SNS運用の必要性を感じてはいても、どのように注目を集めればいいのかわからず、苦戦している企業は多いのではないでしょうか。
製品サービスを購入する際、企業の購買担当者の91%が、意思決定において口コミを参考にしているという調査結果があります。口コミを効果的に広めるには、SNS上において爆発的に拡散することを狙った「バズマーケティング」の手法が有効な施策のひとつです。
Twitter上でのキャンペーンを展開するなどして、「バズ」を引き起こしているBtoC企業の事例は多くありますが、BtoB企業にとってもバズマーケティングは効果的な打ち手にもなり得ます。
そこで本記事では、BtoB企業やSaaS企業のマーケティング担当者の方に向けて、バズマーケティングの概要と発展の背景、手順や事例を解説します。
「バズる」とは、特定のトピックが瞬間的に注目を集め、大勢の人の間で話題になることを指します。特にSNS上で広まった話題に対して使われることが多い言葉です。
「バズ」が起きたかを判断する基準として、各SNSで以下の指標がよく使われます。
「バズる」の語源は英語の「buzz」です。Cambridge Dictionaryによると、buzzには「ハチが低い音を連続して発している」という意味があり、ハチがぶんぶん飛び回って忙しく元気であることも指します。
よくインターネット上で見聞きする「バズる」という言葉は、元気なハチのように、特定の話題が拡散され、急速に口コミが広がっていく様子を表しています。
バズマーケティングとは、SNSにおいて「バズ」を戦略的に引き起こし、爆発的に情報や口コミが拡散されることを目指すマーケティング手法です。
似た言葉にバイラルマーケティングがありますが、こちらは口コミが自然に拡散することを促す手法です。対してバズマーケティングは、バズを人為的に引き起こしている点が異なります。
「バズる」という言葉が使われ始めたのは、2010年ごろからです。その背景には、SNSの利用拡大があります。
(引用元:https://www.soumu.go.jp/main_content/000689455.pdf)
総務省が発表した「令和元年通信利用動向調査の結果(概要)」によれば、2020年には2018年と比較して、すべての世代でSNSの利用が拡大しています。
「SNSは10代〜20代の若い世代が利用するもの」というイメージがあるかもしれませんが、プラットフォームによっては40代以上の世代にも幅広く普及しているのです。
(引用元:https://www.soumu.go.jp/main_content/000689455.pdf)
同じ調査によれば、SNSの利用目的の1位は「従来からの知人とのコミュニケーションのため」であり、「知りたいことについて情報を探すため」が2位です。
これはGoogleが提唱するZMOT(顧客は店舗で購入する前にインターネットで情報収集しているという概念)が浸透していることを、裏付ける結果だといえるでしょう。
さらに、見込み客の情報収集の手段も、近年では変化しつつあります。
(引用元:https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2021/cc/1119_1)
2021年に発表された野村総合研究所の「生活者1万人アンケート調査」によると、製品サービスを購入する際の情報源の割合が、従来から変化しています。
まずテレビのコマーシャルの利用は、2012年と比べて49%から39%にまで減少しました。代わりに、「ネットの売れ筋情報」と「評価サイトやブログ」の割合が大幅に増加したのです。
テレビや新聞の広告といったマスマーケティングの影響力が弱まり、SNSマーケティングの有効性が増しているといえます。
こうした背景があり、マーケティング戦略のひとつとして、SNS上で爆発的に情報が拡散されるバズマーケティングが注目されるようになりました。
バズマーケティングはBtoCだけでなく、BtoBでも有効です。実際、企業の購買担当者の91%が、意思決定において口コミを参考にしているという調査結果があります。
「バズ」による口コミや情報の拡散は、BtoB企業やSaaS企業にとっても、効果的なマーケティング手法になりえるのです。
