インターネットの発達とともに、ネット上で行われるマーケティング活動「オンラインマーケティング」も発展してきました。
感染症の流行でオフライン活動が制限され、BtoB企業やSaaS企業がオンラインマーケティングに取り組む必要性が急速に高まっています。実際に、オンラインでのリード獲得に力を入れたいと考える企業は7割を超える一方、オフラインでのマーケティング活動は投資を抑制するという企業が増えている状況です。
本記事では、BtoB企業やSaaS企業のマーケティング担当者に向けて、オンラインマーケティングの手法や実行事例を詳しく解説します。
オンラインマーケティングの選択肢を把握し、自社の方針を決める参考になるでしょう。ぜひ最後までお読みください。
オンラインマーケティングとは、インターネット上で行われるマーケティング活動のことであり、「Webマーケティング」とも呼ばれます。具体的な施策の例は以下の通りです。
(オンラインマーケティング図解)
オンラインマーケティングと似た言葉に「デジタルマーケティング」があります。こちらはデジタルテクノロジーを利用して行われるマーケティング全般のことを指し、オンラインマーケティングよりも大きな概念です。
オンラインマーケティングは、インターネットの普及に伴い1990年代から発展し始めました。最初に広まったオンラインマーケティングの手法は、バナー広告でした。
<オンラインマーケティング年表>
■ 1994年
アメリカの大手電話会社AT&T社が、オンライン雑誌「HotWired.com」に世界初のバナー広告を掲載
■ 1996年
Yahoo!が誕生。バナー広告の取り扱いを開始
Amazonが「アソシエイトプログラム」(世界初のアフィリエイトプログラム)を開始
■ 1998年
Googleが誕生。Google、Yahoo!をはじめとする検索エンジンが普及するとともに、SEO(検索エンジン最適化)が重要視されるようになる。
■ 2000年
Googleがリスティング広告のサービスを開始。
■ 2000年〜2005年ごろ
ブログが普及。アフィリエイト広告の利用者が急増。
■ 2007年〜2008年
TwitterとFacebookが誕生。SNSを利用したオンラインマーケティングが盛んになる。
現在は、感染症の影響でオフラインでの営業活動やイベントが制限されたことにより、ますますオンラインでのマーケティング活動の必要性が高まっています。
(新型コロナウイルス感染拡大に伴う自社のマーケティング施策の変化)
2020年に行われた株式会社ベーシックの調査によると、「オンラインからのリード獲得」を強化したいと考えている企業は7割を超えました。
また、自社のマーケティング施策を変更した、もしくは変更を検討しているBtoB企業の割合は7割近くに達しています。
(実施しているマーケティング施策)
BtoBでは、ここ数年でオンラインマーケティングに注力する企業が急増しました。
2019年に行われた株式会社メディックスの調査を紹介します。上図によれば、BtoB企業が実施しているマーケティング施策の中で、比率が高い傾向があるのは以下の2つです。
(年間マーケティング予算のうち、Webマーケティング予算が占める割合)
また上図を見ると、年間マーケティング予算のうち、Webマーケティング予算が占める割合は「25%未満」の企業がもっとも多いことがわかります。企業の売上規模によらず、この傾向は同様です。
こうした結果を見ると、オンラインマーケティングにはあまり予算が割り当てられていない、と感じられるかもしれません。ですが、この調査結果は2019年時点のものであり、現在では状況が変化しています。
(投資抑制の取り組み)
上図はアジャイルメディア・ネットワーク株式会社が2020年に実施した「コロナウイルスの感染下におけるマーケティング活動調査」からの引用です。感染症の拡大を受けて、オフラインの施策である「イベント/ポップアップストア」への投資を縮小すると回答した企業の割合が、7割を超えたことがわかります。
(投資拡大の取り組み)
また同調査では、オンラインマーケティングへの投資は拡大傾向にあり、取り組む企業がもっとも多い施策は「SNS活用/SNS広告」であることも判明しました。近年では、オンラインマーケティングに注力する流れが強まっているといえます。
