ホワイトペーパーとは?BtoBマーケティングにおける意味とコンテンツの作り方を紹介

2023/10/09
BtoBマーケティング ホワイトペーパー ホワイトペーパーとは?BtoBマーケティングにおける意味とコンテンツの作り方を紹介

BtoBマーケティングにおいて、リード獲得や購買意欲の醸成にコンテンツが重要なことは周知の事実でしょう。しかし、ブログ記事やSNSの投稿などが契約の決め手になるケースは少ないです。

多くのBtoBの購買担当者は、企業の信頼性や権威性などを考慮したうえで、契約するかどうかを決めています。そして、お客様の課題を解決しながら、自社の権威性と信頼性を高められる手段のひとつがホワイトペーパーです。

TechTargetのレポートによると、ITの購買担当者の91%が「ホワイトペーパーは購買プロセスにおいて2番目に効果的なコンテンツ」と回答。また、Content4Demandの調査ではBtoBの購買担当者の71%が「購入の意思決定をするためにホワイトペーパーを活用した」と回答しています。

これらの調査が示すように、事実やデータに基づいてお客様の課題を解決するホワイトペーパーは、強力なマーケティングツールになると言えます。

では、そもそもホワイトペーパーとは何でしょうか? eBookや製品資料とどのような違いがあるのでしょうか? このように、実は意味や用途についてよくわかっていないという方は多いのかもしれません。

そこでこの記事では、BtoBマーケティングで必須となる「ホワイトペーパー」について、その意味や成り立ち、一般的な種類から実際に作成する際の詳細ステップまでを紹介します。

ホワイトペーパーとは

ホワイトペーパー(White paper)とは、主に企業や非営利団体によって発行される刊行物であり、製品やサービス、ソリューションや分析報告などを紹介するのに使用されます。300本以上のホワイトペーパーを作成した専門家Gordon Graham氏は、ホワイトペーパーの主な特徴として以下の点を挙げています。

  • 説明的な文章を含む文書
  • 少なくとも5~6ページで構成される
  • 売り込みではなく、教育的、実用的、有益である
  • 販売後ではなく、販売前に使用される
  • 単なる意見ではなく、事実を提供する
  • イントロダクションまたは要約を含む

これらの特徴をまとめると、ホワイトペーパーの主な目的は、特定のトピックに関する問題を提示し、データや事実に基づいた解決策や有益なノウハウを提供し、読者の関心を自社へ惹きつけることです。

マーケティングのプロモーションを行う上では、チラシや広告など、ホワイトペーパーよりも直接的に製品やサービスの宣伝を行うものもあります。

ホワイトペーパーはそれらに比べ、実質的な研究結果や分析結果に基づく「事実的証拠」を多く含めることで、自社が提供する解決策に説得力を持たせることに重きを置いています。そのためチラシや広告などに比べ、格式的かつアカデミックな文体やデザインで発行されるのが一般的です。特にBtoBビジネスにおいて多く使用されます

また近年では、読者がダウンロードしやすいPDFなどの形式でウェブサイトに掲載されるなど、多くの企業で電子化が進んでいます。

発展の背景

実はホワイトペーパーには、もともとビジネスやマーケティングに関連する意味はありませんでした。

スタンフォード大学の資料によると、ホワイトペーパーの発祥はイギリスで、政府が国民に対して、政治や社会経済の実態や施策についてを周知させるために発行した報告書を「ホワイトペーパー」と呼んでいたのが始まりです。

英語で「ホワイトペーパー(White paper)」と呼ばれているのは、当時のイギリス政府で発行される公文書が、目的や対象者を表紙の色によって識別できるようになっており、「白」の表紙が「国民向け」の公文書であったためです。

そのため日本でも、政府が国民に向けて政治社会経済の実態や施策について周知するために発行する公文書は「白書」とされており、ビジネスやマーケティング目的で使用される「ホワイトペーパー」とは明確に使い分けがされています。

ビジネスにおいて「ホワイトペーパー」という用語がマーケティングや営業の資料に使用され始めたのは、1990年代に入ってからです。

マーケティング用途で使用される「ホワイトペーパー」は、先の「白書」的な意味合いとは異なり、企業が自社が提供する製品や解決策が「優れている」ことを示すためにデザインされています。

