BtoB企業のハウスリストの作り方と活用の方法

2021/06/10
BtoBマーケティング 新規獲得 BtoB企業のハウスリストの作り方と活用の方法

江戸時代に、商人が火事で避難する際に真っ先に持ち出したといわれる顧客台帳。そのBtoB SaaS企業版が、今回紹介する「ハウスリスト」です。

そんなハウスリストはどうやって作成すれば良いのか。活用方法なども含めて解説していきます。

ハウスリストとは?

そもそもハウスリストとは、展示会やWebサイトなどを通じて集めた、見込み客や顧客情報に関する「リスト」です。

単なる会社名や連絡先だけでなく、見込み客であればアプローチ履歴や受注確度、また既存顧客であれば担当者や受注内容を記載。一度作成して終わりではなく、定期的に情報をアップデートし、最新の状態に保つ必要があります。

どうしてハウスリストが重要なのか?

冒頭で紹介した通り、江戸時代、商人が火事から避難する際に真っ先に持ち出したのは「顧客台帳」だったといわれています。

つまり江戸の商人にとって顧客台帳、つまりBtoB SaaS企業でいうハウスリストは、お金や商品よりも重要だったわけです。

その理由はシンプルで、リストにある顧客に連絡すれば「またすぐにビジネスを再開することができる」ためです。

ビジネスで最もお金と労力が必要になるのは「新規顧客の開拓」。だからこそ、お金をかけて獲得した顧客情報をリスト化し、大切に管理するのです。ハウスリストの作成や管理は、ビジネスの基本といえるでしょう。

また「外部環境の変化に左右されにくい」のも、重要な理由のひとつです。とくに現在インターネットの世界では、検索エンジンのアルゴリズムが変更されてサイトへのアクセス数が激減したり、運用していたSNSのアカウントが凍結されたりと、急な外部環境の変化が起こりえます。

こうした急激な変化のなか、絶対的なものとして存在するのがハウスリスト。ハウスリストがあれば、顧客の訪問を待つ必要はありません。自分たちのタイミングで、いつでもアプローチできます。つまり、ハウスリストを活用することで外部環境に左右されず、安定した収益基盤を築けるでしょう。

ハウスリストの作り方

そんなハウスリストについて、どうやって作れば良いのでしょうか。リストに記載する顧客情報の集め方を紹介していきます。

作り方1:リスト購入

BtoB SaaS企業の場合、顧客の対象となるのは法人です。その法人情報については、リスト販売会社と呼ばれる、法人情報のリストを提供している会社から購入することが可能です。リスト販売会社としては「ソーシャル企業情報」などが挙げられます。

 

ソーシャル企業情報のホームページ

参考元:ソーシャル企業情報

 

リストの購入により、自分たちでアプローチ先の企業をリサーチする手間が省け、効率化にもつながります。また、ランドスケープ社のユーソナーなども有名で、帝国データバンクの企業情報売買も有名どころです。

作り方2:アウトバウンドによる方法

アウトバウンドとは、企業から顧客へアプローチする手法です。後ほど紹介しますが、顧客から企業に問い合わせるような仕組みを構築する「インバウンド」という方法も存在します。

アウトバウンドの代表例としてはテレアポや飛び込み営業、またDMや広告など。例えばDMは、BtoB SaaS企業において企業担当者宛てに直接送る、印刷物や電子メールを指します。

DMについてはもしかすると、時代遅れのイメージを持つ方もいるかもしれません。ただ、とくに大手企業ではDMを積極的に活用。例えば大手自動車メーカーの「BMW」は、個人宛てに「電子メール」と「郵送物」の2つの方法でDMを送付しています。

 

BMWのホームページ

参考元:BMW Japan

 

DMは受け取った側が特別感を感じることもあり、現在でも有効なアプローチ方法のひとつといえるでしょう。

さらに現在、有効な手段のひとつが「オンライン広告」。主に、自社製品のサイトに誘導することが目的です。ウェブ上で展開されるSNS広告や記事広告、リスティング広告などが該当します。SaaS企業であっても非SaaS企業であっても、現在多くの企業が利用している打ち手のひとつといえるでしょう。

オンライン広告は、従来の新聞や雑誌などのオフライン広告と違い、ユーザーの行動履歴を把握することが可能。そのため、広告を通じてどれぐらいコンバージョンにつながったのかなど、正確な費用対効果を知ることができます。

また、SNS広告であれば地域や年齢といった基本情報のほか、ユーザーの行動履歴をもとにしたターゲティングが可能。つまり、自社製品のターゲットに合った見込み客にアプローチできるため、集められる顧客情報の精度も高くなります。

