「BtoBマーケティング組織」の構造と作り方

2021/04/27
BtoBマーケティング マーケティング組織 「BtoBマーケティング組織」の構造と作り方

顧客とのコミュニケーション手段がオンラインに移る中、営業もこれまでのような飛び込み営業ではなく、マーケティングによって新規獲得を効率化するのが望ましいといえます。

そのために必要なのが、マーケティング組織の強化。この記事では「マーケティング組織と営業組織はどういった関係であるべきか」や「どうやって構築していけば良いのか」などを紹介していきます。

マーケティング組織が持つ意味

これまでマーケティングといえば、新規顧客の獲得から受注後の顧客フォローまでのすべてを営業担当者が担い、分業がされていないことがほとんどではなかったでしょうか。すでに取引のある顧客やニーズが顕在化した顧客を中心に対応するケースも多く、潜在顧客へのアプローチが難しい状況にもありました。

そのため新規顧客の獲得件数を増やすためにも、負担の多い営業の業務を分業化。そして、いまだニーズが顕在化していない潜在顧客を含めてアプローチする、マーケティングに特化した組織を構築する必要があるでしょう。

なおSaaS企業におけるマーケティング組織のよくある形を紹介しておくと、主に「コンテンツ制作」「新規見込み客の獲得」「見込み客の育成」の3つ

基本的にブログ記事やホワイトペーパーの作成から、問い合わせのあった見込み客へのフォローや確度が高いかどうかの判断、さらには定期的なセミナーやメルマガ配信などを通じて見込み客を育成するまでを担うのが一般的です。

また、米国のSaaS企業であれば育成という呼び方をしないでMonetisation(マネタイズ)という名称がチームについている場合があります。

以降では、マーケティング組織は事業全体組織や営業組織と比べて、どういった立ち位置にあるのかも紹介していきます。

事業全体組織とマーケティング組織の関係

マーケティング組織と聞くと、企業の中では多くの場合「マーケティング部」「営業企画部」などの部署を思い浮かべるかもしれません。とはいえ、あくまでも事業全体組織や営業組織が行う意思決定や方針などをもとにサポートを行う程度で、ほかの組織とフラットな関係を作っていることはあまりないでしょう。

ただ、外資系企業では、マーケティング活動を日本企業とは比較にならないほど重要視しています。企業によっては、営業よりもマーケティング人材の経費が上回るようなケースもあり、商材によりますが年収1,000万円以上のマーケティング担当者はゴロゴロます(当然優秀)。

さらに日本ではあくまでも売上目標といった事業全体や営業の目標は定まっているものの、マーケティング組織単体では目標を明確にしていないケースもあるかもしれません。しかし、外資系企業では売上というよりも商談までつなげた件数など、独自に目標を持って活動を行うケースがほとんどです。

企業の中で、営業と同じように売上などに関わる目標を持つことになるため、マーケティング組織が機能していないと営業組織も機能しない組織構造になっているため、マーケティング組織に期待される役割も責任も非常に大きいです。

BtoB SaaS企業であれば、フライホイール型のビジネスモデルを考える人たちが多いと思いますが、まさにマーケティングと営業は一蓮托生の存在として組織を支えます。そのため、マーケティングの役割を営業組織のアシスタント役にするのではなく、あくまでも独立した組織として裁量と責任を与える必要があります。

切り離せないマーケティング組織と営業組織の関係

マーケティングを専門に行う組織の構築にあたっては、やはり「営業との連携」が重要です。

責任の押しつけなど、営業組織とマーケティング組織間の連携欠如による関係悪化が、機能不全に繋がることはよく言われていること。そのため、アポイント獲得や訪問、商談といったざっくりとしたアクション単位の役割ではなく、顧客が成約に至るまでの過程を細かく分解し、それぞれマーケティングと営業担当のどちらが担うのか、また具体的な目標などを以下のように明確化しておくと良いでしょう。

