コロナをきっかけに日本の営業スタイルはかなり変わり、多くの企業がオンライン商談とリアルな商談を上手に組み合わせ、あるいはオンラインだけでも商談を完結するようになってきました。
CRM、SFAなどのセールステックの導入も一般化し、AIによって精度の高い見込み客にリーチできるツールも登場。SaaS業界ではいわゆる「The model型亅の営業分業スタイルをとる企業もかなり増え、業界では効率性や科学性を志向する営業が、もはやスタンダードになってきたといえるでしょう。
とはいえ、問題は売上げが順調に上がっているかです。ライバル企業も同じような取り組みを行うので、そこで競争に勝つためには組織としての営業力をいかに高めるか、営業担当者個人の能力をいかに高めるかが、結局差別化のポイントとなるでしょう。
ご存知のとおり、以前からセールステックを導入しても売上げが伸びない、という声はあります。昨今は米国で「分業型営業モデルでは顧客の声に応えられない」という意見も出てきています。
組織の営業活動の基本ができていてこそ、最先端のセールステックを使いこなせますし、市場変化にあわせて自社の営業チームをアップデートできます。
今回は、営業活動の基本について解説します。今一度基本ができているかを見直し、営業活動で成果を出すために行うべきことを再考してみましょう。
営業活動とは、自社の製品・サービスを顧客に提案・販売して売上げを上げる活動です。一般に、企業本体、パートナー企業の営業担当者が営業活動を担当します。
企業の営業活動の本質は「売上げを上げること」です。どのような素晴らしい商品であっても、そういうものが存在すると知られなければ誰も購入はしてくれません。
歴史を振り返ってみれば、素晴らしいアイデア、画期的な商品を出しながら、営業力がないあるいは軽視したがゆえに、後発の企業に駆逐されてしまった企業は山ほどあるでしょう。一見、技術主導であるかのように見えるIT業界やメーカーの世界も同じです。
「PayPay」「Salesforce」「株式会社キーエンス」など、業界トップの高い売上げを上げる企業は、いずれも強い営業組織、営業パートナー組織を作り上げています。その土台の上で優秀な社員やセールスパートナーたちに活躍してもらっています。
そして、売上げを上げる=正当な対価を得るために製品・サービスの品質を向上させ、強い責任感のもとプロとして顧客と向き合うからこそ、企業は社会から高い信頼を得ています。
営業活動は、大きく分けると新規開拓営業と既存顧客営業の2つです。そして、この2つのどちらかに重きをおくかによって、営業の世界観も大きく2つに分かれます。
シンプルな言い方をすれば、新規開拓は、とにかくゼロベースから大型受注を獲得することを重視するハンター型営業。既存顧客営業は、見込み客や顧客と中長期的に強い関係構築をしていき受注やアップセルをねらっていくファーマー型営業です。
もちろん、両方ともバランスよく1人の営業担当者がオールマイティに行えればベストです。しかしこの世界観については、組織はもちろん営業担当者レベルであっても、どちらかよりに分かれる傾向があります。
新規開拓営業(ハンター型営業)は、ゼロベースから見込み客を探し、成約していく営業です。
新規獲得のハードルはどのような業界でも高く、何よりも自社製品・サービスを必要とする顧客を捜し出す嗅覚(ターゲティング能力)が重要です。大きな売上げになりそうな企業に対して、他社の営業マンより先んじてアプローチする俊敏な行動力も大切です。
いわゆる昔ながらの「ザ・営業」というイメージでしょうか。昔はテレアポ・飛び込みが代表的な手法でしたが、今ではさまざまなアプローチ手法を組み合わせた新規アプローチが求められます。
手法例:
既存営業とは、契約開始後の既存顧客に対する営業のことです。ファーマー型営業とも呼ばれます。Farmer(ファーマー)=農家のこと。つまり、土地を耕して整えて種をまいて、目が出たら水をやり、成長していくにつれ必要になる肥料を与えて、木や植物を育てていくような中長期的な営業活動です。
木や植物がしおれてしまわないためには、適切なタイミングで適切な量の水や肥料を与える必要があります。水が多すぎると枯れることもあります。
