BtoB企業がオーガニック検索(サーチ)を増やす方法とは?

2021/04/22
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規模が小さく無名のBtoB企業がビジネスで勝ち抜いていくのは本当に大変です。大手有名企業と比べるとブランド力、企業体力、信頼性などはないに等しいといってもよいくらいの差があるでしょう。

インターネットが中小企業、無名企業の強い味方になるはずでした。ただし、これも情報発信力があればという条件つきであり、簡単そうで難しい課題があります。

とはいえ、最近、Google検索してあまりに似たようなコンテンツばかり出てきてがっかりした経験のある方なら共感してくれると思うのですが、まだまだ国内BtoB市場のオンラインマーケティング施策は、改善の余地が数多くあります。真剣に取り組めば頭一つ抜け出ることはできるでしょう。

マーケティングで重要な自社Webサイト、ブログなどで過不足のない情報を発信しているでしょうか?

見込み客が検索するようなキーワード設定ができているでしょうか?
そもそも、オンラインの向こう側にいる見込み客は、どのような人なのか理解できているでしょうか?

本記事では、BtoB企業がオーガニック検索(サーチ)を増やす方法を解説します。

オーガニック検索(サーチ)とは?

オーガニック検索(サーチ)とは、GoogleやYahoo!などの検索エンジンでユーザーが何らかのキーワードで検索すると、検索エンジン独自のアルゴリズム(リンク、ドメイン・オーソリティ、ユーザーの検索クエリとの関連性)によって、自動的に表示順位が決まる検索の仕組を指します。別名「自然検索」とも呼ばれます。

 

オーガニック検索結果

 

通常、検索エンジンの検索結果ページには、一番上の位置に小さく「広告」と明示されているサイトが表示され、次にキーワードによっては強調スニペット(枠に囲まれて強調されているサイト)が表示され、その下にサイト一覧(オーガニック検索の結果)が表示されます。

BtoB企業がオーガニック検索(サーチ)を増やすことが大切な理由

検索エンジンのアルゴリズムの基準は定期的にアップデートされるものの志向していることは同じです。検索順位の上位には「特定のキーワードが求めていることに対して最も適切な情報がある」と判断されたサイトが並びます。

人は広告よりも自然検索を好む

有料広告で1ページ目の一番上に表示することは可能です。しかし、説明するまでもなく人は広告は広告、記事は記事と区別して捉えます。

米国MarketingSherpaが行った調査では、ユーザーがクリックするリンクの70%がオーガニックであり、多くのユーザーは広告よりもオーガニック検索を介してサイトを訪問する傾向が強いことが示唆されています。

 

オーガニック検索と広告検索へのクリック率

(参照:Searchengine watch(英語)

信頼性アップ&サイト訪問者増加

検索エンジンを上位表示させる基準や精度には、昔から疑問の声が多々出ています。それでも上位サイトは検索エンジンのお墨付きを得ているわけであり、信頼性は高く、1ページ目に表示されると、オーガニック検索経由のトラフィックが著しく増加します。

以下は米国Optinmonster(英語)より引用したGoogleのデータですが、1位は言うまでもなく突出しています。10位以内と10位以下のトラフィックの差は、たった1クリックするかしないかの差にもかかわらず相当な差があります。

自社にとって重要なキーワードで検索結果の1ページ目に上位表示されるか否かが(キーワードの選定が正しければ)、いかにサイト訪問者の数、コンバージョン、最終的な成果(売上)に大きく影響するかがわかります。

 

オーガニック検索への順位に対するCTR

(出典:Optinmonster

より多く潜在見込み客を惹きつけることができる

冒頭でお伝えした通り、多くのBtoB企業の名前や製品サービス名は世の中に知られていません。そのような自社名を知らない潜在見込み客をより多く惹きつけるためには、企業名や製品サービス名を調べられる状態になる前段階の人たちに見つけてもらえる仕組みが必要。

たとえば、「〇〇株式会社 〇〇ソフトウェア」と調べる人より「業務効率 改善方法」と調べる人の方が多いことは想像がつくかと思います。このようにオーガニック検索する人たちのほとんどは、自分でもわからない課題解決をしようとしてあれやこれやと検索窓に検索ワードを入力します。

