マスマーケティングとは?メリットデメリットを向いている業種や向いていない業種などの視点から解説

2022/06/17
BtoBマーケティング マスマーケティング マスマーケティングとは?メリットデメリットを向いている業種や向いていない業種などの視点から解説

マスマーケティングとは、テレビ、雑誌、新聞などのマスメディアをとおして、多数の人々を対象に行うマーケティング手法です。近年はネットメディアの台頭により、オールドメディアの存在価値は低下していると言われるものの、いまだマスメディアの影響力は大きく、Webと連携するなどマスマーケティングの手法自体も進化しつつもあります。

本記事ではマスマーケティングとは何か? 代表的な手法と最近のマスマーケティングの事例、マスマーケティングのメリット、デメリットなどを紹介します。

マスマーケティングとは

マスマーケティングとは、多くの人々や、広い市場全体に対してアプローチするマーケティング手法をさします。英語のMass marketingの和訳です。マスがつく用語の意味は、それぞれ以下のとおりです。

  • マス:市場全体、大多数の消費者
  • マスマーケティング:多数の人に対して行うマーケティング
  • マスメディア:テレビ、新聞・雑誌・看板など大多数の人が目にするメディア

テレビCMでは、コンビニやビール、スナック菓子、洗剤あるいは保険などのCMをよく見かけると思います。そのように、普通に生活している人なら誰もにニーズがあったり、多くの人が価値を感じたりするような商品・サービスの宣伝に、マスマーケティングは非常に有効です。

例:日用品(食料、消耗品)、家具、パソコン、自動車、住宅、美容・健康、保険

発展の背景

マスマーケティングの発展は、マスメディアの発展と歩みをともにしてきました。

以下に、歴史上のトピックを記載します。

1605年:ドイツで、世界初の新聞が発行

1700年代:イギリス、フランスで新聞や雑誌が増加し、新聞広告がさかんになる

1867年:看板広告の原型がスタート

1920年代:公衆ラジオ放送が開始、同時にラジオ広告が始まる。1928年 には米国、1929年にはイギリス、ドイツ、日本では1939年に、TVの実験放送開始。

1950年代:米国ではTV放送が一般家庭に普及。日本でも1953年初の民放局、日本テレビが開業。テレビCM第1号は「セイコー」

1990年代:インターネット登場。最初の検索エンジンが登場(Googleは1999年)。

インターネットが普及するまではマス・マーケティングが主流で、特にBtoCの大手消費財メーカーは、製品を市場全体に宣伝し大量に販売するために、マスマーケティングを活用してきました。

2000年以降、世界的にインターネットが普及し、SNSなどの新しいメディアが登場してからは、ニッチマーケティングが注目され今にいたります。マスメディアもネット番組やオンラインメディアを出すなどWeb連携を強化しており、徐々に進化しています。

マスマーケティングの手法

マスマーケティングの手法は、「テレビCM」「ラジオCM」「新聞広告」「雑誌広告」の4つがメジャーであり、その他映画、書籍、屋外広告などがあります。ここでは3つの手法を紹介します。

手法1:紙媒体の広告

紙媒体とは新聞や雑誌です。インターネットはもちろん、テレビやラジオもなかった時代、紙媒体は消費者に向けてメッセージを発するための中心的なメディアでした。企業は新聞広告や雑誌広告を、積極的に活用していました。

中でも新聞は、コンテンツが政治経済から娯楽、本日のテレビ番組までと幅広く、かつ新聞配達という手法で毎日家庭に届きます。このことから、購読者にとっては社会の情報を入手する最適な手段であり、広告出稿企業にとってはマスにアプローチする有効なメディアでした。

雑誌は、週刊誌、女性誌、スポーツ紙、ファッション誌などのさまざまな種類があり、新聞よりは層をしぼりこんで広告でアプローチできるため、マスマーケティングとはいえフォーカスした広告戦略を展開できます。

手法2:テレビ広告(CM)

テレビCMは、新聞や雑誌よりさらに多くの人にメッセージを届けられるマーケティング手法です。日本では、東京オリンピックの頃には約9割の家庭に白黒テレビがゆきわっていました。