ファーマー型営業とは、担当者の状況に最新の注意を払い、担当者の状況にあわせて今もっとも必要としているであろう情報やアドバイスを提供し、担当者を常にアシストし信頼関係を作っていく営業スタイルです。
長期間の献身的なサポートによって信頼されるほどに、アップセル、クロスセルがスムーズになりますし、場合によってはいわゆる丸投げ(すべてお任せ)されるほどの強い関係になります。
ただし、一口に既存営業(ファーマー型営業)といっても、その関わり具合は業界や商品によってさまざまです。関わるスタンスも、以下のように営業マンの個性によって違いがあります。
インサイトとは日本語で「示唆(しさ)」という意味です。インサイト営業とは、営業側からの洞察に富んだアドバイスにより、それまでお客様が持っていなかったような視点で課題を捉えてもらい、ベストな提案をしていく営業スタイルです。
インサイト営業を行うには、業界や商品についての専門知識に加えて、顧客の状況に対する深い理解が必要であり、比較的ハードルの高い営業スタイルだと言えるでしょう。
しかし、今の時代、発注担当者はいくらでもインターネット上で情報の収集が可能。仕事ができる担当者は情報収集力も、意思決定力もあるため、単なる情報提供ではあまり営業マンを評価しなくなっています。
そのため、営業マン側にもこれまでの課題解決方法に対する違う視点を提供したり、未来を見据えた取り組みを提案するなど、示唆や洞察に富んだ営業力が期待されています。
エンゲージメントとは「約束、愛着」といった意味です。セールスエンゲージメントを重視する営業とは、顧客に対する愛情や思い入れをベースにした献身的な貢献を行うことで、強い信頼関係を築いていき、何かと相談されるようになり大きな仕事を任せられるようになる営業スタイルです。
インサイト営業がどちらかというと頭脳、発想、思考力勝負であることに対し、セールスエンゲージメント型営業はもっとハートフルな部分が重要視されます。人として信頼してもらう側面が強いと言えるでしょう。
発注担当者は、営業マンの人間性、信頼性を非常に重視します。課題についての視点を変えるほどの提案力はなくても、今顕在化している課題に対してベストな問題解決を提案しようとするセールスエンゲージメント型営業は基本的に好まれます。
「君にならまかせられる」と仕事を次々ふるようなケースもありますので、既存型営業の初心者がまず目指すべきスタンスだと言えるでしょう。
営業活動のプロセスは成約までの期間が長く、さらにBtoB の場合は取引後も長期の仕事になることが一般的です。そのため、企業によっては役割ごとに営業チームを分業するケースもあります。パターンとしては、以下の3つの役割です。
営業リストの作成からアポ獲得などの新規アプローチ、提案、受注、その後のアップセル・クロスセルまですべて一人の営業担当者が完結する営業スタイルです。
いわば昔ながらの営業です。営業担当者は会社から提供されるリストだけでなく、自分でリストを探し、自分で電話やメールでアポイントをとり、信頼関係を作って契約にこぎつけます。その後も自分でずっとその顧客を担当し、売上げを伸ばしていきます。
例えば、広告業界や人材業界の営業にはいまだ多いパターンです。理由として、初期のアプローチの段階からの情報提供、リアルタイムな判断に対するアドバイス、提案などが契約後も同じように必要であること。そして、SaaS業界のようなテック企業ほどは、テクニカルな支援が必要でないことがあるでしょう。
全プロセス完結型営業スタイルは、営業マンの顧客への思い入れが非常に強くなり、顧客への理解が深くなるメリットがあります。一方、「この顧客は自分のもの」という意識も芽生えやすく、情報やノウハウ公開に非協力的になる担当者もいます。自分が理解していれば問題ないという思考です。
また、全プロセス完結型だと1人で担当できる顧客数に限りがある点も課題です。営業アシスタントをつけて営業マンの事務タスクを減らすなどの工夫が必要です。
新規開拓営業は時間がかかります。最低でも数ヶ月、2〜3年、業界によっては数年かかる場合もあるため、最近はインサイドセールスとフィールドセールスに分業する企業も増えています。
インサイドセールスの役割は、一度接点を持った見込み客と電話、メール、ビジネスチャットなどを活用し非対面で信頼関係を作っていくことです。具体的には、マーケティング部門が生み出したリードにアプローチしてアポイントの獲得を目指します。Webからの問合せが来たら連絡したり、展示会で入手した名刺にアプローチしたりします。
