ディスプレイ広告のクリック率の目安は?広告デザインやターゲティング設定のポイントと広告例も合わせて解説

2024/09/03
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ディスプレイ広告の運用において、クリック率は重要な指標のひとつです。しかし、どれくらいのクリック率を目指せばよいのか、具体的な目安を知らない方も多いのではないでしょうか。実は、ディスプレイ広告のクリック率は、業種や広告の種類によって大きく異なります。

たとえば、WordStreamの調査によると、Googleディスプレイ広告の平均クリック率は0.47%ですが、業種別に見ると、テクノロジー業界では0.39%、自動車業界では0.60%、不動産業界では1.08%と、ばらつきがあることがわかります。

では、自社のディスプレイ広告のクリック率を改善するには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。実は、広告デザインやターゲティング設定の工夫次第で、クリック率を大幅に向上させることができるのです。

本記事では、ディスプレイ広告のクリック率の目安を業種別に解説するとともに、クリック率を高めるための広告デザインのポイントや、ターゲティング設定の最適化方法について詳しく解説します。また、実際の広告事例を交えながら、効果的なディスプレイ広告の制作のコツをお伝えします。

ディスプレイ広告とは

ディスプレイ広告とは、インターネット上のさまざまなWebサイトやアプリ上に表示されるバナー広告や動画広告などの総称です。リスティング広告とは異なり、画像や動画などの視覚的な要素を活用できるため、効果的にユーザーの注意を引き付けられます。

ディスプレイ広告の主な目的は、ブランドや商品の「認知率」を高めることです。認知率とは、ブランドや商品の存在を知っているユーザーの割合を指します。また、一度見た広告を後から思い出す「想起率」を向上させることも重要な目的のひとつです。

ディスプレイ広告がターゲットとするのは、自社の商品やサービスを必要としているかもしれないが、まだ明確な課題意識を持っていない潜在顧客層です。一方、リスティング広告は、すでに自らの課題を認識し、積極的に解決策を探している顕在顧客層をターゲットとしています。

そのためディスプレイ広告は、Webサイトやアプリを利用中のユーザーに広告を繰り返し配信することで、ブランドや商品の認知率や想起率を高める効果が期待できます。ただし、即座に成果につながるリスティング広告とは異なり、短期的な売上アップは見込みにくいことが特徴です。

ディスプレイ広告を活用するメリットとデメリット

ディスプレイ広告には多くのメリットがありますが、同時にいくつかの課題も存在します。以下では、ディスプレイ広告の主なメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。

ディスプレイ広告を活用するメリット

ディスプレイ広告には、事業の成長や顧客獲得に役立つさまざまなメリットがあります。ここでは、ディスプレイ広告のメリットについて詳しく見ていきましょう。

ディスプレイ広告を活用するメリット

ディスプレイは目を引かせることができる

ディスプレイ広告の最大の特徴は、その視覚的なインパクトです。テキストのみの広告と比べて、画像や動画を活用できるディスプレイ広告は、ユーザーの注目を集めやすくなります。色鮮やかなデザイン、魅力的な画像、動きのある要素などを組み合わせることで、Webページ上で際立つ存在となり、ユーザーの目を引くことができるのです。

さらに、クリエイティブな要素を活用することで、ブランドの個性や製品の特徴を視覚的に表現し、ユーザーに強い印象を与えられます。これにより、ブランドの記憶度が高まり、将来の購買行動につながる可能性が高くなります。

配信先のターゲッティングができる

ディスプレイ広告では、年齢、性別、地理的位置、興味関心、検索履歴など、さまざまな要素に基づいて広告の配信対象を絞り込めます。たとえば、特定の年齢層や地域に住む人々だけに広告を表示したり、特定の興味を持つユーザーにのみ広告を配信したりすることが可能です。これにより、広告予算を効率的に使用し、最も関心を持ちそうな潜在顧客にリーチできるのです。

さらに、広告を配信するWebサイトやアプリなどの媒体も選択できます。ユーザーと広告媒体の両方をターゲティングすることで、自社と関連性の高い潜在顧客に効率的にアプローチすることが可能になります。

リターゲティング広告の仕組み

加えて、リターゲティングという手法を用いることで、過去に自社サイトを訪問したユーザーや、特定の行動をとったユーザーに対して、パーソナライズされた広告を表示することもできます。リターゲティングは、すでに製品やサービスに興味を示したユーザーに再度アプローチすることで、コンバージョン率を高める効果が期待できます。

