2020年のGartner(ガートナー)社の調査によると、BtoB企業のCMOの大半が、2021年は多様なデジタルチャネルへの支出が増えると予想しています。なかでもソーシャルマーケティングの予算がそれぞれ増加すると予測しています。
また、69%がデジタル広告予算、60%以上がメールマーケティング、モバイルマーケティング、有料検索広告の予算を組んでいるためグローバル領域でのデジタルマーケティングの競争はますます激しくなっていくでしょう。
日本国内はどうでしょうか? マーケティングメディアMarkeZineの『マーケティング最新動向調査 2021』によると今後3年間でマーケティング・販促予算全体が「増える」と回答した企業は37.7%。優先順位の1位は「自社HP・自社ECサイト」で55.2%、2位が「ソーシャルメディア(広告を除く)」で49.0%と続いています(こちらはBtoCも含むデータ)。
4割弱の企業がデジタルシフトを加速させていく方針です。とはいえ、自社Webサイトの拡充からスタートしているところを見ると、おそらくコロナウイルスの影響により否応なしにデジタルに切り替えざるを得なくなったケースが多いのではと感じます。
デジタルマーケティングもリアルなマーケティングも本質は同じです。見込み客の解像度を高くすることと、さまざまなチャネルの特性を理解しカスタマージャーニーにそって自社の製品・サービスの価値を伝えていく必要があります。
本記事では、おもにデジタルマーケティングで適切なチャネルを活用するための知識を紹介します。
まず、一般的なチャネルの意味から説明します。
チャネルとは英単語の「channel」の和訳であり、水路、導管、運河、TV・ラジオのチャンネルなど多様な意味を持ちます。ビジネス上では「製品・サービスをお客様に届ける流通経路、場所、機能」などを指します。流通チャネルはおもに以下の4種類に分類できます。
なお「チャネル・マーケティング」という言葉がありますが、こちらはメーカーがより影響力が大きい流通チャネルに働きかけることによって、効果的なマーケティングを行うことを指します。
デジタルマーケティングにおけるチャネルは、リアルなマーケティングとはその意味合い、機能、役割がかなり異なります。
デジタルマーケティングは前述の定義でいえば「0段階チャネル」に近いといえます。
インターネットの普及により近年の見込み客は、何かを購入しようと思ったときにまず自分でオンラインで情報を探します。一方、企業もオンライン上で情報を直接発信することができるようになり直接企業と見込み客がつながることが容易になりました。
特にSaaSなどのように物理的な販売が含まれないビジネスモデルなら、ほぼ0段階チャネルとみなしてもよいでしょう。一方、BtoBでも工場や販売代理店などが入る企業がデジタルマーケティングを行う場合は別の段階に該当します。
デジタルマーケティングのチャネルはリアルとは異なり単なるプロモーションの場ではありません。多くはインタラクティブに交流できる場であり、購買履歴、行動データ他の幅広い情報を収集する機能も持ち合わせています。
企業は各チャネルから収集したデータを統合して解析することで、マーケティング施策を常に最適化できます。
デジタルマーケティングチャネルとは、オンラインで自社の見込み客に発信したい情報をとどけられる媒体や経路あるいは機能を指します。オンライン上には以下のようなさまざまなチャネルが存在します。
リアルなマーケティングと同じようにオンライン上の各チャネルも、それぞれユーザーの年齢層、個性、志向性などが異なるため、マーケティングの目的に合わせた適切なチャネルを選択することが大切です。
新しいチャネルが増え続けていることはもちろん、既存チャネルの強みや勢いも変化し続けますので各チャネルの動向を的確に理解し、予算の範囲内でどのようなチャネルを組み合わせていくかがマーケティング成功のポイントになるでしょう。
デジタルマーケティングには数多くのチャネルがありますが、ここでは9つの効果的なデジタルマーケティングチャネルの特徴とメリット、デメリットを解説します。
オーガニック検索(サーチ)とは、GoogleやYahoo!などの検索エンジンでユーザーキーワードで検索すると、検索エンジン独自のアルゴリズム(リンク、ドメイン・オーソリティ、ユーザーの検索クエリとの関連性)によって、自動的に表示順位が決まる検索の仕組を指します。Googleであれば検索上位のサイトは以下のように、広告(Ad)の下の位置に表示されます。
「〇〇とは?」「〇〇 事例」「〇〇 メリット」などといったキーワードを想定し、その解答になるようなコンテンツをさまざまなチャネル上に用意し、見込み客に到達してもらいたいサイトにトラフィックの流入を促します。コーポレートサイトには「株式会社〇〇 導入事例」「株式会社〇〇 価格」のように、指名検索を想定したコンテンツを増やします。
検索結果ページには同時に広告も表示されますが、ユーザーはオーガニック検索の結果を信頼する傾向があります。キーワードの内容により、見込み客の購買ステージがどこか(ファネルでいえばTOFU、BOFU、MOFUのどこか)ある程度推測できるので、キーワードに最適化されたコンテンツを表示するようにします。
メリット:
デメリット:
検索連動型広告とは、検索エンジンの検索結果ページで検索キーワードに対応した内容の広告が表示される仕組のことです。Googleアドワーズ広告、Yahoo!リスティング広告 などが相当します。