もともと国土が広く移動が大変な米国で広まった営業スタイルですが、コロナ禍になり日本でもフィールドセールスと並ぶスタンダードな営業スタイルになりつつあります。企業によっては、インサイドセールスのみで受注まで完結させます。
インサイドセールスの場合、もともと自社に興味をもっていた見込み客相手なので比較的アプローチはしやすいのですが、いわゆる「今すぐ顧客以外」が多い傾向です。
それぞれのニーズやタイミングに合わせた最適な頻度でコニュニケーションをとりながら、中長期に信頼関係を築いていくスタンスが必要。そして、確度の高くなった見込み客をフィールドセールスにつなぎます。
フィールドセールスとは、インサイドセールスがアポをとった案件に商談を行い、契約までつなげる役割です。インサイドセールスから受け継いだ情報をもとに、より課題を深掘りして最適な提案を行い最終的に受注までもっていきます。
フィールドセールスは、見込み客の関心度が高まった時点で登場するため、的確な状況判断力、プレゼン力、クロージング力が必要です。インサイドセールスがヒアリングした内容だけでなく見込み客のHPなどの情報から、自分自身で仮説を立てる能力、個別の提案を行い納得してもらい、実際に契約を決める能力が求められます。
全プロセス完結型の営業だと、クロージングの頃は自分の個性と相性がよい担当者だけが残りがちですが、分業となるとさまざまな個性の担当者が登場します。
そのため、汎用的な提案力とコミュニケーション力、この企業と取引してよいと最終的に思ってもらえる人間力も問われます。契約になるかどうかは、フィールドセールスにかかっているといっても過言ではありません。
営業活動とすぐ隣り合わせの部門に、リードを創り出すマーケティング部門、それを案件化するインサイドセールス、契約開始後のサポートを担当するカスタマーサクセス、アップセル・クロスセルを担当するカスタマーサクセスなどの部門があります。
マーケティング部門の役割は「売れる仕組み」を構築することです。営業部門を後方支援するセクションにあたり、マーケティングが巧みな企業ほど営業現場の活動が楽になります。
といっても、日本企業の場合はマーケティング部門の人数は少ないことが多く、中小企業では「一人マーケッター」が珍しくありません。仕事の領域も広告・宣伝や販促物の制作のみとなっているケースもあります。
米国でマーケティング部門が担っている仕事は、日本企業では経営企画、営業企画、営業部門に点在しているように見受けられます。例えば、見込み客のターゲットの選定〜絞り込みまでのデマンドジェネレーションは、営業部門が担ってきたといえるでしょう。
しかし、近年のビジネスのデジタル化に伴い、オンライン上の見込み客発掘の必要性が高まったため、マーケティング部門に対しても見込み客の創出と収益向上が期待されています。マーケティング部門と営業部門との関わりはますます強くなりつつあるのです。
カスタマーサポート、カスタマーサクセスは製品・サービス後のフォローを担当する部門です。
サポート部門は製品・サービスの不具合、トラブルなどに対応します。企業によっては年中無休・24時間対応です。
カスタマーサポートに問い合わせる際のクライアントは、いわばトラブルの真っ只中にあり焦りや不安を抱えています。ここで良い対応ができれば、企業への信頼度は非常に高くなります。逆に良い対応が受けられないと大きく失望され、解約につながる可能性すらあるため、地味ですが実は売上げ維持に大きく貢献している部門です。
カスタマーサクセス部門は、「サクセス」とついているように顧客の成功をアシストする役割です。
製品・サービスを購入した顧客に定期的なフォローを続け、わからないことがあっても躓かずに活用できるように、新しい機能を知ってもらうことでさらに課題解決につながるようにサポートします。また、新しくリリースされた製品・サービスを案内するなど最新の情報提供も行いながら売上げをあげていく部門でもあります。
