マーケティング活動をするときには、事前に市場調査を行いペルソナを決めていることと思います。しかし、ある程度の期間うまく進んでいたのにもかかわらず、徐々に効果が落ちていると、マーケティング活動に不安を感じてしまうでしょう。
その理由のひとつに、顧客のニーズが多様化し変化し続けて、昔より顧客がさまざまな媒体で情報を得て、比較検討して購入するようになっていることがあげられます。
ご存知のとおり、BtoBといえども今や前半工程はかなりデジタルシフトしました。見込み客はさまざまなチャネルを活用してベンダーを探します。かつカンファレンスや展示会などオフラインの存在感もいまだ強いBtoBの購買経路は、以前よりずっと複雑です。
米国のMarketingchartの2021年の調査によると、BtoBマーケターの顧客についての課題の第2位に(57%) に、「デジタル チャネルがますます重視されて、適切なチャネルで適切なタイミングで購入者とエンゲージすることが最大の困難」をあげています。
そこで本記事では、このような状況を打開する手段のひとつ「カスタマージャーニー」についてご紹介します。現代のBtoB企業にとっても重要な考え方ですので、ぜひ記事をご覧になり、カスタマージャーニーマップ(CJM)を作ってみてください。
カスタマージャーニーとは、顧客の動きを旅に例え、行動や思考、感情を時系列に見える化したものです。見ず知らずの相手が多くの障害物を乗り越え、紆余曲折しながら自社の商品・サービスと濃い関係を築き上げていく……。その過程を描いた成長物語こそがカスタマージャーニーと言ってもよいでしょう。
そして企業は、カスタマージャーニーを描くことで、カスタマーが商品・サービスと最初に出会ってから購入し使っていくまでにたどる、オンライン、オフラインのさまざまなチャネル(メディア、ウェビナー、テレビ、雑誌、CM他)の道筋を見ることができます。
カスタマージャーニーとは顧客の動きをひとつひとつの点ではなく、流れで見える化するもの。そしてこの動きを図示化したものを、正式には「カスタマージャーニーマップ(CJM)」と呼んでいます。※現場では「カスタマージャーニー」でも通じます。
CJMの例(曲線型)
カスタマージャーニー作成の最大の目的は、各タッチポイントにおける顧客の心理や行動を企業側が理解して、顧客と常に最適なコミュニケーションを取れるようにすることです。
カスタマージャーニーを作成する中で、「このタッチポイントでは、顧客はおそらくこんな思考や体験をしているはずだ」という点を洗い出すことで、具体的な対策を立案・実行する後押しになります。
例えば、各タッチポイントでの顧客の思考・体験に関して、以下のような具体例が考えられるでしょう。
製品の購入前段階
カスタマージャーニーを作成しておくことで、顧客が製品やサービスを購入する前にどのような情報を求めているのか、どのような疑問や懸念を持っているのかを推測することが可能です。これにより、企業はその疑問や懸念を解消するための情報提供や、キャンペーンを展開できるようになります。
購入時の体験
購入プロセスにおける顧客の行動や感情を理解することで、購入の障壁となる要因を特定し、それを解消するための施策を考えることができます。例えば「購入手続きの複雑さ」や「支払い方法の不便さ」の解消などがあげられるでしょう。
製品の使用後
製品を使用した後の顧客のフィードバックや不満点を把握することで、製品の改善点や新しい機能の提案など、顧客のニーズに応じたサービスの提供が可能となります。
サポートやアフターサービス
カスタマージャーニーには、製品のトラブルや問い合わせ時の顧客の体験も含まれます。これを通じて、サポートの質や迅速性、アフターサービスの充実度など、顧客の満足度を高めるための改善点を見つける手がかりにもなるでしょう。
リピート購入やブランドへのロイヤルティ
長期的な顧客関係を築くためには、顧客が再度購入する際の動機やブランドに対する信頼感を理解することが重要です。カスタマージャーニーを分析することで、これらの要因を明確にし、リピート購入を促進するための戦略立案にも寄与します。
また、顧客理解を通じて顧客体験 (CX) を優先させるよう、組織全体に影響を与えることもできます。 例えば以下のようなシチュエーションが考えられます。
共通の顧客像の構築
カスタマージャーニーをマーケティングチーム内で共有することで、チーム全体が同じ顧客像を持つことができます。
例えば、デジタルマーケティング担当者はオンラインでの顧客の行動を重視するかもしれませんが、イベント担当者はリアルの接触ポイントを重視するかもしれません。カスタマージャーニーを通じて、これらの異なる視点を統合することで、一貫した顧客像を構築することができます。