最近でこそテレビ離れが進んでいますが、テレビのある家庭ではテレビをつけっぱなしにしていることが多く、人々は生活の中で受動的にテレビCMを目にしていました。

特にニュース番組、天気予報、人気ゴールデンタイムのドラマなどのテレビCMはより多くの人の目に触れます。かつては、それこそ全国民にメッセージを届けられるメディアという位置にあったのでしょう。

テレビ広告は視聴率が出るため、活用する企業側もある程度の影響力を予測できます。また、コンテンツ制作者や配信者であるテレビ局・制作会社は、視聴率を重視し、面白い、多くの人を惹き付ける番組を作る努力をします。

CMは、昔は効果測定を正確に行えない点がネックでしたが、近年は「瞬間指名検索数」から広告効果を可視化できるSaaSなども登場するなど、Webと連携することで成果が見えやすくなっています。

手法3:ビルボード (屋外広告)

屋外広告とは、交通量の多いエリアで見かける看板広告や、ビルの壁面などにかかっている広告、交通広告など、屋外を行き来する人たちを対象に露出する広告です。交通量や近辺の駅の乗降客数などによって価格が異なります。

例:看板広告、広告塔、ポスター、交通広告、ビルの壁面広告、他

屋外広告は、例えば地場企業や飲食店にとっては、顧客層である地元の消費者に訴求でき知名度、信頼性の向上につながるメリットがあります。都心の中心部のように1日に相当数の人が行き交う場所のビルの看板広告は、1日で大量の人の目に触れるため、効率的なマスマーケティングの手段です。

パリの看板広告

(出典:https://pixabay.com/

マスマーケティングの事例

ここでは、最近のマスマーケティングの事例を紹介します。

BtoBテレビCMの事例:株式会社ブイキューブ

ブイキューブCM

(出典:YouTube

BtoB企業は、顧客が一般消費者ではないため、Btoに比べればテレビCMへの露出は少ない傾向があります。それでもある程度見込み客の層が広く、ブランディングが必要なタイミングならCMは非常に有効です。

上記は、Web会議システムを提供しているブイキューブ社のCMです。2020年以降のコロナパンデミックにより、日本の企業が急遽テレワークを導入しなければならなくなったのはご存知のとおりです。

当時もZoomなど無料ツールをはじめ、さまざまなツールがありましたが、すでに活用していた一部の先進的な企業以外は、何を選べばよいか見えづらい状態でした。そのタイミングで上記CMを出したのがブイキューブです。

ある程度の規模のBtoB企業にとっては、通信の問題、セキュリティの問題、何より失敗しないことが大事であり、「無料」はそれほどセールスポイントではありません。

「失敗せずに顧客との会議を進めたい」「社内のオフィシャルな会議を進めたい」「役員が登場する場面でミスなどとんでもない」といった、失敗をさけたいビジネスマンにとって、Web会議のあるあるの失敗をコミカルに描いた上記CMは、非常にタイムリーでした。

Web会議にそれまで関心の薄かった経営者層、運用担当者にも刺さったのではないかと思います。

『巨大3D猫』のデジタルサイネージ:クロス新宿ビジョン

新宿の3D猫

(出典:YouTube

上記の猫は3D(3次元画像)です。この巨大3D猫は、2021年にJR新宿駅の「クロス新宿ビジョン」に登場し、日本だけでなく海外からも話題を集めたサイネージ広告(デジタル看板)です。

Twitterで拡散され、登場から3日間で動画再生数は500万件を超えました。2022年には違う猫バージョンや、NIKEの3D広告も登場しています。

屋外広告の手法の中で、サイネージ電子看板は近年注目されている新しい手法です。アメリカ中国韓国などでも、ダイナミックで近未来的な事例がでています。


屋外広告は昔からある手法ですが、デジタル技術の進歩により、むしろ今は注目されやすく拡散されやすい手法です。3Dサイネージは、まだ出始めたばかりなので、今後さらに進化していくでしょう。

