BtoB企業が見込み客を獲得したい場合、どうやって見込み客にアプローチすれば良いか、迷う方もいるかもしれません。そんな方に向けてこの記事では、見込み客と接点を持つ前に知っておきたいことから、アプローチ方法の種類を紹介します。さらに、見込み客の分類に応じた最適なアプローチまで解説していきます。
最初に、見込み客へアプローチする前に理解しておきたいことを紹介していきます。
福田康隆氏の著書『THE MODEL』では、企業向け製品を導入する際、「情報収集」「比較検討」「意思決定」といった購買プロセスの67%は、営業担当者が接触する前に顧客側ですでに終えているというデータが紹介されています。
あくまでもひとつのデータをもとにした一例ですが、要するに情報収集から比較検討といった購入プロセスの大半を顧客自らが行っているということ。その結果、選ばれた企業だけに問い合わせがいくと考えられます。つまり、製品・サービスを導入する主導権は、売る側の営業担当者というよりも、買う側の購買担当者にあるわけです。
顧客は自分が決めたタイミングで、なおかつ自分がWeb上で収集した情報をもとに、製品を選びます。それならば、見込み客が情報を収集しようと思ったときに、いかに早く自社の情報を見つけてもらうかが大事。たとえばユーザーが検索したキーワードに応えるブログ記事を用意しておき、それが上位表示される状態であれば、見込み客の目にいち早く止まります。
このように情報収集や比較検討に入っている段階の見込み客に、いかに最初に自社製品に関連した情報を見つけてもらうかが、大切なのです。
また、購買プロセスのほとんどを経ているということは、営業担当者が接触する時点で、いかに早く製品の導入に向けた具体的な話まで進められるかもポイント。見込み客は「何も知らないだろう」と考え、丁寧にイチから説明していては時間もかかり、その間に動きの早い他社に移っててしまうリスクがあります。
ただ、資料請求したとたんに営業から電話がかかってきて「スピード感がある」と感心する見込み客もいれば、「いきなり電話がかかってきて面倒だ」と感じるケースもあります。そのため、認知から購入の段階に至るまで、見込み客の状態に合わせたアプローチが必要です。
では、見込み客の状態とは何か?
認知から購入までのプロセスのなかで、大きく
に分かれます。そんな見込み客の状態に合わせ、アプローチの仕方を変える必要があるでしょう。
まず、潜在見込み客に対しては「認知」してもらうことから始まります。自社のことをほぼ何も知らない状態であることが一般的。自社名はもちろん、製品・サービス名などを把握しておらず、同様に競合他社のことも知らない状態と考えましょう。
たとえばマーケティングを効率化するSaaSツールを提供する企業であれば「見込み客を増やすにはどうすれば良いのか」「新しいマーケティングの手法は何かないかな...…」と、課題感が漠然としている状態です。
この状態の潜在見込み客には、製品の具体的な機能や活用方法を訴求しても、あまり響きません。そのため、WebサイトやSNSといったチャンネルを駆使しながら、課題解決を目的としたコンテンツの提供などを通じ、自社製品に興味を持ってもらうきっかけを作る必要があるでしょう。
ブログ記事などのコンテンツを経由し、フォーム入力などを通じて会社や担当者名などの情報を取得できたら、次は「見込み客」の状態へと移ります。ただ、せっかく見込み客の情報を獲得できたからといって、すべて等しくフォローしなければいけないわけではありません。
継続してアプローチを行うべき相手か、つまりは確度の高い見込み客かどうかを絞り込んでいきましょう。場合によってはインサイドセールスで、どういった悩みや課題を抱えているのか、ある程度のヒアリングも必要となるかもしれません。
そして確度の高い見込み客は、「有望見込み客」といえます。直接訪問のアポイントを取り、製品の機能や他社との優位性などを訴求していきたいところ。ホワイトペーパー(技術資料)や、競合との違い・具体的な導入結果などをまとめた資料を有望見込み客に提示していきましょう。
次に、見込み客へのアプローチにはどんな種類があるのか。以降で紹介していきます。
アウトバウンド型のアプローチとは、企業側から見込み客に対し、直接アプローチを行っていく手法です。
検索エンジンからの流入など、顧客自らが情報を見つけてくれるように促すのではなく、企業側から直接アプローチを行っていくこの手法。代表的なアプローチとしては「テレマーケティング」「ダイレクトメール」「イベント」「雑誌・新聞広告」「テレビCM」などがあります。