BtoBマーケティングのチームの作り方

(参照:少人数チームからはじめる失敗しないBtoBマーケティングの組織としくみ

上記はあくまで一例ですが、このように各組織の担当箇所や目的を明確にする必要があります。マーケティング担当者やそれを見つめている事業責任者なのであれば、「なぜかマーケティング担当者は常に忙しくしている」という状態を見たことがあるかと思います。

筆者の経験上、多くの「忙しくみえるマーケティング担当者であまり成果が出ていない方」というのは、上記の様な仕事の切り分けがうまくできていないこと(つまり選択と集中ができない状態)であることがほとんどです。

また、自社の製品サービスの成熟度によって行うことが違うことを明確に理解されていないケースも多いです(こちらに関しては後述します)。

このような枠組みを大きく持たせること、営業組織とマーケティング組織それぞれで活用される営業ツールやウェブサイト、ダウンロードコンテンツや事例資料などのコンテンツは、一貫した戦略とメッセージのもとで制作を進める必要があります。

とはいえ、担当業務領域の範囲内でそれぞれが個別に作業を進めてしまうと、メッセージやコミュニケーションに一貫性が欠ける恐れも。一貫性のないメッセージが顧客のもとに届けられることで、「商談までで止まってしまう」といった課題に直面する可能性もあります。

そのため営業とマーケティング組織が協力していくためにも後述するSLAを結び、それらを実現するための枠組み、手法のひとつとして”必要があれば”MAやCRMなどを導入し、見込み客情報を部署間で共有・活用しやすい環境を作りながら連携を促進するなどのアプローチをします。

サービス組織とマーケティング組織の関係

とくにSaaS企業においては「カスタマーマーケティング」に力を入れたほうが良いという意見もあります。カスタマーマーケティングとは「カスタマーサクセス」「マーケティング」を組み合わせた言葉。既存顧客に実施するマーケティング活動を指します。

少し前からマーケティングに関わっていた方であれば「リレーションシップマーケティング」という言い方のほうがしっくりくるかもしれません。顧客とのリテンションや、関係性維持を最優先に行うマーケティングの考えです。

なぜカスタマーマーケティングがという言葉に注目が集まるかというと、SaaS企業のサービスは、言うまでもなく新規顧客を獲得してからが終わりではなく、いかに継続して利用し続けてもらえるかが大切で、その特性とカスタマーマーケティングの親和性が非常にたかいからです

マーケティングや営業に関わっている方であれば、既存顧客を維持するほうが新規顧客を獲得するよりも労力が低いことは理解されているかと思います。ですが、多くの企業では新規顧客を獲得するための営業活動に最も膨大なエネルギーを割いているのが実態です。

継続してサービスを利用してもらうためにも、マーケティング組織とサービス組織が連携し、既存顧客へのマーケティング活動も行っていく必要があります。例えば、サービスの継続タイミングなどでこちらからフォローを行ったり、またサービスを使いこなしてもらうための育成を目的としたセミナーを実施したりなどが挙げられるでしょう。

こうした施策を行うためにも、マーケティング組織のうち、既存カスタマー向けのマーケティングを専任で行う担当者も確保しておきたいところです。

理解しておくべき最低限の事柄

では、マーケティング組織をつくるために、何が必要か。最低限知っておきたい事柄を紹介していきます。

マーケティング職種とスキルセット

まずマーケティング担当者は、自社の製品やサービスの顧客像をペルソナとして明確にします。その顧客(ペルソナ)がどのような購買プロセスを辿るかをカスタマージャーニーとして可視化。

その後は、各購買プロセスでペルソナがどのようなコンテンツを必要としているかを洗い出し、社内にある情報資産などをもとに、コンテンツが作成できないかを検討する必要があるでしょう。もしも、社内に情報がない場合は、製品開発者や営業担当者、外部のライターなどに依頼し、必要なコンテンツの作成を担います。