施策の最適化
カスタマージャーニーに基づく共通の顧客理解を持つことで、各担当者が独自の施策を打ち出す際も、他の担当者の施策との連携や補完を考慮できるでしょう。例えば、SNS担当者が新製品のキャンペーンを行う際、店舗担当者と連携して店舗での特典やイベントを同時に実施する、などが考えられます。
情報の共有と迅速な意思決定
カスタマージャーニーを共有することで、チーム内での情報共有がスムーズになり、迅速な意思決定が可能となります。例えば、ある担当者が顧客からのフィードバックを受け取った際、それをカスタマージャーニーに反映し、他の担当者と共有することで、マーケティング施策全体の方向性を迅速に調整できるでしょう。
チームのモチベーション向上
共通の目標としてカスタマージャーニーの最適化を掲げることで、チーム全体のモチベーション向上にも寄与すると言えます。
各担当者が「自分の担当業務はカスタマージャーニーにどのように影響するのか? 」を明確に理解することで、仕事の全体像、ゴール、意義といった大局的な理解につながります。このような理解によって「より意欲的に取り組もう」と考えるメンバーも出てくるでしょう。
近年は、顧客がさまざまな媒体で情報を得ることが可能になりました。企業が発信するCMや広告、Webサイト、SNSに加えて、第三者が発信するWebメディアの情報も増加。購買に至るプロセスが複雑化し、顧客の行動が多様化しています。
そのため、顧客は必ずしも企業側が思い描くシナリオ通りに思考・行動しない場合もあります。
Googleは、 マーケティング関連のデータや調査結果を公開するサイト「Think with google」の記事の中で、ユーザーによる情報探索行動の構造を「バタフライ・サーキット」と名付けました。
例えばあなたが、自社に適する良さそうなSaaSを探しているとしましょう(例:法人向けの会計ソフトなど)。その情報探索過程で、特定の製品についてリサーチして、他の人が書いたレビューなどを読んで理解・納得し「これは自社に適しているかも? 」などと考えるでしょう。
ところが、何かのきっかけでまた気移りして(似通った製品がレコメンドで出てきて「こちらも見ておくか」と考える、など)また「情報をさぐる」行動に戻って、新たに出会った製品について確認して……という風に「実は、情報探索行動を繰り返している」という点に、思い当たる節があるのではないでしょうか?
つまり人の情報探索行動は商材を問わず、「決して一本道とは言えない」ということが分かってきたのです。
ただし「カスタマージャーニーマップの作り込みは無意味」というわけでは決してありません。
自社なりのカスタマージャーニーマップを作り込んでおくことで、顧客の検討段階(認知〜興味〜比較検討)のステップを明確に把握できるようになります。顧客は製品・サービスを「認知」して以降、「興味を持って情報探索」「比較検討」の行動を何度も繰り返すという実態をわかったうえで、最適なマーケティング施策の立案につながるでしょう。
カスタマージャーニーのほかに「エクスペリエンスマップ」「サービスブループリント」といった名前を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
それぞれの目的や特徴、またビジネスにおける役割はどのように異なるのでしょうか。ここからは、カスタマージャーニーと他のフロー・マップの違いを明確にし、どの手法が特定のニーズに最も適しているかを解説します。
(出典:57478117 © Rassco | Dreamstime.come)
カスタマージャーニーとエクスペリエンスマップは、ユーザー体験の改善に役立つツールですが、それぞれ異なる特性と目的を持っています。
カスタマージャーニーは、ユーザーが製品やサービスを利用する過程をマッピングするツールです。これは、ユーザーが製品を購入する前から後までの一連の流れを示しています。このジャーニーは、ユーザーがどのように製品やサービスを知り、使用し、最終的にはどのように感じるかを示しています。
一方、エクスペリエンスマップは、特定のユーザータイプやペルソナを中心に、そのユーザーの全体的な経験をマッピングするツールです。これは、ユーザーが他の製品やサービスも検討する全体的な体験を示しており、特定の製品やサービスに限定されることはありません。
要するに、カスタマージャーニーは特定の製品やサービスの体験に焦点を当てていますが、エクスペリエンスマップはユーザーが経験する全ての体験に焦点を当てています。
カスタマージャーニーはマーケティングプロモーションだけでなく、UX(ユーザーにとっての活用しやすさ、満足度などユーザー体験)の改善にも活用できます。その場合は「オンボーディング」「サポート」「満足」など、購入以降の項目も用意してジャーニーを長くしましょう。
