パレートの法則(80:20の法則)とは?マーケティングにも共通するその考えをわかりやすく解説

2022/06/27
マーケティング パレートの法則 80:20の法則 パレートの法則(80:20の法則)とは?マーケティングにも共通するその考えをわかりやすく解説

自社の売上げを振り返ってみたときに、売上げの大部分を生み出しているのがごく一部の製品やサービス、もしくは上位数社の顧客に限られている、ということはないでしょうか? これは「パレートの法則」と呼ばれるものです。

SMBを専門とするSaaS企業でも、大きなアカウントが売上げに対する高い占有率を持っていることが多くあり、パレートの法則は意外と近くで見ることができます。

この記事では、ビジネスシーンでよく耳にする「パレートの法則」について、その意味や成り立ち、基本的な考え方から、ビジネスシーンでの事例、マーケティング戦略への応用方法についてわかりやすく解説していきます。

ぜひ、自社のビジネス戦略立案に役立てていただければと思います。

パレートの法則とは

pareto principle

(出典:Medium)

パレートの法則とは、あらゆるものごとについて、その構成要素と成果物全体の割合には偏りがあり、成果の大半はごく一部の要因によって発生している、という傾向のことをいいます。

19世紀にイタリアの経済学者であるVilfredo Pareto(ヴィルフレド・パレート)氏が「国家の富の80%は20%のごく一部の富裕層によって占められている」という所得分布の統計結果を提唱したことがはじめとされており、それにあやかり「80:20の法則」や「ばらつきの法則」とも呼ばれています。

もともとは経済学の領域で語られることが多かった法則ですが、現在ではビジネスの世界でも引き合いに出されるようになっています。特に「ごく一部の要素が大きな成果を生む」という事象から、その一部の要素を割り出し、そこへ集中的にリソースを注ぐことで効率的に成果につなげるといったように、経営の観点からも広く注目を浴びている考え方です。

発展とその考え方

1848年にイタリアに生まれたパレート氏は土木工学者、社会科学者、哲学者、経済学者など生涯を通して多くの分野に精通した人物でした。ある日彼は、自身が栽培するエンドウ豆の苗の総数と収穫するエンドウ豆の総数に、一定の傾向があることに気づきました。全体のエンドウ豆の収穫数の約80%は約20%のごく一部の苗によって作られていたのです。

これに着想を得たパレート氏は、後にイタリア全土を対象とした統計で、「イタリアの全土のうち約80%は、イタリア全人口のわずか約20%ばかりの限られた富裕層によって所有されている」という研究結果を発表しました。

彼はその後も、世界中のさまざまな時代の都市を対象に研究を続けましたが、その多くは土地の所有率と所有者の所得や人口割合についてなど、似たような結果を示すものばかりでした。

また、国の生産量を対象にした研究においても、ほとんどのケースで国内生産量の約80%は約20%の限られた会社による生産が占めていました。パレート氏はこれらの研究から、経済学における「80:20の法則」を提唱したのです。

しかし、実は「パレートの法則(Pareto Principle)」という名前が定着したのはパレート氏が亡くなってからだいぶ後のことです。

1950年代に、アメリカの経営工学コンサルタントであり現代産業の品質管理のパイオニアと呼ばれるJoseph M. Juran(ジョセフ・M・ジュラン)氏が、品質管理において自身が提唱する「Vital few and trivial many(重要な少数と取るに足りない多数)」という概念を説明する際に、先人であるパレート氏の研究を引き合いに出したことがきっかけでした。

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(出典:Global Advisors

彼はパレート氏の研究をもとに、産業における品質管理の領域においても「製品不適合の約80%は原因全体の約20%の主要な原因(Vital few)によって引き起こされており、他の80%の原因は軽微であることが多い(Trivial many)」と提唱しました。

例えば、上図は製品の不適合の原因がX軸(A〜J)、それぞれの原因が全体の不適合率に及ぼす貢献度を左のY軸と緑の棒グラフ、全体の不適合率を右のY軸と黄線で表しているものです。原因A、B、Cがもつ影響度はそれぞれ35%、25%、15%、合計75%です。この場合、「重要な少数」であるA、B、Cの問題を優先的に解決することで、製品不適合率を75%も減らすことができます。

逆に「取るに足らない多数」であるD〜Jの問題をいくら解決しても、抑えられる製品不適合率は25%までです。この考えは現代においても企業の品質管理の基礎とされています。

もともとパレート氏の研究は経済学に関する統計だったのですが、ジュラン氏はこの法則は品質管理や組織運営はもちろん、その他さまざまな事象に適用可能な普遍的な原則であると説いており、これがきっかけでパレートの法則はビジネスをはじめとするさまざまな分野において広く使われることとなりました。

パレートの法則に似た概念

パレートの法則によく似た概念に、「働きアリの法則(2-6-2の法則)」や「ロングテール」といったものがあります。

働きアリの法則(2-6-2の法則)