バズマーケティングは、大勢の人による情報の拡散によって、認知を拡大することを目的としています。
認知度が高まることにより、販売数や問い合わせ数の増加が期待できるでしょう。企業や製品サービスに対して好意的な評判が拡散されれば、企業ブランディングの確立にも役立ちます。
ただし、ネガティブな評判や誤情報が拡散されてしまう可能性もあるので、バズを狙う際には注意が必要です。
バズマーケティングと相性の良いコンテンツを発信することで、「バズ」を起こしやすくなります。逆に相性の悪いコンテンツもあるので、それぞれの特徴を解説します。
プレゼントキャンペーンは、「バズ」と相性が良いといえます。プレゼント目当てに、ユーザーが拡散に協力してくれやすいからです。
Twitterでのリツイートをキャンペーンへの参加条件とすることで、バズがさらなるバズを生む好循環を生み出すことが可能です。
(freeeのプレゼントキャンペーン)
クラウド会計ソフトなどを提供するfreee株式会社は、抽選で1,000名にお食事券が当たるキャンペーンを行いました。その結果、23,000件以上のリツートを獲得し、バズマーケティングに成功したのです。
このようなキャンペーンによって、以下のような効果が見込めます。
SaaS企業であれば、「サービスの無料利用期間」をキャンペーンのプレゼントにすることで、新規顧客の獲得を目指す方法も有効です。コストをかけずに実行しやすい施策なので、検討してみるとよいでしょう。
ただし、このようなキャンペーンは、より個人に裁量権があるSMBなどであれば向いており、DMU(Decision Makeing Unit)のような集団で購買決定を行う必要のある売り手の場合は、より異なった形のキャンペーンが必要となります。
端的でわかりやすいコンテンツは、バズマーケティングと相性が良いといえます。
「バズ」を引き起こすには、ユーザーがすぐに理解できて、「シェアしたい」と思えるようなコンテンツが適しているからです。
BtoB企業やSaaS企業であれば、動画や画像で自社の製品サービスの特徴を端的に表現するとよいでしょう。
(フジ産業のFacebook)
建材などを製造・販売するフジ産業株式会社は、Facebookで画像を活用しています。顧客の課題の解決策を端的な画像で紹介することで、見込み客に製品導入後のイメージを持ってもらう意図があるのでしょう。
動画や画像をきっかけとして提供することで、より多くのユーザーに関心を持ってもらいやすくなります。
「バズ」を生み出すには、実際に製品サービスを利用した人に体験談やレビューを投稿してもらうことも、有効な手段です。
利用者のリアルな声は、ユーザーにとって有益な情報です。また、ユーザーの共感を呼ぶ体験談やレビューは、シェアされやすい傾向があります。
(アトモフのTwitter)
デジタル窓の販売などを行うアトモフ株式会社では、Twitterで実際の使用者の感想を積極的にリツートしています。リツートによってどれかひとつでも「バズ」につながれば、ブランドや製品が大きな注目を集められるでしょう。
また、インフルエンサーにレビューしてもらうことも有効です。影響力のあるインフルエンサーの投稿は話題になりやすく、大規模な拡散が期待できます。
長すぎる動画は、バズマーケティングとは相性が悪いといえます。「バズ」を起こすためには、「ユーザーが手軽に楽しめること」も重要だからです。
(サイボウズの動画)
サイボウズ株式会社は、業務管理ソフト「kintone」のPRに動画を活用しており、その中でこちらの動画は1時間53分の長さがあります。
長い動画は、最後まで見ること自体が大変です。ユーザーにとって有益だとしても、「バズ」は生み出しにくいといえます。
なお「バズ」を狙わない動画であれば、再生時間が長くても、もちろん問題はありません。
「バズ」は偶然引き起こされるイメージがあるかもしれませんが、実際は戦略的な実現が可能です。BtoB企業やSaaS企業が取り組める、バズマーケティングを生み出すステップについて解説します。
まずは「バズ」を作り出す目的を決めましょう。
これらの目的を設定しておくことで、作成するコンテンツの方向性を決定する際にも役立ちます。
バズマーケティングは主にSNS上で展開していきます。
