ホワイトペーパーの作り方をステップで解説!ホワイトペーパーの事例や制作上のポイントも紹介

2024/04/11
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BtoB企業において、データや調査結果を用いて業界の動向や課題に対する解決策などを論じられるホワイトペーパーは、重要なコンテンツです。ファストマーケティングの調査によれば、回答者の多くが「月に平均2~3本のホワイトペーパーをダウンロードする」と回答しており、購買プロセスにおける重要な情報源となっていることがわかります。

特に複数の意思決定者が関与するBtoB領域では、印刷可能なホワイトペーパーのメリットが大きく、上層部にも目を通してもらえる可能性が高まります。しかしながら、同調査では約7割の回答者がホワイトペーパーの内容に失望したことがあると回答しており、中身が薄ければ逆効果になりかねません。

そこで問題となるのが、いかにして顧客を商談へと導くことのできるホワイトペーパーを制作するかということです。本記事では、ホワイトペーパー作成に悩む担当者の方々に向けて、ホワイトペーパーの重要性、作り方、制作のポイント、実際の事例までを、わかりやすくご紹介していきます。

ホワイトペーパーとは

ホワイトペーパーとは、企業が自社の製品・サービス、技術、調査結果などについて専門的かつ客観的な観点から解説したレポートのことを指します。単なる製品カタログやパンフレットとは異なり、特定のトピックに関する課題とその解決策を提示することで、読者の理解を深め、興味関心を醸成することが目的です。

ポイントは、自社の製品・サービスを露骨に宣伝するのではなく、中立的な立場から事実やデータを示しながら、自社製品の有用性を説得力を持って訴求することにあります。質の高いホワイトペーパーには、業界動向や課題、ベストプラクティスなどの背景情報が盛り込まれ、自社の製品・サービス・アプローチがいかにそうした課題解決につながるかが具体的に示されているのです。

近年ではPDFでのオンライン配信が一般的になり、多くの企業が連絡先情報と引き換えにホワイトペーパーのダウンロードを許可することで、リード獲得の有力なツールとして活用しています。

ホワイトペーパーとeBookの違い

ホワイトペーパーとeBookは、一見すると類似しているように思われますが、その目的と性質は大きく異なります。

eBookの主な役割は、企業の製品やサービスの具体的な特徴やメリットを直接的に記載し、販売促進を図ることにあります。つまり、商品理解のための入門書的な位置付けで、比較的ライトでわかりやすい内容になっているのが一般的です。

一方、ホワイトペーパーの目的は企業の製品やサービスを露骨に宣伝することではありません。むしろ、中立的な立場から読者に対して専門的で信頼できる情報を提供し、業界の課題や動向に関する理解を深めてもらうことが最優先されます。

そのため、ホワイトペーパーには高度な知識や専門用語が多用され、掘り下げた内容になっています。業界の深堀りした課題に対するインサイトや専門的な解決策が提示され、読者には一定の予備知識が求められます。ホワイトペーパーとeBookの違い

ホワイトペーパー作成の重要性

なぜホワイトペーパーの作成が企業にとって重要なのでしょうか。その理由は主に3つあげられます。

第一に、ホワイトペーパーは優れたコンテンツとして機能し、顧客との信頼関係の構築に役立つからです。単に製品の宣伝だけでなく、業界の動向や課題を踏まえた上で、自社のソリューションを提示することで、読者のペインポイントに的確に対処できます。

株式会社リンクアンドパートナーズの調査

(出典:株式会社リンクアンドパートナーズ)

株式会社リンクアンドパートナーズの調査によれば、回答者の過半数が「ホワイトペーパーダウンロード後に商談まで至ったことがある」と回答しています。同様にDemand Genによる調査でも、BtoB購買担当者の71%が「ホワイトペーパーが購入の意思決定に影響を与える」と見なしていることがわかりました。ホワイトペーパーは、商談化率の高いリード獲得コンテンツとして機能するのです。