働きアリの法則とは、北海道大学の長谷川英祐氏が提唱し、その名の通り働きアリの習性を進化生物学の領域から研究したもので、パレートの法則の亜種と呼ばれています。働きアリの習性の概要は以下です。

  • 働きアリのうち、よく働く2割のアリが8割の食料を集めてくる。
  • よく働くアリと、時々サボるアリと、ほとんど働かないアリの割合は、2:6:2である。
  • よく働くアリ2割を巣から間引いても、残ったアリからよく働くアリが新たに発生し、全体の割合は2:6:2に戻る。
  • よく働くアリだけを集めても、一部がサボりはじめ、やはり2:6:2に戻る。

アリのコロニーは人間の会社や組織などのコミュニティに置き換えることができます。働きアリの法則はパレートの法則の「20%の要素による働きが全体の80%の成果を占める」という意味合いをより人間の行動に当てはめて考えることができるため、ビジネスにおいての人材配置や育成など組織のパフォーマンスを保つために使われます。

ロングテール

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(出典:Forbes)

ロングテール(Long tail)とは、物品販売における手法のひとつで、販売機会の少ない商品であっても商品数を数多く取り揃えることで、販売対象となる顧客の総数または総体としての売上げを最大化するものです。主に店舗の広さや商品展示スペースに囚われない、インターネットを用いた物品販売で取り入れられている手法です。

前項で紹介した、パレートの法則におけるジュラン氏の「Vital few and trivial many(重要な少数と取るに足りない多数)」でいうところの「重要な少数」ではなく、「取るに足らない多数」に重点をおいた手法とも言えます。

80%の売上げを占める20%の商品ではなく、20%の売上げを占める80%の商品を数多く取り揃えることで、主要商品だけではカバーできない幅広い顧客層を取り込み、結果的に売上げを伸ばすというものです。

上図のとおり、長く伸びた「恐竜の尻尾」部分をさらに長くしようという意味合いから「ロングテール」と呼ばれます。逆に、上図の左側「頭」の部分は「ショートヘッド」と呼ばれます。

ただ、企業がロングテールの手法を取るためには非常に多くの品目を揃える必要があり、AmazonやAlibabaのようにインターネットによる販売網や巨大な物流システムを備える必要があることがネックです。

パレートの法則をビジネスの例に当てはめてみる

さまざまな分野に応用が効くとされているパレートの法則ですが、ここでは実際にビジネスシーンでパレートの法則が適用できるケースを考えてみましょう。

例1:製品の機能数とユーザーの使用時間(IBM)

ビジネスシーンにおいて、今やコンピュータを使用しないというケースは限りなく少ないでしょう。パーソナルコンピュータ業界を牽引する大企業であるIBMは1963年、ユーザーが自社コンピュータの機能のうち2割を使用するために8割以上の時間を費やしており、逆に8割以上の機能はほとんど使用されていないことを発見しました。

そこでIBMはすぐにプログラムを書き直し、その2割の機能を素早く簡単に使用できるようにした新製品を開発しました。するとそれまで多くのユーザーにとって時間がかかっていた作業が早く済むようになり、新商品の売上げを大きく伸ばす要因となったのです。

例2:総売上げと顧客数(航空会社)

パレートの法則がうまく当てはまっている業界のひとつが航空業界です。一般的に航空チケットは購入するシートに応じてファーストクラス、ビジネスクラス、エコノミークラスなど価格に大きな差があります。全ての搭乗客に同じ区間への安全な搭乗を約束したうえで、購入するチケットのクラスに応じて段階的にサービスが優遇されたり、広く快適な座席を提供したりしています。

これは、航空会社がパレートの法則をうまく活用し、航空券の売上げの大半をごく少数の顧客が占めるようにしているためです。多くの売上げをもたらしてくれる優良顧客に対して、他と差別化した優良なサービスや扱いを提供し継続的な利用を促すことで、同時にエコノミークラス向けにより低価格でリーズナブルな価格帯での航空チケットの提供を可能としています。

またアメリカン航空は、今や当たり前となっているマイレージを初めて開発したことで知られています。

座席のクラスとは別に「アドバンテージプログラム」という仕組みを開発し、自社のサービスを利用すればするほど価格がお得になったり、搭乗時のサービスのランクが上がったりするという優良顧客向けのサービスを提供し、優良顧客の継続利用を促しました。これも、「重要な少数」に重きを置いたパレートの法則の例と言えるでしょう。

例3:ロングテール(Wal-Mart / Amazon / Alibaba)

Forbesの記事では先に紹介したロングテールの手法について、アメリカのスーパーマーケットであるWal-Mart、アメリカのオンライン販売のAmazon.com、中国オンライン販売のAlibabaを用いて解説しています。

Wal-Martはアメリカ全土に数多くの店舗をもつスーパーマーケットの大企業ですが、実店舗に重きを置いたビジネス形態をもつため、どうしても1店舗ごとに陳列できる商品に限りがあります。