検索連動型広告ならオーガニック検索では1位をとることが難しい検索結果ページにもトップに自社サイトを表示できます。人気キーワードの場合SEO施策で検索順位上位に入るためにはそれなりの労力と期間が必要ですが、広告なら短期間で掲載が可能です。
メリット:
デメリット
いわゆる、バナー広告のことです。アプリ、検索エンジンなどのコンテンツの横や下に表示されます。 GIF、写真、動画などさまざまな形式があり、スペースが大きいため多くの人の目にとまります。ディスプレイ広告のおもな媒体はGoogleディスプレイネットワーク(GDN)、Yahoo!広告 ディスプレイ広告(運用型)です。
メリット
デメリット
SNS広告はプラットフォーム(リンクトイン、YouTube、Twitter、Facebook、Instagram、TikTok、LINE等)によってできることがかなり異なりますが、どのSNSもユーザーの個人情報が充実しているため、ターゲット設定がきめ細かく行えます。
地域別、興味関心別、年代、性別などの属性別に広告を配信することはもちろん、SNSによっては特定のサイトを指定してサイト訪問者に対してSNS上で広告主の広告を表示させるパターンも可能です。
メリット
デメリット
オーガニックソーシャルとは、有料広告以外のSNS上での発信活動です。企業アカウント、部署のアカウント、経営者、社員個人のアカウントなどから発信し、フォロワーを増やしていきます。オーガニックソーシャルは既存顧客とコミュニケーションをとり信頼関係を深めたり、新規見込み客との接点づくりに適しています。
メリット
デメリット
ダイレクトとはチャネルを通さずにブックマーク、メールソフトのリンク、Excelのファイルなどから直接サイトに到達したり、直接アドレスバーにURLを入力して訪れる経路を指します。すでに自社のことを認識していたり、認識している誰かに推薦されてダイレクトに訪れているため、ダイレクトユーザーが増えているということは、それまでのマーケティング施策の成功といえるでしょう。
デジタルマーケティング、Eコマースなどの市場調査会社eMarketer社の統計によると、メールマーケティングのROIの中央値は122%であり、他のデジタルマーケティングチャネルよりも4倍も高いという結果がでています。また、Eメールマーケティングは調査企業の収益の25%を駆動していることが明らかになっています。
世界的にメールユーザーの数は増え続けており、メールマーケティングによる収益は年々向上し続けています。メールは古典的なコミュニケーションツールと捉えられがちですが、いまだ強力なマーケティングチャネルだと理解すべきでしょう。
メールはさまざまな用途に活用できるチャネルです。たとえば、既存顧客には最新のニュース、更新情報、新製品のリリースなどを迅速に知らせることができます。メールマガジンで顧客及び潜在顧客に対して毎週、毎月のペースで継続的に価値ある情報を届けていくことでエンゲージメント向上が期待できます。
メリット
デメリット
リファラルとは「紹介、参照」という意味です。デジタルマーケティングにおけるリファラルは、他社や個人のブログ、SNSなど他チャネルを参照して訪れているケースや、リファラルによる申込が相当します。
BtoC領域であれば、お友達紹介キャンペーンは珍しくありませんが、BtoBであっても業種によってはリファラルキャンペーンが可能です。
たとえば、ビジネス用メール、ストレージ、共有カレンダー、ビデオ会議など、仕事を効率化するためのツールが揃っているGoogle Workspace では紹介プログラムがあり、新規ユーザー1人につき紹介者に850~2,550円の紹介料を支払っています。SaaS企業などは真似しやすいのではないかと思います。
(参照:Google Workspace)
アンバサダーマーケティングもリファラルに相当します。自社サービスやブランドを愛するユーザーに宣伝してもらうことで製品・サービスの魅力を世に伝えやすくなるでしょう。
メリット
デメリット
アフィリエイトとは、他社Webサイトで自社製品・サービスのプロモーションを行う宣伝活動です。一般にアフィリエイト・サービス・プロパイダ企業(ASP)を通して他社(アフィリエイター)のサイトにリンク、テキスト広告、バナー広告などの広告を配信します。Big Commerceが行った調査によると世界のブランドの81%がアフィリエイトマーケティングを実施しています。
なお、前述のGoogle Workspaceにはアフィリエイトプログラムもあり、宣伝してくれる参加者を求めています。ただし、自社で審査をしています。アフィリエイトをチャネルとして有効活用するには、数ある中から自社の製品・サービスに興味をもちそうなフォロワーやユーザーを抱えているアフィリエイトを正しく選ぶことがポイントです。
メリット
デメリット
デジタルネイティブ世代が企業の中核となる年代にきていることもあり、ここ数年BtoB企業でも徐々にデジタル化が進んでいました。そこにきて2020年のコロナウイルス感染症による大転換が起こり、一気にマーケティングのデジタルシフトが進んでいる様相です。
混乱のさなかでは100%成功する判断などあるはずもありませんが、記事内にも書かせていただいたように、オンラインでもオフラインでもマーケティングの本質は変わりません。見込み客が何を悩み、何を求めているかを理解し、その解決のために自社が何を提供できるかを伝えていくことが基本です。
変わるのは使うツールでありテクニックのみと切り替えて、ぜひ各チャネルの特徴を理解し自社に適したデジタルマーケティングを実践していきましょう。