「業務効率 改善方法」「業務効率 改善メリット」「業務効率 ツール」「業務効率化 サービス」といった具合です。

このような潜在見込み客にいち早くオーガニック検索を通じて見つけてもらい、お客様にとって役に立つ情報(自社よがりのアピール記事は不必要)を提供することが大切です。これによりソートリーダーシップ(先見性)を発揮し、信頼を勝ち取ることができるでしょう。

オーガニック検索とよく対比されるコトガラ

オーガニック検索は、検索時のキーワード入力の選び方で「指名検索」とよく対比され、課金されるか否かという基準で「Paid有料検索結果」と対比されます。ここではその違いを解説します。

オーガニック検索と対比される行動:指名検索とは?

指名検索とは、文字通り名前(固有名詞)を指定して検索することです。たとえばパソコンを購入しようと思ったときに「マック」「アップル」「レノボ (Lenovo)」といったブランド名、社名で検索することを指します。

また、BtoBであれば「〇〇株式会社 (サービス名)」のような検索のされ方や、「〇〇株式会社 導入事例」「〇〇株式会社 価格」のような検索も頻繁にされ、これらも一種の指名検索ということができるかもしれません。

一方、オーガニック検索は普通名詞や口語体で検索します。パソコンを買いたいものの予算やスペックの詳細が決まっていない人は「パソコン おすすめ」「パソコン 価格」などのキーワードで検索し情報のアウトラインをつかもうとします。「パソコンって何?」という人(いないとは思いますが)は「パソコンとは?」と検索するでしょう。

指名検索をする人は、すでにどのブランドのパソコンにするか、どの会社のパソコンを買うかのめどをつけています。当然、社名、製品・サービス名が知られていないと指名検索は起こらないので、企業から見れば指名検索されることは、広告宣伝、マーケティング施策の結実だといえるでしょう。

オーガニック検索と対比されるチャネル:広告/ペイド流入とは?

「広告/ペイド流入」とは、広告宣伝費をかけて検索結果のページに自社サイトを上位表示させトラフィックを増やすことです。

たとえばGoogle、ヤフー等の検索エンジンで「コンサルティングファーム」で検索すると「コンサルティング案件のマッチングサイト」の広告、「コンサルティング企業」で検索すると「MBAスクール」の広告が検索結果の最上部に表示されたりします。

企業によっては、競合企業の社名の指名検索を行った検索結果に自社サイトを表示させる戦術をとる場合もあります。

 

Google広告の位置

 

「広告」というマークつきではあり、オーガニック検索結果よりクリック率は低いとしても、1ページに表示されますので一定のトラフィックの流入が期待できます。

見込み客が入力しそうなキーワードの検索結果に広告を掲載することで、時間をあまりかけずに見込み客に自社を認知してもらい、自社サイトに訪問してもらえるのは大きな魅力でしょう。

オーガニック検索(サーチ)を増やすため基本的な考え方

BtoB市場においてオーガニック検索(サーチ)を増やすための基本的な考え方は2つ。見込み客が検索しそうなキーワードを正しく予測して、質問の答えを見つけるためにサイトにたどりついた見込み客の期待にこたえるコンテンツを用意しておくことです。

とてもシンプルな理屈ですが、実際に見込み客が求めているキーワードを理解して過不足ないコンテンツを提供できている企業は少ないのが今の状況かもしれません。検索すると、似たり寄ったりのジェネリックな検索結果が出てきます。

 

デジタルマーケティング検索結果

 

大概は検索エンジンに自然検索されるためだけのコンテンツ作りになっており、自社の業界、製品機能、ペルソナ(架空の理想の顧客像)を完全に無視した情報が掲載されています。これでは見込み客を惹きつけることは難しいでしょう。今一度、ペルソナの設定とキーワードの選定を見直す必要があります。

業界や経済政治情勢などのマクロ環境の変化を理解すること

まず、見込み客は何を思いどのようなキーワードで検索するのかには、マクロ環境、その企業の業界の動向はもちろん経済政治情勢の動きもかなり影響します。

たとえば、2019年までは「在宅勤務」というニーズは少なかったところに、オリンピックの開催を前にした政治主導、そしてはからずもコロナが後押しするかたちで、2020年のたった何カ月かであっというまに在宅ワークが一般化しました。