そのため本に焦点を絞って見た際に、Wal-Martに陳列されている本は全米売上げのトップ40までが限界です。Wal-Martは他の多くの店舗型ビジネスがそうであるように、売上げの上位を占める「ショートヘッド」の販売形態をとっています。

一方でオンラインでの販売を主とするAmazon.comは、店舗スペースによる商品数の制限がありません。売上げの大半を占める「ショートヘッド」の教科はもちろんのこと、自社の巨大な倉庫や物流システムを活用し、あまり売上げが見込めない商品を含め数多くの商品を備える「ロングテール」の手法を駆使し、幅広い層の顧客を取り込むことで天井知らずの売上げを得ています。

ところがこの2社の「尻尾」を「ウサギの尾」のように短く感じさせてしまうのがAlibabaです。Alibabaのサービスに加え、一般ユーザーが気軽にオンライン店舗を創設できるタオバオサービスを開始しました。

「見つからない宝物はない」という言葉の意味の通り、非常に多くの種類の商品がオンライン上に出回ることになり、今や中国のオンラインショッピングのシェアの70%以上を占めるに至っています。

パレートの法則をマーケティングに活用するポイント

それでは実際に、パレートの法則をマーケティングで活用する際に気を付けるポイントにはどのようなものがあるのでしょうか? ここではHubSpotの記事を参考に、あなたがマーケティング組織を運営する立場であると仮定して解説していきます。

施策の選択

まず最初に、パレートの法則の大原則を思い出してください。「成果の80%はチームの働きのうち20%の要因から生まれる」でしたね。まずは求める成果を明確にしたうえで、その成果に繋がる要因をリストアップすることが最初のステップとなります。

マーケティングチームでブレインストーミングの時間を儲けるなどして、どのような施策がとれるかをできるだけ多くリストアップし、そのそれぞれが求める成果に対してどれほどの貢献度があるかを評価します。その際、全ての施策の貢献度の合計が、100%となるように振り分けるのが大切です。各施策に対して、下記のようなグラフを作成すると分かりやすいでしょう。

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(出典:STRATECHI)

貢献度の振り分けが完了したら、成果に対する影響が上位にあるものから手をつけていきます。各施策に対して具体的なタスクやスケジュールの設定を行いましょう。逆に、貢献度が低いと評価された施策については積極的に後回しにし、余計なリソースを裂かないようにすることが大切です。

市場や顧客を選択する

パレートの法則に基づくと、売上げの大半(約80%)はある一定数の優良顧客または限られた市場(約20%)が生み出しています。上記の施策の選択で行ったのと同じ手法で、この上位20%の優良顧客や有望な市場を割り出すことで、より集中的なリソースの配置が可能になり、効率的に大きな成果を生み出せる可能性が高まります。

BtoBのビジネスでは、新規見込み客の創出に多くのリソースを割いてしまいがちですが、新規に見込み客を見つけ出し、ナーチャリングを行うことは多くの費用や時間、人的リソースを消費してしまいます。

パレートの法則を活用すれば、売上げの大半を占める優良顧客は既存顧客から割り出すことが可能です。優良顧客を継続的に維持する、もしくはさらに売上げを伸ばすことに焦点を当てた施策への、リソースの再配分を検討しましょう。

チーム内の不均衡を把握する

パレートの法則および前述の働きアリの法則に言えるとおり、一般的にチームの成果の80%をもたらすのは20%のチームメンバーです。残念なことですが、残りの80%のメンバーは全員でも全体の成果の20%しかもたらさないのが一般的です。

ただ働きアリの法則で紹介したとおり、80%のメンバーを役に立たないからと行って排除してしまうと、優秀だった20%のメンバーの効率が下がり、結果的に成果は低くなってしまいます。また、逆に期待するあまり上位20%のメンバーの業務負担が多くなってしまうと、モチベーションの低下につながり、やはり成果が低くなってしまう危険性があります。

メンバーの成果を正しく評価したうえで、上位20%のメンバーがさらに効率よく成果を上げられるよう、また下位80%のメンバーが不当に評価されていると感じないように、適正な業務内容の配分や評価の仕方を検討すべきでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか? 経済学から発展したパレートの法則ですが、「選択と集中」を検討するうえで、ビジネスやマーケティングにおいても非常に役に立つ法則です。

ただ、パレートの法則は使い方を間違えると全く見当違いの結論を引き出してしまうという危険性も含みます。例えば、成果に対する貢献度は正確な数値を計算によって割り出せるケースが少ないこともあり、多くは経験や予測に基づいて算出されますから、貢献度が見当違いであれば当然結果も大きく狂ってしまうでしょう。

パレートの法則をビジネスに活用する際は、できるだけ多くの情報を収集し、各要因の貢献度の精度をできるだけ高くすることが大切となります。

戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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