SaaSなどのように、顧客側にとっても勉強しなければならないことが多い製品・サービスは、「操作が難しい、面倒」だと感じると徐々に使わなくなってしまうことが懸念点です。売って終わりではなく、カスタマーサクセスが丁寧にフォローすることで、顧客も当初描いていた活用がしやすくなります。
この2部門は、既存顧客の売上げ拡大に大きな役割を果たしています。
営業活動でよくある課題を解決するための、営業管理のポイントを解説します。
営業活動の基本は予実管理です。予実管理とは、予算と実績の管理。簡単に言えば目標に対して実際の実績や見込みがどのくらいあり、目標金額達成のためには何をすればよいかの計画をたて実行していくマネジメントです。
企業によって予算管理、売上げ管理、目標管理と呼ばれることもありますが、総じて同じ意味と考えて問題ありません。
一般に営業部門の目標は、前年対比で降りてくることが多いため、一営業マンに対しても担当顧客の前年対比で100〜120%程度の目標設定がされます。
景気の変動にかかわらず常に前年アップという高い予算を達成するためには、実績の進捗をモニタリングしながら個々の営業マンの傾向やパターンを把握し、適切なアドバイス、指導のもと目標達成に向かって動けるようにアシストすることが大切です。
また、現場からの意見を求め、現在の市場環境において何が予算達成のベストプラクティスかを話し合い、共有していくことが重要になります。
行動管理はできているでしょうか? 行動管理とは、個々の営業マンの日々の行動を管理することです。コール数、営業メール数、アポイント数、1日の商談数などすべての行動を管理します。
行動管理を営業マンの報告にまかせていると、残念ながら適当な記載になることは少なくありません。成果で評価される営業マンたちは、プロセスを細かく管理されるより、とにかく最終的な結果に目を向けがちだからです。あるいは、「目標達成できなければプロセスなど言い訳」という心理があるのかもしれません。
とはいえ、1ヵ月ベース、あるいは1日単位であっても全営業マンのデータを比較するとさまざまな気づきがあります。多くの場合、行動量と成果はかなり関係しています。
行動記録も手入力だと大変ですが、近年はSFA、CRMを活用すれば最初のコール段階から自動的にデータを蓄積できるので、リアルタイムで数値を可視化できます。
といった具合に、各営業マンの行動量、アポイント率、商談率の傾向がわかるため、的確なアドバイスが可能です。また、営業マン自身もトップセールスマンをモデルとして、自分の行動パターンを見直すことができます。
案件管理は、案件ごとの営業のプロセスがどの程度進行しているかを可視化するために行います。
初回コンタクト、ヒアリング、ニーズの把握、決裁権者との面談、商談というプロセスが順調に進んでいるかどうかを可視化することで、直近~向こう半年の数字の予測が可能です。また、何らかの理由で停滞しているプロセスについて、部下からヒアリングして対策を検討できます。
営業マンは多数の案件を抱えているため、SFAなどのクラウドシステムがあると記録もれがなくなり、営業活動に集中することができます。
また、案件管理ができていると、営業マンの異動や退職があっても新しい担当者にスムーズに引き継ぎを行えるため、企業の資産である顧客とのつながりを維持できるのもメリットです。
問い合わせがあった際にまず電話をするのか? メールを送るのか? さらには、どのようなトークをするのか、などが決まっていないケースです。
一見大きな問題はなく、営業マンの自主性を育てるのによさそうですが、新人や中途で新しく入ってきた方などは、型がないと困惑してしまいがちです。
営業経験のある中途採用の場合であっても、最初のころは「どこまでがその企業の対応してもよいラインか見極めたい」という心理が働くため、何も決まっていないと状況をうかがいながら進みがちです。そうそう経験を活かして伸び伸びとすぐ活躍できるものでもありません。
また、ある程度ルールを決めておかないと、自由にSNS営業を行った結果炎上してしまったり、信頼性を低下させるような文面のメールを送ってしまったり、自社では推奨していないフォーム営業を行う営業マンが出たりとトラブルになることもあります。
営業活動は個人で活動する時間が多いため、属人化しやすい職種の最たるものだと言えるでしょう。
