BtoB企業が成功するオウンドメディアを始めるにあたってのトリセツと事例

2021/05/06
BtoBマーケティング 見込み客獲得 オウンドメディア BtoB企業が成功するオウンドメディアを始めるにあたってのトリセツと事例

 

BtoB、BtoC企業問わず多くの企業が始めているオウンドメディア。ブランディング、採用、広報、見込客創出などその効果は多岐にわたり、華々しく成功する企業がメディアに登場します。一方、撤退する企業も多く、一見上手く運営しているように見えるメディアがクローズし、驚くことがあります。

オウンドメディアの立ち上げは、正直難しくはありません。しかし、オウンドメディアに向いている企業と向いていない企業が存在するのはたしかでしょう。

オウンドメディアに向いている企業でも、メディアの目的が不明確だったり運用体制がしっかり組まれていないと「続けているだけ」「多くの読者はいるが企業のメリットは不明」となってしまい躓くことがあります。

本記事では、これからオウンドメディアを新しく作りたいと考えるBtoB企業担当者にオウンドメディア成功のポイントや事例を紹介します。

BtoBオウンドメディアとは

BtoBオウンドメディア(Owned Media)とは、「Own=所有」という意味なので、文字通りBtoB企業(企業を顧客とする企業)が自社で所有するメディアを指します。ニュース、TV、雑誌、インターネットメディアなどの一般のメディアとは異なり、完全に自社で編集が可能です。

本来は、メディアはパンフレット、Webサイト、ブログ、SNSアカウントなど情報を発信するすべての媒体を指す言葉です。しかし、日本でオウンドメディアという場合「企業のWebメディア・ブログ」のこと指すため、本記事でもその前提で解説します。

多くの企業が手がけているオウンドメディア。株式会社宣伝会議の「2020年オウンドメディア白書」によると、約8割の企業が「オウンドメディアに注力している」と答えています(BtoC含む)。期待している効果は「企業・商品・サービスのブランディング」が主であり約73%が効果を実感しています。

 

オウンドメディア白書の結果(出典:オウンドメディア白書2020(戦略・体制編)- 株式会社宣伝会議

 

BtoB企業限定では、2021年にデジタルマーケティング事業を行うPLAN-B社が自社メルマガ会員に行った調査があります。ここではBtoB企業の52.3%が「集客施策としてオウンドメディア(自社サイト内ブログも含む)を運用している」と回答しています。

企業自ら情報発信することは、今や珍しくないどころか、スタンダードになりつつあります。

 

株式会社PLAN-Bのオウンドメディアへの注力具合レポート結果(出典:PRTIMES(株式会社PLAN-B)

 

代表的な日本のBtoBオウンドメディア事例

ここでは、成功しているBtoB企業のオウンドメディア4事例を紹介します。

株式会社ブイキューブの「テレワークナビ」

 

ブイキューブ のオウンドメディア「テレワークナビ」

(出典:テレワークナビ

 

企業のビジネスモデル:

テレビ会議・Web会議などのビジュアルコミュニケーションツールの提供。クラウドサービスが7割以上。『2009ビデオ会議/Web会議の最新市場動向』にて国内シェアNo.1。

オウンドメディアの読者層:

テレワーク導入に関心のある企業、自治体、学校法人の情報システム部門、経営企画、総務、人事部門などの責任者及び担当者。テレワークを導入して働き方改革を実現したい、業務を効率化したい、生産性を向上させたいと考え、テレワークの始め方や成功させる手法について調べている層。

特徴:

テレワークの具体的な始め方、テレワークを導入するポイントを初心者にもわかりやすく解説。テレワークに関する疑問・課題を解決するコンテンツが集約。

ローム株式会社の「Device Plus(デバプラ)」

 

ロームのオウンドメディア「Device Plus(デバプラ)」

(出典:Device Plus(デバプラ) - ローム株式会社

 

企業のビジネスモデル:

カスタムLSI(集積回路)、半導体素子、モジュールを世界で展開する大手電子部品メーカー。国内カスタムLSIのトップ企業。

オウンドメディアの読者層:

ものづくりを愛するエンジニアやエンジニアを目指す人。

特徴:

メディアコンセプト「エンジニアライフ、デバイスと関わる生活をより楽しくする。知識を深める、先達にインスパイアされたり、あるいは世界を変えるひらめきを得ること」のとおり、エンジニアの向上心を刺激するコンテンツが満載。

株式会社ラクスの「経理プラス」

 

株式会社ラクスのオウンドメディア「経理プラス」

(出典:経理プラス

 

企業のビジネスモデル:

経理清算システム、Web請求書発行システムなど業務効率化のためのクラウドサービスを提供するBtoBSaaS企業。

オウンドメディアの読者層:

経理業務を効率化したい経理部門責任者や中間管理職。経理の基礎知識、仕事の効率化を学びたい経理担当者。

特徴:

経理業務を楽にするための記事や経理書類テンプレート(仕訳帳、出張費報告書、受領書等)、おすすめ書籍などスキルアップにすぐ役立つコンテンツが多く実践的な内容。

パナソニック株式会社の「制御機器知恵袋」

 

パナソニック株式会社のオウンドメディア「制御機器知恵袋」

(出典:制御機器知恵袋 - パナソニック株式会社

 

企業のビジネスモデル:

総合エレクトロニクスメーカー。アプライアンス事業、ライフソリューションズ事業、コネクティッドソリューションズ事業、オートモーティブ事業、インダストリアルソリューションズ事業ほか広範な領域に製品を提供。

オウンドメディアの読者層:

制御機器のサポートが必要な既存ユーザー。企業の調達担当者。制御機器に携わる初心者からベテランまでのエンジニア。

特徴:

制御機器の基礎、用語解説など初心者エンジニア向けにわかりやすく書かれた記事が多いものの上級者向け記事も充実。技術情報、製品情報が探しやすく、カタログのダウンロードや問合せもトップページから可能。

業者がBtoB企業にオウンドメディアが必要と主張するワケ

オウンドメディアは一般ユーザーを対象とするBtoCに向いているように思いがちですが、BtoB企業でもオウンドメディアが向いている業種もあれば、向かない業種もあります。また、同じBtoBでも上記のオウンドメディアの事例のように、ペルソナによってはオウンドメディアの役割がかなり異なります。

すべてのBtoBのオウンドメディアがリード獲得につながる(将来的な売上)という直線的な考え方を持つのはやめた方が良いです。それでも「BtoB企業こそオウンドメディアが向いている」と主張する業者が多いのはなぜでしょうか? 以下にその理由を紹介します。

自社の売り上げにつながりやすいから

BtoB企業のお客様は企業。全国民に社名や商品・サービスを知られる必要はあまりなく世界で大きなシェアを持つ企業であってもテレビCMや一般の雑誌広告などに力をあまりいれません。業界専門メディアや展示会など直球で見込み客に到達できる媒体を選びます。

そのようなBtoB企業になぜオウンドメディアを進めるWeb関連業者が多いかというと、オウンドメディアの運営が売上げにつながりやすいからです。

BtoB企業の場合、業界内の競争が熾烈であってもインターネット上でみればニッチな業界であり、Google検索結果上位に上がりやすい傾向があります。しかも今は多くの業界のBtoB企業の購買担当者の情報源はインターネットです。

広告とは違い24時間365日オンライン上で情報を発信し続けるオウンドメディアは、ターゲットさえ正しく設定して運用すれば見込み客を呼び寄せ続けます。

ROIがよいことも理由です。初期投資や人件費はかかりますが運用コストはリーズナブル。以下は前述の「オウンドメディア白書2020」のオウンドメディア運用コストです。

オウンドメディアの運用コスト ※人件費含まず

 