見込み客の行動を刺激する

ディスプレイ広告は、見込み客の行動を効果的に刺激し、購買につなげる力を持っています。視覚的に魅力的な広告は、ユーザーの注意を引くだけでなく、即座の行動を促す効果があるのです。

たとえば、期間限定セールや特別オファーを訴求するディスプレイ広告は、ユーザーに「今すぐ行動しなければ」という緊急性を感じさせ、クリックや購入を促進できます。また、製品のメリットや特徴を視覚的に分かりやすく伝えることで、ユーザーの興味を喚起し、詳細情報の確認や問い合わせにつながりやすくなるでしょう。

さらに、ユーザーの閲覧履歴や興味関心に基づいてパーソナライズされた広告を表示すれば、より関連性の高い情報を提供し、効果的に行動を促せます。具体的には、過去に特定の製品カテゴリーを閲覧したユーザーに対して、関連する新商品や関連製品の広告を表示することで、アップセル/クロスセルをしてもらうといった具合です。

ブランド認知度を高める

ディスプレイ広告は、ブランド認知度を高めるための強力な手法です。視覚的な要素を活用することで、ユーザーの記憶に残りやすく、長期的なブランドイメージの構築に貢献します。

Meta社の調査

(出典:Meta)

Meta社がニールセン社に委託した調査によれば、動画広告は人の目に触れさえすれば、広告想起、ブランド認知、購買意欲を向上させると判明しています。つまり動画を用いたディスプレイ広告を配信することで、効率よくブランド認知を高められるのです。

また、繰り返し広告を配信すれば、ユーザーはブランドロゴや製品イメージに慣れ親しむようになり、ブランドの存在感が高まります。Yahoo! Japanの分析でも、ユーザーがブランドを検討する前の段階、つまり潜在ニーズがある段階で認知度を高めることが、第一想起率向上に有効であるとされています。

ブランド認知度と第一想起率

ディスプレイ広告で潜在顧客に対する自社の認知度・想起率を高めておくことで、比較検討段階で自社が選ばれる可能性が高まるというわけです。

効果測定が容易である

ディスプレイ広告は効果測定と分析が比較的容易に行えます。主な指標は以下の通りです。

  • インプレッション数:広告が表示された回数
  • クリック数:広告がクリックされた回数
  • クリック率(CTR):インプレッション数に対するクリック数の割合
  • コンバージョン率:広告をクリックしてから、購入や申し込みなどの目標行動を達成した割合

これらの指標を通じて、どの広告がより効果的であるか、どのターゲット層に反応が良いかなどを詳細に把握ができます。また、A/Bテストを実施することで、異なるデザインやメッセージの効果を比較し、最も効果的な広告クリエイティブを特定することも可能です。

効果測定と最適化のサイクルを回すことで、ブランドの認知度向上や潜在顧客の獲得により大きく貢献できるでしょう。

ディスプレイ広告を活用するデメリット

ディスプレイ広告には多くのメリットがある一方で、いくつかの重要な課題や制限も存在します。これらのデメリットを理解し、適切に対処することで、より効果的な広告戦略を立てることができます。以下では、ディスプレイ広告の主なデメリットについて詳しく見ていきましょう。

ディスプレイ広告のクリック率を高めるデザインのポイント

クリック率・コンバージョン率が相対的に低い

ディスプレイ広告の大きなデメリットは、他の広告形式と比較してクリック率やコンバージョン率が相対的に低いことです。

ユーザーの多くは特定の目的を持ってWebサイトを訪れており、コンテンツに集中しているため、サイドバーや上部に表示される広告を無視しがちです。これは「バナーブラインドネス」と呼ばれる現象で、ユーザーが無意識のうちに広告を視覚的に無視してしまうことを指します。

また、ディスプレイ広告はリスティング広告と異なり、ユーザーの能動的な検索意図に基づいて表示されるわけではありません。そのため、広告が表示されたタイミングが、ユーザーの購買意欲や興味と必ずしも一致しないことがあります。

ターゲティングは完璧ではない

ディスプレイ広告のターゲティング機能は完璧ではありません。

まずターゲティングの精度は、利用可能なデータの質と量に大きく依存します。ユーザーの行動データやデモグラフィック情報が不完全または不正確な場合、意図したターゲット層に正確にリーチできない可能性があります。

また、プライバシー規制の強化により、利用可能な個人データが制限されつつあります。たとえば、EUのGDPRや米国のCCPAなどの法律により、ユーザーの同意なしにデータを収集・利用することが難しくなっています。これにより、詳細なターゲティングが以前ほど容易ではなくなる可能性があります。

