オペレーショナルエクセレンス(Operational Excellence)はどこが推進するべきなのか

オペレーショナルエクセレンスの実現には、組織全体での取り組みが不可欠です。経営層だけが大きな目標を掲げても、現場の協力がなければそれを達成できません。経営層と現場の双方がそれぞれの役割を果たすことが求められます。

以下ではそれぞれの立場で果たすべき役割について詳しく解説します。

経営層での役割

オペレーショナルエクセレンスを推進するにあたり、経営層は組織全体の方向性を決定し、従業員と共に変革を主導するリーダーとしての役割を担います。

特に重要なのは、オペレーショナルエクセレンスを単なる業務効率化の手段として捉えるのではなく、企業文化の一部として根付かせることです。トップダウンの指示だけでは、従業員の主体的な取り組みを引き出すことはできません。

経営層自らが現場の業務フローを理解し、社員の意見に耳を傾け、共に改善活動を推進することで、従業員のエンゲージメントを高め、組織全体の一体感を生み出せます。

また、オペレーショナルエクセレンスの成功には、従業員のウェルビーイング向上が重要です。業務プロセスの最適化により無駄な負担を削減すれば、従業員の心身の健康を維持しやすくなり、それが結果として生産性向上につながります。長時間労働の抑制や、業務の属人化を防ぐための標準化が進めば、従業員の働きやすさが向上し、業務改善の取り組みも加速するでしょう。

つまり、オペレーショナルエクセレンスの推進は、単に業務効率を高めるだけではなく、従業員の働きがいや組織の文化形成にも深く関わるものです。経営層がこの点を理解し、戦略的に取り組むことで、持続的な競争力を持つ組織へと成長できるのです。

現場での役割

オペレーショナルエクセレンスを実現するうえで、日々の業務プロセスを担う現場の従業員の関与は不可欠です。組織の方針としてオペレーショナルエクセレンスを推進するだけではなく、現場の一人ひとりが「どうすれば業務を改善できるか」を意識し、主体的に取り組むことが求められます。

この文化を根付かせるためには、経営層がビジョンを示すトップダウンのアプローチと、現場の従業員が自発的に改善に取り組むボトムアップのアプローチの両立が重要です。経営層が方向性を示し、オペレーショナルエクセレンスの重要性を伝えることで、従業員の意識を高める土壌ができます。一方で、改善活動そのものは現場の従業員が主導する形で進める必要があります。

現場での具体的な役割としては、各従業員が「このプロセスはもっと効率的にできるのではないか」「この作業に無駄はないか」といった視点を持つことが重要です。

特に、改善活動を軌道に乗せるためには、まずは小さなボトルネックから取り組むことが効果的です。スモールサクセスを積み重ねることで、現場のモチベーションが向上し、結果として大規模な改善にもつながります。反対に、最初から大きな課題に取り組むと、どこから手をつけるべきか分からず、途中で挫折してしまうリスクが高まります。

また、現場の従業員が自発的に業務プロセスの問題点を特定し、解決策を提案できる環境を整えることも欠かせません。トップダウンの指示ではなく、現場の知見を活かしたボトムアップの改善提案が活発に行われることで、オペレーショナルエクセレンスが継続的に進化し、組織全体の競争力向上につながるのです。

オペレーショナルエクセレンス(Operational Excellence)を代表するモデル

オペレーショナルエクセレンスを実現する方法には、複数のモデルがあります。ここでは4つのモデルを紹介します。

The Juran Model

The Juran Model (ジュランモデル)は、米国のジョセフ・M・ジュラン博士が提唱したジュラン3部作(品質計画、品質管理、品質改善)にもとづいているモデルです。

ちなみにジュラン氏は、品質管理の伝道者として世界的に有名で、戦後の日本企業の品質管理を指導した人物でもあります。日本ではどちらかというとTQCの第一人者として知られていますが、その活躍領域は幅広く、私たちがよく使うパレートの法則(80:20の法則)の命名者でもあります。

ジュラン氏の大きな功績のひとつは、品質管理に人間的な側面を追加したことです。ジュランモデルの中核的な構成要素は以下の5つです。

  • 卓越性の基礎となるジュランの指導原則を把握する
  • 品質を製品の属性ではなく、優れた顧客体験と考える企業文化を作る
  • リーダシップと従業員をどのように関与させるかを理解する
  • 適切なツールと方法を活用し、効果的・効率的なインフラを構築する
  • ビジネスプロセスの有効性と敏捷性を推進する