オウンドメディア白書・運用コスト

(出典:オウンドメディア白書2020(集客・プロモーション編)- 株式会社宣伝会議

 

自社の責任範囲を明確にしやすい

オウンドメディアはメディアのコンセプト、記事の企画、テーマ、編集をすべて自社で決められます。外部メディアに記事を書いてもらうとそのメディアの視点によって編集されます。スペースに制限もあります。

メディアが読者にアピールするためにエッジをたてた記事を書いてバズる場合もありますが、伝えたい思いや意図が伝わらなかったり、メディア担当者の知識が不足しているとプレスリリースの要約になりがちです。自社で発行するメディアなら自社の決定のもと責任範囲を明確にした上で伝えたい内容を発信できます。

(実は)テンプレ化しているのでハメやすい

BtoB企業のオウンドメディア事例として紹介したパナソニック社の「制御機器知恵袋」のように、オウンドメディアは、企業サイト内のブログコンテンツとしてスタートすることもできます。

オウンドメディア単独で立ち上げる場合もさまざまなテンプレートが活用できるので、サイトのデザイン、レイアウトに頭を悩ませることはあまりありません。コーディングの知識も特に必要ありません。もちろん、良質のコンテンツを継続して出し続けるのは大変ですが、スタート段階のハードルはおそらく予想よりも低いでしょう。

特に業者によっては勝ちパターンとなるようなメディアのテンプレートを持っていることもあり、それらを量産してオウンドメディアの生産体制を強化している場合もあります(良いかどうかはさておき...)。

例:WordPressの多彩なテンプレート

 

Wordpressの多彩なテーマ

 

自社のBtoBビジネスにオウンドメディアが必要かを判断してほしい

とはいえ、自社のBtoBビジネスにオウンドメディアが必要かを真剣に判断してほしいと思います。

まずは自社がオウンドメディアに向いているか向いていないかを判断しましょう。BtoB企業でオウンドメディアに向いている企業は以下の4条件を満たしている特徴があります。そうでないなら要注意です。

  • 自社分野で強い専門性がある(差別化しやすい)
  • 社会のトレンドに業界トレンドが影響を受けやすい
  • ニッチな業界で広告媒体・イベントの数が少ない(他に打ち手がない)
  • ブランドキーワード以外に検索クエリが存在する

ペルソナは誰?

最初に自社のペルソナ(半架空の理想の見込み客像)を描いてみましょう。彼らはオンライン上にいるでしょうか?

オウンドメディア成功例には、IT企業やWebサービス企業が目につくと思います。考えてみれば顧客も顧客のユーザーもオンライン上にたくさんいる業種なので、成功例が多いのは当然です。

一方、高層ビルやダム、大きな道路を作る建設会社が需要創出のためにオウンドメディアを出す理由はありません。自治体、超大手の企業にむけた業界独自の営業手法があるでしょう(ブランディング目的での発行ならありです)。

PayPayの全国エリア拡販は飛び込み営業で行われました。地方の小売店、飲食店のオーナーはスマートフォンを持っていても、ほとんどの人はそれでわざわざキャッシュレスの情報をリサーチしないのでこちらも正しい選択です。

ペルソナは顧客インタビュー、顧客アンケート、営業同行、SNS調査などをもとに作成できます。もし、ペルソナがオンライン上に少ない場合は、オウンドメディア立ち上げは諦めたほうが賢明でしょう。

ペルソナ作成の詳細は、こちらの記事をご覧ください。
【BtoB企業向け】ペルソナの作り方とその実例

ペルソナの出来上がり例:

 

ペルソナの出来上がり例(出典:HubSpot

 

ビジネスモデルはどのような形か?