とくにBtoB企業と相性が良いのは、Facebook広告です。なぜなら、人脈づくりを目的としたビジネスパーソンに利用されるFacebookは、ビジネス系の情報を求める人が多いためです。

なお、オンライン広告では「eBook」「テンプレート」「ウェビナー」など、軽めのコンテンツに誘導する広告を行うのもポイント。なぜなら、まだ製品に興味のないユーザーを含めて幅広くアプローチできるためです。そのうえで「資料請求」や「問い合わせ」につながる導線なども確保しておきましょう。

オンライン広告については以下の記事でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

作り方3:インバウンドによる方法

インバウンドとは、例えばブログ記事を閲覧した顧客自らが資料請求の問い合わせを行うように促す施策を指します。そのため、顧客自らが企業に対して能動的にアプローチできるような「仕組み」を構築することが大切です。

代表的な方法としてはブログ記事やSNS、PRなどが挙げられます。とくに比較的始めやすいのが、ブログ記事。作成した記事がネット上で上位表示されれば、多くの潜在見込み客にアプローチできるでしょう。

ただ、記事を上位表示させることは目的ではありません。ブログ記事で興味・関心を持ってもらい、より詳しい情報を知ってもらうためにホワイトペーパーのダウンロードなど出口を設けます。そして、最終的には見込み客情報の獲得につなげるのが目的です。

記事の内容については、課題に対するノウハウ系の記事が向いているでしょう。こうしたコンテンツはニュース性のあるものと比べて継続的に読まれる可能性があるため、長期で見込み客情報の獲得に貢献してくれるはずです。

また、SNSについてはわざわざSNS用にコンテンツを作成しなくても良いかもしれません。プレスリリースや製品紹介のコンテンツ、また作成したブログ記事を定期的に配信することで、見込み客情報を収集できる可能性があるためです。

なお、業界関係者やすでに検討状態の人たちに直接アプローチし、顧客情報を集めるためにはPRや広報も有効です。

PRというと、業界メディアとの関係性構築を行い、取り上げてもらうなどの方法もあるかもしれません。しかし、この方法だと、ある程度の業界経験やネットワークが必要です。

そのため各ウェブメディアの問い合わせフォームで、取材依頼の連絡などを行い、自社製品を取り上げてもらうといった方法を検討しましょう。

もしくは「PR TIMES」などのサービスを使って、自社製品のプレスリリースを配信する方法も有効です。

 

PR Timesのトップページ

参考元:PR TIMES

ハウスリストの活用方法

最後に、集めたリストを活用する方法について紹介していきます。

セグメンテーションを行う

ハウスリストをもとに営業活動を行うといっても、やみくもにアプローチしては非効率です。そのため、ハウスリストの情報を業種や事業規模ごとに区分し(セグメンテーション)、自社のターゲットと合致する見込み客に優先的にアプローチしましょう。

まずは、「ペルソナの設定」などを通じてターゲットを明確にしておく必要があります。

ペルソナとは、ターゲットとなるユーザー代表の一人を、詳細に記述したもの。「20代の独身男性」「趣味は旅行」といった「群」ではなく、特定の一人にまで人物像を絞っていきます。ターゲットを詳細にすると、思考や行動がイメージしやすくなり、見込み客が抱えている問題点などを解決するようなアプローチも可能となります。

 

ペルソナ像

 

BtoB SaaS企業において、ペルソナを絞り込む方法は次の3つ。

  1. 既存の顧客から理想的なカスタマーを抽出
  2. カスタマーにインタビューを実施する
  3. 顧客と直接接している営業担当者にインタビューする

一般的に売上の大部分を占める上位2割の顧客が「理想的なカスタマー」といわれています。そのため、上得意客と同じような属性を持つターゲットを設定しておきたいところ。3〜5社程度の上得意客にインタビューを実施し、元々抱えていた課題やサービスの導入によって何が改善したのか、ヒアリングしてみましょう。

もしくは、直接顧客と接している営業担当者の意見を聞いても良いでしょう。「お客様は〇〇と言うが、実際には△△を求めている」など、顧客自身が気づいていないニーズを反映できるかもしれません。

そのほか、ターゲットを明確化するうえでは以下の項目も設定しておきたいところ。

  • 事業規模(売上500億円以上の大企業、売上20〜50億円の中小企業など)
  • 従業員数
  • 業種(銀行、通信、化学など)
  • 社歴
  • 購買関与者(財務担当部門、経理担当部門、営業担当部門など)