これまで、営業担当者が電話やメールから見込み顧客にアプローチを行い、見込み確度の低い顧客まで含めて訪問。その中でニーズや課題を把握するという、要するにアウトバウンド型のアプローチが一般的でした。
ただ、アウトバウンド型のアプローチだと、確度の低い見込み客も含め、すべてを営業担当者のみで対応しなければいけません。この方法だと成功率も低く、かつ営業側にも相当な負担がかかっていました。見込み客も、興味のない電話に時間を割く必要があり、双方に大きなコストがかかっていたわけです。
一方で、これからは商品やサービスに関する情報発信サイトを立ち上げ、ブログの記事やホワイトペーパーを充実させますそして、見込み顧客自らがGoogleなどの検索エンジンやデジタル広告から問い合わせをする、インバウンド型のアプローチが主流となりつつあります。
このアプローチであれば、営業担当者は問い合わせがあり、なおかつマーケティングやインサイドセールスが絞り込んでくれた確度の高い見込み顧客のみ対応すれば良くなります。そのため、大幅な生産性の向上につながるでしょう。
改めてインバウンド型のアプローチとは、Web上で顧客自らに見つけてもらう施策を指します。
具体例を挙げると、SEO記事やブログ、SNSやホワイトペーパー、ウェビナーやニュースリリースなどです。
スマートフォンやパソコンなどを通じ、情報に自ら触れる環境で生活する現代の購買者。CMや新聞広告といった、従来の売り手側から一方的にアプローチするメッセージは避けるようになったといいます。
事実、『THE MODEL』では購買担当者の75%は、「営業担当者から買うよりもWebサイトで買うほうが便利だと考えている」といったデータも紹介されています。つまり、Web上で情報収集から購入まで完結するのが理想だと考える見込み客が多いと予想できます。
それゆえ、購買者が情報を検索したりSNSで見かけたりといったインバウンド型のアプローチのほうが、今の時代に即しているといえます。
参考:『THE MODEL』
ここで、一般的に製品の導入を承認してもらうために稟議を上げるとき、「起案」「情報収集」「評価選定」の3つのプロセスを経て、購入の意思決定は行われます。
起案段階では、稟議を上げる購買担当者や、利用するシステム部門などが、新技術や製品・業界トレンドの情報収集をネットで行います。さらに情報収集を本格的に行う段階になると、ツールベンダーに自ら資料を請求したり、情報サイトから資料ダウンロードしたりする動きを取り始めるのです。
そして前述した通り、導入を検討している製品の営業担当者に見込み客が直接関与する前、購買に至るまでの準備の67%は完了しているとのことでした。
今後、起案や情報収集のプロセスで、適切な情報をオンラインで発信していかないと、検討の選択肢にすら入れてもらえません。つまりこれからの時代、最も注力すべきアプローチがインバウンド型といえるのです。
最後に、前述した「潜在見込み客」「見込み客」「有望見込み客」といった分類に合わせて、行うべきアプローチ方法も紹介していきます。
潜在見込み客は、基本的に具体的なブランド名や製品名を知らない状態。そのため、ユーザーが抱いているであろう困り事を解決するWebコンテンツの提供を通じ、認知だけでなく興味・関心を持ってもらうアプローチを行いましょう。
ここでいうWebコンテンツは、検索エンジンやSNS経由で閲覧されるブログ記事や、ホワイトペーパーといったダウンロード資料などのこと。
たとえばCRM(顧客関係管理)の世界最大手である「セールスフォース・ドットコム」では、マーケティングや営業活動で活用できるノウハウやトレンドを幅広く配信しています。
(参照元:セールスフォース ブログ)
なかには「為末大氏に学ぶ!マインドセットを変え、結果を出すための極意」など、著名人への取材をもとに、仕事で活用できる思考法などのコンテンツを用意しています。
(参照元:為末大氏に学ぶ!マインドセットを変え、結果を出すための極意)
メディアの上部には「資料ダウンロード」や「無料メルマガ登録」のボタンを設けることで、見込み客情報の獲得にもつなげているようです。
また、コロナ下で急速に普及したウェビナー(オンライン型のセミナー)もWebコンテンツに該当します。
たとえばSEO対策ツールを提供する「ミエルカ」は、オンラインマーケティング大学と題し、「3年でリード獲得数を70件から→月500件に増やした事例」など、潜在見込み客が気になるテーマのウェビナーを無料公開しています。
(参照元:BtoBデジタルマーケティングセミナー動画を無料公開|ミエルカ)