The Juran Model

(参考・画像出典:https://www.juran.com/

The Shingo Model

The Shingo Model(新郷モデル)とは、日本能率協会のコンサルタント新郷重夫氏が、1950年代にトヨタ自動車の大野耐一氏の依頼で、生産システムの効率化に取り組んだ結果生まれたモデルです。

新郷氏は、それまでに1時間かかっていた金型の段取り替えについて、機械を止めて行う「内段取り」と稼働中・稼働後に行う「外段取り」にわかれていた工程を徹底的に外段取りに集約することで、ワンタッチで行える「シングル段取り」を開発。3分間でできるように改善し、トヨタ生産方式(別名リーン生産方式)の誕生に多大な貢献をしました。

新郷氏はその後も国内外の企業をコンサルティングしましたが、海外での評価が非常に高く、The Shingo Modelは米国のユタ州立大学のジョンM.ハンツマンビジネススクールのプログラムにもなっています。

同大学が創設した新郷賞(Shingo Prize)は製造業のノーベル賞といわれるほど権威があります。新郷モデルは10の指針とそれを分類する4つの次元があります。
■10の指針

  • すべての個人を尊重する
  • 謙虚にリードする
  • 完璧を求める
  • 科学的思考を受け入れる
  • プロセスに焦点をあてる
  • 源流で品質を保証する -(エラーが発生したらその時点で検出し修正)
  • フローとプルバリューを改善する
  • 体系的に考える
  • 目的の一貫性(全員が組織の目標とミッション・ステートメントを理解)
  • 顧客のための価値創造

■4つの次元

  • システム
  • 原則
  • 結果
  • ツール

The Shing Modelは、以下のようなダイヤモンド形で関係性が表現されます。

(出典:YouTube

OKAPI Method

OKAPI Method(OKAPIメソッド)とは、人工知能SaaSプラットフォーム(組織マネジメントを改善プラットフォーム)を提供するOkapi社の、Iris suruTsidon氏とMaya Gal氏によって開発されました。

両氏が書いた電子書籍「Six Steps to Operational Excellence 」によると、組織におけるマネジャーの成否は、戦略よりも選択した戦略を実際に実行できるかどうかにかかっているとのこと。

OKAPIメソッドは、生産性を向上させつつコストを下げ卓越した成果を出す手助けをします。OKAPI方式を使用する企業は、売上総利益が平均100万ドル増加すると述べています。

OKAPIメソッドの構成要素は「SMART KPI」と「課題のリスト」の2つです。■課題のリスト

  • 断絶:会社の目標と従業員の目標が一致しておらず社員は無関心
  • 進歩の欠如:不適切な管理、一貫性のない戦略、士気の低下などにより進歩しない
  • 変化できない:刻々と変化するビジネス環境に適応できていない
  • データが複雑:社内にバラバラのデータを抱えており統合した結論が出せない
  • 一貫した経営計画がない

■SMART KPI

S - 具体的:可能な限り正確で具体的に従業員が成功が何であるかわかるKPI

M - 測定可能:測定可能であること

A - 達成可能:KPIはチャレンジングでありながら、達成可能

R - 関連性:最終目標との関連性が高いKPI

T - タイムリー:目標や目的を達成するための期限を設定

SMART KPI

(出典:Amazon

Flawless execution Method

Flawless execution Methodは、戦闘機のパイロットが、戦闘において優れたオペレーションを実現するために開発された手法で、1998年にビジネス領域にも活用されるようになりました。FLEX、PBED手法(Plan, brief, execute, and debriefの言い)とも呼ばれます。

Flawless execution Method

FLEX手法は、オペレーショナルエクセレンスを達成するための実行計画を、現実の変化にあわせて常に変化させる手法です。そのためグループや個人の結果を評価することに重点を置いており、序列をなくすことで組織内の文化を変化させます。

