自社サイトへのアクセスは一定数あるものの、なかなかコンバージョンにつながらずお悩みではないでしょうか。
そもそも新規訪問ユーザーがコンバージョンにいたる確率は10%未満と、とても低いものです。コンバージョン率を上げるためには、一度Webサイトに訪問したユーザーにアプローチし、再訪問を促す必要があります。
そのために効果的なマーケティング施策が、リターゲティング広告です。リターゲティング広告を活用することで、自社製品サービスに興味関心のあるユーザーに効率よく広告を配信できます。
本記事では、BtoB企業やSaaS企業のマーケティング担当者に向けて、以下の内容を解説します。
本記事を読めば、リターゲティング広告の基礎知識や配信手順まで、リターゲティング広告を始めるために必要な事柄がわかるでしょう。ぜひ最後までお読みください。
(リターゲティング広告の仕組み)
リターゲティング広告とは、過去に自社サイトに訪問したことのあるユーザーに対して配信し、再訪問を促す広告のことです。
日常生活で「Webサイトで製品サービスをチェックしたら、他のサイトや検索エンジンで広告として表示されるようになった」という経験がある方もいらっしゃるでしょう。それはリターゲティング広告の仕組みを使って広告を配信しているからです。
リターゲティング広告と似た名称で「リマーケティング広告」や「サイトリターゲティング広告」がありますが、広告媒体によって名称が異なるだけで、同じものです。
各検索エンジンや広告媒体における、リターゲティングの名称は以下の通りです。
本記事では、名称を「リターゲティング」に統一して解説します。
まず、新規訪問ユーザーがコンバージョンにまで到達する確率は、とても低いことを知っておきましょう。
ユーザーがWebサイトを1ページだけ閲覧して離脱する割合を、「直帰率」と言います。平均直帰率は58.18%で、訪問ユーザーの約半数以上にものぼります。
コンバージョン率(CVR)になるとさらに低くなります。さまざまなマーケティングデータを掲載する「WorldStream」のデータによれば、コンバージョン率は検索広告で1%台〜10%弱、GDN(Googleディスプレイ広告)で0.5%〜約3%が目安です。
より詳細にデータを確認すると、検索広告でのCVRはBtoCが主である自動車業界で6.03%なのに対して、BtoBではCVRは3.04%にとどまります。単純に広告を出稿しただけでは、BtoBにおいてはCVRが低くなりがちであることがわかります。
コンバージョン率を高めるためには、リターゲティング広告を活用して訪問履歴のあるユーザーに対して、アプローチしていくと効果的です。
リターゲティングは、以下の2種類に分類されます。
スタティック(静的)リターゲティングは、Webサイトを訪問した履歴のあるユーザーに、特定のバナーや広告文を配信する方法です。ダイナミック(動的)リターゲティングは、訪問履歴のあるユーザーの行動や興味関心を機械学習によって分析し、より最適な広告を配信する仕組みです。目的に応じて使い分けるとよいでしょう。
Web広告の歴史は、インターネット黎明期から始まります。純広告(バナー広告)やメルマガ広告、アフィリエイト広告などが主流でしたが、2007年ごろには行動ターゲティングの概念が誕生しました。
行動ターゲティングとは、Cookie情報をもとにユーザーの行動を追跡して興味関心を分析し、広告を配信するという考え方です。
2007年には、Yahoo!JAPANが行動ターゲティング広告配信サービスを開始。この頃から少しずつ、ユーザーの属性や行動を分析して「人」に対して広告を出稿する「オーディエンスターゲティング」が注目されるようになりました。
2008年ごろから純広告が伸び悩み始めたことも、リマーケティング広告が急速に広まった要因です。また、リーマンショックの影響で金融エンジニアが大量に広告業界に流れ、いわゆる「アドテク」が盛んになったことも追い風となりました。
リターゲティングを含むオーディエンスターゲティングは、いまではWeb広告に欠かせない存在となっています。
リターゲティング広告と通常の広告では、広告配信の対象ユーザーが異なります。
通常の広告はユーザーの訪問履歴に関係なく、検索エンジンやWebサイトの広告枠に表示されるのです。
通常の広告でも、年齢や地域といったユーザー属性で配信対象を絞ることは可能ですが、Webサイトへの訪問履歴の情報は利用されません。
この章では、リターゲティング広告を行うためのステップを解説します。リターゲティング広告を配信するには、以下の準備が必要です。
これらの手順について、1つずつ解説します。
オーディエンスとは、広告を配信する対象ユーザーのことです。リターゲティング広告を配信するにはまず、オーディエンスリストを作成する必要があります。
Google広告の場合は管理画面の「オーディエンスマネージャー」から、Yahoo!広告の場合は「ターゲットリスト」からオーディエンスリストを作成しましょう。