そのほか、営業とマーケティングの情報共有や見込み客管理のためにMAやマーケティング用のCMSなどを導入。前述したように定期的なセミナーやメルマガ配信などを通じた見込み客の育成など、思った以上に幅広い役割を担う必要があるでしょう。

あくまでも一例ですが、見込み客の新規獲得を行ってインサイドセールスに引き渡し、受注を獲得するまでの一連の流れは以下の通り。

BtoBマーケティングと営業組織の構造

(参照:少人数チームからはじめる失敗しないBtoBマーケティングの組織としくみ

電話などのインサイドセールスが担う部分は、マーケティング組織が担うのか、それとも営業組織が担うのか区別する必要があります。企業によってはインサイドセールスチームをマーケティング組織の配下にしている場合もあります。

またマーケティング組織が獲得してきた見込み客は、確度の高さに応じてフィールドセールスではなくインサイドセールスに引き継ぎます。定期的なセミナーなどで興味関心を書き立てていくアプローチも有効となるでしょう。

なおマーケティング組織の業務範囲は多岐に渡るため、必要に応じて外部のパートナーをアサインし、マーケティング施策を継続的に実行できる体制づくりが大切。さらに組織には主に以下のような担当者が在籍し、役割を分担していくことになるでしょう。

営業組織とのSLA

前述したように、営業組織とマーケティング組織の連携は切っても切り離せません。そのために、SLAを活用するのも有効です。

SLAとは「Service Level Agreement」の略で、日本語では「サービス品質保証」「サービス水準合意」などと訳されます。もっと細かく説明すると、サービスを提供する側が利用者に対して示す「品質保証」の基準。

もしもこのSLAを下回った場合、サービス提供者は何らかの保証をする旨を定めて、契約を交わします。例えば、サーバー利用の契約をする場合、「サーバーの稼働率」や「データ保全の割合」を「〇%保証」というようにSLAを取り交わすのが一般的です。

本来は品質基準を定義する際に用いられるSLAですが、マーケティング組織と営業組織の連携を促す目標を設定する際にも役立ちます。例えばマーケティング組織がSLAをもとに目標を設定する場合「どのような状態で、どのくらいの件数の見込み客を営業組織に渡すか」などが挙げられるでしょう。このように「質」と「量」でSLAを定義するのが一般的です。

一方で営業であれば、「見込み客にどれくらいの期間を置いて再アプローチするか」「2回目の電話はいつ行うのか」などの目標を設定したいところ。マーケティング組織と営業組織が目に見えるかたちで目標を設定することで、連携もスムーズにいく可能性があるでしょう。

次に、SaaSに絞った話となってしまいますが、EnterpriseとSMB、HorizontalとVerticalという視点から、マーケティング組織の違いについて見てみましょう。

Enterprise vs SMB

マーケティング組織の作り方は対象としている企業(つまり製品サービス)によってもかなり異なります。Enterprise SaaSのマーケティングチームは、基本的には数多くリードをとることには注力せずに、厳選されたリードだけを獲得する戦略をもつ必要があります。

たとえば、導入に月数百万からはじまるようなERPの場合、導入できる企業数がかなり限定されます。そのため、導入予算が月200万円以上出せる企業、また従業員数がある程度いないとそもそも製品の本来のちからを発揮することができません。

SMB SaaSはマーケティング施策が幅広くリードを獲得するコンテンツ施策寄りに、ピンポイントでセグメンテーションされた企業像を獲得するようなABMに近しい施策が効果的となり、必要な施策と人材とスキルセットがSMBむけの製品をつくっている企業のマーケティングチームとはかなり異なります。

ピンポイントで施策を行うマーケティングチームのため、規模自体も小規模であることが多く、営業組織と密接に働くスキルが必要になってくることも特徴。どちらかというと営業支援的な側面が強くなります。