第二に、ホワイトペーパーは自社の権威性を高められるためです。Edelmanの調査によれば、景気が悪いときは質の高いソートリーダーシップコンテンツが従来の広告やマーケティングよりも効果的とのこと。景気が悪いときは、取引先の予算が少なくなり、必要性の低い製品サービスは切り捨てられる可能性が高いです。データに裏打ちされた研究結果や知見をまとめたホワイトペーパーは、自社の権威性を高め、お客様の信頼を勝ち取れることでしょう。

第三に、ホワイトペーパーは意思決定者の目に触れる可能性が高いためです。筆者の肌感ですが、レガシー企業や伝統を重視する大企業においては、ウェブコンテンツが意思決定の上部層に見られるケースは多くありません。見られたとしても、軽視される傾向にあります。PDF形式のホワイトペーパーならば、紙の資料として印刷でき、論理的かつ説得力の高い内容のため、意思決定者の検討材料として活用してもらえます。

ホワイトペーパーの種類

ホワイトペーパーの種類は大きく5つに分けられます。ここからは、各ホワイトペーパーの特徴を見ていきましょう。

ホワイトペーパーの種類

問題解決型

問題解決型のホワイトペーパーは、特定の業界や分野における課題や問題点に焦点を当て、革新的なアプローチで解決策を提示することを目的としています。まずは現状の問題の本質を的確に捉え、具体的なデータや事例を交えて説明することで、読者の問題意識を高めます。その上で、自社が実施した調査結果やデータ分析に基づき、効果的な問題解決方法を提案するのが一般的なパターンです。

このタイプのホワイトペーパーでは、ターゲット顧客の実態に即した具体例を示したり、数値データを活用したりするなど、わかりやすさと説得力の両立が肝心です。読者の実際の課題に直接アプローチし、自社の優れた問題解決力を前面に打ち出すことで、顧客の問題意識の喚起と自社の優位性アピールを同時に実現できます。

ソートリーダーシップ型

「ソートリーダーシップ」とは、特定の業界や分野においてリーダー的な存在となり、新しい考え方やビジョンを主導して提唱していくことを指します。ソートリーダーシップ型のホワイトペーパーは、業界の共通の課題に対し、自社の先進的な発想やソリューションを提案することを目的としています。

単なる現状分析にとどまらず、革新的な視点から解決策を示すことが重視されます。提案の裏付けとして、データ分析結果や専門家の見解なども適宜盛り込まれますが、一方で過剰に個性的な主張は避けなければいけません。

このタイプでは自社の優位性や先見性を前面に打ち出し、業界の将来像を描きながら新しいコンセプトやアプローチを提唱することが重要です。それにより読者に新たな可能性や機会を提示し、関心を惹きつけられます。

特に業界の第一人者から発信される場合、より高い説得力と信頼性を持ち、新規顧客開拓や既存顧客との関係強化に有効な手段となるでしょう。

エデュケーショナル型

エデュケーショナル型のホワイトペーパーは、製品やサービスに関する基本的な概念や仕組み、機能などを初心者向けにわかりやすく解説することが目的です。ただし、自社製品を露骨に宣伝するのではなく、データや調査結果を交えながら中立的な立場を維持する必要があります。たとえば、SFAツールベンダーの場合でも、自社SFAの機能ではなく、一般的なSFAの重要性や活用方法などを丁寧に説明します。

製品やサービスへの理解が深まれば、読者の興味関心や購買意欲を高められるでしょう。エデュケーショナル型ホワイトペーパーでは、読者に資料を保持し続けてもらい、製品選定時の参考ガイドとして活用してもらうことが狙いです。そのため、ウェブサイトに掲載するだけでなく、良質なリードにはDM送付するなどの工夫が効果的でしょう。

技術紹介型

技術紹介型のホワイトペーパーは、自社の技術や製品機能について、専門的視点から詳細に解説したものです。ターゲットは専門家や技術者層なので、高度な専門知識と理論的な内容が求められます。

具体的には、製品の基本原理や技術的背景、最新の研究動向などを丁寧に解き明かしながら、自社技術の優位性や独自性をアピールします。単なる製品機能の説明にとどまらず、その技術が競合優位性を持ち、どのように読者の課題を解決するのかを示す必要があります。