ビジネスモデルも影響します。BtoBとはいえビジネスモデルも営業スタイルも多様です。前提としてニッチな市場(ニッチすぎて見込み客数が希少ならそれもダメです)、商材の価格が高額でなく、顧客対象数が多い(少なくても数千以上)企業なら適しているでしょう。

ブログにも紹介しましたが、当社は外国人採用支援企業のお客様はオウンドメディアに適していないと判断しました。見込み客数が極めて限定されるため、オウンドメディアに労力と時間をかける意味がないと感じたためです。電話営業でニーズのある企業にたどりつけばアポイント取得は容易であり(業界内競争相手は少ないため)、時間もかかりません。

オウンドメディアは、オンライン上で時間をかけて見込み客との関係を醸成していく媒体です。ゆえに、必要になったらすぐ調達しなければならない「関心→購入決定」までの時間が短い商品・サービスを扱う企業もあまり向いていない可能性があります。

本当にデジタル上でのデマンド(需要があるか)

前述のPayPayの例もそうですが、日常的にスマートフォンを使っていても、誰もがWeb上で業者を探すわけではありません。

例えば、人材業界についていえばコンサルティングメインの事業なら知見、頭脳が勝負なのでオウンドメディアは適しています。しかし、求人広告営業のように景気の影響を受けやすく時期で効果が変動し、かつ採用メディア自体のコンテンツが充実している場合あまり効果がない可能性があります(人材向けならありです)。

同じ業界でもニーズの出てくる理由、セールスサイクル、リピートの有無なども踏まえて判断すべきです。

また、2019年なら「働き方改革」、今なら「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」などビジネス界全体のトレンドがあります。前述のとおりこのトレンドが追い風となって今はIT業界、関連機器業界などは伸びていますが、トレンドの影響の恩恵にあずかれる企業がどうかも一つの目安です。

BtoBでオウンドメディアをするには全体戦略での立ち位置を明確することがまず第一

BtoBでオウンドメディアを成功させるにはマーケティング戦略全体の中でのオウンドメディアの立ち位置を明確にする必要があります。なまじ自由に作れるため目的や立ち位置があいまいだと失敗しやすいからです。

よくある失敗1:自社自慢

オウンドメディアはしばしばネタに困ります。そのため、社長はじめ社内の人材の取材記事をのせることもあるのですが、当然のことながら社内報や採用広報メディアではないので、読者としては単に身内でほめあっているような雰囲気に見えてしまうことがあります。これは編集の問題で内部ネタ自体はOKです。

一般に経営者の話は本人の経歴が面白かったり、経営者がよくメディアに出ていたり、自身の経験・価値観とひもづいた珍しいストーリーなら関心を持たれます。しかし、あたりさわりなくまとめられた記事だと大抵眠くなるような内容です。

メディアとは、外の世界に向けて発信する媒体です。読者は何かを知りたくてリサーチしてサイトにたどりつくので、社内のネタを使うとしても常に外に向かって何かを伝える、何かを呼びかけるストーリーになることを意識しましょう。

よくある失敗2:運用崩壊

オウンドメディアは一般メディアよりはコストがかかりませんが、専任の担当者は必ず必要です。代行会社に委託するとしてもメディアの方向性、クオリティは誰かがコントロールしないと結果が伴いません。

オウンドメディア運営のプロセスは、以下の図のように運用段階だけでも12工程あり、それぞれに学ぶことも多くかなり大変なのです。

オウンドメディア運営プロセス

オウンドメディア発行のプロセス

 

例えば、外に情報を発信するので炎上をさけるために表現に細心の注意を払います。経営層の承認と折衝、現場の情報を収集するための社内根回し、外部スタッフとのコミュニケーションなどコンテンツ制作だけでなく多岐にわたる業務をこなします。

この点を理解しないまま1~2人のスタッフに丸投げすると運用体制が崩壊します。社員のモチベーションも続きません。成功するためには以下の3点が必須です。

  • オウンドメディアの目標を明確にしている
  • 担当者がコミットできる環境(時間)を確保している
  • 結果が出るまで時間がかかることを経営層が理解している

