世界の時価総額ランキング企業の上位(2023年8月時点)のほとんどが、プラットフォームビジネスを手がける企業です。
Apple、Facebook、Amazon、最近はMicrosoftも加わり「GAFAM」とよばれるBig5。また、中国に目を向ければ、「BAT」と呼ばれるBaidu(バイドゥ)、Alibaba(アリババ)、Tencent(テンセント)が存在します。ここ20年に急成長した企業のほとんどが、プラットフォームビジネスといっても過言ではありません。
一体、このプラットフォーム企業とはどのようなビジネスモデルなのでしょうか? 少し調べた方はおわかりかと思いますが、プラットフォームというビジネスモデル自体はシンプルです。昔からある仲介業、小売り、マッチングビジネスのオンライン版のように見えます。
しかし、このシンプルなビジネスモデルが、IT化、IoT化と結びつき、とてつもないスケールに発展してきました。そのため、近年はプラットフォーマーに活路を見出そうとする企業が日本にも増加中です。
自社は何かのプラットフォーマーになれるでしょうか? 巨大プラットフォーマーにならなくても、●●領域のプラットフォーマーというニッチ市場でのチャンスは残っているでしょう。それよりも、プラットフォームを活用して成功する道を選んだほうがよいかもしれません。
本記事では、プラットフォームの意味、プラットフォームのビジネスモデルの特徴や種類、代表的なプラットフォーム企業を紹介します。
プラットフォームとは、直訳すると「演壇、舞台」です。つまり何かの「場」を提供するのがプラットフォームです。ビジネス領域でのプラットフォームは、ビジネスが行える環境や仕組みが用意されており、大勢の人や企業が集まる場といえるでしょう。
大量の人や情報が集まり、ルールがあり、そこにいけば何でも一通りあるような場がプラットフォームです。Amazonのように巨大化したプラットフォームもあれば、不動産の物件マッチングのようなニッチな領域のプラットフォーム企業もあります。
プラットフォームは古くからあるビジネスモデルです。昔の物々交換をしていた市場、ショッピングモールなどもプラットフォームです。
シンプルな仲介ビジネスや市場の機能が、ネットの普及により様相がかわります。インターネットの成長性に気づいた創業者により、Web上にさまざまなビジネスが登場しました。また、製造業であった企業も、インターネットを活用しプラットフォームを形成し始めます。
(黎明期)
年代 |
出来事 |
1995年 |
Amazonがネット書店を創業 |
1998年 |
Googleが創業 |
2004年 |
Facebookが創業 |
2008年 |
AppleがiPhoneを発売し、App Storeを開設 |
2009年 |
Uberが創業 |
2010年 |
AppleとGoogleが自動運転領域へ進出 |
情報が価値を持つ時代において、膨大な情報を入手できる企業は、テクノロジーを活用しさまざまなことができます。AI、機械学習、IoTすべてのデータをつなげれば、次から次へと新しいビジネスを創造できるのです。
もっとも、プラットフォームビジネスは勝ちすぎたため、さまざまな国家や一般人、そしてアカデミックから警戒されている面もあります。
2014年、ノーベル経済学賞受賞者Jean Tirole(ジャン・ティロール)氏が、プラットフォームの競争についてディスカッションペーパーを出して以降、プラットフォームに対する議論は深まります。EUのプラットフォーマーへの規制強化も進んでいます。Uberについては最近、フランスが業務委託の配達員は労働者という見解を出しました。
一般市民も決して称賛しているだけではありません。Uberの配達員が事故を起こしたとき、同社は「配達員は独立した事業者として、自由な裁量で仕事を受けており、会社に使用者責任はない」と、すべて丸投げする姿勢は日本でもモラル上の批判を浴びました。
結果的に同社は配達員と連帯して解決金を支払い、その後は三井住友海上火災保険と包括連携協定を結び、配達パートナー向けの傷害補償制度を提供するようになりました。
Appleも、App Storeでアプリを販売する際の手数料30%が「Apple税」と批判され、「今のAppleは昔のAppleが批判していたIBMのようになった」と言われます。ほかの理由もあるかもしれませんが、Appleは2020年には15%に手数料値下げしました。続いて競合のGoogle Cloud Platform(Google Play)の手数料も15%に値下げされます。
プラットフォームは独占・寡占を生み出しやすいビジネスであり、あまりに巨大になると政治経済のトリレンマにならい国家とぶつかります。また、あまりに搾取構造になるとユーザーの支持が低下します。まだまだ成長していくプラットフォームビジネスですが、ひとつの岐路を迎えていることはたしかです。
ただしIoTプラットフォーム市場は、2020年に50億米ドル、2026年には280億米ドルに達すると予想されています。 健全なビジネスモデルの在り方を各国が模索しながらも、市場は大きく伸びていくでしょう。