さらに、ユーザーの興味や行動は常に変化しているため、過去のデータに基づくターゲティングが必ずしも現在の関心を反映していない場合もあるのです。たとえば、一時的に調べた情報に基づいて長期間広告が表示され続けるなど、適切でないタイミングで広告が配信されることがあります。

広告の無視や広告のブロック

ディスプレイ広告が直面する大きな課題のひとつは、ユーザーによる広告の「無視」と「ブロック」です。これらの行動は広告効果を著しく低下させ、企業のマーケティング戦略に大きな影響を与えます。

特に、頻繁に表示される広告に対して、多くのインターネットユーザーが「広告疲れ」や「広告アレルギー」を感じています。これらの現象は、広告がユーザーにとって煩わしい存在となり、逆にブランドイメージの低下を引き起こす可能性があります。たとえば、ポップアップ広告や自動再生動画広告など、ユーザーの閲覧体験を阻害する広告が代表的です。

さらに、広告ブロッカーの普及も無視できない課題です。AdBlock Plusなどのブラウザプラグインやアプリを使用することで、ユーザーはワンクリックで広告を非表示にできます。ある調査によれば、インターネットユーザーの42.7%が何らかの広告ブロッカーを使用しており、この数字は今後も増加する可能性があります。

ディスプレイ広告のクリック率とは

ディスプレイ広告のクリック率は、広告効果を測定する際に欠かせない指標のひとつです。クリック率は、広告が表示された回数(インプレッション)に対して、実際にクリックされた割合を示します。

一般的に、ディスプレイ広告のクリック率は他の広告形式、たとえばリスティング広告やSNS広告と比べると低い傾向にあります。実際、多くの企業がディスプレイ広告で平均0.1%から0.5%程度のクリック率を経験していると言われています。

しかし、クリック率が低いからといって、必ずしもキャンペーンが失敗しているわけではありません。ディスプレイ広告は直接的なクリック以外にも、ブランド認知度の向上やユーザーの将来的な購買意欲の醸成に重要な役割を果たします。たとえば、ユーザーが広告をクリックしなかったとしても、ブランド名やメッセージが記憶に残り、その後の購買決定に影響を与えることがあります。

そのため、広告キャンペーンの成功を判断する際には、クリック率だけに頼らず、ブランドリフト調査やコンバージョン率、さらには広告の視覚的な影響やエンゲージメントといった複数の指標を組み合わせて総合的に評価しなければいけません。これにより、ディスプレイ広告がもたらす長期的な効果を正確に捉えることができるでしょう。

ディスプレイ広告のクリック率の計算方法

ディスプレイ広告のクリック率(CTR)計算

ディスプレイ広告のクリック率の計算方法はシンプルで、基本的な数式は以下の通りです。

  • クリック率= クリック回数 ÷ 広告の表示回数 × 100

たとえば、あるディスプレイ広告が1万回表示され、そのうち50回クリックされた場合、クリック率は以下のように計算されます。

  • クリック率 = 50 ÷ 10,000 × 100 = 0.5%

この0.5%という数字がクリック率です。クリック率は広告の効果を判断するための基本的な指標であり、この数値が高いほど、広告がユーザーにとって魅力的でクリックされやすいことを示しています。

しかし、単にクリック率が高いだけでは、広告キャンペーン全体の成功を評価することはできません。クリック率が高くても、クリックしたユーザーがその後のページで離脱してしまったり、購入や問い合わせなどの具体的なアクションに至らなかったりした場合、広告効果は限定的となるためです。したがって、他の指標と組み合わせて総合的に分析しなければいけません。

ディスプレイ広告のクリック率がなぜ大事なのか

クリック率が重要な理由は、広告がユーザーにどれだけ効果的にリーチし、興味を引きつけているかを直接示す指標だからです。高いクリック率は、広告がターゲットユーザーのニーズや関心に合致し、彼らが実際にクリックというアクションを起こしていることを意味します。これは、広告の訴求力が高い証拠であり、ターゲットユーザーに強い影響を与えていることを示しています。

一方で、クリック率が低い場合は、広告の訴求力に問題がある可能性が高いです。たとえば、広告のクリエイティブ(デザインやメッセージ)がターゲットユーザーに響いていない、または適切なユーザーに届いていない可能性があります。この場合、広告の内容やターゲティング戦略の見直しが必要です。