よくある失敗3:コンテンツSEO三昧

Google検索をして失望した経験のない人は今や少ないでしょう。コンテンツマーケティングが流行して各社がSEO対策にブログやオウンドメディアを発行した結果、検索結果の1~10位は似たような記事のオンパレードです。大体が同じような見出し、構成、中身です。

オリジナリティのかけらもない記事だとたとえ読者が訪れたとしても直帰してしまいます。大手企業が「こんな薄い内容しか書けない」と思われると、むしろイメージダウンになってしまうでしょう。

格別に面白い内容や高尚な内容を書く必要はありませんが、見込み客が欲しがっているレアな情報を提供する努力をしていくべきです。コンテンツ制作に本気になりましょう。

よくある失敗4:データマネージメントの考慮が皆無

データマネジメントとは、データを企業の資産として運用していくことです。

データを検証してどのような人が訪問しているのか? リピートしているのか? どのページが人気があるのか? どの広告やSNSから流入しているか分析し改善することでオウンドメディアは成長していきます。

また、事例で紹介したリードジェネレーションが目的のオウンドメディアでは、どのような企業情報を取得したいかを事前設計しておく必要があります。BtoBであれば、リード獲得の後に営業活動が発生します。その際に営業担当者が必要としている情報から逆算して、オウンドメディアではどこまでの情報を取得しておくべきか、などを考慮する必要があるということ。

そこまで手が回らず「何となく継続している」と努力のわりに報われないことになります。この場合、努力すべき優先順位を間違えています。

成功までのステップ1:コンテンツの構造化の流れを固める

オウンドメディアの目的とターゲットを策定したら、検索エンジン対策としてサイトのコンテンツを構造化していきましょう。

Googleは特定の分野の専門家かどうかを重視します。ある特定のテーマに対してビックワードを狙う「ピラーコンテンツ(メインのコンテンツ)」を作成し、そこからリンクする「クラスターコンテンツ(ロングテールを獲得目的)」を少なくとも10以上作成しひもづけると、Googleがサイト内の構造を理解しやすくなります。これはトピッククラスターモデルと言われます。

 

トピッククラスターモデル

 

マーケティングファネルの「興味・関心」「認知」「検討」それぞれの段階でコンテンツの構造化を行うとリードの精度も高くなるのでおすすめです。

マーケティングファネル

 

パーチェスファネル

 

成功までのステップ2:コンテンツ制作のオペレーションを固める

オウンドメディアの肝であるコンテンツ制作のオペレーションを固めます。内製でも外部ライターの活用中心でもかまいません。記事の発行パターンにあわせて、継続できるようにバッファをもたせて人材を確保して体制と業務フローを組みます。

以下はリード獲得を目的としているオウンドメディアの場合の例です。

体制例:

  • 責任者:1人
  • 編集長:1人
    職責:リード獲得、トラフィック獲得のためのコンテンツ企画とディレクション、リード・トラフィック獲得に対しての定量的リサーチ
  • ライター:数名
    職責:コンテンツ企画に基づいたコンテンツ制作、執筆とスケジュールの厳守
  • 文字校正(外部委託)

フロー例:

  1. 記事のコンセプトとスケジュール決定
  2. 構成作成:各記事の構成案作成。担当者(社内、社外)決定
  3. 記事作成(ライティング):社内外のライターの進行管理
  4. 記事完成

オウンドメディア運用体制

 

成功までのステップ3:コンテンツのプロモーションを固める

オウンドメディアは、広告やSNS、メールマガジンと連携して読者を増やしていきます。

Twitter、Facebook、LinkedIn、Pinterestなど自社の見込み客が多いSNSにアカウントを設けて、記事の更新を毎回リリースします。また、信用あるメディアに同時期に広告を出すことはオウンドメディアの信頼度アップにつながります。検索連動型広告を併用すると成果が早く出ることが期待できます。