プラットフォームは主に以下の4種類に分けられます。
ここからは、各プラットフォームの特徴と事例を見ていきましょう。
オンラインプラットフォームとは、インターネット上で情報やサービスの共有をするプラットフォームです。アカウント登録自体は無料で行え、企業は広告出稿や有料プランへ加入することで、効果的に商品・サービスの宣伝や売買ができます。
(出典:Amazon)
代表的な例がAmazonです。Amazonは商品のオンライン販売プラットフォームであり、さまざまな出品者が自社商品を販売し、消費者が商品を購入できる環境を提供しています。出品者は販売手数料や配送代行手数料などを支払うことで、Amazonは利益を上げられています。
そのほかの例としては、検索エンジンのGoogleとYahoo!、FacebookやX(旧Twitter)などのSNSなどが挙げられます。
ソフトウェアプラットフォームは、ソフトウェアやアプリケーションの開発・提供を支援するプラットフォームです。たとえば、ソフトウェアプラットフォームを活用すれば、サーバを構築せずにさまざまなトリガーでコードを実行できます。
(出典:HubSpot)
BtoB SaaS企業の例としては、HubSpotのアプリマーケットプレイスが挙げられます。企業は開発者アカウントを開設することで、HubSpot製品と連携できるアプリを開発し、HubSpotユーザーに提供できます。これによりHubSpot製品の拡張性が高まり、アプリの提供企業は新規ユーザーを獲得できる確率が高まるでしょう。
コンテンツ配信型プラットフォームは、ユーザーに対して文章や動画、音楽などのコンテンツを提供するプラットフォームです。オンラインプラットフォームの一種ですが、オンラインプラットフォームが情報や製品サービス、コンテンツなどあらゆるものを取り扱っているのに対し、コンテンツ配信型プラットフォームは、コンテンツに特化しているという違いがあります。
(出典:note)
コンテンツ配信型プラットフォームの例がnoteです。noteでは、文章や画像、音声などのコンテンツを投稿できます。また、好きなクリエイターに投げ銭をして応援できるのが特徴です。そのほかの例としては、NetflixやSpotifyなどが挙げられます。
クロスプラットフォームは、異なる環境やデバイス間でコンテンツやアプリケーションが共有・利用できるようにするプラットフォームです。たとえば、Microsoft OfficeはWindowsやMacなど異なるオペレーティングシステム上で動作し、ドキュメントの相互運用性を提供しています。
(出典:React Native)
また、Facebookが提供するReact Nativeは、iOSやAndroidなど異なる環境で動作するアプリを、一度に開発できるプラットフォームです。
クロスプラットフォームが注目を集めている理由は、動作環境が多様化しているためです。アウンコンサルティングの調査によれば、国内における主要OSの割合はiOSが67.11%、Androidは32.76%とのこと。たとえばiOSだけに対応したアプリケーションを開発すれば、32%のAndroidユーザーを失うことになるのです。
パソコンOSのWindowsやmacOSについても、同様のことが言えます。クラウド技術の発展や働き方の多様化により、従来のように同じ環境・同じデバイスで仕事をするとは限らなくなっているため、ユーザーの利便性を向上させるためにも、クロスプラットフォーム対応の製品サービス開発が重要です。
「プラットフォームとソフトウェアは違うもの」と理解している方は多いですが、具体的な違いを説明できるでしょうか。ここからは、プラットフォームの理解を深めるために、ソフトウェアとの違いを見ていきましょう。
そもそもソフトウェアとは、コンピューター上で実行されるプログラムやアプリケーションを指します。特定の機能やタスクの実行を目的とし、個々のソフトウェアが独立して機能するため、情報量は多くありません。また、さまざまな課題や価値観を持ったユーザーに使用されるケースは少ないです。
それに対して、プラットフォームは多くのユーザーや企業がコミュニケーションをとる場のため、チャットや取引などの膨大なデータを集約できます。
ビジネスにおけるエコシステムとは、複数の企業が互いに協力しあい、1つのビジネス環境を作る構造です。
ソフトウェアは特定の機能や処理を行う単体のアプリケーションやシステムで完結するため、ソフトウェアのみでエコシステムを構築することは困難です。ただし、ソフトウェアに関するユーザーや開発者のコミュニティが存在し、そこで情報やリソースの共有が行われているケースは多々あります。
(出典:ecforce compass)