Zoom等のWeb会議システム、テレワークなども同様です。印鑑と電子契約システムの例が顕著ですが、官公庁が導入を進めるとこれまで遅々として進まなかったのが嘘のように普及していくことがあります。

一方、航空、旅行、飲食業界は国が支援しても厳しい状況です。政治でもカバーできないほど経済の落ち込みの影響が大きいわけです。

マクロ環境が大きく変わるときには、PEST分析をやり直し、自社の位置づけはもちろん、経済政治情勢によってどのような新たなニーズができてきたのか、ユーザー(見込み客)はどう動くのか予測しなおす必要があるでしょう。その上で新たなキーワードを新しく設定していくことが大切です。

PEST分析:Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の影響を分析するマクロ環境分析フレームワーク

 

PEST分析のフレームワーク

ァンクションアウトではなくマーケットインを前提とすること

BtoB企業の関連する事業で、ファンクションアウト(機能から始まる)の思考でオーガニック検索(サーチ)をしてもらうことは、ほぼ不可能と言ってもよいでしょう。機能検索をする人はよほどのテッキーもしくは、競合企業です。

多くの人の検索アクションは「課題ベース」だからです。検索エンジンは何かについて知りたい、情報をサーチしたい方が利用します。オーガニックを増やすためには、自社サイトに訪れていただきたい見込み客の課題をイメージしてキーワードを想定する必要があります。

例:

  • 「SFA おすすめ」より「営業 売上アップ」
  • 「HRテック AI搭載」より「活躍する人材 見抜く」「採用コスト 削減」
  • ABM 顧客分析」より「大型顧客 新規獲得
  • 「MA スコアリング機能」より「新規開拓営業 タイミング」

ニッチなキーワードにするとサイト流入者は少なくなりますが、顧客化率は高くなる傾向があります。見込み客が絞りやすいBtoBについてはロングテールを中心にすることがベターだと考えます。

 

ビックワードとロングテールの違い

ペルソナとカスタマージャーニーを絞り込むこと

トラフィックの流入目的とはいえ、あまりに対象を幅広くしてしまうと潜在見込み客以外の層の流入が多くなってしまい、最終的に顧客となる数が期待どおりに伸びない課題が出てきます。ここで重要になるのがペルソナ(架空の理想の顧客像)とカスタマージャーニーの設定です。

ペルソナカスタマージャーニーを理解することによって、指名検索ができない状態の人たちに対しても適切なコンテンツを提供し、トラフィックを増やすことができます。逆にいうとマーケティング施策の前にペルソナを設定して見込み客がどのような人物像かわかってはじめて、見込み客が検索するキーワード、訪れるチャネルがわかるともいえるでしょう。

もちろん、見込み客といってもいろいろな検討段階の人がいますので、一貫性をもったコンテンツマーケティングファネルにそって各層に対して提供していくことがポイントです。質の高いコンテンツを提供することで、期待しているトラフィックを獲得することができるでしょう。

 

 

 

 

パーチェスファネル

 

オーガニック検索(サーチ)を増やす方法

オーガニックを増やすためには検索エンジンの上位に自社サイトを表示させる必要があります。その最上位の施策は、間違いなくコンテンツの拡充であるといえるでしょう。

もちろん、他の要素も影響します。以下のFirstpagesage(英語)の2020年時点のgoogleのランキングの要素「The 2021 Google Algorithm Ranking Factors」を見るとさまざまな指標があります。
それでも、トップは「高い品質のコンテンツ」26%であることに留意しましょう。

上位1~5位

  • 1位 Consistent Publication of Engaging Content    26%
    一貫性のある魅力的なコンテンツの提供
  • 2位 Keywords in Meta Title Tags    22%
    メタタイトルタグのキーワード 。上位表示をめざすキーワードを盛り込む
  • 3位 Backlinks             16%
    バックリンク。外部のサイトから多くリンクを集める
  • 4位 Niche Expertise    12%
     ニッチな領域に特化したキーワード設定と10以上の権威あるハブ頁作成
  • 5位 Internal Links        5%

    サイト内の関連ページにリンクをはること。訪問者がサイト内で情報を見つけやすい(検索エンジンクローラーが巡回しやすい)構造に最適化する。

 

