「CMSを利用すべきだろうか」「導入するCMSをどう選べばよいのか」とお悩みではないでしょうか。
Webサイトのうち7割弱は何らかのCMSを導入しているというデータがあり、自社に合ったCMSを選ぶことは、業界・業種を問わず多くの企業にとって重要な課題です。
しかし、マーケティング熟練者が少ないBtoB企業やSaaS企業では、CMSを選ぶ基準がわからなかったり、導入しても使いこなせていなかったりするケースがよくあります。
そこで本記事では、CMSの活用を目指すBtoB企業やSaaS企業のマーケティング担当者に向けて、以下の内容を解説します。
本記事を読めば、CMSのメリットとデメリットを理解でき、自社に合ったCMSを選ぶ考え方も身につけられるでしょう。ぜひ最後までお読みください。
CMSは「Contents Management System」の略称で、Webサイトを構築し、運用していくためのシステムのことです。
CMSを利用することで、HTMLなどの専門知識がない方でも、コーディング後のWebページの追加や更新といった作業を簡単に行えるようになります。また、近年ではno-codeやlow-codeと言われる、コーディングが必要なかったり、部分的に不要になったりするCMSも登場しています。
(画像引用:https://opensource.com/article/20/7/history-content-management-system)
1991年に「World Wide Web」が生まれてCMSが発展するまでは、パソコン内にWebページのデータが保存されており、それを更新の度にアップロードする必要がありました。そのため、特定のパソコンからしか更新ができなかったり、複数人での管理が難しかったりといった課題があったのです。
それに対して、現在使われているCMSは「クラウド型」が一般的です。クラウド型のCMSでは、データはすべてWebサーバー上に保管されています。そのため、場所を問わず誰でもWebサイトの更新が可能になりました。
また、CMSが登場した1990年代には「フルスクラッチ型」で企業が自社専用に開発するか、システム会社が提供する「商用パッケージ型」を購入するのが一般的でした。フルスクラッチ型のCMSの構築は非常に高額であり、商用パッケージ型もある程度の費用がかかります。
しかし2000年代からは、無料で利用できる「オープンソース型」のCMSが急速に発展し、機能も充実していきました。オープンソース型のCMSの代表例が、2003年に登場したWordPress(ワードプレス)です。
現在では、オープンソース型の無償CMSも多くの機能を備えているため、BtoB企業やSaaS企業が利用するうえで十分に候補になります。
CMSを導入すべきか迷う方に向けて、CMS利用のメリットとデメリットを紹介します。
CMSを利用するメリットは、主に以下の3つです。
CMSに用意された「テンプレート」を利用することで、簡単な操作で短時間のうちに記事を追加できます。
あらかじめデザインが整えられているため、文字を入力したり画像を追加するだけで、読みやすいコンテンツが完成するのです。
現在はスマートフォンでWebサイトを閲覧するユーザーが多いので、画面サイズに合わせてレイアウトを整えることが欠かせません。パソコンとスマートフォンで自動的にデザインが切り替わるテンプレートもCMSに用意されているため、レイアウトを自分で考える必要がなくて便利です。
(プラグインの役割の例)
WordPressなどのCMSには「プラグイン」が豊富に用意されています。プラグインとは、機能を増やすためのソフトウェアのことで、簡単な操作でCMSに追加できます。
たとえば、以下のような機能を持つプラグインが利用可能です。
必要に応じてプラグインを導入することで、Webサイトを思い通りにカスタマイズできます。
CMSならno-codeでサイトを構築できるので、プログラミングの知識がなくても問題ありません。
HTMLのコードを直接編集しなくても、ほとんどの作業はクリックやドラッグ&ドロップなどの直感的な操作で完了します。
コーディングが苦手な方にこそ、CMSの利用をおすすめします。
CMSを利用するデメリットは、主に以下の3つです。
WordPressなどの人気のCMSは、多くのユーザーに利用されているがために、サイバー攻撃の標的にされやすい傾向があります。
オープンソース型のCMSでは、セキュリティ面での脆弱性に運営者が十分に対応していない場合が少なくありません。そして、セキュリティの問題で何か損害を受けたとしても、あくまでも「利用者の自己責任」になってしまうのです。
セキュリティ面に不安があることは、CMS利用のデメリットだといえます。
CMSはそれぞれがオリジナルのテンプレートを利用しており、デザインに独自の癖があります。
そのため、デザインをカスタマイズしたくても、そのCMSに精通しているデザイナーでなければ、対応できない場合があるのです。デザイナーが自由に手を加えられる「フルスクラッチ型」とは、この点が異なります。
デザインにこだわりがある場合は、CMSを利用することで、自由な変更がしにくくなってしまうかもしれません。また、CMSによっては独特の言語があることがあります。そのため導入を考える際は、必ずコーディングをどのようにすべきかを確認することが大切です。
CMSでは、ほとんどの操作をno-codeで行えますが、コードの知識が必要になる場合もあります。
せっかく時間をかけて途中までサイトを作っても、コーティングが行えないために、サイトに必要な機能を実装できないこともありえます。
コード知識を突然求められることがある点は、CMSのデメリットです。
できるだけCMSに費用をかけたくない、BtoB企業やSaaS企業の方も多いでしょう。そこで、有名で実績のある無償CMSを3つ紹介します。
WordPressは、世界で最も利用者が多いCMSです。Web調査会社の「W3Techs」のデータによれば、2022年4月の世界でのシェアは64.2%であり、日本でのシェアは84.4%に達しています。
WordPressの最大の特徴は、豊富なプラグインが利用できることです。多数の利用者がいることから、開発者がWordPress向けのプラグインの開発に注力し、便利になることでますます利用者が増えるという好循環が生まれています。