仮にプロモーション予算がなくても、無料SNSアカウントからの発信や、メールマガジンと組み合わせるだけでかなりの宣伝効果になるでしょう。

また、自社にハウスリストがあればそれらを区分し、興味のあるリストに対して配信します。多くの企業ではブログ購読などを新規で獲得することに焦点を当てていますが、既存のリストに対しても配信を行うことは有効です。

人気のあるコンテンツに関して有料広告をかけて一時的なプロモーションを行うなども打ち手としてありです。

成功までのステップ4:コンテンツ公開のオペレーションを固める

コンテンツ公開までのオペレーションを決めます。読者の立場にたって記事のストーリーを意識してスケジュールを設定。公開後はモニタリングして検証していきます。

  1. 記事の配信スケジュールを設定
  2. 記事公開・モニタリング
  3. データを検証し改善策をまとめ、新しい記事に活かす

ポイントは、ここでコードがわからないマーケティング担当者が簡単に編集できるようなCMS(Content Management System)を利用しているかどうかという点。コンテンツ公開や運用のオペレーションは定型的な業務かつ高い頻度で行うことが多いため、マーケティング担当者が全ての公開準備や運用を完結できるツール運用が理想的です。

BtoBオウンドメディアの成功事例を丸裸にしてみた

株式会社ブイキューブ

 

有料ツールで分析したテレワークナビのデータ

 

こちらは有料ツールでテレワークナビのデータを外部からみたときの状況です。非常に多くのトピックに対して記事型コンテンツを作っていることがわかります。

オウンドメディアのトピックである「テレワーク」に直結していない「ウェブ会議」「地方 人口減少 対策」など課題提起からコンテンツを作成しているところが特徴的。

 

テレワークナビの地方人口減少テーマ記事

”地方 人口減少”を切り口にしたブログ記事

 

また、ビックワードなどのみを狙わずに、ロングテールキーワードも細かくされているため、例えば「働き方改革」をピラーコンテンツにしながら「働き方・環境」「女性の働き方改革」「労働環境 改善」などのクラスターコンテンツで周囲を固めていることがわかります。

一方でソーシャルメディアなどの、他のチャネルの積極的利用には至っていない様子があり、チャネルを複合的に活用するなどすることでさらなるトラフィック増大ができることがうかがえます。また、CTAなどのリード獲得のトリガーとなるコンテンツの多様性があまりないため、トリガーコンテンツの拡充も必要であろうと思われます。

ローム株式会社

 

有料ツールで分析した「DEVICE PLUS」のデータ

 

ローム株式会社のオウンドメディアである「DEVICE PLUS」。こちらの有料ツールでデータを拝見すると、かなり数多くのトピックに対してコンテンツを制作しているのがわかります。このオウンドメディアは対象者が開発者や(おそらく)研究職、学生、趣味で工作を行ってる方でしょう。

そのため、トピック自体がデバイスに直結した、「(デバイス名称)  使い方」、「(デバイス名称) 作り方」、「(デバイス名称) モーター」、「(デバイス名称) センサー」などが中心です。

 

DEVICE PLUSの電子工作マニュアル

DevicePlus 電子工作マニュアル Vol.2

 

また、トリガーコンテンツ(コンタクト情報を獲得するためのコンテンツ)として、電子工作を始めるためのマニュアルが無償配布されています。おそらくフォーム入力項目にある「職種」がオウンドメディアとマーケティングオートメーション(MA)の接点を作るきっかけとなっており、自動的にメール配信やさらなるコンテンツを届けるためのトリガーとなっていると考えられます。

推測ですが「DEVICE PLUS」は、業界活性化や将来的なエンジニア育成などが目的となっていると思われ、ここで紹介する株式会社ブイキューブのオウンドメディア「テレワークナビ」や株式会社ラクスの「経理プラス」の運営目的であるリードジェネレーション(リード獲得)とは異なります。そのため、英語のFacebookビジネスページなども存在しているのがユニークな点かもしれません。