法人向けECプラットフォームを提供するSUPER STUDIOは、オンラインユーザーコミュニティ「ecforce compass」を立ち上げています。コミュニティ内では、最新情報やノウハウの提供、ユーザー同士の交流が行われ、サポートの質やユーザーエンゲージメントの向上に貢献しています。
プラットフォームの場合、ソフトウェアサービスを提供しながら、多くの開発者や外部パートナーと積極的に連携することで、エコシステムの形成が可能です。
競争が激しく技術革新のスピードが速いBtoBでは、ユーザーの事業を推進するという観点からも、自社サービスだけでなく、有能なパートナー企業と数多く連携できるかが優位性につながります。MicrosoftやAmazonは40社以上と提携し、市場におけるポジショニングを確立しています。
ソフトウェアの収益モデルは主に「買い切り型」と「サブスクリプション型」の2つです。買い切り型はオンプレミスのソフトウェアで見られる収益モデルであり、顧客はソフトウェアの「所有権」を購入するため、費用が高額になります。
サブスクリプション型は、ソフトウェアを購入するのではなく、一定期間の「利用権」を提供するモデルです。このモデルでは、定期的な収益を安定して得られるメリットがあります。
プラットフォーム型のビジネスはまず、大量の参加者を集めるために先行投資をしなければいけません。Amazonですら長期間赤字だったように、投資が先行するため損益分岐点に到達するまで時間がかかります。
収益は手数料や広告料、使用に応じた課金などが一般的ですが、参加者が増えなえれば、売上げは大きくなりません。
プラットフォームビジネスにおいて、自社が提供するのはサプライヤーとユーザーをつなぐ場であり、自社がサービスを提供して利益を上げるわけではありません。利益は使用料や手数料という名目で得られます。そのため、規模が大きくなれば収益は爆発的に成長します。
それではプラットフォームビジネスに取り組むことで、どのようなメリットを得られるのでしょうか。ここからは、4つのメリットを見ていきましょう。
プラットフォームビジネスは、多くのユーザーや企業がプラットフォーム上でコミュニケーションをとるため、膨大なデータの蓄積ができます。
ビックデータの収集・分析をすれば、ユーザーの行動パターンや傾向を理解し、それに基づいて効果的な戦略やサービスの提供が可能です。たとえば、Amazonは購買履歴や閲覧履歴を元に個別の商品レコメンデーションを行い、顧客のニーズに合わせた体験を提供しています。
(出典:Mckinsey)
マッキンゼーの調査によれば、新型コロナウイルス感染症とデジタル行動の増加により、パーソナライズ化の重要性が増しているとのこと。同調査では、消費者の76%がパーソナライズ体験を提供しない企業に不満を持ち、成長スピードの速い企業は、そうでない企業と比べパーソナライゼーションによる収益が40%も高いと判明しています。
ビッグデータを分析し、ユーザーの行動パターンや傾向を理解してパーソナライズ体験や最適な広告の配信などをすれば、顧客満足度や維持率の向上、そして収益の増加へとつながるのです。
ネットワーク効果とは、プラットフォームに参加するユーザーや企業が増加するほど、全体の価値が増加する現象を指します。多くの参加者がプラットフォーム内で情報やサービスを共有することで、膨大なデータが蓄積され、ユーザーの満足度を高める機能や改善点を特定できます。それにより、口コミや紹介などでさらなるユーザーが集まり、プラットフォームの規模が拡大するのです。
(出典:Google)
Googleの2022年の収益の約80%は広告収入によるものですが、これはネットワーク効果で多くのユーザーや企業を集められているがゆえにできる売り上げです。Googleは、YouTubeやGmailなどさまざまなサービスを展開していますが、メインサービスはやはり検索エンジンでしょう。
Googleはユーザーにとって最適な情報を即座に提供できるように、毎年膨大な数のテストを実施し、常に利便性の向上を追求しています。これによりGoogleの利便性が高まり、多くのユーザーが習慣的にGoogleを利用し、結果的に多数の企業に広告配信の機会を提供できているのです。
プラットフォームビジネスの課金形態は多岐にわたります。手数料や広告収益、プレミアム機能の提供などさまざまな課金形態を提供することで、収益の多角化や新たなビジネスモデルの探求が可能となるでしょう。プラットフォームにおける主な課金形態は以下の4つです。
手数料課金は、取引に基づいて手数料を徴収する課金形態です。プラットフォーム提供者は、プラットフォーム上で行われる取引の一部を手数料として得られるため、仲介型のプラットフォームやマーケットプレイスで有効です。
(出典:Stripe)
Stripeはオンライン決済や支払い処理のプラットフォームを提供する企業。Stripeでは、企業がStripeを使用してクレジットカード決済を処理するたびに、3.6%の手数料が課金されます。
フリーミアムとは、基本機能やサービスを無料で提供し、高度な機能やプレミアムコンテンツに対して料金を請求する課金形態です。利用ハードルが低いため、多くのユーザーの集客を見込めます。