オンラインマーケティングの手法は数多くあります。これから取り組むBtoB企業やSaaS企業であれば、自社の課題を洗い出したうえで、最適な手法を探ることから始めなければなりません。
オンラインマーケティングの手法は、大きく分けて以下の3種類があります。
これらの種類ごとに、オンラインマーケティングの主要な手法を紹介します。
オンラインマーケティングを強化するにあたり、まず取り組むべきなのは、自社ドメイン配下での施策です。
自社ドメイン配下であれば手をつけやすく、コントロールが容易というメリットがあります。具体的な手法は以下の4つです。
「すでに自社サイトは持っている」という企業は多いでしょう。新規の施策に取り組む前に、まずは自社サイトの改善から始めるのがおすすめです。/p>
このような成果を得るために、以下のポイントをチェックしながら自社サイトを改善しましょう。
(「ferret One」導入によるウェブサイト改善の事例)
株式会社ベーシックが提供するマーケティング支援サービス「ferret One」を導入した、株式会社リンクアンドモチベーションの事例を紹介します。
この事例ではWebサイトの改善により、導入前に比べてオーガニック検索数が4倍、CVRが約6倍という大きな成果を得ました。サイトの改善だけでも、大きな売上げアップにつながる可能性があるのです。
オンラインマーケティングと聞くと、Web広告やSNSなど外部ドメインの施策をイメージする方が多い傾向があります。ですが、オンラインマーケティングに慣れていないBtoB企業やSaaS企業であれば、まずは自社サイトに注目するのがよいでしょう。
自社サイトやブログを強化し、マーケティングチャネルとして活用するには、SEOが欠かせません。
SEOとは、Search Engine Optimizationの略称で、日本語では「検索エンジン最適化」と呼ばれます。自社サイトやブログのコンテンツが、検索エンジンで検索結果の上位に表示されるように取り組む施策です。
SEOを効果的に行うには、キーワード選定の精度を高めることが重要です。
これらのステップを経て、SEOに有効なキーワードを選定し、コンテンツを強化しましょう。
(「SEARCH WRITE」による検索順位チェック)
株式会社PLAN-Bが提供するSEOツール「SEARCH WRITE」と、SEOコンサルティングを導入した株式会社Laboro.AIの事例を紹介します。
Laboro.AIはリードジェネレーションのため、「SEARCH WRITE」を活用しつつSEOを強化。セッション数を2倍に増やすという目標を達成しました。
SEOには専門的な知見が必要となります。ノウハウを持たないBtoB企業やSaaS企業であれば、専用のツールやコンサルティングを活用するのがおすすめです。
フォームマーケティングとは、他社サイトのお問い合わせフォームから自社の製品サービスの案内を送り、商談を獲得する手法です。アウトバウンド型の営業手法に分類されます。
連絡先を知らない見込み客にも直接営業ができる点が、フォームマーケティングのメリットです。
また、お問い合わせフォームから送信した案内は、意思決定者や現場担当者が受け取る可能性が高いという特徴があります。
(フォームマーケティングの文面例)
案内に興味を持ってもらうために、製品サービスの特徴やメリットが端的に伝わる文面を作り込みましょう。
しかし、以下のような企業へフォームマーケティングを行ってしまうと、クレームに発展する可能性があるので注意が必要です。
Eメールマーケティングでは、保有するリードに対してさまざまな種類のメールを送信します。
メールの種類の例を挙げると、以下の通りです。
(ferret Oneのメルマガ例)
マーケティング支援ツール「ferret One」を提供する株式会社ベーシックでは、リードジェネレーションやリードナーチャリングのため、定期的にメルマガを配信しています。
上図のように画像やダウンロードボタンを駆使して、見やすくわかりやすいメルマガを作成しているのが特徴です。メールを作成する際には、目を引く件名を付けて開封率を高めつつ、ユーザーに興味を持って読み進めてもらうことを目指しましょう。
Eメールマーケティングは、多くの人がすでになじみのある「メール」を利用した手法です。そのため、オンラインマーケティングに慣れていないBtoB企業やSaaS企業にもおすすめです。
自社ドメイン外での施策は不確定要素が多く、コントロールが難しい面があります。成功すれば大きな成果を得られますが、上級者向けの手法です。