以下のステップで構成されています。

1.計画 - 長期的な戦略を定義し、目標を特定。以下のステップがある。

  • 明確なチーム目標を設定
  • 目標達成のための脅威とリスクの特定
  • 脅威を軽減するためのリソースを特定
  • 教訓の適用
  • 目的を個々のタスクに分解
  • コンティンジェンシー・プラン

2.ブリーフィング - 実行チームにブリーフィングを行い計画の詳細を伝える。

3.実行 - 計画を目的志向で実行

4.デブリーフィング - デブリー実行と計画の結果を分析し、測定し、必要であれば調整

(参考:Sweetprocess.com/iteratorshq.com/

オペレーショナルエクセレンス(Operational Excellence)の使い方

オペレーショナルエクセレンスを効果的に活用するには、目標とビジョンの明確化、プロセスの標準化と最適化、従業員の巻き込みと教育、そしてモニタリングと継続的改善という4つのステップが重要です。それぞれのステップについて詳しく解説します。

オペレーショナルエクセレンスはどのような時に必要なのか

目標とビジョンの明確化

ビジョンや目標を経営戦略に組み込み、従業員が日々の業務の中でどのようにオペレーショナルエクセレンスを実践すべきかを具体化することが重要です。

そのための方法として、まず具体的な指標(KPI)を設定し、進捗を可視化しましょう。たとえば、生産性向上率やコスト削減率、顧客満足度といった数値を用いて、定期的に評価を行い、改善の成果を確認していくことが求められます。

さらに、現場でのビジュアル管理の徹底も有効な手段のひとつです。

バイオテクノロジー、ライフサイエンス、診断の3分野でリーダー的存在であるダナハー社は、すべての製造現場に「安全、品質、配達、コスト、在庫」を示す共通基準のビジュアルボードを設置しています。これにより、従業員がリアルタイムで状況を把握しやすくなり、迅速な改善が可能な環境が整えられています。

このように、目標やビジョンを具体的な指標や可視化された情報と結びつけることで、オペレーショナルエクセレンスの実践がスムーズに進み、組織全体のパフォーマンス向上につながります。

プロセスの標準化と最適化

オペレーショナルエクセレンスを実践するためには、業務プロセスの標準化と最適化が欠かせません。まずは現在の業務プロセスを可視化し、どこに非効率なポイントがあるのかを明確にしましょう。その上で、業務のばらつきをなくし、安定した品質を確保するために標準化を進めます。

標準化の具体的な手段として、標準作業手順書(SOP:Standard Operating Procedure)の作成・更新を行い、全従業員が同じ基準で業務を遂行できるようにします。作業の属人化を防ぎ、品質の一貫性を確保することが可能です。

しかし、標準化するだけでは十分ではありません。

業務の効率をさらに向上させるためには、継続的な最適化が必要です。Lean手法を活用して無駄を削減し、Six Sigmaを導入して品質管理を強化すれば、より洗練された業務プロセスの構築を行えるでしょう。また、Kaizenの考え方を取り入れ、現場の従業員が主体的に改善に取り組める環境を整えることも有効です。

従業員の巻き込みと教育

オペレーショナルエクセレンスを実現するうえで、従業員の巻き込みと教育は欠かせません。

従業員一人ひとりが「この業務をどのように改善できるか」と主体的に考え、行動できる環境を整えることが重要です。従業員の協力を得るためには、業務改善の取り組みを一部の専門家やリーダーだけに任せるのではなく、組織全体で取り組める体制を作ることが効果的です。

オリンパスでは「方法論や技術の民主化」を推進しました。これは、業務改善に必要なフレームワークやデータ分析の手法を社内で共有し、従業員が自由に改善アイデアを提案できるプラットフォームを整備することで、誰もが主体的に業務改善に関われる仕組みを作る取り組みです。

また、各部署で定期的に業務改善ワークショップを開催し、実践的な学びの場を提供することで、従業員のスキル向上を促しています。

さらに、従業員が継続的に業務改善に取り組むためには、改善活動が正しく評価される企業文化を築くことが大切です。成功事例を社内報やミーティングで共有することで、他の従業員にも改善活動の意義を伝える。改善活動への参加度を評価制度に組み込み、従業員のモチベーションを高め、より積極的な取り組みを促すといった具合です。