専門用語の適切な使用、数式・図解・実験データなど視覚資料の効果的な活用が重要です。一方で、あまりにも難解でわかりづらい表現は避ける必要があります。専門性と平易さのバランスが肝心です。

技術紹介型ホワイトペーパーは、企業の研究開発力や技術力の高さをアピールする格好の機会となるでしょう。内容の質が高ければ高いほど、専門家からの信頼性確保や新規顧客開拓、優秀な人材確保につながる可能性があります。

マーケットリサーチ型

マーケットリサーチ型のホワイトペーパーは、ある特定の業界や市場における動向、規模、消費者行動などを徹底的に調査・分析した内容をまとめたものです。クライアント企業の事業活動に役立つ客観的なデータや、将来予測の提供が主な目的となります。

市場の現状や課題、成長の兆しなどに関する詳細なデータ分析に加え、専門家の示唆に富んだ見解やインサイトを盛り込むことが重要です。読者がビジネス上の重要な気づきを得て、経営判断や戦略立案の参考となるような、有益で実践的な情報の提供を心がける必要があります。

ホワイトペーパーの作り方8ステップを紹介

質の高く信頼性の高いホワイトペーパーを制作するには、適切なプロセスを踏む必要があります。ここからは、効果的なホワイトペーパー作成に向けた8ステップをご紹介します。

STEP①:作成の目的と情報を届ける流れを設計する

まずは、ホワイトペーパー作成の目的と、それを誰にどのように届けるかを明確にしましょう。ホワイトペーパーの主役は自社ではなく「読者」です。ターゲット読者層は誰か、彼らが抱える課題や不安、求めている解決策は何かを理解したうえで、自社がどのような価値を提供できるかを見極める必要があります。

目的が定まれば、ホワイトペーパーの種類や収集すべき情報、設置チャネルも決まってきます。たとえば、新規見込み客獲得が目的なら、自社のターゲット層がよく訪れるメディアにホワイトペーパーを掲載する。既存リードのナーチャリングが目的なら、自社ウェブサイトやメールマガジンで告知するなどです。

自社データを分析し、リードや潜在顧客がどこにいるのかを分析しましょう。顧客がいるところにホワイトペーパーを設置すれば、多くの人に見てもらえるようになります。

STEP②:ホワイトペーパーのトピックを選定する

次に、ホワイトペーパーで取り扱うトピックを選定する必要があります。読者のニーズやペインポイントを踏まえた上で、業界で注目されているトピックや自社の強みを活かせる分野を中心に選ぶのが一般的です。単に自社が伝えたいことだけを扱っていては、多くの人に見てもらえるコンテンツにはなりません。

ホワイトペーパーのトピックを選定する

また、競合他社の既存の公開資料も確認し、自社の差別化ポイントを明確にしておくことが重要です。これにより、後から競合と重複していたというリスクを回避できます。3C分析のように、読者のニーズ、自社ビジネスの関連性、競合との差別化の3点を意識しながらトピックを選定しましょう。単なる流行りのキーワード選びにとどまらず、読者層の本当のニーズに応えられる有益なトピックを見極めることが肝心です。

STEP③:読者のニーズと伝えたいことを整理する

ホワイトペーパーのトピックが決まれば、次は読者が何を求め、何を知りたがっているのかを明確にする必要があります。同時に、自社として読者に何を伝え、理解してもらいたいのかも整理しましょう。このステップを通じて、ホワイトペーパー全体の目的と構成の方向性が見えてくるはずです。

読者ニーズについては、選定したトピックに即して、さらに詳細な分析と仮説立てを行います。一方の自社メッセージとしては、製品の機能やソリューションはもちろん、自社の強みや優位性、さらには提唱したい新しい概念やアプローチなども洗い出します。双方を綿密に整理することで、本文のコンテンツとメッセージの中身が次第に明確になっていくでしょう。

STEP④:トピックに関する情報収集・調査を行う

ホワイトペーパーのトピックと伝えるべき内容の方向性が定まれば、次は具体的な情報収集と調査に入ります。ポイントは、できる限り幅広く情報を収集し、徹底した下調べを行うことです。