株式会社ラクス

 

有料ツールで分析したラクスのデータ

 

こちらは株式会社ラクスのオウンドメディア「経理プラス」の解剖図です。特筆すべきは、このオウンドメディアへとつながるキーワードの数が57,400個も存在している点。

さらにトピッククラスターモデルを完璧なまでに再現しており、例えば「収入印紙」というトピックに対して「領収書 収入印紙」「収入印紙 いくらから」「収入印紙 割り印」などのクラスターを数多く配置しており、それらのコンテンツで検索順位上位に位置しており、潜在的な見込み客に「見つけてもらう」仕組みが出来上がっているところも流石です。

 

 

(「収入印紙 割り印」で検索した際に見つけることができるブログ記事へ設置されている  資料請求のCTA)

一方で少々気になるのが、このような潜在見込み客に対するブログ記事に埋め込まれているトリガーコンテンツが、製品サービスに直結する「資料請求」などが多いというところ。これはカスタマージャーニーでいうところの「気付き」から課題を明確に認識していただくことなく「検討/決定」の段階まで、飛ばしている状態。

このようなコンテンツの飛躍が起きる場合、バナーなどのCTRは高くなく、またLPでのCVRは一般的には上がりづらくなります。もう一つクッションとなるトリガーコンテンツを差し込むと良いのかな、と感じます。

パナソニック株式会社(制御機器)

 

有料ツールで分析した「制御機器」のデータ

 

パナソニック株式会社の制御機器に関するオウンドメディア「制御機器知恵袋」の特徴も前述したローム株式会社と大変似ています。日本を代表する大企業のためDR(Domain Rate:ドメインの強弱を示す指標)が極めて高く、バックリンク(被リンク)数が843Kとずば抜けて多い点が目を引きます。

その強烈なDRを持っている「www.panasonic.co.jp」のサブドメインにオウンドメディア「制御機器知恵袋」を配置しているのはドメインの構造を深く理解していることの現れです。意外や意外、多くの企業が「オウンドメディアに独自性と客観性を持たせたい」という理由から、コーポレートサイト(会社ウェブサイト)や製品サービスサイトとは別のドメインでオウンドメディアを開設することがありますが、これはかなりもったいないこと。

外部から情報を確認することのできるahrefsで確認する限り、Organic keywords(検索に引っかかるキーワードの数)を増やすため、トピックの数を増やす必要があるかもしれません。eブック(ダウンロードコンテンツ)が検索上位に表示されるキーワードに対応して作られており、非常に効率の良いコンタクト情報獲得(リード情報獲得)をしていることが想像できます。

 

制御機器知恵袋のeBook一覧

(オウンドメディア「制御機器知恵袋」のeブック一覧ページ

 

制御機器に必須のキーワードである「フォトモスリレー」「コネクタ」の理解に欠かせない「コネクタ 接触抵抗」「コネクタ ピッチ」などのロングテールキーワード、狙ったトピックを周到に準備し、公開。ニッチすぎるが故、このようにロングテールのトピック作りを粛々と進められている努力を確認することができ、明確なコンテンツ制作方針があることを目にすることができます。

まとめ

BtoB企業のオウンドメディアの発行は、何よりもターゲット設定とペルソナ設定が肝です。近年は、さまざまな便利なツールがあるので、メディアの立ち上げ自体は簡単なのですが、最初の方向性を間違うと、情報を届けたい人ではなくまったく関係のない人たちに面白い情報、役立つ情報を届けるだけになります。

知名度をアップしたい、人材採用に役立てたいという目的ならそれでもよいのですが「継続した売上げ・利益につなげるためにオウンドメディアを作る目的」なのであれば、最初のペルソナ設定を軽視せず絶対に行うこと。最初が肝心です。その上でコンテンツ作成に本気でのぞめば成功確率は高くなります。

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

サービスを詳しく知りたい方はこちら

資料請求