しかし、どちらかというとUX改善には、カスタマージャーニーよりも「エクスペリエンスマップ」のほうが適しているでしょう。両者は一見似たようなマップに見えますが、大きく以下の違いがあります。
まず、エクスペリエンスマップは、顧客の全体像をイメージして作成するのが特徴です。ペルソナは、特定の一優良顧客モデルの動きをイメージして作成します。ユーザー体験向上のためには、一タイプの顧客モデルに偏らないほうが、全体の満足度が高くなるからです。
また、ペルソナはひとつの製品・サービスの購買ごとにストーリーを作りますが、エクスペリエンスマップにはそのような縛りはありません。顧客が他社製品も含めて検討していくジャーニーを描きます(これはどっちが良い悪いでなく目的が異なるからです)。
カスタマージャーニーは、自社の顧客層の動きを大きく捉えて顧客視点での現実的なジャーニーを描くものです。そのため自社が選ばれる理由はもちろん、選ばれない理由、途中でさっていく理由についてもインサイトが得られます。
(出典:D 215139541©Piscine26|Dreamstime.com)
サービスブループリントとは、カスタマージャーニー上に描かれる顧客の心理・動きに対し、自社の内部がどのように対応できるかを可視化するツールです。カスタマージャーニーがフロントステージなら、サービスブループリントはバックステージ。いわば「表舞台」と「舞台裏」の関係性です。
サービスブループリントには、ペルソナの動きに沿った社内プロセス、社内スタッフたちの動き、活用するシステムなどを時系列に書き込んでいきます。その過程で、カスタマージャーニーに対応する理想的なサービスを提供するにあたっての、ギャップが浮かび上がります。
例えば、予算や人材が不足していたり、組織の役割分担上うまく対応できなかったりするなどボトルネックが可視化されるため、マーケティング成果を上げたりUXを改善したりするために、どう内部を最適化するかのヒントが得られます。
カスタマージャーニーを実際に描き出そうとする際に、理解しておきたいフレームワークをいくつか紹介します。
AIDMAは、消費者の購入行動を示すフレームワークとして広く知られています。このフレームワークは、消費者が商品やサービスを購入するまでの過程を5つのステップで表現する方法です。具体的には、以下のようなステップから成り立っています。
カスタマージャーニーマップ作成において、AIDMAは役立つフレームワークです。カスタマージャーニーマップは、消費者が商品・サービスを購入するまでの過程をビジュアル化するツールであり、AIDMAを使用することで、その過程を具体的に捉えることができます。
特にBtoBビジネスでは、購入決定の過程が複雑です。AIDMAを用いて「買い手側は、どのようなステップを経て購入の意志を固めるのか? 」という基本を押さえることが大切です。
AISASフレームワークもまた、消費者の購入行動を示すモデルのひとつです。このモデルは、消費者の購入プロセスを以下の5つのステップに分けて表現しています。
AISASフレームワークを使用することで、各ステップにおける消費者のニーズや課題、感情を明確にし、それに応じて企業側が取るべきアクションを計画することができます。
例えば、"Attention"の段階では、どのような広告やコンテンツが消費者の注目を引くのか、"Interest"の段階では、どのような情報提供が消費者の興味を引き出すのか、といった具体的なアクションを考えることができます。
また、"Share"の段階では、消費者が購入した商品やサービスに満足しているか、どのようなフィードバックがあるのかを知ることができ、それをもとに商品やサービスの改善を行えるでしょう。
このように、AISASフレームワークをカスタマージャーニーマップ作成に取り入れることで、消費者の購入プロセスをより深く理解し、効果的なマーケティング戦略を策定できます。
5Aフレームワークは、Philip Kotler(フィリップ・コトラー)の『マーケティング4.0』で提唱されたカスタマージャーニーモデルです。このモデルは、接続性の時代(顧客がWebに繋がっている時代)における消費者の購入行動を以下の5つのステップで表現しています。
5Aのカスタマージャーニーモデルは、従来の購入プロセスモデルとは異なる新しいアプローチを持っているのが特徴です。特にWebの接続性を前提とし、現代の消費者がどのようにブランドや商品に触れ、感じ、行動するのかを明確に捉えています。