業界レポートやアナリストの見解、関連する論文や資料、統計データなどを漏れなく収集・精査します。加えて、自社の経営層やマネージャーなどにもヒアリングを行い、社内の貴重なノウハウや知見も集める必要があります。さらに状況に応じて、ユーザー調査や業界専門家へのヒアリングも実施し、生の声も収集するとよいでしょう。こうした地道な情報収集を怠らず、トピックの本質を掴むための徹底した準備作業に取り組みます。

必要な情報の種類は、ホワイトペーパーの種類によって異なります。技術紹介型なら狭い範囲の収集で済みますが、問題解決型やマーケットリサーチ型では、ターゲット層を対象にしたアンケート調査やヒアリングなど広範な情報収集が求められます。

STEP⑤:ホワイトペーパーの全体構成を検討する

十分な情報収集と準備を経て、ホワイトペーパーの構成を検討する段階です。収集した知見と伝えるべきポイントを整理しながら、導入部から本編、そして結論に至るまでの論理的な構成を立てていきましょう。

まずは大まかな骨子を決め、各要素が自然につながるよう全体のバランスを意識します。一般的なホワイトペーパーの主な構成要素は以下の通りです。

  • タイトルページ
  • 導入
  • 背景
  • 提案・ソリューション
  • 結論

読者の理解を促す自然な流れを心がけつつ、説得力とインパクトのある展開を意識しましょう。本編においてどの論点が主要なものか、そしてそれらに対する解決策や提案をどの順序で提示するかなどを検討します。

STEP⑥:ホワイトペーパーの資料フォーマットを作成する

質の高いホワイトペーパーは細部にまで気が配られています。構成の大枠が固まったら、ホワイトペーパーの体裁や見た目についてのフォーマット設計に入りましょう。読みやすさとブランディングの両方を意識し、適切な資料のレイアウトを検討する必要があります。

フォントや文字サイズ、文体、行間、ページ番号表示のルールなどを統一するとともに、見出しや出典のつけ方も決めます。あわせて企業のロゴや配色などブランディング要素も適切に反映させ、シンプルながらも魅力的なデザインを目指します。

STEP⑦:コンテンツの作成と落とし込み

設計した構成とフォーマットに基づき、いよいよホワイトペーパーの本文コンテンツを作成していきます。このステップで重要なポイントは以下の3つです。

1.常に読者を意識する

優れたホワイトペーパーでは、同じ内容でも読者によって情報の解像度が変わります。初心者向けには背景や用語解説を丁寧に行い、本題に入る前に読者の準備を整える必要がありますが、専門家向けであればそういった前提は不要です。読者のレベルに合わせて適切な情報解像度を保つことが大切です。

みずほリサーチ&テクノロジーのホワイトペーパー

(出典:みずほリサーチ&テクノロジーズ)

たとえば、みずほリサーチ&テクノロジーズは「電車の中で座るための戦略とアクションプラン」というユニークなホワイトペーパーを公開しました。ターゲットは首都圏の電車に乗る人であり、当然ながら知識のレベルはさまざまです。そのため、ブルーオーシャン戦略プロスペクト理論などの専門用語は丁寧に解説されており、誰でも読みやすい内容になっています。

一方、格式ばった文体で、専門用語が多く使われたホワイトペーパーもあります。このように、読者のレベルに合わせて情報の解像度を合わせなければいけません。

2.結論を先に書く

日本語の一般的な文章構成とは異なり、ホワイトペーパーでは結論から提示する方が読者の理解を促進します。結論が最後にくると、読者は何を伝えたいのかわからず、結論に向かうまでの途中で「そもそも内容が本当なのか」という疑問を抱えるかもしれません。そうした心理的負荷を避けるため、「結論ファースト」を意識しましょう。

3.データや数値を効果的に活用する

ホワイトペーパーでは客観的なデータや数値を用いて説得力を高める必要がありますが、それだけでは不十分です。「○○のデータから△△の解決策が提示できる」のように、データの意味や重要性を確実に説明し、読者への理解を促しましょう。