Twitter上で行うのか、FacebookやInstagram上で行うのかなど、自社の製品サービスの利用者層に適した媒体を決定しましょう。
BtoB企業やSaaS企業では、ターゲットである見込み客が限られた層である場合もあります。
自社の見込み客にコンテンツを届けるために、企業ペルソナや人物ペルソナを作り込み、「誰に向けて発信するのか」を明確にしておくことが大切です。
コンテンツを作成する前に、SNSの運用方針を決めておきましょう。運用を始めてすぐに「バズ」を生み出すことは難しいため、継続してコンテンツを投稿することが欠かせないからです。
投稿スケジュールを決定し、継続した運用を前提に長期的な計画を立てましょう。
また、安定してSNSを運用するための社内体制を整えておくことも大切です。
BtoB企業やSaaS企業では、SNSの担当者が他にも多くの業務を抱えており、運用に注力できない場合が少なくありません。形だけの担当者を決めるのではなく、仕事の割り振りを調整し、SNS運用のための業務時間をしっかりと確保することが重要です。
設定したターゲットに関心を持ってもらえそうなコンテンツを作成します。
端的でわかりやすいことを意識しつつ、目を引く動画や画像を用意するとよいでしょう。
どんなコンテンツを作ればよいのか迷う場合は、過去に「バズ」を生み出した事例を参考にするのがおすすめです。特に自社と似たような製品サービスを扱う企業の成功事例があれば、やり方を真似すると成果につながりやすいでしょう。
ここまで準備を進めたら、地道にコンテンツの投稿とレポート分析を繰り返します。
作成したコンテンツを投稿するたびに、ユーザーからの反応がどれだけあったか、レポートを分析しましょう。続けるうちに、反応を得やすいコンテンツの傾向がわかってくるはずです。
分析で得た知見を生かして繰り返しコンテンツを作成することで、思い通りに「バズ」を生み出せるようになっていくでしょう。
BtoB企業におけるバズマーケティングの事例を3つ紹介します。
(3MジャパンのInstagram)
アメリカに本社を置く、産業向け資材や日用品などのメーカーである3Mの日本法人の事例です。
Instagramにて、製品サービスの魅力やメリットをデザイン性の高い画像や動画で表現しています。内装や外装の施工事例をおしゃれな画像で見せることで、企業のブランディングに役立てている点が参考になるでしょう。
Instagramでは、思わずシェアしたくなるような驚きのある画像や動画を投稿すると、「バズ」が生まれやすい傾向があります。3Mジャパンのアカウントでは、施工による「ビフォーアフター」の変化を見せることで、ユーザーに驚きを与える工夫をしています。
(ゼンリンのTwitter)
各種地図の調査や制作、販売を手がけている株式会社ゼンリンの事例です。2022年6月時点で約45,000人のフォロワー数を持つゼンリンのTwitter公式アカウントでは、地図記号や地名などに関する豆知識を日々投稿しています。
手軽に読める豆知識を投稿し続けることでファンを増やしていけば、「バズ」につながりやすくなるでしょう。
(30件以上のリツートを獲得したコベルコ建機の投稿)
建設機械メーカーであるコベルコ建機株式会社のTwitterアカウントの事例です。このアカウントでは、以下のような内容のツイートを毎日のように投稿しています。
建設機械メーカーとSNSは、縁遠いもののように思われるかもしれません。しかし、SNSは企業ブランディングや情報発信に役立てることが可能です。
実際にこちらの画像の投稿は30件以上のリツイートを獲得しており、ちょっとしたバズを起こすことに成功しています。
情報の爆発的な拡散を戦略的に引き起こすバズマーケティングは、企業や製品サービスの認知度を高め、好意的な評判を一気に広めるのに役立ちます。
バズを生み出すには、「おもしろい」「シェアしたい」といったユーザーの感情を引き出すことが欠かせません。興味深い動画や画像、手軽に読める有益情報などを発信し続けてファンを増やすことも、SNSの投稿をバズりやすくすることにつながります。
BtoB企業やSaaS企業にとって、バズマーケティングは有効な手段です。SNS運用の方向性に悩んでいるのであれば、「バズ」を意識したコンテンツの投稿を試してみるとよいでしょう。