Horizontal vs Vertical

Horizontalとは水平を意味し、ここでは一般的には業界に特化していない製品サービスを扱う戦略をとっているSaaS企業をと仮定します。逆に、Verticalは業界に特化、たとえば建設業に特化しているSaaS企業を示しています。この特化の仕方によりマーケティング組織の形も異なります。

Horizontalの場合で、PMFをした後ではフル機能のマーケティング組織が必要になることが多くなります。特に、SMBのHorizontalとなれば、幅広いリード獲得を行う必要性があることから、より多くのチャネルをカバーしたり、汎用的なコンテンツを作成する担当者が必要になります。それ故、幅広く機能を持ち合わせたマーケティング組織が必要。

一方Vericalの場合は、マーケティング組織が小ぶりとなることが多く、Enterprise SaaSと似ており営業支援的な側面が強いマーケティング組織となります。

たとえば、米国で上場している医療に特化したSaaSのVeeva Systemの経営陣はIT出身であることは当然として、ライフサイエンスのバックグラウンドを持っているメンバーが多く、比較的”レガシー”な業界のためマーケティング組織の構成はフィールドマーケティングなどに寄っている比較的”レガシー”な構成です。

このように、Enterprise SaaSなのかSMB SaaSか、Horizontal SaaSなのかVertical SaaSによってマーケティング組織の形は異なります。もちろん非SaaS企業であっても同様です。このようなことを念頭に置きながらマーケティング組織の構成を作り上げるようにして下さい。

成長ステージ別!全く異なるマーケティング組織の組み立て順

マーケティング組織の構築方法は、企業の成長ステージによっても異なります。各ステージごとに、どうやって組織を構築していけば良いのか。その方法を紹介していきます。

サービスの無い期間

まずはこれからサービスを展開する市場を理解し、自社が市場の顧客とどのようなポジショニングでコミュニケーションを取っていくか、組織全体の方針を決めていくことが必要です。

これから開発するサービスが、自社と顧客にどういった利益をもたらすのか。また、市場を通じて社会にもたらす価値などを、社内メンバーで共有していくことが大切です。

また現在はウェブサイトやメール、SNSなど対面営業以外で、顧客と接点を持つ機会も増えています。そのため自社製品に対する認知や興味によって、顧客に提供すべき体験も異なるでしょう。

まずはどういった顧客にサービスを届けたいのかを定義するために、ペルソナの作成や、顧客が購買に至るまでの流れを可視化したカスタマージャーニーの制作も始めて良いでしょう。

立ち上げ期間

まだまだ関わる人員の小さい立ち上げ期においては、事業とマーケティングが一体化した組織が望ましいと言われています。なぜなら、まだまだ不確定要素の多い事業と連携しながら、外部への柔軟なコミュニケーションが可能なためです。

とはいえ、特別なマーケティング施策を実施するわけではありません。自社製品を知ってもらうためのシンプルなマーケティング 施策に注力する時期です。マーケティング担当者はとくにサービス開発チームと連携を取りながら、どういった機能が優れているのかなどを言語化し、その内容をコンテンツに落とし込んでいきましょう。

とくに、SaaS企業であれば、この段階で行うべきマーケティング施策は「プロダクトマーケティング」という、非常にシンプルなもの。製品を作り上げ、市場に受け入れられるまでのプロセスで行う施策全般が、プロダクトマーケティングだといえます。

例えば、まだサービスが市場に受け入れられていない時期であれば、ニーズに合うように磨き上げる必要があるでしょう。

市場に適切に受け入れらてからは、基本的に「定着率(Retention)」を見ることになるはずです。SaaS全体では「年間顧客定着率95%以上」が一般的なベンチマークかもしれませんが、そうなると1年後にしかわからないなど、今すぐ確認することができません。

そのため「顧客のA%がB期間以内にイベントCを達成すれば市場に受け入れられている」など、独自に定義を決めることが有効だといえます。

一方で適切に市場に受け入れられた後であれば、ここではじめて製品の利用率を上げる施策に移っていきます。いわゆる、新規獲得の件数を増加させるためのマーケティング施策に注力するというわけです。