「ホワイトペーパー」という用語を使い、公文書である「白書」さながらの研究結果や分析結果をふんだんに使用する手法は、読者に対して自社の技術力・問題解決力を強い説得力と共にプロモーションできます。そのため、以降ビジネスシーンにおいても「ホワイトペーパー」はマーケティングツールとして広く認知されていきました。

BtoBマーケティングでホワイトペーパーを利用する目的

それではBtoBマーケティングにおいては、どのような目的でホワイトペーパーを利用するのでしょうか。ここからは、ホワイトペーパーの主な利用目的を解説します。

お客様とのエンゲージメントを高められる

BtoB企業の担当者は、業務上の課題や悩みを解決するために情報収集をし、オウンドメディアやブログへたどり着きます。

ブログ記事で悩みを解決できるのが理想ですが、それだけでは課題の解決ができないケースや、ブログ記事を読むことで新たな課題が明確になるケースもあるでしょう。さらなる情報を提供できなければ、せっかくブログで接点を構築できたお客様を取り逃すことになります。

ホワイトペーパーを自社チャネルに設置しておけば、さらなる情報を求めるお客様との接点を維持できるだけではなく、貴重なノウハウとデータを提供して、お客様の課題を解決し、お客様からのブランドに対する興味や信頼が高められるのです。

ダウンロードによりリードの獲得ができる

BtoB企業の場合、ホワイトペーパーは有効なリード獲得コンテンツとなります。FT Longitudeの調査によれば、意思決定者の約62%が「質の高いソートリーダーシップ型コンテンツ(専門的な視点から解決策を提供するコンテンツ)を制作している企業との商談を希望する」と回答し、そのうち10人に8人は「詳細なレポートをダウンロードするために喜んで連絡先を提供する」と回答しています。

FT Longitudeの調査

(出典:FT Longitude)

Demand Genによる調査では、BtoB購買担当者の71%が「ホワイトペーパーが購入の意思決定に影響を与える」と見なしていることがわかりました。これらの調査から言えることは、ホワイトペーパーは質の高いリード獲得に貢献するコンテンツだということです。

自社の知見や権威性を伝えられる

ホワイトペーパーに自社の研究結果やノウハウを紹介すれば、権威性を高められます。エデルマン・トラスト・バロメーターの調査によると、意思決定者の50%が「景気が良いときよりも景気が悪いときの方が、質の高いソート・リーダーシップが購買の意思決定に与える影響が大きい」と回答しています。エデルマンの調査

(出典:Edelman)

さらに、意思決定者は「データに裏打ちされた強力な視点を提供することを期待している」と判明しています。研究結果や知見をまとめたホワイトペーパーは、自社の権威性を高め、お客様の購買意欲を高めます。

ホワイトペーパーと他の資料コンテンツとの違い

ホワイトペーパーと混同されることが多いのが、eBookとサービス資料です。ここからは、それぞれの違いを見ていきましょう。

ホワイトペーパーとeBookの違い

自社の製品やサービスについて詳しく知ってもらうためのマーケティングツールは、なにもホワイトペーパーだけではありません。チラシや広告、ブログ記事やeBookなども効果的なマーケティングツールです。

特にeBookは、専門的・技術的な内容を多く含んでいたり、格式的な文面であったりと、ホワイトペーパーとしばしば混合されがちです。では、ホワイトペーパーとeBookの違いは一体なんなのでしょうか。

HubSpotによると、両者の違いは主に内容の専門性とターゲットです。

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(出典:HubSpot)

まず、eBookで取り扱われるテーマは比較的ライトなものが多く、その内容を裏付けるデータや証拠となる研究も、簡易的なものや2次引用されたものが通常です。

内容が一般的なため、ターゲットとする読者もホワイトペーパーに比べ広い層が想定されており、多くの人に向けた発信で広く関心を集める構造となっているケースが多めです。

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(出典:HubSpot)

対してホワイトペーパーは技術資料など、製品サービスの難解な問題解決につながることを論理的に書いているものが多く、eBookと比べると内容はより学術的・専門的であるのが一般的です。