そして、ターゲットに合致する見込み客をハウスリストのなかから絞り込みます。絞り込んだ見込み客には、優先的にアプローチしていきましょう。

カスタマージャーニーに沿って区分を作る

カスタマージャーニーとは、ペルソナの行動や思考、感情といった動きを認知から購買に至るまで時系列で見える化したもの。

 

カスタマージャーニー

 

見込み客が必要としている情報を「認知」から「購買」に至るまで明確化することで、どういったアプローチを行えば良いか、把握する際に役立ちます。

製品やサービスによって、購買までのプロセスを何段階にするかは異なります。ただ、既存顧客や見込み客へのインタビューなどをもとに、以下の要素を言語化していくのが一般的です。

  • 状況:見込み客が各段階で置かれている状況
  • マインド:購買プロセスの各段階における、見込み客の心理
  • 情報ニーズ:見込み客が知りたい情報のニーズ
  • 行動:必要な情報を得るために、見込み客がどういう行動を取るのか
  • コンテンツ:各段階の情報ニーズに答えられるコンテンツ
  • 媒体・フォーマット:各情報を伝達する手段

上記はあくまでも一例。各企業が提供する製品やサービスに合わせてカスタマージャーニーもカスタマイズしていく必要があるでしょう。

そしてカスタマージャーニーを明確化したら、ハウスリスト内の顧客はどの段階にいるのか、分類。分類に応じて、適切なコンテンツを提供するなどのアプローチを行っていきます。

コンテンツの準備を行う

ハウスリスト内の顧客を区分し終わったら、提供するコンテンツなどを準備していきます。

準備するコンテンツとしては主に2種類。

ひとつがブログ記事などのWebコンテンツです。もうひとつが自社主宰の展示会や商談で使用する紙の営業資料といったリアルコンテンツです。

Webコンテンツはインターネット上にある文章や動画、画像などを刺し、多くの場合、検索エンジンやSNS経由で閲覧されます。一方でリアルコンテンツは、より深い情報を知りたいユーザー向け。基本的には自社のことをすでに知っている人が見るでしょう。

SaaS企業であればHorizontalとVerticalなどの違いがあるため、そのバランスは異なれど、いずれの企業も両方のコンテンツを用意しておく必要があるでしょう。両者の違いについては、以下の記事でも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

Webコンテンツの具体例を挙げると、導入事例があります。実際に商品やサービスを購入した顧客の声は、最大のセールスマン。自分と似た状況の顧客の声を知ることができれば、自分事として商品やサービスの価値を実感する可能性も高くなります。

業種や従業員規模ごとにさまざまなタイプの顧客の導入事例を掲載すれば、それだけ見込み客が共感できる情報の幅も広がります。

また、顧客からの質問に回答するだけでもコンテンツとなりえます。例えば問い合わせや営業担当者に届く顧客の声、もしくはFAQとしてすでに掲載している質問をより深い内容に落とし込んでも良いかもしれません。自社に寄せられる質問に対し、シンプルに答えるコンテンツも用意しておきましょう。

さらに、顧客が抱えている課題を解決するコンテンツも有効です。例えば、ビデオコミュニケーションツールを提供する会社なら、リモートワークと関連付けて「情報漏洩リスクが不安……」「コミュニケーション不足はどうやったら解消できる?」といった課題を解決するコンテンツを提供していきましょう。

そして、深い情報が欲しい見込み客に向け、書籍のように体系的に理解できるホワイトペーパーなども用意しておきたいところ。無料ダウンロードと引き換えに、本名や会社名、メールアドレスなどの入力欄を設けることで、ハウスリストの収集に役立ちます。

ここまで紹介したWebコンテンツをまとめ、冊子としてプリントアウトすれば実際の商談でも活用できそうですよね。

商談に進むということは、比較的確度の高い顧客だと思いますので、製品の具体的な機能などを記載した資料も用意しておきましょう。

そのあとは見込み客を獲得するための打ち手を積極的に打つようにしましょう。

まとめ

外部環境に左右されず、安定した収益基盤を築くことにつながるハウスリスト。すでに自社で保有している顧客情報を整理するだけではありません。リスト販売会社から購入したり、アウトバウンド・インバウンドといったそれぞれの方法でアプローチしたりして情報を収集していきましょう。

なお、ハウスリストに記載してある見込み客に、やみくもにアプローチするのは非効率です。そのため自社のターゲットに合致する見込み客へと区分することはもちろん、カスタマージャーニーをもとに顧客のステータスも整理します。そして、優先順位をつけたうえで、ハウスリスト内の顧客にアプローチしていきましょう。

戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

サービスを詳しく知りたい方はこちら

資料請求