オーディエンスは「◯日以内にWebサイトを訪問したユーザーに配信」というように、訪問日から経過した日数で決めます。
検討期間が長い高価な製品サービスの広告は、日数を長めに設定することをおすすめします。一般的に、BtoCサービスは検討期間が短めなのに対し、BtoBサービスは検討期間が長めです。
たとえば、数百万円規模のITシステムであれば、比較検討に1年ほどかかる場合もあります。この場合、リターゲティングの期間は「300日」としてもよいでしょう。
リターゲティング広告に関する一般的な情報は、BtoCに関するものが多い傾向にあります。そうした情報に惑わされず、自社の製品サービスの性質に合わせて、リターゲティングの日数を決めましょう。
オーディエンスを決める際には、配信対象のユーザーに意識が向きがちですが、「配信除外ユーザー」の設定も重要です。
購入完了ページに到達したなど、すでにコンバージョンしたユーザーが再びコンバージョンする確率は高くありません。配信対象リストの作成と同時に、配信除外リストも作成して、購入済みのユーザーを配信対象から除くことをおすすめします。
Webサイト訪問からの日数だけでなく、他の条件とも掛け合わせてオーディエンスを作成します。Google広告やYahoo!広告では、ユーザーの行動などを詳細に指定でき、さまざまな切り口でのオーディエンス作成が可能です。
【Google広告の場合】
オーディエンスの条件 |
広告の種類 |
商品説明ページを閲覧したものの、カートに商品を追加しなかったユーザー |
カートに追加しなかった商品の広告 |
カートに商品を追加したものの、購入には至らなかったユーザー |
カートの中の商品の割引コード付きの広告 |
商品 X と Y を購入したユーザー |
関連商品 Z の広告 |
(出典:https://support.google.com/analytics/answer/2611268?hl=ja#zippy=%2C)
【Yahoo!広告の場合】
(Yahoo!のオーディエンスリスト種別)
多様なオーディエンスリストを作成しておき、クリック数やコンバージョン数を分析しながら、リストを改善していくことをおすすめします。
クリエイティブとは、広告のタイトルや広告文、画像、動画などのことです。
広告媒体はGoogleやYahoo!、Facebook、YouTube、Twitterなど多岐に渡ります。媒体に応じて、クリエイティブを使い分けることをおすすめします。
広告が表示されても、クリックされなければ意味がありません。ユーザーが興味を持ちやすいクリエイティブを作ることが肝心です。パターンを複数用意しておき、効果がないクリエイティブは配信停止や差し替え、修正するなどしてブラッシュアップしていきましょう。
また、広告をクリックしたあとに表示されるLP(ランディングページ)も準備します。LPが魅力的だと、ユーザーの興味関心や購買意欲はより高まり、リードジェネレーションも成功しやすくなるでしょう。
LPについても、ユーザーの行動履歴やコンバージョン率を分析しながらブラッシュアップしていくことをおすすめします。
SaaS企業であれば、自社サービスの無料試用期間を設定している場合も多いでしょう。その場合、クリエイティブやLPで「無料で使い始められる」ことをアピールするのは有効な手法です。
(ピーシーフェーズの「shouin+」)
たとえば、ピーシーフェーズ株式会社の動画人材育成サービス「shouin+」では、無料トライアルプランが用意されています。1カ月間は無料で機能のすべてを使えるため、利用者は使い勝手を確認したうえで、安心してサービスに申し込めます。
利用者にお得感と安心感を持ってもらうことで、サービスを使い始めるきっかけを作りやすくなるでしょう。
リターゲティング広告は、以下のような広告媒体で配信が可能です。クリエイティブとLPがあれば、どんな広告媒体でもリターゲティング広告の配信が可能です。
配信対象を広げるため、これらの広告媒体を併用して広告配信することをおすすめします。
(広告アカウントの構造)
リターゲティング広告の配信は、オーディエンスリストと広告グループを紐づけることで可能になります。オーディエンスリストとクリエイティブが完成したら、キャンペーンと広告グループを作成しましょう。
キャンペーンとは、配信対象や予算、目標ごとに広告を束ねる単位です。キャンペーンの中に、広告をまとめる単位である広告グループを配置します。
広告グループには、キーワードや広告文、クリエイティブ、URLなどをセットにして設定しておきましょう。
各広告媒体の管理画面で、広告グループとオーディエンスリストの紐付け設定を行います。設定の完了後、Cookieに基づくデータが蓄積され次第、広告が配信されます。
広告が配信されたら、ユーザーの閲覧履歴やコンバージョン数などを分析して、オーディエンスリストやクリエイティブの改善を繰り返しましょう。