引用される研究やデータもより専門的な手法や機関によるものが多いので、読者は最低でもそれらを理解することが要求されます。そのためターゲットとなる読者層は、自ずとニッチなその分野のエキスパートに絞られます。

eBookが「一般の人でも分かりやすいガイドブック」とするなら、ホワイトペーパーは「よりデータドリブンな、専門家のための報告書」と言えるでしょう。

ホワイトペーパーとサービス資料の違い

サービス資料とは、その名の通り自社製品サービスの詳細について記載したコンテンツです。既に自社製品サービスに興味関心を持っている比較検討段階のお客様を対象にしており、製品サービスの特徴やメリット、料金などを網羅的にまとめています。主に購買意欲の醸成を目的に制作され、お客様の購入の意思決定をサポートします。

一方でホワイトペーパーの目的は、特定の課題やトピックに関する解決策や深い洞察を提供し、お客様の自社に対する興味関心を高めることです。調査や研究に基づいた信頼性の高い情報を記載し、有益な情報を提供するだけではなく、自社の専門性も高めます。

一般的なホワイトペーパーの種類

ホワイトペーパーには発行される目的や業界などによってさまざまな種類があります。ここでは、一般的なホワイトペーパーの種類について一例を紹介します。

エデュケーショナル型

エデュケーショナル型

(出典:RUN FRICTIONLESS)

エデュケーショナル型ホワイトペーパーとは、その名の通り読者がまだ知らない新しい知識を提供することに重きを置いたホワイトペーパーです。

一般的にこのタイプのホワイトペーパーでは、読者に対してある製品やサービス、解決策が直接的にPRされることはありません。逆に特定のテーマに対して、あくまでも「中立の立場」として研究データや分析結果を提供することで、読者の関心を「それとなく」自社の製品やサービスへと向けさせます。

上図は欧州SuperOffice社が発行している「The CRM Buyer`s Guide」というホワイトペーパーです。企業のマーケティングにおけるCRMの重要性やその仕組み、使用することのメリットや、購入する上での注意点などについてまとめられています。もちろん、SuperOffice社はCRMソリューションの提供会社です。

エデュケーショナル型のホワイトペーパーの究極的なゴールは、読者にホワイトペーパーを保持し続けてもらい、製品購入時に検討の参考となるガイドブックとして使用してもらうこととも言えるでしょう。

その性質から、特にインバウンドマーケティングと相性が良いとされています。

マーケットリサーチ型

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(出典:Hootsuite)

マーケットリサーチ型のホワイトペーパーは、その名の通り特定の業界や市場に対して調査を行い、その分析結果をまとめた資料です。業界における競合の存在や市場の規模、今後の展望や課題、最新のトレンドなど、目的によってさまざまな視点からの分析資料が含まれます。

マーケットリサーチ型のホワイトペーパーには、リサーチ・アナリティクスを専門とする企業や組織からの依頼、もしくは自社のPRのため自主的に作成するものの他に、一企業が後述する「ソートリーダーシップ」を得るために作成したり、「エデュケーショナル型」資料として作成したりするケースもあります。

上の例は、SNSの管理ツールを提供するHootsuite社による「Digital 2022 Global Overview」というレポートです。ソーシャルメディアの管理ツールという、さまざまなツール全体を見渡せる立場ということで、オンライン市場の現状やトレンドについて詳しく解説しています。

掲載されているデータの量が圧巻で、オンライン市場のマーケットリサーチとして優秀なレポートであることはもちろんですが、オンライン市場に関してこれほどのデータを掴んでいるという事実自体が、Hootsuite社の業界での信頼度と地位を確立していると言えるでしょう。

問題解決型

問題解決型

(出典:Godlan, Inc.)

問題解決(Problem-solving)型のホワイトペーパーでは、読者が抱えるある特定の課題に対する解決策を提供することに重きが置かれます。

読者を困らせている問題に対して革新的なアプローチで解決策を提供することで、読者の信頼と関心を自社に向けることが、このタイプのホワイトペーパーの主な目的です。

可能な限り読者に寄り添った内容であることが求められるため、ターゲットを絞り、問題解決までの手順やアドバイスがステップ・バイ・ステップで分かりやすくまとめられています。