(出典:HubSpot)
たとえば、HubSpotは基本的な機能を永久活用できる無料プランを用意しており、ビジネスの拡大や機能の追加をする際に課金が発生します。
月額課金は、特定の期間(通常は月単位)ごとに固定料金を支払う課金形態です。ユーザーはプラットフォームの利用料金を毎月支払い、利用した分だけの支払いになるため、オンプレミス製品とは異なり、柔軟性が高いとされています。
(出典:HubSpot)
こちらもHubSpotの例になりますが、HubSpotの有料プランは月額課金が基本です。ユーザー企業は毎月一定の料金を支払うことで、必要なサービスやツールを利用できるため、予算管理やニーズに合わせた柔軟な選択ができます。また、年額払いにすることで、月払いよりも割安になるという特徴があります。
従量課金は、特定のリソースやサービスを実際に使用した分だけ支払う課金形態です。SaaSのプラットフォームなどで使われることが多く、顧客情報の登録数やメールの配信、通話時間などの使用量に基づいて料金が算出されます。
(出典:AWS)
Amazon Web Services (AWS)は、企業向けのクラウドコンピューティングサービス。同サービスでは、使用したコンピューティングリソースやストレージ、データ転送量などに応じて料金を従量課金で請求しています。従量課金にすることで、ユーザー企業は予算を過度に割り当てる心配なく、変動するビジネス要件に迅速に対応できるのです。
プラットフォームにはさまざまな情報やサービスが集約されるため、ワンストップで顧客の課題を解決できます。ユーザーは異なるサービスやツールを探す手間を省き、簡単に必要な情報を取得できるでしょう。
たとえば、HubSpotのエコシステムにはサードパーティーにツールやアプリが数多くあります。HubSpotとアプリを連携することで、HubSpot単体では解決できない課題にも対応できるようになる仕組みです。
プラットフォーム企業のサービスは、我々の日々の生活にも浸透しており、身近なものになっているものが多くあります。以下では、「プラットフォームと言えば」と言われる代表的な企業を紹介します。
(出典:Meta)
Facebookは恐らく誰もが知っているSNSでしょう。全盛期は「人間関係のOSになった」「人間関係のハブになった」とまで表現されました。
近年、使用者が減速していると言われますが、それでも1日あたりの利用者が20.6億人を超えています。日本の人口が1億強、中国が約10億人と考えるとSNSが一国の政府より影響力を持つという言葉もリアリティを持って受けとめられます。
フェイスブックもSNSから多様なビジネスに手を広げています。2021年には社名を
Meta Platforms(メタプラットフォームズ)に変更。メタバースのプラットフォームという目的をストレートに表した社名であり、新たなテクノロジー領域のサービスの覇権を握ることに、いかに本気かがうかがえます。
1995年、Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が、自宅ガレージで始めたオンライン書店は、2021年には売上げ:4698億ドル(約51兆円)となり、「世界で最も影響力のある経済的・文化的勢力のひとつ」と称されます。
サービス展開国は18カ国以上。日本から近いアジア圏なら本が2、3日で、ガジェットが1週間程度で届く驚異的なサービスを提供しています。
ECのイメージが強いAmazonですが、非常に幅広い分野に進出しています。2023年にはメンバーシップ型のプライマリーケアを提供するOne Medicalの買収を完了し、オンライン診療プラットフォームAmazon Clinicを開設。また、宇宙開発も手がけています。
米国Synergy Research Groupの調査においては、2021年時点でBtoBのクラウドプラットフォームとしてもMicrosoft、Googleを押さえてシェアNo.1です。
Gmail、Google Map、YouTube、GoogleDrive、etc。Googleは、もはや人々の生活のインフラのような存在かもしれません。
検索エンジンの国内シェアは2023年で75.47%。ほかの領域で成長しているMicrosoftですが、検索エンジンをBeingにしようという人はあまりいません。日本ではヤフージャパンを検索エンジンとして使う人が多いのですが、Yahoo!の検索エンジンはGoogleが提供しています。
近年は自動車業界のEV化、DXによる業界変革の流れのなか自動運転車の開発も手がけています。日本ではホンダがGoogleの車載OSの採用を決定しています。
Microsoftが提供するWindowsは、パソコンやサーバーを動かすオペレーティングシステム(OS)です。2021年時点で、デスクトップOSのシェアはWindowsが71%と圧倒的であり、ユーザーは選択する機会すらなく当たり前のようにWindowsを使っている状況です。