さらに、クリック率はコンバージョン率と密接な関係があります。一般的に、クリック率が高い広告はユーザーの興味を引きやすいため、その後のコンバージョン率も高くなる傾向があります。これにより、広告主はクリック率を改善することで、直接的にコンバージョン率を引き上げ、最終的なROASを向上させることが可能です。

ただし、クリック率が高いからといって必ずしもコンバージョン率が高いとは限りません。たとえば、クリック後のランディングページが魅力的でなかったり、ユーザーの期待に応えられなかったりした場合、コンバージョンには結びつかないこともあります。このような場合、広告自体の改善だけでなく、ランディングページの最適化も必要です。

ディスプレイ広告の平均クリック率【業種別も紹介】

ディスプレイ広告の平均クリック率は、業界や広告の種類によって大きく異なります。以下に、最新の利用可能なデータに基づいて、全体的な平均CTRと業種別のCTRを紹介します。

全体的な平均CTR

Googleディスプレイ広告のクリック率

WordStreamの2024年のデータによると、Googleディスプレイ広告の平均CTRは約0.46%です。これはディスプレイ広告が1000回表示された広告に対して4.6回クリックが発生することを意味します。なおリスティング広告の全体平均CTRは3.17%であり、ディスプレイ広告よりも圧倒的に高いことがわかります。ただし、これは業界や広告の種類によって大きく変動する可能性があります。

業種別のGoogleディスプレイ広告平均CTRは以下の通りです。

業種別のGoogleディスプレイ広告平均CTR

ただし、これらの数値はあくまでも平均値であり、海外企業のデータを参考に算出しているため、実際のキャンペーンのパフォーマンスは大きく異なる可能性があります。そのため、業界平均値だけではなく、競合他社や自社の過去のパフォーマンスとの比較分析も実施するようにしましょう。

ディスプレイ広告のクリック率を高めるポイント

ディスプレイ広告のクリック率を向上させるには、複数の要素を最適化する必要があります。以下に、CTRを高めるための主要なポイントをいくつか紹介します。

ディスプレイ広告のクリック率を高めるデザインのポイント

ディスプレイ広告のクリック率に影響を与えるのが、CTAなどのデザインです。まずはクリック率を高めるデザインのポイントをご紹介します。

ターゲットに関連のあるCTAを作成する

クリック率を高めるためには、ターゲットに合わせたCTAを用意することが重要です。たとえばBtoBの市場では、意思決定者や影響力を持つ担当者が複数存在するため、CTAはそれぞれの役割に合わせたパーソナライズが求められます。

たとえば、経営層向けには「収益を20%向上させる戦略を今すぐダウンロード」といった具体的なビジネス成果を強調する一方、技術担当者向けには「最新の技術トレンドレポートを無料で入手」といった情報提供型のCTAが効果的です。

ターゲットの属性や興味関心に合わせてCTAを最適化することで、広告の説得力が増し、クリック率の向上につながります。また、CTAのデザインも重要です。目立つ色を使用したり、ボタン形式にしたりすることで、ユーザーの注意を引き付け、クリックを促すことができます。

ダイナミッククリエイティブの活用

ダイナミッククリエイティブとは、広告の配信時にユーザーの属性や行動に応じて、自動的に最適な広告クリエイティブを表示する手法です。

たとえば、製造業の購買担当者がWebサイトで特定の製品カテゴリーを閲覧した場合、次に表示されるディスプレイ広告には、その製品に関連するソリューションや成功事例をCTAとしてディスプレイ広告を配信。一方、同じ製品でも、経営層には「収益性向上」や「効率化」を強調するクリエイティブが表示されるようにすることが可能です。

ダイナミッククリエイティブを活用することで、ユーザー一人ひとりに最適化された広告を配信できるため、広告の関連性が高まり、クリック率の向上が期待できます。また、多数のパターンの広告クリエイティブを用意する必要がなくなるため、制作コストの削減にもつながります。

HTML5広告の活用

従来のディスプレイ広告では、静止画やGIF画像が主流でしたが、近年ではHTML5を使った広告が増えています。HTML5広告は、アニメーションやインタラクティブ性を追加することができるため、ユーザーの注目を集めやすく、高いクリック率が期待できます。

たとえば、マウスオーバーすると画像が切り替わったり、クリックすると動画が再生されたりするような仕掛けを取り入れることで、ユーザーの興味を引き付けることができるでしょう。また、HTML5広告はモバイル端末でも表示が最適化されるため、スマートフォンユーザーへのリーチも広がります。