先に紹介した「エデュケーショナル型」と同じく、問題解決のステップを紹介する中で、読者が「自ら」自社の製品やサービスへ目を向けるような構造であることが大切です。

上で紹介している例はERPソフトウェアのInfor社が発行している「Win more business with fewer sales resources」というホワイトペーパーです。アメリカにおいて製造業界での共通課題である「営業リソースの減少」について、少ない営業リソースで受注を獲得するにはどうすればよいか? という視点で解決策が解説されています。

ソートリーダーシップ型

ソートリーダーシップ

(出典:Research Gate)

ソートリーダーシップ(Thought leadership)とは、企業が特定のテーマに対し、解決策となり得る自社の主張や理念である「ソート(Thought)」を発信し、市場や顧客など社会からの共感や評判を集めることで、その分野における「権威」や「リーダー(leadership)」としての影響力や存在感を勝ち得ることを言います。

ソートリーダシップ型のホワイトペーパーでは、一般的に特定の分野や業界で共通課題と認識されているテーマが取り上げられ、その課題に対する画期的または先進的な切り口からの解決策が、それを証明する事実や分析結果などを添えて紹介されます。

また、既存のテーマではなく全く新しい課題を新たに問題提起するケースもありますが、読者を大きくおいてけぼりにしてしまうテーマなどを選んでしまうと、読者の共感が得られず逆効果となってしまう危険性があります。

効果的なソートリーダーシップ型ホワイトペーパーを作成する際には、そのテーマ選定は非常に重要なポイントとなるでしょう。

上図は世界最大規模の自然環境保護団体である国際NGO、世界自然保護基金(WWF)によるホワイトペーパー「A 5˚C Arctic in a 2˚C World - Challenges and recommendations for immediate action」です。

「北極圏においては気温が2℃上昇することは、普通の世界で気温が5℃上昇するのに等しいほど、重大な問題なのだ」という革新的な切り口で、地球温暖化問題についての注意喚起と行動換気を促しています。

これは非営利団体による例ですが、読み手の心を揺さぶり大きな共感を勝ち取り、行動を起こさせるという点で、BtoBビジネスへのマーケティングにも参考にできるところがあるのではないでしょうか。

技術紹介型

技術紹介型

(出典:Fujitsu)

技術紹介型のホワイトペーパー(Technical white paper)は、企業が提供する製品やサービス、解決策について、その機能や仕組みを技術的な視点から深く掘り下げて解説するのに使われます。

自社の製品サービスが、どのような機能を持っているのか、どのような技術を用いているのか、どのように読者が抱える問題を解決できるのか、またはなぜ他の製品やサービスと比べて優位性があるのか、などを専門的な知識やデータなどの説得材料を添えて説くことにフォーカスしています。

そのため内容はかなり専門的なものとなる傾向があり、一般的にターゲットとなる読者はその製品サービスを日常的に使用しているなど、その分野に精通している人物が想定されます。

特にメーカー間など、BtoBのビジネスにおいてのマーケティングに多く使用されるホワイトペーパーのタイプです。

上図は富士通株式会社による「How ETERNUS DX contributes to energy efficiency, cost savings and a human-centric intelligent society」というホワイトペーパーです。自社のストレージシステムが、いかにしてエネルギー効率に貢献できるかが技術的に解説されています。

社会が抱える共通課題に対して、自社の技術力を用いた革新的なアプローチを行なっているという点では、前述の「ソートリーダーシップ」も同時に勝ち得ていると言えるでしょう。

ホワイトペーパーの作り方

ホワイトペーパーがどんなものかは、これまでの解説である程度ご理解いただけたかと思います。しかし、実際にどのような手順を踏めばホワイトペーパーを作成できるのでしょうか? ここからはホワイトペーパーを作る上で踏むべきステップを、HubSpotの記事を参考に紹介していきます。

目的の設定(読者の課題の特定)

ひとつめのステップは、ホワイトペーパーを作る上での目的を設定することです。

ホワイトペーパーの作成においては、読者にとって後々の「ガイドブック」となるような、有用な情報を提供することが重要です。ですので、ホワイトペーパーを作成する上での目的設定は、ターゲットとする読者の属性と課題の特定を含みます。

AdAgeの調査によれば、約60%が「売り込みのように聞こえるコンテンツを断っている」と回答。自社が伝えたいことではなく、お客様の課題に焦点を当てたホワイトペーパー制作をしなければいけません。そのためにも、下記4つの問いに答える形で、お客様の課題を特定しましょう。

  • どのような人物にホワイトペーパーを読んでもらいたいか?
  • 彼らが抱える課題は?
  • どのような情報を提供すれば「有用」と感じてもらうことができ、彼らの信頼を得ることができるか?
  • 作成するホワイトペーパーを読んだ後、どのような「行動」を起こしてもらいたいのか?