Word、Excel、PowerPointなどのOffice製品、クラウドサービスのMicrosoft Azureも順調に伸びているほか、AppleやGoogle同様にコネクティッドカー領域にも進出。しかし、実際に車を作る気はなく「自動車業界でもプラットフォーマーの立場」にとどまってビジネスを提供したいと強調しています。
これまで、BtoCでも活用されている代表的なプラットフォーム企業を見てきました。以下では、BtoB SaaSビジネスに特化した代表的なプラットフォーム企業・サービスを紹介します。
(出典:Salesforce)
Salesforceは、公式HPに「世界No.1 CRMプラットフォームを拡張・強化する統合型サービス」と打ち出しています。当初は営業領域のSaaSの会社としてスタートしましたが、現在は多様な領域のクラウドサービス提供企業へと変貌しました。
Salesforceで活用できるアプリ、ソリューションなどを扱うマーケットプレイスAppExchange では、あらゆる業界・部門に対応したアプリが提供されているため、ユーザー企業は業界固有の課題に即したアプリを見つけてインストールし、システムを拡張できます。これがあるゆえに、彼らはただのSaaSとの違いが創れています。
さらに、PaaS(Platform as a Service)という、ソフトウェアを構築・運用できるプラットフォームも提供しています。
SaaSの王者と言われますが、2021年度の実績をみてもプラットフォーム関連の売上げがSales、Serviceより高くなっています。SalesforceのPaaSには以下のメリットがあります。
2020年にはスラックを買収し、プラットフォームとしての基盤を強固にしています。
(出典:HubSpot)
HubSpotは、中堅中小企業を対象に、マーケティング、営業、コンテンツ管理、カスタマーサービスなどのクラウドサービスを展開する企業です。無料のCRMを中心としたHubSpotのCRMプラットフォームは、さまざまツールとの連携機能を備えています。
HubSpotのアプリマーケットプレイスでは、HubSpotと接続できる1000を超える無料、有料のアプリが提供されているため、ユーザー企業はスピーディーにビジネスを拡張できます。着実にエコシステムを拡大し、プラットフォームとしての価値を高め続けているのです。
BtoBSaaS企業がいるIoT領域のプラットフォームは、錚々たるビッグプレーヤーがいるため、ビジネスチャンスがあまりないように見えるかもしれません。しかし以下の図のように、プラットフォーム数は業界によってばらつきはあります。ニッチな分野にしぼったプラットフォームになることを目指してもよいでしょう。
(出典:総務省)
大手プラットフォームは、あらゆるユーザー層や企業を集めての事業拡大を目指すため、特定の業界やターゲットに適したサービスを提供できない可能性が高いです。また、専門性を持つBtoB企業は、ニッチな分野に焦点を当てたプラットフォームを構築できるでしょう。業界のほか、顧客属性や地域などをしぼり、自社が優位に立てるプラットフォーム領域を検討してみてください。
(出典:Autodesk)
たとえば、 3D 技術を使ったデザイン・設計やエンジニアリング向けのソフトウェアを提供するAutodesk社は、建設管理プラットフォーム「Construction Cloud」を提供しています。ユーザーはプラットフォーム上で、設計から計画、施工、運用まで、建設の全フェーズにわたるワークフローを効率化できます。
また、SalesforceやHubSpotのようなエコシステムが用意されているのも特徴です。そこではパートナー企業によるアプリケーションが開発されており、ユーザーはConstruction Cloudとアプリケーションを簡単に接続できます。
(出典:Clora)
Cloraは製薬、バイオテクノロジー、医療機器業界に属する優秀な人材と企業をマッチングさせるプラットフォームです。企業が求める人材の条件を入力すると、高精度のAIが条件に合致した人材を選出。実際に雇用が開始した場合に、仲介手数料が発生します。
これら2つの海外事例のように、大手プラットフォームではなくても、自社の専門領域に特化したニッチなプラットフォームを構築することで、戦略的にプラットフォームビジネスを展開できます。
まだ歴史が浅く、大手企業がひしめき合っているとはいえ、チャンスも多いプラットフォームビジネス。日本でもプラットフォーマーを目指す企業、プラットフォームを積極的に活用して成長していく企業はますます増えていくでしょう。
DXすらなかなか進まない日本ですが、BtoBSaaSでもニッチな領域に特化したプラットフォームビジネスで成功するチャンスは、まだまだ残っているかと思います。
繰り返しになりますが、プラットフォームのビジネスモデル自体はシンプル。ニッチな自社が特化している領域を発見して、プラットフォームを目指す選択肢は有りです。