なお、トラディショナルな看板も、いまだマスに訴える有効な手段。SaaSのトップベンダーSalesforce社も、米国ではかなり有効活用しています。

Salesforces

『としまえん』の最後の新聞広告

としまえんの最後の新聞広告ーTwitter

(出典:「広告朝日」編集部のツイッター(@adv_asahi)

新聞広告は宣伝だけでなく、さまざまな企業メッセージ(上場告知、新年の挨拶、感謝の表明、お詫び広告など)にも活用されます。幅広い人に訴求できることはもちろん、新聞というメディアの信頼性が高いからでもあるでしょう。

上記は、東京都豊島区にある老舗の遊園地「としまえん」が、2020年に閉園したときに出した最後の新聞広告のリツイートです。

最後の広告は「あしたのジョー」をもってきました。「Thanks」というキャッチコピーのみ、あとは余白だけという広告は、多くの人にささり話題になりました。多くの人に愛されただけでなく「市場最低の遊園地」ほか、ユーモア溢れたテレビCMや広告をたくさん出してきたとしまんえん。最後の広告もやはり、素晴らしいクオリティでした。

マスマーケティングのメリットとデメリット

ここでは、マスマーケティングのメリットとデメリットを紹介します。

まず、メリットには以下があります。

メリット1:ブランド認知度の向上。

マスマーケティングは、一度に多くの人にメッセージを届け、露出を最大化させることができます。特にテレビは多くの家庭にあるため、企業名やプロダクトの認知率の向上に有効です。

多くの人に自社を認知させる非常に有効な手段であり、食品や日用品、車や不動産など一般消費者を対象としたプロダクトを提供する企業であれば、売上げ拡大だけでなくブランディングにも適しています。

メリット2:幅広い顧客へリーチできる

マスコミュニケーションは、一度に市場全体、幅広い層にリーチすることができます。メッセージを受け取る母数が大きいため、見込み客層が「主婦」「ビジネスマン」「子供」などの一カテゴリーであっても、何割かが興味を持てば、一定の数に訴求できます。また、当初イメージしていた購入者層と違う層が反応することなどもありえます。

テレビは最近でこそ見ない人が多少増えましたが、いまだ一家に一台以上ある家庭は少なくありません。人は、受動的スタンスでもCMを通してメッセージを受け取るため、幅広い年代に自社のファンを作ることができます。

メリット3:BtoC大手ならコストパフォーマンスが良い

BtoC向けのプロダクトであれば、マスマーケティングはコストパフォーマンスが良い点がメリットです。食品、消耗品など日々の生活でまめに購入する商品であれば、継続的な広告を出すことで消費者は徐々に商品に愛着がわき(ザイオンス効果により)、つい店頭で選んだり、Webから申し込んだりという行動につながります。

メリット4:マスメディアの影響力はいまだ大きい

すでにインターネット広告費は、オールドメディアの広告費を超えています。しかし現状では、テレビ、新聞、雑誌を介したマスマーケティングの影響力は大きいと言えるでしょう。

一つにはマスメディアが、いまだ一定の影響力は保っているためです。「マスゴミ」と批判されることも多いのですが、大手新聞にせよテレビ局にせよ、国内外の政治経済、文化、地域、芸能、天気予報まで広範な範囲について、しっかりしたコンテンツを提供し続けています。取材にかける時間、労力はネットメディアよりもはるかに多いでしょう。

メディアによっては「ジャーナリズムの矜持」をいまだそれなりに持っており、啓蒙的な面がひとつの魅力になっています。取材力があり、テレビや週刊文春でなければ、発掘できなかった情報などもあります。2025年に3人に1人が65歳以上になる高齢化社会の日本では、テレビの影響力は当面続くと考えられます。

次に、マスマーケティングのデメリットを紹介します。

デメリット1:価値観の多様化に対応しきれない

社会が近代化するにつれ、人々は生活に必要なプロダクトを入手してしまいます。基本的な必需品がゆきわたった先進国では、個人の好み、価値観、嗜好などが購買動機の中心になります。こうなると、マスマーケティングではニーズをくみ取ることが難しくなる局面が増えるでしょう。