最終的に関心を向けさせたい製品やサービスの「ペルソナ」を念頭に置き、ホワイトペーパーの目的や想定読者が、そこからずれたものにならないように気をつけることが重要です。

設置チャネルの策定

次のステップとして、作成したホワイトペーパーの公開チャネルを決めます。

自社のウェブサイト、ブログ、メール、SNSなどのオウンドメディア。ウェブ広告、業界メディア/ニュースサイトへの出稿などペイドメディアも考えられます。せっかくホワイトペーパーを作っても設置チャネルが決まっていなければ、作って終わり……となってしまう危険性があります。

また、設置するチャネルによっては、読者層に偏りがあったり、共感を得られる内容に違いがあったりなど、プロモーションで行うべき内容にも違いが出てきます。

例えば、年齢層の高い熟練者向けにホワイトペーパーを作ったのに、設置したチャネルには若年層しかアクセスしない……となっては後々に内容を大きく変更する必要があったり、全く使えない資料になってしまったりする危険性も考えられるでしょう。

そのような事態に陥らないためにも、設置チャネルの策定は初期に行うべきです。

データ収集

ホワイトペーパーの内容はエビデンスに基づかなければいけません。理想は独自の調査結果やデータを引用し、自社の権威性を高めることです。それができない場合は、政府や調査機関、企業などから信頼できるソースを参照するようにしましょう。その際、出典先を必ず明記しなければいけません。主なデータ収集方法は以下の通りです。

  • 自社で調査や研究
  • 業界報告書
  • 学術論文
  • 政府機関のデータ
  • 書籍
  • 専門家のインタビュー

海外のマーケティング支援企業The Brains Marketingのホワイトペーパー「The Principles of B2B Marketing Psycology」には、独自の調査結果はありませんが、信頼性の高い書籍や調査結果、専門家の言葉などを引用することで、根拠のあるホワイトペーパーに仕上がっています。

WACUL株式会社の調査

(出典:WACUL株式会社

WACUL株式会社はホワイトペーパーではありませんが、AIがサイトの診断から改善提案まで行う自社製品「AIアナリスト」で収集したデータを分析した研究結果を掲載し、自社の認知度や権威性を高めています。

文章構成の策定

ホワイトペーパーは通常のブログ記事と比べて、コンテンツ量が多くなる傾向にあります。そのため内容が分かりにくくならないよう、しっかりと文章構成を検討する必要があります。

以下は一般的なホワイトペーパーのアウトラインの一例です。

  1. 導入文

ホワイトペーパーのテーマや目的、読者目線での「なぜこの資料が有用か」

  1. 概要/要約

調査や分析結果の概要、使用される専門用語、調査の方法などの解説

  1. 本文

重要となるデータや分析結果の紹介

  1. 結論・考察

分析結果から見えてくる(企業が読者に植え付けたい)結論や考察など

  5.CTA

連絡先やフォーム、他のリソースへの誘導などのCTA

実際にデジタルマーケティングの専門家としての地位を確立しているDemandGenのホワイトペーパーを見ていきましょう。

DemandGenのホワイトペーパー1

(出典:DemandGen)

まずは表紙です。タイトルは一目で内容がわかるように、明確でシンプルなものを設定します。また、イラストや画像を設定することで、お客様の興味関心を効果的にひくことができます。忘れてはいけないのが企業ロゴ。企業ロゴの配置により、自社の認知度が向上するだけでなく、お客様が内容に対して信頼感を抱きやすくなるのです。

DemandGenのホワイトペーパー2

2ページと3ページ目には、導入文と要約が記載されています。ここではお客様に対して解決すべき重要な問題や課題を提示し、ホワイトペーパーを読むべき理由を与えます。その際に、インパクトのあるデータなどを用いることが効果的です。上記ホワイトペーパーでは、チャートを用いて一目で重要なデータを確認できるようにしています。