STEP⑧:タイトルの設定とLP(ランディングページ)の準備

ホワイトペーパー本体が完成したら、最後に適切なタイトルを設定し、ランディングページ(LP)の制作に取り掛かります。

タイトルはホワイトペーパーの内容をよく表し、読者の関心を惹きつけられるキャッチーなものを選びます。初めのうちはタイトル設定に悩むことでしょう。その際のひとつの手法として、実際に自分の興味がそそられた既存の記事やホワイトペーパー、書籍のタイトルから、優れている点を言語化するというアプローチがあります。

たとえばMcKinsey & Companyの「社会で子供を育てる デザイン思考を活用した里親養育推進」というタイトルからは、以下のような学びが得られます。

  • 「社会で子供を育てる」という言葉から、里親制度や社会的養護の重要課題が明確に示されている。(課題の明確化)
  • 「デザイン思考を活用した」という部分で、従来とは異なる創造的な問題解決アプローチが提示されている。(革新的なアプローチの提案)
  • 簡潔でわかりやすい表現が用いられ、要点が伝わりやすい。

このように、優れたタイトルから学びを得ながら、簡潔でわかりやすい表現を心がけつつ、課題を明確化したり関心を引く新しい概念を取り入れたりするなど、自社のホワイトペーパーにふさわしいタイトル設定を検討しましょう。

一方のLPでは、ホワイトペーパーの概要とメリットを簡潔に説明し、ダウンロードへと誘導します。リード獲得を目的とする場合は、氏名・メールアドレスの入力フォームを設置しましょう。

ただし、最近は「ホワイトペーパーをダウンロードしたら、すぐに電話がかかってくるのでは?」という心理から、ダウンロードしない担当者が増加しているように思われます。またコンサルティングなどのビジネスであれば、ノウハウや知見を広く発信して信頼性を高めることが重要なため、あえてフォームを設けずに一般公開するケースも増えています。

ホワイトペーパーのコンテンツ構成要素

ホワイトペーパーの基本の構成要素をご紹介します。ホワイトペーパー作成に慣れていない場合は、これらの構成要素を意識しながら作成してみてください。

タイトルページ

タイトルページはホワイトペーパー全体の顔となる重要な部分です。まずタイトル自体が内容を的確に表しているか、そして読者の関心を惹きつけられるキャッチーなものになっているかがポイントです。

また、タイトルページには企業名やロゴ、発行年月日なども明記する必要があります。場合によっては専門家による監修を受けていることも記載し、信頼性を高める工夫をしましょう。

さらに、コーポレートカラーなどブランディング要素も適切に反映させる必要があります。タイトルページ一枚でホワイトペーパー全体の品質が伝わるよう、慎重なデザインが欠かせません。

導入

導入部は、読者が必ず目にする最初の部分であり、続きを読む意欲を喚起する重要な役割を担っています。ここでは、ホワイトペーパーの目的を明確に記載する必要があります。たとえば、「○○という課題解決に向けた5つのアプローチを提言する」や「弊社の製品○○に関する技術的詳細をご紹介する」などと、簡潔且つ的確な表現で核心を伝えましょう。

あわせて、トピックとなる課題や問題点を指摘したり、業界動向などの背景情報を要領よく示したりすることで、読者の問題意識を喚起します。こうして本ホワイトペーパーの役割と目標を明示し、読み進める意欲につなげていきます。

背景

背景の項では、ホワイトペーパーのトピックに関する現状の課題や問題点、業界動向などを詳しく解説します。この部分が本文の本番に向けた導入部分ともいえます。

具体的なデータや事例、専門家の見解なども活用しながら、現状を多角的に分析・提示していきます。根拠のあるデータや数値を意識的に盛り込むことで、読者に課題の本質と重要性を理解してもらえるよう心がけましょう。

提案・ソリューション

ホワイトペーパーの中核となる部分です。ここでは自社の製品・サービス、ソリューション、アプローチなどを活用して、いかに課題を解決できるのかを具体的に提案・解説していきます。