成長期間

サービスの成長期に差しかかると、よりマーケティングを強化したいと感じるでしょう。そのためブログ記事やホワイトペーパー、オンライン広告やWebセミナーなどを実施するために、マーケティング組織内に専門分野の異なるさまざまな担当者を配置する必要も出てきます。

とくに、顧客接点の重要な役割を担う自社のウェブサイトの最適化を進めるため、ウェブデザイナーやエンジニアなどを組織に取り込むことが大切です。自社サイトは24時間休みなく働いてくれる立派なチャネルとすることができるため、俊敏にデジタルマーケティング活動ができる体制を作る必要があるためです。

ウェブサイトの最適化についてはマーケティング担当者やウェブデザイナーのみならず、営業組織や経営陣も関わる全社プロジェクトとして推進していくことが望ましいでしょう

この段階のSaaS企業でも、ウェブサイトの更新やデジタルマーケティング活動を外注している場合を見受けることがあるのですが、このプロダクトマーケットフィット(PMF)をしたのであれば、可能なかぎり早くデジタルマーケティングを俊敏に行う体制をインハウス化すべきであると言えます。

チームの重要機能をインハウス化し、ウェブを利用した新規獲得の仕組みが整ってきたら、最後はオフライン施策にも注力し始めたいところ。例えば展示会や他社主催のカンファレンスは、オンライン上では接点を持つのが難しかった見込み客にアプローチできる機会です。

例えば不動産に特化したSFAを作っているBtoB SaaS企業、不動産テックに特化した顧客管理(CRM)を行っている企業など、自社サービスに合う業界に特化した展示会への参加が望ましいといえます。

なぜかというと、見込み客の獲得のみならず、サービスの親和性が高い企業を発見できれば、共同でマーケティングを行っていく外部パートナーの獲得機会にもなりうるためです。

なお、スケール期間によくある失敗が、新規獲得件数を上げるために大量のマーケティング・営業担当者を雇用してしまうケース。面接やスケジュール調整など、採用に関するタスクが突然大量に積み上がってしまいます。

会社にとってもここまで大量の人材を雇用するのが初めてのケースだとすると、採用基準が定まっていないケースも多く、採用コストだけがかかるといった状態になりかねません。

そのため、見込み客の新規獲得などサービスの成長に注力するためにも、担当者の雇用などは徐々に進めていくことが大切。例えば半年ごとに2名のマーケティング担当者を採用するなど、段階に分けてマーケティング組織の人員を増やしていくと良いでしょう。

円熟期間

サービスの円熟期間に入ると、市場は成長しない中で事業を営んでいくことになります。そのため効率的な人員配置とマネジメントが重要となり、総合力や育成が必要。マーケティング組織においてはプレイヤーのみならず、組織をマネジメントする役割も設定し、持続的に成長していける組織環境を整えていきましょう。

またカスタマージャーニーをもとに、年間のスケジュールを作成してマーケティング活動全般を仕組み化していく時期でもあります。顧客の興味やニーズの段階ごとに行うマーケティング施策を改めて明確化し、実行スケジュールを決めていきましょう。

このとき、各顧客との接点をつくるマーケティング施策の評価方法や目標も設定しておきたいところ。そしてそれぞれの段階のマーケティング 施策について、営業組織が行うのかもしくはマーケティング組織が行うのか役割を明確化し、どういったスキルを持った人材を配置するのかまで計画します。社内に適切なスキルを持つ人材がいなければ、外部パートナーに依頼する方法もあります。しかしながら、コア業務は可能な限り内製化することを忘れない様にしてください。

さらなる新規獲得を進めていく場合、まずは見込み顧客を生み出すマーケティング施策が必要です。展示会の出展や過去の名刺データの収集、オンライン上だけでなく紙媒体への広告出稿を通じて、これまでアプローチできていなかった層と接触を図っていきましょう。