BtoB企業やSaaS企業が、リターゲティング広告を効果的に利用するためには、メリットとデメリットを理解しておくことが大切です。
この章では、リターゲティング広告のメリットとデメリットを3つずつ紹介します。
リターゲティング広告のメリットは、「興味関心が高いユーザーに広告を配信できる」という点です。
具体的にどのような効果が得られるのか、ひとつずつ解説します。
一度自社サイトに訪問したユーザーは「自社の製品サービスに関心がある」と見込めます。製品サービスの購入につなげるためには、そうしたユーザーにアプローチすると効率的です。
複数種類の製品やサービスを扱うBtoB企業やSaaS企業であれば、買い手がどれに興味を持っているかも意識しましょう。
たとえば前述したピーシーフェーズ株式会社は、動画人材育成サービス「shouin+」の他に、企業向けシステム開発の事業も行っています。
「shouin+のページを見たユーザー」と「システム開発のページを見たユーザー」では、関心のあるサービスが異なります。これらのユーザーを区別してターゲティングすることで、より効果的な広告出稿が可能になるでしょう。
製品サービスに一切興味のないユーザーや、ニーズが顕在化していないユーザーを、コンバージョンさせるのは容易ではありません。
ですが、一度Webサイトを訪問したユーザーは、ある程度ニーズが顕在化しています。そのため、リターゲティング広告でその製品サービスを思い出してもらうことで、比較的容易にコンバージョンを促せます。
BtoBの高額案件では、比較検討の期間が長くなるため、情報収集をしているうちに自社の製品サービスを忘れられてしまうことが起こりがちです。担当者に自社のことをもう一度思い出してもらい、購入の候補に確実に加えてもらうことで、コンバージョンにつながる確率を高められます。
見込み客に効率よくアプローチしてコンバージョン数が増えれば、CPA(コンバージョン1つあたりにかかる広告費用)を下げることが可能です。
認知拡大には適していてもコンバージョンにはつなげにくい通常広告に比べ、高い費用対効果を期待できます。結果として、ROIやROASを高めることにもつながるでしょう。
コンバージョン率や費用対効果の向上が期待できるリターゲティング広告ですが、デメリットもあります。
リターゲティング広告を運用する際には、デメリットについてもよく理解しておきましょう。
リターゲティング広告は、Webサイトに訪問したユーザーのCookieを追跡して広告を配信します。そのため、自分の行動が監視されているように感じて、不快に思うユーザーもいるでしょう。
リターゲティング広告はコンバージョン率を上げるために有効な手段ですが、やりすぎるとブランドイメージが低下する恐れがあるので注意が必要です。
リターゲティング広告は、Webサイトへの訪問履歴があるユーザーにのみ配信され、未訪問のユーザーには配信されません。そのため、ニーズが顕在化しているユーザーには有効ですが、潜在層への新規開拓には不向きという側面があります。
顕在層へのアプローチはリターゲティング広告を、潜在層へのアプローチはリスティング広告やディスプレイ広告を利用するなど、広告を使い分けて運用する必要があります。
リターゲティング広告は、Cookieの付与や追跡、分析に一定期間をかけて、ある程度データが蓄積されてから広告が配信されます。この仕組みのため、流入数の少ないWebサイトでは、広告の配信量が増えるまでに時間がかかりがちです。
出稿したその日に広告の表示が可能な他のWeb広告とは異なるので、注意しましょう。
新サービスをリリースした直後など、Webサイトへ流入が少ないのは仕方がない場合があります。その際には、まずは通常の広告を出稿して、Webサイトへの訪問者のデータを蓄積するとよいでしょう。
広告によってデータ蓄積の期間を短縮することで、迅速なリターゲティング広告の活用につなげられます。
一度自社サイトに訪問したユーザーを逃さずコンバージョンへとつなげるには、リターゲティング広告が有効です。
Webサイトを訪問したユーザーのCookieを追跡・分析して広告を配信することにより、見込み客に効率よくアプローチでき、コンバージョン率の向上が期待できます。検討期間の長い製品サービスの販売につなげやすいので、高額案件が多いBtoB企業やSaaS企業にもおすすめの広告です。
リターゲティング広告の効果を高めるには、多様な条件でオーディエンスを作成したり、複数のクリエイティブを作成したりしましょう。また、クリエイティブの定期的な差し替えやブラッシュアップも重要です。
リマーケティング広告には、新規開拓には不向きであったり、監視されているようで不快に思うユーザーがいたりといった、デメリットもあります。他の種類の広告も併用しながら、バランスよく運用していくことをおすすめします。
特徴と仕組みを理解したうえで、リターゲティング広告を活用していきましょう。