モバイル端末向けに最適化する

スマートフォンでインターネットを利用するユーザーが増加しています。それに伴って、ディスプレイ広告もモバイル端末向けに最適化しなければいけません。モバイル端末では画面サイズが限られているため、広告のデザインは簡潔でわかりやすいものにする必要があります。

具体的には、大きめのフォントサイズを使用し、メッセージを短くまとめるのが効果的です。また、CTAボタンのサイズは十分に大きくし、タップしやすい位置に配置しましょう。スマートフォンの画面サイズに合わせて、広告のレイアウトを最適化することで、クリック率の向上が期待できます。

ディスプレイ広告のクリック率を高める設定のポイント

ディスプレイ広告のクリック率を向上させるには、適切な戦略と継続的な最適化が不可欠です。以下に、クリック率を高めるための主要な設定ポイントをご紹介します。

さまざまな種類の広告を試してみる

ディスプレイ広告には多様な形式があり、それぞれ異なる効果を発揮します。さまざまな種類の広告を試すことで、最も効果的な形式を見つけ出せるでしょう。主なディスプレイ広告の種類は以下の通りです。

  • バナー広告:静止画や簡単なアニメーションを使用した従来型の広告。サイズや配置を変えて効果を測定します。
  • リッチメディア広告:インタラクティブな要素や動画を含む高度な広告。ユーザーの注目を集めやすいですが、制作コストが高くなる傾向があります。
  • ネイティブ広告:Webサイトのコンテンツに溶け込むように設計された広告。ユーザーエクスペリエンスを損なわずに情報を提供できます。
  • レスポンシブディスプレイ広告:異なるサイズや形式に自動的に適応する広告。さまざまなデバイスやプラットフォームで一貫した表示が可能です。

これらの広告形式を A/B テストで比較し、最もクリック率が高くなる形式を特定しましょう。また、定期的に新しい広告形式や創造的なアプローチを試すことで、常に最適なパフォーマンスを追求できます。

ターゲティングを見直す

ディスプレイ広告のクリック率が低迷している場合、その主な原因のひとつとして、自社と関連性の低いユーザーに広告を配信していることが考えられます。ターゲットがずれていると、どれだけ魅力的な広告でも効果を発揮できません。したがって、クリック率を改善するためには、まずターゲティング設定を見直すことが不可欠です。

カスタマージャーニーマップ

ターゲティングの見直しにおいて、最初に参考にすべきは自社で作成しているペルソナカスタマージャーニーマップです。ペルソナは、ターゲット顧客の典型像を具体的に描いたもので、年齢、性別、職業、興味関心、ライフスタイルなどが含まれます。カスタマージャーニーマップは、顧客が認知から購買に至るまでのプロセスを詳細に可視化し、各ステージでの顧客心理や行動を示します。

これらの資料を活用すれば、最も興味を持ちそうなターゲットを明確にし、そのターゲットに向けて適切な広告を配信することが可能です。たとえば、ある商品の主要購買層が20代女性であるならば、その層に焦点を当てたターゲティングを行うことで、クリック率を大幅に向上させることが期待できます。

もし、まだペルソナやカスタマージャーニーマップが存在しない場合、まずはこれらを作成することから始めましょう。ペルソナの作成には、既存顧客のデータ分析やアンケート調査、インタビューなどが役立ちます。また、カスタマージャーニーマップを作成する際には、顧客が購買に至るまでの各ステージでの行動データや問い合わせ内容を詳細に分析し、顧客のニーズや課題を把握することが重要です。

ターゲティングの設定は一度きりの作業ではなく、広告の配信後も継続的にパフォーマンスをモニタリングし、クリック率やコンバージョン率を確認しながら改善を繰り返していく必要があります。これにより、より効果的なターゲティングが実現し、広告の成果を最大化することができるでしょう。

リマーケティングを設定する

リマーケティング戦略

リマーケティングとは、自社サイトを訪れたことのあるユーザーに再度広告を配信する手法であり、すでに自社に興味を持っているユーザーを対象にするため、通常のディスプレイ広告よりも高いクリック率が期待できます。

この手法では、カスタマージャーニーの各段階に応じた適切なメッセージやオファーをユーザーに提示することが重要です。たとえば、商品ページを閲覧したが購入に至らなかったユーザーには、購入を促進するための割引オファーを表示することが考えられます。また、カートに商品を残して離脱したユーザーには、カート内の商品を再度知らせるリマーケティング広告を配信することで、コンバージョン率を高めることが可能です。