自社の強みや優位性、独自の革新的なアプローチの有効性などをしっかりとアピールすることが重要です。一方で、露骨な製品の宣伝にとどまらず、中立的な立場から客観的な解説を心がける必要があります。専門用語を適切に用いつつ、平易でわかりやすい言葉遣いを両立させましょう。

さらに、現場での実例や具体的な活用事例、期待できるメリットなどの実践的な情報も盛り込みながら、提案の説得力を高めていくことが大切です。図解やイラストなども効果的に取り入れ、視覚的にも読者の理解を促しましょう。

結論

結論部分では、これまでの内容を改めて要約し、全体のまとめを行います。読者の中には、導入と結論部分を軽く読んでから本文に進む方も多いため、簡潔ながらもわかりやすく、本ホワイトペーパーからどのようなポイントが得られたのかを印象付けられるよう心がける必要があります。

あわせて、読者が享受できるメリットや、今後の具体的な行動を呼びかける内容を盛り込むことも重要なポイントです。結論部分が適切に読者の行動喚起や説得につながるかどうか、十分なチェックが欠かせません。ホワイトペーパー全体を通して一貫した主張ができているか、結論部分で的確にまとめられているかに注意を払いましょう。

ホワイトペーパー制作上のポイント

ホワイトペーパー作成においては、コンテンツだけではなく、デザインや見やすさ、ブランディングなどの細部にまでこだわらなければいけません。ここからは、ホワイトペーパー作成のポイントをご紹介します。

デザインテンプレートの活用をする

ホワイトペーパーは内容が何より重要ですが、それと同時に魅力的なデザインも欠かせません。そこで有効なのがデザインテンプレートの活用です。

プロの設計による見栄えのよいテンプレートを使うことで、デザインにかける時間を短縮しながら、読者の関心を惹きつけるデザイン性の高いホワイトペーパーを作成できます。ただし、テンプレートをそのまま適用するのではなく、ブランドカラーの使用やロゴの設置など適宜カスタマイズをする必要があります。

テンプレートの選定に当たっては、具体的な活用シーンや想定される読者層を考慮に入れましょう。技術者向けのホワイトペーパーであれば専門的なデザイン、一般読者向けであればわかりやすさを重視するなど、用途に合わせた使い分けが大切です。

Canvaプラグイン

(出典:ChatGPT)

ChatGPTにあるCanvaプラグインを使用すれば、ホワイトペーパーの概要を伝えるだけで、最適なデザインテンプレートを提案してくれます。テンプレート選定にかかる時間を大幅に短縮できるため、積極的に活用してみてはいかがでしょうか。

見出しや小見出しで内容をわかりやすく

見出しを効果的に使うことで、コンテンツが階層化され、読者が効率よく内容を理解できるようになります。主要な項目については大見出しを設け、さらにその下に小見出しを適所に挿入していく、といった具合です。見出しの階層を意識し、論理的な構造を作り上げましょう。一方で見出しの数が多過ぎてもわかりにくくなるため、全体のバランスをとる必要があります。

見出しのフォントや大きさ、色使いなどにもこだわり、本文と区別しやすいデザインを心がけましょう。文章の簡潔さを保ちながらも、キーワードやフレーズを効果的に配置することで、要点が一目でわかるようになります。さらに箇条書きなども上手く取り入れれば、より読みやすくなるはずです。

ページ内の情報を見やすくする

ホワイトペーパーでメッセージを伝えるためには、ページ内の情報を見やすくする工夫が必要です。この項では、情報を見やすくする3つのポイントをご紹介します。

  • 複雑な説明の箇所は図やグラフを活用する
  • ページ内の余白を十分にとる
  • 並列の情報は箇条書きにする

複雑な説明の箇所は図やグラフを活用する

文章だけでは伝わりにくい複雑な内容は、図やグラフを活用することで視覚的に理解しやすくなります。人間の脳は文字よりも絵や図を認識しやすい傾向にあり、図解があると内容の把握が格段に早くなります。

たとえば、製品の構造や仕組み、工程の流れなどを説明する際には、わかりやすい図解を用いるとよいでしょう。また、数値データの比較や推移を示す場合には、折れ線グラフやバーチャート、円グラフなどが有効です。