繰り返しとなりますが、MAツールなどを活用することで顧客との接点を可視化し、そのほかの営業・マーケティング活動に生かすためのしくみ作りも大切です。とくに営業とマーケティング組織が分業化された企業では、一人の顧客に対して複数の担当がアプローチします。そのため、各担当者が持った顧客との接点を共有・蓄積できるインフラが必要というわけです。

例えば営業が訪問する場合、マーケティングはそれ以前にどのようなコミュニケーションを取っていたか。それが分かることで、営業担当者が商談当日に話す内容も絞ることができるでしょう。

また訪問の結果、受注に繋がらなかった顧客についてはマーケティング組織がその原因を確認することで見込み客の選別やマーケティング施策に活かせるかもしれません。

そしてMAツールなどに入力した情報をもとに、定期的に振り返る機会も設けましょう。

自社のマーケティングの成熟度は?

最後に確認です。現在の自社のマーケティング組織のレベルはどのくらいだと思われるでしょうか? 以下の「マーケティング マチュリティ モデル」で、成熟度をチェックしてみましょう。

Marketing maturity Model(マーケティングマチュリティモデル)

各レベルの特徴は以下のとおりです。

Level 0 :Survival(サバイバル)

Level 0の「Survival(サバイバル)」とは、企業内にマーケティング部門(または相当する組織)が存在し、自社の広報、宣伝活動の基本方針ができている段階です。企業理念が明確でビジョンを体現する社名、ロゴデザインなどが存在します。

また、マーケティング組織から営業担当者向けのコンテンツ、マネジメント層向けのデータ、顧客向けのプロダクト資料の提供をするなどの営業支援ができている段階です。

しかし、Level 0の段階の企業はマーケティング施策に包括的なプランはなく、場当たり的なところが特徴です。プレスリリース、コンテンツ制作、デジタルマーケティング、オフラインのイベント施策などを積極的に行っていますが、担当者の判断・裁量にまかされる範囲が広く、ペルソナもマーケティング担当者によってばらつきがあります。かつ担当者同士の横の連携があまりとれていないため、全体でみるとちぐはぐな印象があるでしょう。

マーケティング組織の成果は、実施した施策の量でおもに測られます。
Level 0の「Survival(サバイバル)」のマーケティング組織がおもに使うITツールは、プロジェクト管理ツール、タスク管理ツールです。

Level 1: Enable Sales(イネーブルセールス)

Level 1の「Enable Sales(イネーブルセールス)」とは、企業のブランドメッセージが明確であり、企業のすべてのコンテンツから体系化されたメッセージが発信されている段階です。ブランドのガイドラインが存在するためWebサイト、広告、ニュースリリース、名刺などのデザイン、トーンにも統一性があり、企業の個性を際立たせることができています。

また、Enable Sales(営業を可能にするという意味)とあるように、マーケティング組織の営業支援はLevel 0より強力になっています。継続した営業研修を行ったり、営業活動に活用できる効果的な資料(自社プロダクトの優位性を示す事例等)の提供がマーケティング部門から営業部門に行われているステージです。

マーケティング施策も、オフライン・オンラインのバランスよく行われており、デジタルマーケティングのSEO施策も十分でWeb上でプロダクトの価値、優位性を示すコンテンツを積極的に配信できています。さらに、自社プロダクトの価値をアピールするコンテンツを配信するなど広報活動、アナリストリレーション活動もできている状態です。

しかし、社内のコミュニケーションに意識して力をいれていないため営業部門との連携に課題があります。新プロダクトの企画についても営業、財務、開発部門でざっくりとGTM計画が共有されているくらいであり、各部門のデータ・ナレッジを活かしたプロダクト開発が進められる状態には到達していません。