さらに、リマーケティングは新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客の再購入や再活性化にも効果を発揮します。一度購入したユーザーに対して関連商品を提案することで、追加の購入を促せるでしょう。また、一定期間後に再訪を促すメッセージを送ることで、リピート購入を促進することも可能です。

ただし、リマーケティングを効果的に活用するためには、いくつかの注意点があります。まず、ユーザーのプライバシー保護が重要です。また、広告の配信頻度には注意が必要で、過度に広告が表示されるとユーザーに不快感を与える可能性があります。そのため、適切な頻度とタイミングでの配信を心がけましょう。

ディスプレイ広告の例

SaaS企業のディスプレイ広告は、製品の特徴や利点を視覚的に分かりやすく伝える必要があります。以下では、Metaの広告ライブラリーより効果的なディスプレイ広告の例を2つ紹介し、それぞれの優れたポイントを解説します。

例①:HubSpot

Hubspot

これはCRMを提供するHubSpotのディスプレイ広告です。まず目に飛び込んでくるのは、「100% Free, Forever.」というシンプルでありながら力強いメッセージです。この短いフレーズは、無料で永続的に利用できるという大きなメリットを瞬時に伝え、読者の興味を引きつけます。ディスプレイ広告は限られたスペースの中でインパクトを与える必要があるため、このような簡潔で明快なメッセージは効果的です。

さらに、広告の背景に使用されている明るいオレンジ色も見逃せません。この色は人々の注意を引きつけやすく、視覚的なインパクトを高めています。また、この色はHubSpotのブランドカラーでもあり、ブランド認知度を高める役割も果たしています。広告を見ることで自然とHubSpotのブランドイメージが強化され、視覚的な一貫性が保たれているのです。

このように、HubSpotのディスプレイ広告は、限られたスペースと時間の中で視覚的な訴求力を最大限に引き出すことに成功しています。メッセージの明確さとデザインのバランスが、効果的にブランドの強みを伝えているのです。

例②:AnyONE

AnyONE

「AnyONE」は工務店・建築住宅業界に特化したDXツールで、そのディスプレイ広告はターゲットユーザーの心をつかむ構成になっています。まず注目すべきは、広告に登場する人物のビジュアルです。「予実にズレが出ている」という問題に悩んでいる表情は、工務店や住宅建築業に従事する人々にとって共感を呼ぶものでしょう。ターゲットの感情に訴えることで、広告は一瞬で関心を引きつけ、深い印象を残します。

さらに、「あかん。また予実にズレがでている。」というキャッチコピーは、具体的で切実な問題をシンプルに表現しています。この短いフレーズにより、ターゲットユーザーは自分の状況と広告を結びつけやすくなり、メッセージが効果的に伝わります。問題提起をすることで、視聴者に「これこそ自分に必要な解決策だ」と感じさせることができるのです。

広告の左側に配置された「AnyONE」のロゴと製品のスクリーンショットは、ブランドの存在感を強調し、視覚的な認識を強めます。これにより、広告を見るだけで「AnyONE」というブランドとその提供するソリューションが視覚的にインプットされ、記憶に残りやすくなっています。

このディスプレイ広告は、ターゲットユーザーの悩みに寄り添い、解決策を自然に提示することで、強い共感と信頼を築いています。ビジュアルとメッセージが巧みに組み合わさり、広告の効果が最大限に引き出されている例です。

まとめ

ディスプレイ広告のクリック率は、他の広告手法と比較して低い傾向にありますが、依然として広告の関連性や訴求力を評価するための重要な指標のひとつです。クリック率が高い場合、それは広告が適切なターゲットにリーチし、ユーザーの興味を効果的に引き付けている証拠です。一方で、クリック率が低い場合は、広告の内容やターゲティングに改善の余地があることを示唆します。

しかし、ディスプレイ広告の真の目的は、クリックを獲得するだけではありません。多くの場合、ブランド認知度の向上や、将来的な購入意向を高めるためのブランディング効果が期待されています。たとえば、ユーザーが広告を見た後、直接クリックせずに後からブランド名を検索したり、自社のウェブサイトを訪問したりすることがあります。これらの行動はクリック率には反映されませんが、広告の効果を示す重要な指標です。

このため、ディスプレイ広告の効果を総合的に評価するためには、クリック率だけでなく、インプレッション数、リーチ数、ブランドリフト、ビュースルーコンバージョンなど、複数の指標を組み合わせて分析する必要があります。クリック率の向上は、ディスプレイ広告の最適化において重要な目標のひとつですが、他の指標も総合的に考慮することで、広告キャンペーンの真の効果を把握し、戦略を最適化できるのです。

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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