DemandGenのホワイトペーパー3

まとめ部分では、ホワイトペーパーの主なポイントや解決策などを提示します。お客様の中には、導入分とまとめを読んでから詳細を確認する方もいるため、丁寧に作成しましょう。ホワイトペーパーの振り返りをするだけではなく、So What?(だから何? )の視点で解決策や提案をすることが重要です。

DemandGenのホワイトペーパー4

最後のページには、企業とエディターの紹介がされています。クリックできるメールアドレスやSNSアイコンを設置することで、興味を持ったお客様はスムーズに次の行動へと移せる仕組みです。他コンテンツへのURLや製品デモの予約ページなどを、CTAとして設置するのもよいでしょう。

コンテンツ制作

必要な情報を収集し、構成案を作成したら、コンテンツ制作に取り掛かりましょう。ホワイトペーパーはデータを用いながら論理的な内容にすることが重要ですが、単にデータや数字を述べるだけでは、お客様の心に響かないため、ストーリーテリングを用いましょう。

ストーリーテリングとは、物語を通してメッセージやコンセプトを伝える手法。スタンフォード大学の教授Jennifer Aaker氏によれば、事実だけを述べるよりも、ストーリーで伝えたほうが22倍記憶に残るとのことです。

また、人間はデータではなく感情で意思決定する生物だということも分かっています。つまり、優れたホワイトペーパーとは、調査結果やデータをお客様を惹きつける魅力的な物語に変換したものです。


それでは、どのようにストーリーテリングをホワイトペーパーに落とし込めばよいのでしょうか。著名なリーダーシップコンサルタントのKaren Eber氏は、TED Talksの中でデータを用いたストーリーテリングは、下記2つの問いをすることから始まるといいます。

  • あなたが解決しようとしている問題は何か?
  • ストーリーの後に人々(お客様)に何を考え、何を感じてほしいのか?

また、お客様の課題の明示や問いかけなどを通して、「これは自分のための物語(ホワイトペーパー)だ」と思ってもらうことも重要です。ホワイトペーパー全体を通してストーリーを盛り込むことは困難かもしれませんが、読者の興味関心を集める導入文では、可能な限りストーリーテリングを活用するようにしましょう。

マッキンゼーの図表

(出典:McKinsey & Company)

さらに、ホワイトペーパーの作成においてはデータのビジュアル化が欠かせません。データの性質や目的に応じて、適切な種類の図表を選択し、視認性を高めましょう。コンサルティングファームの図表の使い方は優れているため、制作に迷われた場合は参考にしてください。

タイトルや表紙の策定

タイトルや表紙の策定(HubSpot)

(出典:HubSpot)

ホワイトペーパーをどのチャネルに設置するのであれ、読者が最初に目にするのはタイトルや表紙です。いかに内容が充実していて読者に刺さるものであったとしても、タイトルや表紙で興味が引けなければ、そもそも読んでもらえない可能性があります。

タイトルは簡潔かつリサーチの内容やターゲット層にあった明確なものであること。また、表紙は内容と乖離がないよう派手すぎずかつ目を引くものであるのが望ましいでしょう。

CTAの設置

CTAの設置

(出典:one.com)

CTAとは「Call to action」の略で、マーケティング施策を実施した後にターゲットにとってもらいたい「行動」およびその行動を誘導する「行動喚起」のことを言います。

ホワイトペーパーを作成するにあたっても、最初のステップである「目的の設定」で想定した、「読んだ後に読者にとってもらいたい行動」を喚起する「なにか」を設置しておかないと、せっかく作ったホワイトペーパーも読んでもらっただけ……となってしまうかもしれません。

例えば自社へ資料請求してもらうことが目的であれば、ホワイトペーパーを設置したチャネルの目立つ部分に「資料請求」のボタンを設置する、またホワイトペーパー自体に資料請求先のアドレスや連絡先を記載する、などといったことが考えられます。

効果的なCTAの設置は、コンバージョン率の向上が期待できます。ホワイトペーパーの内容だけでなく、このステップについても抜けがないようにしましょう。

ホワイトペーパーを多くのお客様に届けるためには

素晴らしいホワイトペーパーを作成しても、多くのお客様に読んでもらえなければ、期待した成果にはつながりません。ここからは、多くのお客様にホワイトペーパーを届ける4つの方法をご紹介します。