このように潜在見込み客に対しては、自社の製品やサービスというよりも、いかに関連する情報を見つけてもらうかがポイントです。
ビジネスチャットを提供するBtoBのSaaS企業を例に、どんなコンテンツを提供すれば良いか、もう少し考えてみましょう。
2020年のコロナ下で、急遽リモートワークを命じられたユーザーが「遠隔でのコミュニケーションが上手くいかない」と悩んでいたとします。こうしたユーザーがいきなり「ビジネスチャット」と検索することは稀です。コミュニケーション課題を解決する手段としてビジネスチャットがあることすら知らない状態、といえるでしょう。
そのためまずは「リモートワーク コミュニケーション 解決」といった、課題軸の単語で情報を探すことが予想されます。つまり、このキーワードで検索するユーザーの課題を解決ようなブログ記事を作成し、検索エンジンで見つけてもらう必要があるのです。
現在提供しているコンテンツの内容を見て、自社の製品に関する話ばかりでは潜在見込み客に見向きをされません。また、具体的な製品の導入を検討しているわけでもないため、先走りすぎて自社製品に関するメッセージばかりを伝えても、信頼を失ってしまうことにつながります。
そのためブログ記事を読んだユーザーに、関連するテーマのコンテンツを見るよう促したり、もしくはメルマガに登録してもらったりといったアプローチにとどめ、長い目で見込み客へと育てていく姿勢が求められます。
情報収集を行い、より詳しい情報を知りたいと思った潜在見込み客に向けて導入事例やダウンロード型コンテンツなどの用意します。その際に入力フォームを通じて顧客情報を獲得できれば、潜在見込み客は「見込み客」となります。
たとえば法人向けの名刺管理サービスを提供する「Sansan」の導入事例は、業種や従業員規模に応じて事例を絞り込める仕組みです。
(参照元:導入事例|Sansan)
訪れたユーザーは、自社の業種や規模に合わせた事例を、かんたんに探せます。
さらに「導入事例集ダウンロード」というボタンも設定。クリックすると、情報を入力するフォーム画面へと遷移します。
(参照元:事例集ダウンロード|Sansan)
また先ほどのビジネスチャットを例にすると、検索結果で表示されたブログ記事を読んだ潜在見込み客が、コミュニケーション問題を解決する手段として「ビジネスチャット」があることを知ります。そして、ビジネスチャットの導入に向け、より具体的な製品や詳しい機能を知りたいと考えるでしょう。これが潜在見込み客から見込み客へと段階が移った状態です。
その後、見込み客は「ビジネスチャット おすすめ」の記事を関連記事としてサイト内で探すかもしれません。閲覧した記事のなかで、自社製品の優位性について触れることができれば、もっと詳しい情報を知りたいと考え、導入事例を確認する可能性があるでしょう。
導入事例を読んで、次は製品の機能をより詳しく知りたいと考えたら、製品情報の資料請求や導入に関する問い合わせを行うかもしれません。そこで、見込み客からより確度の高い「有望見込み客」へと、状態が変わります。
有望見込み客に関しては直接訪問のアポイントを取り、製品の機能や他社との優位性などを訴求していきたいところ。すでに紹介しましたが、技術資料や競合との違いをまとめた資料、また具体的な導入効果などを有望見込み客に提示していきましょう。
インターネットが発達した現代。購買者は情報に自ら触れる環境で生活しており、従来の売り手側から一方的にアプローチする手法を避けるようになりました。そのため、Web上で情報を見つけてもらうよう買い手に促す、インバウンド型のアプローチに注力したほうが良いといえます。
『THE MODEL』によると、見込み客が営業担当者に直接関与する前、購買に至るまでの準備を半分以上完了しているというデータもあります。そえゆえ、今後は購買プロセスに応じて、適切な情報をオンラインで発信していかないと、選択肢にすら入れてもらえないわけです。
ただ、購買プロセスといっても、認知から購入の段階にいたるまで「潜在見込み客」「見込み客」「有望見込み客」といった異なる状態の見込み客が存在します。そのため、どの段階にいるのか、見込み客の段階に合わせてアプローチの仕方を変える必要があるでしょう。
たとえば潜在見込み客には、ブログ記事やホワイトペーパーなどの手段を通じて困りごとを解決するコンテンツを提供します。そして、見込み客や有望見込み客には自社製品の優位性に触れたおすすめ記事や導入事例、技術資料などのコンテンツを活用しながら、アプローチしていきましょう。