自社ドメイン外でのオンラインマーケティングについて、以下の5つの手法を解説します。
ソーシャルメディアマーケティングは、SNSを利用して行うマーケティングです。
これらのプラットフォームでアカウントを作成し、ユーザーに役立つ情報を継続的に発信します。
利用者が多いSNSで発信することで、自社の認知を広められる可能性があります。無料で利用を始められる点も、SNSの大きなメリットです。
気軽に楽しめるコンテンツや役立つ情報を発信しつつ、ユーザーと交流することで、自社への信頼感を深めてもらえるでしょう。
(デンソーのInstagram投稿)
自動車部品メーカーのデンソーは、Instagramを活用しています。自社製品の情報だけでなく、SDGsの取り組みについても発信し、注目を集めています。
上図のサステナブル・シーフード>についての投稿は378件もの「いいね」を獲得しました。社会貢献や環境問題への取り組みをアピールすることで、企業のブランディングに役立てているのです。>
BtoB企業やSaaS企業の発信では、製品サービスの宣伝ばかりになってしまうと、ユーザーに関心を持ってもらいにくい傾向があります。投稿者の人柄を見せるなどして、親近感を感じてもらえる工夫をするとよいでしょう。
SEM(Serch Engine Marketing)とは、検索エンジン上で行うマーケティング施策のことで、自社サイトへの流入数を増やす目的で行われます。
(SEMの種類)
SEMの施策には、SEOとリスティング広告の2種類があります。このうち自社ドメイン外で行う施策にあたるのが、リスティング広告です。
(Googleのリスティング広告の例)
リスティング広告とは、GoogleやYahoo!などでユーザーが検索した際に、結果画面上部に表示されるテキスト広告のことです。検索を行うユーザーはニーズが顕在化しているため、成約につながりやすい傾向があります。
また、リスティング広告は出稿したその日に広告を表示させることも可能なので、短期間でアクセス数を増やしたい場合におすすめです。
ただし、リスティング広告は費用が高額になりやすいというデメリットがあります。利用する際には、広告費に見合った成果が得られるのかを、十分に検証しましょう。
バズマーケティングとは、SNS上で投稿が爆発的に拡散される「バズ」を引き起こし、自社の認知拡大を目指す手法です。
動画や画像を使ったユニークなコンテンツを投稿したり、ハッシュタグを使ってユーザーに投稿を呼びかけたりすることで、バズを生み出すことを狙えます。
(コベルコ建機のTwitter)
建設機械メーカーのコベルコ建機は、Twitterで小規模なバズを起こすことに成功しました。こちらの動画の投稿で、30件以上のリツイートを獲得したのです。
添付された動画の再生回数も2,000回を超えており、企業の認知度向上に効果があったと推測できます。大きなショベルカーが小さなコンテナに収納される様子がおもしろかったことが、バズが生まれた要因だといえるでしょう。
この投稿は、BtoB企業やSaaS企業であっても、投稿の内容しだいでバズマーケティングを行えるという好例です。SNSを運用するのであれば、ユーザーに関心を持ってもらえそうな題材はないか、常に探す意識を持っておきましょう。
リファラルマーケティングは、顧客に別のユーザーを紹介してもらうマーケティング手法です。
知人からの紹介であるため、見込み客に信頼感を持ってもらいやすく、成約につながりやすい手法だといえます。
また、紹介されたユーザーが顧客となり、さらに別のユーザーを紹介するという流れを作れれば、一気に顧客数を増やすことも可能です。
(Dropbox公式ウェブサイト)
リファラルマーケティングの典型的な成功事例が、世界的に有名なストレージサービスであるDropboxです。Dropboxは2008年のローンチから2016年までの8年間で、世界中で約5億人ものユーザーを獲得しました。
その原動力となったのが、「友人を紹介すれば、紹介者と紹介された人の両方に500MBの追加容量をプレゼントする」という仕組みです。実際、新規ユーザーの44%は他のユーザーからの紹介によるものでした。
特にSaaS企業にとって、Dropboxの事例は参考になるでしょう。リファラルマーケティングはあまり費用をかけなくても行える場合があるので、活用できないか検討してみることをおすすめします。