データベースを活用する

既存リードへのアプローチに有効なのが、顧客データベースやリードリストなどを活用したメール配信です。特にデータベースを活用したメール配信は、まだ自社への興味関心がそれほど高くない、検討段階の初期におけるリードに効果的と言えます。

なぜなら、ホワイトペーパーを購入の意思決定における資料として活用してもらえるためです。既存リードをセグメンテーションし、ホワイトペーパーと相性の良い比較検討段階に配信しましょう。

また、営業やインサイドセールスが個別に案内メールを送るのもよいでしょう。Bluecoreの調査によると、パーソナライズされたメールはそうでないメールと比べてクリック率が139%も向上するとのことです。

展示会で無料配布する

業界関連の展示会やイベントに参加する機会がある場合、ホワイトペーパーの無料配布を検討しましょう。展示会には、具体的な製品サービスを探しに来ている人もいれば、どのような課題を解決している企業がいるのかを探る情報収集段階の人もいます。

情報収集段階の人にブースでホワイトペーパーを配布すれば、課題解決の重要性を理解してもらえ、リード化につながる可能性があります。

ウェブサイトに設置する

ウェブサイトは、BtoB購買担当者の重要な情報収集チャネル。トライベック・ブランド戦略研究所によれば、BtoB購買担当者の情報収集チャネルとして最も活用されているのが、企業のウェブサイト(66.7%)とのことです。

トライベック・ブランド戦略研究所の調査

(出典:トライベック・ブランド戦略研究所)

ウェブサイトにホワイトペーパーを設置することで、自社に興味関心のあるお客様に有益な情報を提供できるようになります。

オウンドメディアに設置する

ブログやSNSなどのオウンドメディアを活用して、ホワイトペーパーを宣伝しましょう。特にブログ記事は課題の解決方法を探しているお客様が読まれることが多く、記事に関連したホワイトペーパーを設置することで、より深掘りした内容をお伝えできます。

HubSpotのブログ

(出典:HubSpot)

上記画像は、HubSpotのSEO記事に関するブログです。導入文・記事の途中・記事の終わりの3カ所にホワイトペーパーを設置し、読者の興味関心が高まった段階でダウンロードできるようになっています。CTAの設置位置と表示方法はコンバージョン率に影響を与えるため、ヒートマップツールで読者の興味関心の高い箇所を分析し、最適なタイミングでCTAを表示するようにしましょう。

広告を出稿する

時事的なテーマのホワイトペーパーや、多くの方が抱えている課題に対するホワイトペーパーを作成した際は、FacebookやX(旧Twitter)、LinkedInなどのSNSで広告を出稿するのも有効です。SNS広告を活用することで、多くの潜在顧客にアプローチできます。

CloudbricのFacebook広告

(出典:Facebook広告ライブラリ)

こちらはセキュリティサービスを提供するCloudbric社のFacebook広告です。ユーザーの注意を引くためにも、冒頭でターゲットや課題を呼びかけ、ホワイトペーパーの概要を紹介するのがよいでしょう。また、Web広告を出稿することを踏まえて、ホワイトペーパーの表紙を作成すれば、広告用の画像を作成する手間を省けます。

まとめ

商材単価が高く、複数の意思決定者が購買プロセスに関与するBtoB企業においては、SNSの投稿や1分間の動画だけで契約に至る機会はほぼありません。BtoBの購買担当者は、製品サービスだけではなく、企業の信頼性や権威性なども考慮して、契約するかどうかを決めているのです。

この事実を踏まえると、データや事実に基づいて、お客様の課題を解決しながら自社の権威や専門性を高められるホワイトペーパーは、非常に効果的なマーケティングツールになると言えるでしょう。

ホワイトペーパーは文量が多くなる傾向にあるため、図表や箇条書きなどを活用して、読者の負担を減らさなければいけません。また、単に事実やデータを述べるのではなく、ストーリーとして伝えることで、読者の共感やエンゲージメントを得られます。作成したホワイトペーパーは、ブログやメールマガジン、Web広告などを通して多くの人に届けるようにしましょう。

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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