例えば、"認知"の段階では、従来の広告だけでなく、オンラインでの口コミやSNS上のシェア、ブロガーからの紹介など、多様な情報源からの影響を受けることが想定されます。現代において、消費者が製品・サービスを「認知」するための手段は多岐にわたり、それら全てがブランド認知の形成に寄与しているのです。
"訴求"の段階では、単なる情報提供よりも、インフルエンサーや信頼性の高いコミュニティからの推薦、リアルな体験を共有するユーザーレビューや動画など、深い信頼関係を築くコンテンツが求められます。消費者は、他者のリアルな経験や意見を通じて、ブランドや商品に対する関心や信頼を深めていくのです。
このように、5Aモデルは、接続性の高い現代の消費者行動を反映し、彼らが日常の中でどのように情報を取得し、判断し、行動に移していくのかを的確に捉えたものと言えます。そのため、マーケティング戦略を策定する際には、このモデルをもとにした、多角的で深い洞察に基づくアプローチが必要です。
5Aのカスタマージャーニーモデルは、Webの接続性を考慮に入れ、消費者がWeb上のコミュニティやSNSの影響を強く受けることを反映しています。
BtoBビジネスでカスタマージャーニーを作成するには、以下4つのステップを押さえましょう。
カスタマージャーニーの作成において、ペルソナの作成は非常に重要なステップです。以下、BtoBビジネスにおけるペルソナ作成ステップについて詳しく解説します。
BtoBビジネスにおいても、ペルソナの作成は欠かせないステップです。ペルソナは、顧客の代表的なキャラクターを作成することで、マーケティングや営業活動をより効果的に行うための基盤となります。具体的には、ペルソナをもとにしたコンテンツの作成や、顧客へのアプローチ方法の検討などを行います。
ペルソナの作成だけでなく、アンチペルソナの考慮も重要です。アンチペルソナとは、アプローチしない顧客の代表的なキャラクターを指します。アンチペルソナを明確にすることで、無駄なマーケティング活動を避けることができるでしょう。
ペルソナやアンチペルソナの作成は、マーケティング活動の成功の鍵となるため、十分な時間と労力をかけて取り組むことが推奨されます。
カスタマージャーニーを視覚的に表現する際、「横軸」と「縦軸」の決定は重要です。「横軸」は時間やプロセスの進行を示し、「縦軸」は顧客の感情や満足度を示すことが多いと言えます。
上図で示した一例では、以下が配置されています。
BtoB SaaSの顧客の動きは、他業界と比べると、製品が異なっても比較的似通っている傾向があります。上図で示したような定型パターンをアレンジして活用するとよいでしょう。
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カスタマージャーニーの横軸と縦軸を決定した後、次のステップは、2つの軸の項目に合わせて情報を整理することです。以下の手順で情報を整理しましょう。
情報の整理が完了したら、次はカスタマージャーニーのテンプレートにその情報を落とし込む作業に移ります。以下の手順で進めましょう。
テンプレートに情報を落とし込むことで、チーム全体でカスタマージャーニーを共有し、統一した理解を持つことができます。これにより、効果的なマーケティング戦略や、サービス改善の方向性を見つけることができるでしょう。
カスタマージャーニーはさまざまな目的に活用できますが、BtoB企業においては特に以下の利用シーンが想定できます。
カスタマージャーニーを導入することで、企業は自社中心の施策から顧客中心の施策へとシフトできるでしょう。従来、企業は自社のサービスや製品の特長を強調する一方的なマーケティングが主流でしたが、カスタマージャーニーを活用することで、顧客のニーズや課題を中心に施策を考えることが可能になります。
現代において顧客中心の施策が重視されるようになった理由として、まず「インターネットの普及」があげられます。顧客は自分自身で情報を収集・比較できるようになり、企業の一方的な情報提供だけに頼ることはなくなりました。
多様な商品やサービスの中から選ぶことができるため、企業は顧客が何を真に求めているのかを理解する必要があります。さらにSNSの浸透により、消費者の声や評価は瞬時に広まるため、企業はその声を真摯に受け止め、対応する姿勢が求められる時代となっています。
そこで、カスタマージャーニーを活用したアプローチによって、顧客の実際の問題点やニーズを特定し、それに対応した施策を展開することが可能です。
オーストラリアのマーケティング関連企業「Genroe Australia Pty Ltd.」は「カスタマージャーニーの文書化によって、顧客と企業の間の問題点が明確になり、ビジネス改善のための具体的な情報を得ることができる」と述べています。