デザインのテンプレートである「テーマ」も豊富に用意されています。テーマやプラグインは、無料・有料のどちらも充実しており、費用をかけずに高機能なWebサイトを構築することが可能です。
Wix(ウィックス)は、無償CMSの中でも手軽にWebサイトが作れる点に特徴があります。
WordPressでは、サーバーやドメインの準備が必要になる場合がありますが、Wixでは不要です。サーバーやドメインの費用をかけることなく、Webサイトを構築できます。
無料で利用を始められる一方で、有料のプランも複数用意されています。必要に応じてプランを選ぶことで、余計な費用負担なしでサイトを運用可能です。
Wixには「ビジネス」「イベント」など、用途に合わせたテンプレートが豊富に用意されています。選ぶだけでサイトの大枠ができあがるため、短時間でWebサイトを完成させられるでしょう。
Drupal(ドルーパル)は、「モジュール」を追加することで機能を増やせるCMSです。大手企業に導入されている実績があり、大規模なサイトにも対応可能です。
DrupalでWebサイトを作る際には、まずWebサイトに最低限必要な機能がセットになった「コアモジュール」を導入します。そのうえで、目的に応じて「拡張モジュール」を追加していくことで、思い通りのWebサイトを構築していく仕組みです。
また、複数のモジュールがあらかじめ組み合わされた「ディストリビューション」を利用する方法もあります。「コーポレートサイト」や「コミュニティサイト」など、よく利用される型どおりのサイトであれば、規模のわりに少ない手間で作業が完了するでしょう。
(「G2 Grid」によるCMSのマッピング)
CMSは非常に種類が多いので、どれを使うべきか迷ってしまう方は多いでしょう。
そんな方が参考にできるのが、CMSを特徴ごとにマッピングする「G2 Grid」というサービスです。上図の通り「市場での存在感」と「満足度」の2軸でマッピングされており、各CMSの立ち位置を確認できます。
ここでは、BtoB企業やSaaS企業がマーケティングに利用できるCMSを、厳選して3つ紹介します。
URL:https://www.hubspot.com/products/cms
月額料金:Starter:2,700円、Professional:43,200円、Enterprise:144,000円
HubSpot CMSは、HubSpot内に用意されたCMSです。HubSpotはCRM(Customer Relationship Management)プラットフォームとして世界的に広く使われているツールで、Webサイトを通じて製品サービスの買い手との関係を築くために利用されます。
HubSpot CMSは、システム開発者やマーケティング担当者が期待する豊富な機能を備えている点が特徴です。
たとえば、Webサイトの訪問者を一人ひとり識別したうえで、ページの内容をパーソナライズできます。過去に問い合わせをした人や製品サービスを購入した人に向けて、最適な内容を表示することで、売上げアップにつなげられるでしょう。
HubSpot CMSには3つのプランが用意されており、利用したい機能や予算に合わせて柔軟に選べます。
月額料金:無料から利用可能
WordPressは、BtoB企業やSaaS企業のマーケティングにも利用できます。
ただし、無料のテーマやプラグインだけで求める機能をすべて実装するのは、難しい場合が多いです。有料のテーマやプラグインを導入したり、メール配信スタンドなどの外部ツールを組み合わせたりして使うのが一般的です。
有料のものを複数組み合わせたとしても、マーケティングの専門ツールを導入するよりは安価になる傾向があります。費用を低く抑えたい企業は、WordPressの利用が適しているでしょう。
月額料金:要問い合わせ
Sitecoreは、買い手の「デジタル体験」を向上させることに注力しているCMSです。パーソナライズやマーケティングオートメーションなど、高度なマーケティング機能を利用できます。
Sitecoreのライセンスは以下の3種類に分類されます。
それぞれ、必要とする機能によって費用が大きく変動するのが特徴です。そのため料金がわかりにくい点は、Sitecoreのデメリットといえます。
費用をかけてでも高機能なマーケティングツールを使いたい場合は、Sitecoreの導入を検討するとよいでしょう。
BtoB企業やSaaS企業がマーケティングのためにCMSを導入するのであれば、専用CMSを選ぶことをおすすめします。
WordPressなどの汎用的なCMSは、さまざまな目的のWebサイトに対応できる一方で、高度なマーケティング施策への対応は難しいからです。
すでに自社でCMSを運用している場合は、それを利用してマーケティングも行いたくなるかもしれません。しかし長期的に見ると、導入費用をかけてでもマーケティング専用CMSを利用したほうが、会社の利益が増えることがよくあります。
例えば、BtoB企業でよくあるのが、CMSをWordPressにし、マーケティングオートメーション(MA)を有償のツール、顧客管理システム(CRM)を別の有償ツール、もしくは連携が可能なツールにするというツギハギのツール利用状況です。
こういった運用の仕方は筆者の経験上、運用コストが非常に高くなります。
その理由は、各ツールを全て利用できるマーケティング担当者は日本の市場にほとんど存在しておらず、ツール数が増えると運用に関わるマーケターの数が多くなる傾向が高くなり、運用が軌道に乗らなくなることが多いからです。
また、ツール間のデータの連携などが複雑になり、運用のオンボーディングに時間が必要になっていきます。CMSがマーケティング専用でないと、データを見るツールがウェブ解析やウェブ分析視点のツールになってしまうことが多く、リードを獲得するために時間を費やすべきところが、自社の運用プロセスを作り上げるために時間を費やすことになってしまいます。
そのような理由から、マーケティングの専用CMSを利用することをお勧めすることが多いです。
CMSの利用には、以下のメリットがあります。
一方で、デメリットは以下の通りです。
代表的なCMSの特徴も紹介しました。BtoB企業やSaaS企業がマーケティングに利用しやすいCMSは限られています。CMSの選定で失敗しないために、ぜひ本記事を参考にしてください。