このように、教育を通じて従業員を業務改善に巻き込み、継続的な改善文化を育むことで、オペレーショナルエクセレンスの実現がより確実なものとなるのです。

モニタリングと継続的改善

オペレーショナルエクセレンスは、一度達成すれば終わるものではなく、常に進化し続けることが求められます。先にご紹介した通り、スターバックスも顧客ニーズや経済状況などに合わせて、オペレーショナルエクセレンスの最適化に取り組んでいます。

そのためには、PDCAサイクルを継続的に回し、課題を特定しながら適切な対策を講じましょう。特に、評価(Check)と改善(Act)のフェーズを重視し、具体的なデータをもとに効果検証を行うことで、より実効性の高い改善活動を推進できます。

また、BIツールやデータ分析を活用してリアルタイムで業務パフォーマンスをモニタリングすれば、迅速な意思決定が可能です。たとえば、業務プロセスの進捗状況を可視化し、異常値や遅延が発生した場合に即座にアラートを発する仕組みを導入することで、トラブルを未然に防げます。

データに基づいた改善施策を講じることで、より効率的な業務運営が実現できるでしょう。

さらに、継続的な改善文化を醸成するには、小規模な成功事例の全社展開が効果的です。ある部門で導入したプロセス改善の取り組みが成功した場合、それを単に他の部門に適用するのではなく、成功要因を分析し、各部門の特性に合わせてカスタマイズした上で導入しましょう。

また、社内のナレッジ共有の仕組みを整備し、成功事例をデータベース化することで、組織全体の学習効果を高められます。

オペレーショナルエクセレンス(Operational Excellence)の事例

ここからは、実際にオペレーショナルエクセレンスを導入し、大きな成果を上げた企業の事例をご紹介します。各社がどのように業務プロセスを最適化し、継続的な改善を実践しているのかを見ていきましょう。

事例1:Amazon

Amazonのオペレーションの凄さは、誰もが知っていることだと思います。たとえば、サイト上においては機械学習を活用したレコメンド機能、工場におけるロボット活用、配送への小型ヘリコプター導入など、先端テクノロジーへの投資により、徹底した合理的なオペレーションの仕組みが構築されていることは有名です。

さらにバックオフィス部門においても、PowerPointの禁止、新規の企画はプレスリリースを書くことから始めるルール、会議の4種類分けなど、徹底してムダを省き、その分人間が創造性、企画力を発揮できる時間を持つことを優先する仕組みができています。

仕組みだけでなく、アマゾニアンという呼び方があるように、会社のあらゆる層の社員が、成果を上げるために何を優先して日々仕事をするべきかを理解しているからこそ、Amazonは成長し続けているのでしょう。

事例2:トヨタ自動車

トヨタ自動車は、看板方式、ジャストインシステム、カイゼンなどの言葉とともに、日本の製造業の卓越性を世界的に知らしめた企業です。


現在、トヨタ生産システム(リーン生産方式)は世界の多くの企業に導入されています。トヨタ生産方式はハーバード大学のテキストにも取り上げられていますが、そこで教授陣から「トヨタ生産方式を表面だけまねしてもトヨタにはなれない」と教えられており、まさしく絵にかいたようなオペレーショナルエクセレンス実現企業です。

トヨタは地道な改善だけで、オペレーションの改革をなしとげてきたわけではありません。トヨタ生産方式が生まれるきっかけも、当初2~3時間かかっていた工程を1時間に短縮し、それでもあきたらず3分にするという無謀な目標を掲げて、根本的な発想を変えてオペレーションを革新してきた結果です。

トヨタでは、末端の社員であっても生産ラインに異常があると判断すればアンドンのひもを引っ張ってラインを止めることができます。「アンドン」はトヨタ生産方式のツールのひとつですが、この仕組みが成功するのも、組織の末端までトヨタウエイが浸透しているからです。

つまり、JURANモデルやShigoモデルの指針にある、従業員の尊重、従業員の巻き込み、大きな裁量権を与えられるほどの共通認識、信頼関係ができているからであり、ここが多くの企業にそう真似できない部分だといえるでしょう。

事例3:テスラ

日本の自動車産業は100年に1度の危機にあると言われます。IoT化、電気自動車の普及により、業界構造そのものが変化するからです。

これまでフォードがオペレーションに革新をもたらし、トヨタがオペレーショナルエクセレンスを実現したように、今は、イーロンマスク氏率いるテスラが革新的で破壊的な組織システムを発明し、第4次産業時代の世界的な基準になりえるモデルを作ったといわれます。