Googleアルゴリズムの要素

       (出典:Firstpagesage


自社ブログなどのオウンドメディアの運営を進める

ブログはオーガニック検索を増やすための最も早い方法の一つです。ブログ記事のクオリティが高ければ、検索エンジンは執筆者をその分野の専門家として位置づけます。見込み客のニーズに応えるようなブログ記事を書いていくことで、一度訪れたユーザーはリピート読者となり、トラフィックは増え続けます。

ブログのキーワードの選定も大切です。前述のようにマクロな環境が変われば新しい関連キーワードが出現します。ペルソナが検索するキーワードを時代とともに更新して高品質のコンテンツを時間かけて作成べきです。

なお、コンテンツはブログの記事だけを指すのではなく、各種広告、パンフレット、eBook、音声、動画、セミナー、ウェビナー、カンファレンスなどお客様にとって役に立つ情報すべてを指す言葉です。ブログはその中でも比較的手軽にはじめられ、コンテンツの蓄積によって多大な効果を生み出せるコンテンツなためおすすめしています。

ウェブサイトの拡充と最適化を進める

自社ウェブサイトは俗にコーポレートサイトと呼ばれ、プロダクト、会社の経歴など自社情報メインです。企業中心のウェブサイト情報に偏っており、指名検索しないとなかなか到達できないことが多いでしょう。つまり、BtoBのウェブサイトは決定段階の見込み客向けコンテンツが大半なのです。

一方、ブログなどのオウンドメディアのほとんどの記事は一般に間口を広くしますので訪れる人はトップオブファネル(興味関心段階)の層が多数です。そこからいきなり公式サイトに移動しても、あまり理解できない情報、必要でない情報が多いように感じるでしょう。母体がしっかりしているかどうかの参考になるくらいです。

そのため、自社サイトにも多少の非指名検索のトラフィックをを呼び込むためのコンテンツをある程度持つ必要性があります。オウンドメディアとの関係を理解し、SEO戦略(ドメイン戦略)を充実させて、オウンドメディア(非指名検索≒オーガニック)と指名検索の関連性を強めることによって、相乗効果的により多くのオーガニックを期待できます。

オーガニック”ソーシャル向け”の企画を進める

ソーシャルメディアからの非広告/ペイド流入もオーガニックと近しい性質を持っています。また、昨今のフェイスブック、Twitter、YouTubeなどのアカウントの増加状況を見れば、ソーシャルメディアからオーガニック的に発生する流入を生み出すコンテンツを作る重要性を理解していただけると思います。

ソーシャルメディアのユーザーはすでに個人情報の詳細がわかっている人たちなので、検索エンジンと比べると絞り込んだ層にリーチが可能です。ただし、自身のネットの活用を振り返ればわかるように、ソーシャルメディア内で完結できるリサーチは僅かです。

2019年の米国のAscendの調査(英語)によると、オーガニック検索だけで結果がでたのは5%、ソーシャルメディアだけでは1%、オーガニック検索とソーシャルメディアを同じ比率で組み合わせて結果が出たケースは45%。どちらかだけでなく組み合わせたほうが効果が出ています。

 

オーガニック検索とソーシャルの組み合わせ2

 

発想のヒント、発見、情報の拡散などさまざまな用途に活用できるソーシャルメディアですが、検索エンジンとは異なる角度から情報に切り込むプラットフォームと位置付けて、組み合わせて活用することが今時点ではよりよい結果につながります。

まとめ

BtoB企業がオーガニック検索を増やすにためのテクニックは、検索エンジンの基準がアップデートされるに伴いどんどん変化します。しかし、Googleなどの検索エンジンが目指していることと企業が志向していることの本質は同じです。

何かを知りたいと思ってキーワードを入力して探している人に最適な情報を届けることにほかなりません。最適な情報を届けるためには自社の見込み客が誰かを知っていなくてはなりません。

ペルソナの解像度を高くする。ペルソナの課題を理解してキーワードを設定する。マーケティングファネルに沿って最適で高品質なコンテンツを提供する。飛び道具はありませんが、このような地道なタスクを手を抜かず積み重ねていくことがオーガニック検索を増やすことにつながります。

 

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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