例えば、AmazonやYouTubeは機械学習によって「◎◎を好んだ人は△□も好き」と判別してレコメンドします。Facebookでは年代、性別、学歴、趣味などがデータとして蓄積されています。何を「いいね! 」したかで、個人の特性をある程度つかめるサイコグラフィックなセグメンテーションが可能になりつつあります。

広告主にとってはペルソナに訴求しやすく、マスコミュニケーションより魅力的に映るでしょう。

SNSについては、ニッチマーケティングが可能なだけでなく、ユーザーが一つの国の人口を超える規模のものも多く(コンテンツがユーザー発信なのでマスメディア扱いはされていませんが)影響力が増しています。相対的にマスメディアの影響力は下がっていく可能性が高いでしょう。

デメリット2:高い予算が必要である

テレビCM、新聞広告、駅看板などはかなり高額です。継続的に活用できるのは資金力のある企業のみになります。CMを出せる会社=大手企業というイメージは多くの人にあるように、中堅・中小企業はもちろん、スタートアップ企業などは手が出せないといったほうが正しいかもしれません。

特にBtoBの場合、予算を投じても顧客獲得に直接的な効果はすぐ出ない業種が多いため、マスマーケティングの優先順位は低くなりがちです。

例えば、日本のBtoBの勝ち組である日本電産株式会社が、初めてCMをしたのは創業から40年以上もたった2016年。同じく日本有数の高収益企業、最強の営業会社と言われるキーエンス社も広告宣伝をしないポリシーです。

メリット3:BtoBには向いていない業種も多い:

マスマーケティングは、BtoB企業がリード獲得、売上げ向上が目的だと、コストパフォーマンスがよくありません。そもそも、BtoBの多くはマスにアピールしても意味がなく、あまりマスマーケティングに力を入れてこなかった歴史があります。

もっとも、BtoBでもリクルート、ビズリーチ、楽天などのように「クライアント:企業、ユーザー:消費者」でかつ市場が広範な場合は適しています。ユーザー層にアピールできることと、どの企業にも人材採用ニーズはあるため、リーチしたい層の厚みがあるからです。

あとは、価格帯も重要です。商品の価格があまりにも安すぎると反響が大きくても広告費をペイしない可能性があります。価格が高すぎても対象者が少い場合も効果は微妙……etc。前者よりであればブランド認知などを高める目的で運用されることはあります。

そういう意味では、BtoCであっても相当にニッチな市場対象の商品を扱う企業は、マスマーケティングは適していないでしょう。

デメリット4:効果予測が難しい

マスマーケティングは、まだ効果測定が難しいところが課題です。前述のようにテレビCMや看板の効果測定ツールなどは登場しつつありますが、あくまでWebとの連動で調べているため、高年齢層への影響はなんともいえません。

さらに、広告にせよCMにせよ、効果のあるなしはコンテンツのクオリティにもかかってきます。どのようなコンセプト、制作スタッフかでも成果は変わります。

もちろん、オンライン上のニッチマーケティングもコンテンツ作りは大変ですが、予算はマスマーケティングに比べればはるかに小さく、オンラインという特性上修正も容易です。

マスマーケティングは一発勝負な面があります。

一般消費者を対象にしている以上、ワンパターンでは飽きられるため斬新な手法を使っていかざるをえず、大きくあたるときと外れるときがある賭けのようなものです。この点、広告によるユーザーのアクションがつかみやすいデジタルマーケティングと比べれば、デメリットとも言えます。

まとめ

マスマーケティングは、テレビCM、新聞、雑誌、屋外広告などの4マスメディアを主に活用して、幅広い層を対象に行うマーケティング手法です。ネット広告市場が急成長し、インターネット上にメディアが多くなる中、古くからの雑誌の多くが廃刊となり、新聞も厳しいと言われつつあります。

とはいえ、Amazonが買収したワシントンポストは、ネット戦略に力を入れた結果、デジタル版の購読者は300万人に増加、記者の人数も580人から1000人超えになるなど発展したというニュースも出ています。主要マスメディアも、オンラインと融合し始め進化しつつあります。古い手法とレッテルをはらずに変化をウォッチしていきましょう。

戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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