「Enable Sales(イネーブルセールス)」のステージに相当する企業は、ITツールはCRMを主に使う傾向があります。コンタクトリスト購入、メール配信サービスなどを活用することも多く、マーケティング組織はあくまで「営業支援」という位置づけで、これらのツールを使用します。マーケティング組織の成果は制作したコンテンツの量、営業部門の最終的な売上でおもに評価されます。


Level 2 :Demand Gen(デマンドジェン)


Level 2 の「Demand Gen(デマンドジェン)」とは、名称で想像できる方も多いと思いますが、マーケティング組織がデマンドジェネレーション(案件創出)を行っている段階です。

前提として、企業のブランディングはできておりWebサイト、広告、動画、ドキュメント資料、名刺などのすべてのコンテンツ、オフィスデザイン等にブランドメッセージが反映されています。業界誌、一般メディアに向けた継続した広報活動も実施されています。

Level 2のステージのマーケティング組織では、営業部門に継続してリード(見込み客情報)を提供できています。また、営業部門、インサイドセールス、パートナー企業(代理店等)に対してコールスクリプトなどを提供し、案件化~商談~受注までをサポートし「案件創出」に貢献しています。

オフライン施策では展示会・セミナーから、デジタル領域ではコンテンツマーケティングからのデマンドジェネレーションが実施できている段階。ペルソナとスタマージャーニーも作成されているので一定の精度で成果(案件創出)につなげることができている段階です。

課題はSNSまで施策を拡張できていないところ。また、スマートフォンからのインタラクション施策もいきあたりばったりな傾向があります。

社内では、プロダクトマネジメントとプロダクトマーケティングの役割が理解されており、開発部門とマーケティング組織の連携はスムーズです。マーケティングの方針・ガイドラインが整備されているため、社外のマーケターをパートナーとして活用できる段階です。

ITツールはMA(マーケティングオートメーション)を知っているか、導入している段階。ただしマーケティングプロセスを自動化できるスキルはまだなく、もっぱら手動で操作しているケースが多いでしょう。

Level 2 の「Demand Gen(デマンドジェン)の段階のマーケティング組織は、収益に貢献する部門と社内で認められています。マーケティング組織の成果は、キャンペーンによる「問い合わせ数」「創出リード数」「営業へ引き渡した案件数」「商談数」などで測定されます。

Level 3以上に到達している

Level 3以上とは、マーケティングが高品質で自社に適格なリードを生成する方法を確立できた段階です。マーケティング組織の役割は、企業のブランディング、広告宣伝活動に加え、デマンドジェネレーションによる「収益への多大な貢献」が柱となります。

社内においてマーケティング組織の力は強くなります。営業部門や開発部門などの下位にあるのではなく、企業の中核の部門として、各部門を統合する役割として認められる段階。米国ではLevel 3以上の企業が多く、マーケティング部門が営業部門より力を持っているケースが一般的です。

おそらく多くの日本の中小〜中堅企業は「Level0〜2」の段階ではないかと思います。そもそも、「Level 1」の段階が、マーケティング組織の標準と認識している企業も多いかもしれません。

ということは、日本でマーケティング組織を強化していけば、頭一つ抜けられる可能性が高いということです。まずは一つ上のLevelを目指してマーケティング組織をレベルアップさせましょう。

マーケティング組織が企業収益に貢献できるように成熟すれば、これまで片翼だった企業が営業とマーケティングの両翼で飛べるようなもの。成長スピードは加速するでしょう。

まとめ

営業と同じように売上に関わる目標を持ち、見込み顧客の獲得や既存顧客へのアプローチなどを行うマーケティング組織。インターネットの発達で顧客との接点がオンライン上に移る中、マーケティング組織が担う役割は大きくなりつつあるといえるでしょう。マーケティング組織を強化するためにも、今回紹介した方法などをぜひ参考にしてみてください。

まずは自社のマーケティング組織のLevelを把握し、一つ上のステージに進むための計画をたててみましょう。

戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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