適切な図やグラフを取り入れることで、読み手が素早く正確に内容を理解できるようになります。

ページ内の余白を十分にとる

プロのデザイナーでない場合、ページ内のデザインは最小限に抑えるべきです。過剰なデザインを追加すると、かえってごちゃごちゃして視認性が低下します。むしろ十分な余白を確保し、情報が密集して見づらくなるのを防ぐことが重要です。

余白がある方が読みやすい例

適度な余白があることで、視線がスムーズにページ上を移動でき、読みやすくなります。また、開放的な印象を与えられ、読み手に集中して読んでもらえるでしょう。一方、行間や文字間隔が狭く余白が少なければ、圧迫感を感じて読む気が失せかねません。特に段落間や箇条書きのスペースは十分に確保する必要があります。適切な余白を設けることで、快適な読書体験を提供できます。

並列の情報は箇条書きにする

同じ種類の情報が並列して列挙されている場合は、箇条書きで表現するとわかりやすくなります。箇条書きにすることで、項目間の区切りが明確になり、読み手が情報を一つ一つ素早く認識できるようになります。さらに、テキストが長くならない、余白が生まれることで見やすくなるなどの効果も期待できるのです。

一方で、箇条書きが長すぎると却って読みづらくなることもあるため、適切な分量に留める必要があります。要点を簡潔に箇条書きにすることで、ホワイトペーパーの理解度が大きく向上します。

ブランディングを統一する

ホワイトペーパーはあくまで企業の重要なコンテンツの一種です。そのため、WebサイトやSNSなどと統一したブランディングを展開する必要があります。

具体的には、企業のロゴやコーポレートカラー、フォントなどを一貫して用いることが一般的です。詳しくは事例の項で見ていきますが、優れたホワイトペーパーを作成する企業は、ブランドカラーを基軸にホワイトペーパーを作成しています。他の顧客チャネルと統一感のあるビジュアル要素を適切に配置することで、ブランドの認知度向上や想起されるイメージ形成につながります。

自社に十分な人的リソースがない場合は、あらかじめブランディングを反映したホワイトペーパー用テンプレートを作成しておくと効率的です。テンプレートを活用することで、統一されたブランディングのもとでホワイトペーパーを作成できます。

ホワイトペーパーの事例

質の高いホワイトペーパーを作成するためには、実際に優れたホワイトペーパーを見るのが一番の近道です。そこでここからは、5社のホワイトペーパーの事例をご紹介します。

McKinsey & Company

マッキンゼー社は、SNSでも話題になるような優れたホワイトペーパーを多数作成しています。同社のホワイトペーパーは、シンプルながらも知見とノウハウが詰まった有益な内容です。

その特徴として、まず1点目に、ホワイトペーパーのダウンロードが不要なことが挙げられます。フォームを設置せず誰でも閲覧可能なため、認知拡大やソートリーダーシップ獲得に適しています。

2点目は、トレンドに沿ったホワイトペーパーを定期的に発行していることです。2022年にはデザイン思考、2023年にはChatGPTなどの生成AIについて、世間で注目を集めるテーマで深いインサイトを提供することで、SNSでも話題となっているのでしょう。

マッキンゼーの事例1

(出典:Mckinsey&Company)

実際のホワイトペーパーを見ると、ブランドカラーのネイビー、ブルー、ホワイトを基調に、表紙にはロゴ、タイトル、目を引くイラストが使われています。

マッキンゼーの事例2

コンサルファームらしく、図や表を用いて、読者が直観的に内容を理解できるような工夫も施されています。

マッキンゼーの事例3

数字のフォントサイズは大きくする、余白をたっぷりとるなど誰でもまねできるテクニックが使われています。マッキンゼー公式サイトには、参考になる良質なホワイトペーパーが多数掲載されているため、作成時の参考にするとよいでしょう。

Gartner

著名なコンサルティングファームGartner社は、ホワイトペーパーの一般公開はせず、フォームに個人情報を入力した潜在顧客のみにダウンロードを許可する仕組みを採用しています。つまり、ホワイトペーパーを通じたリード獲得やリードナーチャリングを主な目的としていると考えられます。