「自社のビジネスのプロセスの中で、顧客側がそのような問題点やストレスを感じているとは、思ってもみなかった」といった発見が得られるケースも考えられます。
顧客が感じている煩わしさや不満を解消し、より良い顧客体験を提供する第一歩となるでしょう。
カスタマージャーニーを作成すると、各担当者は自分の担当領域が長いジャーニーの中のどのパートかすぐわかります。自分の仕事だけにフォーカスするのではなく、最終的にマーケティング成果を上げるためにという視座を持ちやすくなるでしょう。
チーム内でメンバーがそれぞれ異なる顧客理解だと、マーケティング施策がちぐはくなものになります。カスタマージャーニーを作成し共有することで、関係メンバー全員がひとつの目標を念頭に自分の仕事を進めるため、施策の軸がぶれず良いコラボレーションを実現できるようになります。
カスタマージャーニーを活用することで、企業は施策の運用をより効率的かつ効果的に行うことができます。例えば「比較検討段階の見込み顧客には、自社独自のノウハウを提供するeBookやウェビナーを提供すべき」といった点が明確になるため、施策の計画や実施がスムーズに進められます。
カスタマージャーニーは、作成をするプロセスだけでなく「その後」の取り組みがさらに重要です。作成したカスタマージャーニーを自社のマーケティング施策に活かしていくために、以下3つの重要なポイントを押さえましょう。
カスタマージャーニーの作成は、顧客体験を理解するための第一歩です。しかし、最初のカスタマージャーニーはしばしば仮説に近いところがあります。
そのため、実際の顧客体験と合致しているかを確認するために、クライアントや他の部署へのヒアリングが不可欠です。このプロセスを通じて、カスタマージャーニーを継続的にブラッシュアップし、より正確なものにしていくことができます。
カスタマージャーニーを作成しただけでは十分ではありません。実際の施策やコンテンツ制作に活用することが重要です。製品・サービスがアップデートされるたびに、顧客の購入プロセスも変わる可能性があります。したがって、変更を実装する前後でカスタマージャーニーを見直し、必要に応じて更新することも不可欠です。
カスタマージャーニーは、マーケティング部門だけでなく、営業やカスタマーサクセスなどの他の部署とも共有することが重要です。異なる部署が異なる顧客理解を持っていると、施策の方向性がバラバラになり、効果的なマーケティングが難しくなります。
カスタマージャーニーをすべての関係部署と共有することで、組織全体での共通の認識と目標を確立し、より効果的な施策を実施できるでしょう。
参考:
How to Create an Effective Customer Journey Map [Examples + Template]
ここでは、SaaS企業のカスタマージャーニーマップの事例を紹介します。HubSpotのカスタマージャーニーマップ
HubSpotは、直線的なカスタマージャーニーマップを活用しています。上図はやや古いバージョンで、カスタマージャーニーの流れを「Awareness Stage(問題の認知)」「Consideration Stage(問題解決を検討)」「Decision Stage(購買決定)」の3段階のステージに分けています。
そして、それぞれに対してユーザーの行動、リサーチやそれに対する答え、コンテンツの種類、キーワードを入れていきます。
昨今は7種類の直線的なカスタマージャーニーのテンプレートを公開しています。
その中の一つが以下のパターン。横軸に「Stranger(ストレンジャー)」「Subscribe/Lead(購読者/リード)」「MQL(マーケティング見込み客)」「Oppotunity/Demo(機会/デモ)」「Deal Closed to Go Live/Handoff(契約締結/サービス開始/引き渡し)」。
縦軸には「リードは何を思い何をするか」「リードの話を聞いている社内担当者は誰? 」
「リードに提供するコンテンツは? 」「プロセスを加速させるには? 」 「リードをより快適に決断させるには? 」と並びます。マーケティング部門が自分たちの対応を掘り下げて考えることができる仕様です。
(出典:HubSpot)
HubSpotの7種類のテンプレート無料ダウンロードはこちら
弊社(Leapt)ではGoogle Slidesを活用して、HubSpotと同じく直線的なカスタマージャーニーを作成しています。直線型のフォーマットの長所のひとつは、作りやすくわかりやすいところが長所です。
横軸には「気づき」「認知」「検討」「導入」「利用」。縦軸にペルソナの「課題」「行動」「情報ニーズ」「情報ソース」「次の段階へのモチベーション」と、5項目ずつ設定しています。