  • 脱炭素というミッションへの本気さ(工場は、再生可能エネルギーで稼働)
  • Webサイトから注文する受注生産型、広告を打たない
  • 工場には作業員の手作業を補完する超人的なロボットが装備
  • 毎年数十万台の自動車、数百万のバッテリー、数十億のリチウムイオンセルを生産
  • 無料ランチ、配偶者および子供のための医療保険、住宅賃貸リソース

など、明確なビジョンのもと世界の3大陸にある工場、7万人の従業員にミッションを浸透させ、デジタルとリアルを融合させたテスラ独自のオペレーショナルエクセレンスを実現しています。

事例4:パナソニック

パナソニックは、日本の大手電機メーカーであり、グローバル市場においても高い競争力を維持しています。その強さを支えているのが、現場主導の改善活動と、それを支援する「伝承師」制度です。

伝承師は、社長直轄のオペレーショナルエクセレンス専門チームとして、国内外の生産拠点を巡回し、現場のカイゼン活動を直接支援します。単なる指導にとどまらず、従業員とともに業務プロセスの見直しや最適化を進めることで、短期間で大きな成果を生み出しています。

ノートパソコン「レッツノート」を製造する神戸工場では、伝承師の指導のもと、生産ラインのボトルネックを特定し、シール貼り付け作業の効率化を実施。その結果、わずか1年で生産性が1.6倍以上に向上しました。

現場では、従業員が日々の業務で感じた課題をリーダーに伝え、リーダーがホワイトボードに記録。現場レベルで解決可能なものは即時対応し、より高度な課題は伝承師にエスカレーションする仕組みを導入しています。

このような取り組みの背景には、パナソニックHDの楠見雄規社長の強い課題意識があります。楠見氏は、従来の「決められた仕事を真面目にやる」姿勢から、「常に改善を追求する」文化への転換の必要性を感じていました。

特に、車載事業部門のトップとしてトヨタと関わる中で、トヨタがカイゼンを経営の根幹に据えていることを実感し、自社にもその考え方を取り入れるべきだと確信したのです。この経験をもとに、伝承師制度の強化や全社的なカイゼン推進に取り組んでいます。

事例5:マクドナルド

マクドナルドのオペレーショナル・エクセレンスの根幹は、「シンプルで効率的なオペレーション」にあります。創業当初からメニューを厳選し、調理プロセスを極限まで効率化することで、高速かつ一貫したサービスを実現してきました。

また、マクドナルドは世界各国でローカライズしたメニューを提供しながらも、同じ国・地域内では味の統一を図るため、厳格な品質管理を徹底しています。これは、標準化された調理手順と品質基準を守ることで実現されています。さらに、店舗デザインや接客サービスにも統一性を持たせ、どの店舗でも同じ体験ができるよう工夫をしているのです。

マクドナルドの強みのひとつは、徹底した業務マニュアルとトレーニングシステムにあります。新人から店長に至るまで、細かく設計された教育プログラムを提供することで、どの店舗でも均一なサービスを実現できるのです。また、効率的な在庫管理とサプライチェーンの最適化により、食材の安定供給とコスト削減を両立させています。

まとめ

オペレーショナルエクセレンスとは、トヨタ、スターバックス、Amazonに代表されるように、ほかの企業がビジネスモデルや仕組みを理解して真似しようと思っても、簡単に真似できないレベルまでオペレーションが磨き上げられていることを指します。

SaaS業界だと「The model」に成功したSalesforceが、オペレ―ショナルエクセレンス実現企業といわれます。

オペレーショナルエクセレンスは、Juran model、Shingo model、Flawless execution Methodの指針を見る限り、従業員が自らの裁量で判断できる仕組み、その前提に従業員にビジョンが浸透していることが大きく影響します。
比較的シンプルでコモディティ化しやすいSaaSビジネスモデルにおいては、セールス、カスタマーサポート、カスタマーサクセス部門のスタッフの、事業の流れの理解、モチベーションなどが実は差別化要因であり、企業の成長に大きく影響すると考えられます。

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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