ガートナーの事例

(出典:Gartner)

同社のホワイトペーパーは、コーポレートブランディングに馴染むブルーとホワイトの2色で一貫してデザインされています。説得力を高めるため図表やグラフを効果的に使用し、わかりやすさを重視して箇条書きも多用しているのも特徴的です。またホワイトペーパーの最後には、無料リソースやツールへのリンクや問い合わせ先が掲載され、ホワイトペーパーで興味関心を高めた読者が円滑に次のステップへ進める仕掛けを構築しています。

このように、Gartner社ではホワイトペーパーを単なる情報提供ツールとしてではなく、マーケティングとセールスの機会最大化のための戦略的コンテンツと位置付けているのです。潜在顧客情報の収集とリードナーチャリングを主眼に置いた活用方法が特徴的です。

株式会社SmartHR

株式会社SmartHRは、クラウド人事ソフトウェアを提供する企業です。ホワイトペーパー作成に注力しており、2022年上半期だけで29本ものホワイトペーパーを公開しています。SmartHRがホワイトペーパーに注力している理由は主に以下の2つです。

  1. 新規層の開拓とリード獲得のため
  2. 外部メディア施策におけるリード獲得数の維持・増加のため
  3. 新サービス領域「人材マネジメント」の潜在顧客獲得のため

それでは、同社はどのように継続的にホワイトペーパーの作成ができているのでしょうか。デザインのテンプレート化や制作会社への依頼などさまざまな工夫がされていますが、注目すべきはコンテンツの2次利用。オウンドメディアやセミナー資料などを編集することで、作成コストを抑えているのです。

筆者の経験からも、オウンドメディアで成果を上げている企業は上手にコンテンツの再利用をしています、社内研修資料や営業資料、ブログ記事、動画などを二次利用することで、コンテンツの制作コストを大幅に軽減することが可能です。

SmartHR社の事例

(出典:SmartHR)

SmartHRのホワイトペーパーはブランドカラーを基調にデザインされ、ダウンロード時には顧客の購買ステージや課題を尋ねることで、リード獲得と適切なサービス提案ができるようにしています。

HubSpot

マーケティングCRMプラットフォームのHubSpotは、セールス・マーケティング担当者向けの調査レポートをホワイトペーパーとして多数発表しています。

これらは、マーケティング担当者や消費者を対象に調査を実施し、その分析結果やインサイトを発表する「マーケットリサーチ型」のホワイトペーパーです。

HubSpotの事例

(出典:HubSpot)

たとえば、年次のマーケティングレポートでは、SNS活用状況や重要施策などを調査し、次年度のトレンドを解明。有識者のコメントも掲載し、説得力を高めています。

HubSpotの事例2

(出典:HubSpot)

また、HubSpot日本法人は「日本の営業に関する意識・実態調査」を毎年実施し、営業トレンドの知見を発表しています。この調査はマクロミルに委託され、営業・購買担当者1500人超を対象に行われています。

一見するとCRMベンダーにとってメリットは小さいように見えますが、実はHubSpotの製品・サービス改善や、より効果的な営業プロセス提案につながります。さらに無料公開することで、ブランド認知向上とリード獲得の機会にもなるのです。

このように、HubSpotはホワイトペーパーを単なる情報発信ではなく、自社ビジネスの発展とマーケティング施策の一環と位置付けています。

まとめ

ホワイトペーパーは、ブランド認知度向上、優良リード獲得、業界専門性の提示など、多岐にわたる効果が期待できます。しかし、内容が薄っぺらでは逆効果になりかねません。ホワイトペーパーでは量よりも質が何より重要です。1本の卓越した内容を持つホワイトペーパーの方が、10本の低質なものよりはるかに大きな成果を生み出すでしょう。

真に価値あるホワイトペーパーを作成するためには、まず対象読者の課題やペインポイントを深く理解する必要があります。次に、自社が提供できる価値は何かを仮説立て、その仮説を裏付けるデータを収集し、わかりやすく解説することが重要です。

ぜひ本記事を参考に、ホワイトペーパーの作成に取り組んでいただければと思います。

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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