このマップは、比較的シンプルで基本的な項目設定をしているため、業界や担当部署ごとに項目を変えなくても、マーケティングプロモーション用であれば共通して活用できます。
詳細はこちらの記事で。
ここではカスタマージャーニーを簡単に作れる、海外の無料クラウドツールを紹介します。
Googleスプレッドシートはエクセルと互換性、Google Slidesはパワーポイントと互換性があります。操作もかなり似ているため、Office製品になれたビジネスパーソンにとって使いやすいツールでしょう。しかも、無料版でもカスタマージャーニー作成に十分な機能をもっています。
自分でデザインを決めて作成してもよいですし、各社が無料公開しているエクセルやパワーポイントのカスタマージャーニーテンプレートをアップロードして、編集してもよいでしょう。派手なこったデザインには仕上がりませんが、十分なテキストが盛り込めるので、誰にとってもシンプルでわかりやすいカスタマージャーニーになるはずです。
また、他のGoogleアプリと連携しやすく、チーム、部署を超えて共有する場合もGoogle製品なら説明の必要もあまりありません。利用に関してのハードルが低く、カスタマージャーニー初心者チームが手始めに活用するツールとしておすすめです。
(出典:uxpressia.com)
UEPRESSIAは無料版で、1つのプロジェクト、1つのペルソナ、カスタマージャーニーマップ、インパクトマップを作成できます。
60以上のテンプレートが用意されているので、自社の業界やビジネスモデルに近いカスタマージャーニーを選べるかもしれません。カスタマー ジャーニーの各段階でのペルソナの状況を48 を超える感情から選択できるため、リアルなカスタマージャーニーを描けます。
無料プランのサインインは、メールアドレスのみで可能。GoogleやFacebookのアカウントでもサインインできます。サインイン後は「ADD NEW」をクリックして、いくつか表示されたMAPから「Blank customer Journey(defalut)」を選択しましょう。
60種類以上のテンプレートはこちら
多すぎて選べなくて自分に合ったテンプレートを知りたい場合はこちら
一から活用方法を学びたいときは、UXPressia Academy
(出典:FlowMapp公式HP)
FlowMappは、カスタマージャーニーマップやユーザーエクスペリエンス作成のための専用ツールを提供しています。テンプレートのビジュアルは視覚的に美しくすっきりしており、直感的に理解しやすいチャートでカスタマージャーニーを表現できます。
こちらも、無料プランのサインインはメールアドレス入力のみ。GoogleやFacebookアカウントでもサインインできます。無料プランは1プロジェクト分しか作成できませんが、いったん削除すれば何度でも新プロジェクトを立ち上げられます。
サインインしたら、中央の「Create Project」をクリックしプロジェクト名を入力。次に「Create New User Flow」をクリックすると、Templatesの選択肢が4つでてきます。(テンプレートを使わず自作する場合は「Start from Blank」を選択)。以下はテンプレートの1種類、「User Sign Up」のチャートです。
チャートをカスタマイズして、ビジュアルが美しく視認性の高いカスタマージャーニーに仕上げることができるでしょう。
また、サインインしなくても、トップページの「Try Demo Project」をクリックすると、以下のようにさまざまなテンプレートが表示されます。「Lead Lifecycle Flowchart」「Email Flow」「B2B Online Marketing」など、マーケティング用のテンプレートがあるので、さわってみて作成に慣れてみるのもよいでしょう。
カスタマージャーニーマップを作成すると、企業としての立場でいながら顧客視点で物事を考えられるようになり、今まで当たり前だと思っていた認識や価値観が大きく変わることもあると思います。それこそが大きな成果なのです。
これまで不透明だった見込み客の動き、その背後にある心理が可視化されていき、いろいろな発見があります。見込み客が重視するタッチポイント、あまり活用しないタッチポイントが把握できるので、マーケティング成果を高めることができるでしょう。チームメンバーが顧客の動き方について共通の認識を持てるので、施策の運用もスムーズになるはずです。
ぜひ、便利な作成ツールや各社の無料テンプレートを活用して、自社のビジネスモデルにあうカスタマージャーニーを作成してみましょう。ペルソナ、カスタマージャーニーは、デジタル時代のBtoBマーケティング担当者にとって非常に有益なツールです。