アフィリエイトマーケティングとは、自社の製品サービスを他社のメディアで宣伝してもらい、成果に応じて対価を支払う手法です。
販売数を増やすことはもちろん、リードジェネレーションにも役立てられます。発生した成果に対して費用が生じるので、確実な費用対効果を見込める点もメリットです。
アフィリエイトマーケティングはこれまでBtoCが主流でしたが、近年ではBtoBでの活用も増えています。
(クラウドメンバーズ公式サイト)
クラウドメンバーズは、BtoBの製品サービスに特化したアフィリエイトプラットフォームです。
よくあるアフィリエイトプログラムとは異なり、アフィリエイターの教育を徹底しています。
これらの取り組みを通じてアフィリエイターの質を担保し、BtoBビジネスで利用しやすい環境を整えているのです。
クラウドメンバーズのようなプラットフォームを使えば、BtoB企業やSaaS企業でも、アフィリエイトを活用できます。「かけた費用のぶんだけ確実に成果につなげたい」と考えている場合は、アフィリエイトマーケティングが有力な選択肢です。
オンラインマーケティングそのものではないものの、連動して使える手法があります。
オンラインマーケティングと関係のある以下の3つの手法について、具体例を交えて解説します。
フィールドマーケティングとは、営業担当が店舗を訪れて状況をヒアリングし、販売戦略などを提案する手法です。
訪問によって集めた名刺のデータを管理ツールに集約しておき、以下のシステムと連携させることで、オンラインマーケティングに活用できます。
(SansanとSATORIを活用したEメールマーケティング)
参考になるのが、名刺管理サービス「Sansan」とマーケティングオートメーションツール「SATORI」の活用事例です。
この事例では、収集した名刺データをSansanで管理し、ステップメールのシナリオをSATORIで設定しました。オフラインで集めた名刺の情報を、オンラインでのメール配信に役立てているのです。
見込み客を訪問する機会が多いBtoB企業やSaaS企業であれば、フィールドマーケティングを取り入れることで、大きな成果につながる可能性があります。
データベースマーケティングは、顧客に関するあらゆる情報をデータベースに集積・分析して活用する手法です。
具体的には、以下のようなデータを利用します。
この手法のメリットは、顧客の課題やニーズに合った提案ができる点です。以下のような効果が期待でき、効率良くマーケティング活動を行えます。
(HubSpotの画面)
サーバー運用のアウトソーシングサービスを提供する富士通クラウドテクノロジーズ株式会社は、マーケティング活動でHubSpotを利用しています。
上図のようにHubSpotで顧客に関する情報を管理し、行動履歴をタイムラインで可視化。これにより、アプリ開発者が抱える課題やニーズを発見できるようになりました。
マーケティング施策を考えるうえで、ユーザーの情報には大きな価値があります。情報を収集して分析する意識を、常に持っておきましょう。
共同マーケティングは、複数の企業が共同でマーケティングに取り組む手法です。「共生マーケティング」や「共創マーケティング」とも呼ばれます。
これらを共有して施策の効果を高めることが、複数の企業が協力する目的です。
(AWS 共同マーケティングツール)
SaaS企業における共同マーケティングの事例として挙げられるのが、AWSの共同マーケティングプログラムです。
このプログラムに参加すると、AWS上で提供している自社サービスに「powered by aws」のロゴを使用できます。
ロゴの使用により、製品サービスの信頼性が高まると期待できることが、参加企業のメリットです。一方AWSは、ブランドの認知度の向上が見込めるため、双方にとって利益があります。
共同マーケティングの経験がない企業は、まずは他社が主導する施策に参加して、やり方や効果を体験してみるとよいでしょう。
オンラインマーケティングを実施する際には、まずは自社ドメイン配下での手法に取り組むことをおすすめします。具体的には以下の4つです。
これらを行ったうえで、さらにリソースに余裕がある場合は、自社ドメイン外での手法にも取り組むとよいでしょう。
オンラインマーケティングの施策は、オフラインでの活動と一体で考えるべきです。顧客の情報を収集・分析したうえで、最適な手法を選んで実行していきましょう。