どの企業でも営業マネージャーは大抵の場合忙しく、営業のトークや対応の仕方など部下の教育をしたいものの、プレイングマネージャーとしての仕事もあるので、教育まで手が回りません。また、部下も上司に気軽に質問できるものでもありません。
こうなると格差は広がるばかりです。営業現場では、ちょっとしたコツを知らないがために、ポテンシャルの高い人材が伸びず、無駄に悩み続けることがあります。あげくのはては退職してしまうリスクすらあります。
営業の属人化は昔からの課題であり、その対策としてツールの導入などが進みました。しかし、2021年の株式会社コミクスの調査を見ると、リモート営業化で営業マンの成果が「より属人的になっている」と回答する経営者が8割という結果であり、この課題の根深さがうかがえます。
営業担当者が見込み客に対して、いつ、何を伝えたらよいのかがわからないというケースもあります。
考えこんでしまう性格の営業マンであれば、例えばお問い合わせが合った後もすぐに連絡をすべきか? 少し時間をおいて対応するべきか? どのような内容を最初に切り出すべきか? など悩みます。展示会の名刺情報に対するアプローチも同様でしょう。
もちろん、まったく気にせずに自分なりの営業を進められるメンタルの営業マンもいますが、今の時代はSNSなどで営業マンの振る舞いについてさまざまな批判的情報も目に入ってくるため、より慎重になっている傾向があります。
営業活動の課題を解決するポイントは、営業をできる限り仕組み化することです。
自社の営業活動としてどのようなフローでお客様に対応していくのか? を明確にすることが大切です。前述のように営業活動にはいろいろなパターンがあるので、インサイドセールス・フィールドセールスを分けるのかどうかなど、分業体制も含めて決めておきましょう。
例えば、以下のように、営業プロセスを可視化します。業界によって多少異なりますが似通ったフローになります。現実の営業はこのようにすんなりと順序どおりにいかないケースもあるのはもちろんですが、標準的な営業プロセスを明確にすると、現場の営業担当者も今、営業活動のどの位置にいるかを掴め、次に何をすべきかがわかりやすくなります。
インバウンド型の営業プロセス
アウトバウンド型の新規営業プロセス
上記のような営業プロセスにそって、「トークスクリプト」「事例」を用意しておきましょう。営業マン全員が営業プロセスを理解すると、組織全体の無駄な動きがなくなり、以下のメリットが出てきます。
新規開拓のアプローチ、問い合わせからのアプローチなど状況に応じたアプローチ対応のルールを決めておきましょう。
基本的に営業活動は早い段階で対応した方がよいので、お問い合わせや資料請求、セミナー視聴があった場合に「どのくらいの時間内に対応する」などのルールを、営業チーム内で決めておくとよいでしょう。
例:Webフォームからのお問い合わせ後の営業フロー
メールのテンプレート(雛形)も状況別に用意しておきましょう。これだけでも、新人営業担当者が無駄に悩む時間が格段に減ります。また、お客様は速い対応に好印象を持ちます。
早いレスポンス、感じのいいメール、このような小さいことが営業の世界では意外に重要で、成果につながるファクターになります。
メールテンプレートを自社で一から作成するのは大変ですが、いろいろな企業がテンプレートを公開しています。たたき台にして自社なりのひな形を作るとよいでしょう。
以下は、おすすめのHubSpotのメールテンプレート。初めて見込み客に連絡するときのメール、電話の約束をとりつけるメールなど、27種類が用意されています。
(出典:HubSpot)
各営業担当者のスキルを何となくではなく「スキルマップ」などで把握しておくことも大切です。営業の世界では、たまたま初期にタイミングよく売れてしまうことがありますが、基本スキルがないと後々行き詰まってしまうからです。
逆に、徐々にスキルがついていることが確認できれば、現状の実績が今ひとつであっても伸びしろがあると判断できます。
営業マンには商品知識、業界知識、基本的なヒアリング能力、プレゼンテーションほか幅広いスキルが必要です。細かいスキルは、業界や部門によって異なります。さらに、インサイドセールスとフィールドセールスでも多少異なります。
以下にSaaS業界の例としてまとめてみます。
例1.インサイドセールスに必要なスキル:
例2.フィールドセールスに必要なスキル:
3.カスタマーサクセスに必要なスキル:
営業支援ツールや顧客管理ツールをつかうことで、予実管理ができたり案件の管理が簡単になったりします。営業マネージャーの負担軽減とノウハウの共有には不可欠です。無料やローコストのものもあるので、ぜひ活用し始めてみましょう。
まず、HubSpotのCRMはすべての基本機能がずっと無料という点で、他ツールを凌駕していると言えるでしょう。予算がとぼしいなか営業していかなければいけない中小企業にとって、非常に役立ちます。
UIもシンプルであり、ITリテラシーがそれほど高くない人でも活用できます。ツールに抵抗感のある人でも、ハードルが他のSaaSよりも低く感じられるため、導入〜定着が比較的スムーズです。
HubSpot のSales Hubをあわせて活用すれば、商談の追跡も可能です。商談の進捗やステージのどの段階にいるのかが一目瞭然なので、営業マンも情報を整理できますし、営業マネージャーも全体の把握がスムーズになります。
Eメールの開封率やリンククリックなどのデータを元に、顧客の興味や関心を分析し、アプローチを最適化することも可能です。
当初は無料のCRMから始めて、必要に応じSales Hubなどの追加機能を導入していくとよいでしょう。
(出典:Zoom)
Zoomは、おそらく日本でもっとも知られているオンライン会議ツールです。営業に特化したSaaSではありませんが、どのような場所、デバイスからでも商談できる便利さ、通信の安定、その認知度ゆえに商談の際のハードルにならない点が長所です。
無料でも、1ミーティングあたり最大40分まで利用可能で、100人の出席が可能。チャット機能もあるため、セールステックの手始めのツールとして適しています。こちらも慣れてきたら、有料アップデートを検討するとよいでしょう。
(出典:Amptalk)
多くの営業マンにとって面倒に思える仕事が、SFA、CRMなどへの入力です。また、日報作成も同様。営業マンは何より提案書類や顧客対応を優先したいため、後回しにしがちです。
そのような営業マンを楽にするツールがamptalkです。営業マンの活動記入作業を「0」にできます。
架電・オンライン商談の記録は、終わった時点でSalesforce・HubSpotに書き起こしテキストが入力されます。SFAの取引先責任者の項目とも紐づけられるので、商談報告作成も自動です。さらに、営業マンごとにどんな顧客との対話をしているのか、AIが自動解析までしてくれます。
(出典:サイボウズ)
サイボウズは日報入力を効率化するツールです。あまり難しい多機能なテックを導入するよりも、このような他の業務のツールと併用できる簡易ツールで十分、という企業も実は多いかと思います。
近年の営業は科学的になって、営業マンにはセールステックを使いこなすスキルが必要になってきました。しかし、何年もセールステックを使って生産性を上げることができない企業が多い、営業マンは変わらずSFAやCRMへの入力を嫌うケースが多い……ここに、見過ごせない現実があります。
サイボウズは、シンプルな機能、シンプルなUIで活用しやすいツールでおすすめです。
まず、日報を誰もがしっかり入力するようにし、それをマネージャーが指導に活かす、同僚がノウハウを学ぶために閲覧する、そういう基本的業務を行う必要十分な機能があります。
2000年以降「ITの登場で営業マンは不要になる」「AIが営業マンにとって変わる」ということがよく言われてきました。
しかし、これまでのセールステックの例を見るとわかるように、革新的なテクノロジーが登場したところで、遅かれ早かれライバル企業もすべてセールステックを活用します。それだけでは差別化ポイントになりません。
取引企業の課題を見つけて、いかに役にたっていくかを考えて仮説を提案し、強い信頼関係を築きながら顧客の成功を後押ししていく活動は、やはり人間ならではの仕事。営業マンのあり方は変わるものの、営業の本質は変わらないでしょう。
新しい営業スタイル、組織体制、テクノロジーは、ノウハウや武器にすぎません。まず、自組織の戦力と企業文化を理解し、基本的な営業管理のポイントを押さえていきましょう。基本を徹底するだけでも成果に結びつくはずです。その上で自社に必要な武器を選びましょう。