縁の下の力持ち「マーケティングオペレーション」とは?

2021/05/20
SaaS BtoBマーケティング マーケティングオペレーション 縁の下の力持ち「マーケティングオペレーション」とは?

近年、米国企業では「マーケティングオペレーション」というポジションが注目されています。米国のIT専門調査会社IDCによると、大手テクノロジー企業の60%が正式なマーケティングオペレーションのポジションに人材を採用しています。

また、2020年のPercassity Associates社の調査では、すでにB2B企業の67%がマーケティングオペレーションを担当するリーダーやチームを設置しており、93%がデジタルトランスフォーメーションを実現する上でマーケティングオペレーションが重要であると答えています。

なぜ、数年前までは目立たなかったマーケティングオペレーションが急に注目されてきたのでしょうか? 本記事では、マーケティングオペレーションの定義や必要とされる背景、マーケティングオペレーションが取り組む領域を解説します。

マーケティングオペレーションの定義とは

マーケティングオペレーションは、マーケティング組織の中でも比較的新しい領域のポジションです。

マーケティングオペレーションの定義は、広義では人材、プロセス、テクノロジー、データなどすべての面を管轄し、各部門の効率的な運営とマーケティングスタッフの生産性を最大化していく役割を指します。狭義の解釈では、マーケティングチームを効率的に運営するためのテクノロジーとプロセスを担当する役割を指します。

 

マーケティングオペレーション図の定義と仕事の範囲(画像出典:slideshare

 

いずれの解釈であれマーケティングオペレーションは、データをもとにしたベスト・プラクティスの追跡、全体的な成果と投資収益率の測定・改善など、おもにデータマーケティング活動を中心に取り組みます。そして、デマンドジェネレーションと収益成長を促進し、マーケティングチームのメンバーにインサイトを提供します。

マーケティングオペレーションを担う人材には、各マーケティング領域の専門知識や自業界の知識だけでなく、最新のマーケティングテクノロジーを理解できるスキルやデータ分析スキルなど広範囲な能力が求められます。企業によっては現場の人材をモチベートしていく力も必要であり、マーケティング組織内でもかなり重要なポジションです。

大手調査会社のガートナー社は2018年、「マーケティングオペレーションは、マーケティングの中核機能として、部門横断的な調整、コミュニケーション、レポーティングを行うべきである」とレポートしています。

 

Marketing operations( 2018 Garter)(画像出典:Gartner )

 

どうしてマーケティングオペレーションが必要になるのか?

ここ何年かで急にマーケティングオペレーションが注目されてきた理由に、ビジネスのデジタル化が大きく影響していることは言うまでもありません。

デジタル化により多様化する見込み客の購買経路、各マーケティング領域に必要な知識の高度化、年々進化していくマーケティングテクノロジー(2011年150ソリューションが2020年は約8000にまで拡大しています)が要因でしょう。

 

マーテックの増加率(画像出典:chiefmartec.com

 

マーケティングのオペレーションは、複雑かつ高度になる一方です。現代のマーケティングはどのような施策であれデータ、テクノロジーと切り離して考えることはできません。

たとえば、マーケティング部門は、日常業務としてWebサイト、コンテンツ管理システム、A/Bテスト、ソーシャルメディア、ABMマーケティングなど多種類のテクノロジーを統括しています。

データを検証し、施策を改善し続けていく必要があり、かつ部分最適ではなく全体最適にする必要があります。ヘルスケア、金融サービスのような規制の厳しい業界であれば、コンプライアンスを確保するために、マーケティング資料のレビューと承認のプロセスを管理しなければなりません。

マーケティング部門は、マーケティング施策とその成果だけに注力するのではなく、データガバナンス、最新テクノロジーの動向も常に意識してプロセスを進めていきます。

このような複雑で多岐にわたる近年のマーケティング業務を適切に管理し、マーケティング部門全体の生産性を高める役割として、マーケティングオペレーションの必要性が高まってきました。

マッキンゼー・アンド・カンパニー社は、マーケティング・オペレーション・マネジメントがうまく機能すれば、15~25%の効率改善が可能としています。経営層からマーケティング部門の収益への貢献が期待されてきた今の時代、マーケティングオペレーションの重要性はますます高くなっていくでしょう。

マーケティングオペレーションが取り組むよくある領域

マーケティングオペレーションが手がける範囲は、大企業になるほど広範囲になります。ここでは、一般にマーケティングオペレーションが取り組む領域を紹介します。

Team and Project Organization(チームとプロジェクトの編成)

マーケティングオペレーションは、多様なマーケティングチームを束ねるポジションです。Webサイト、SNS、ブログ、ウェビナー、Email、SEO、MA、CRMなど、さまざまな機能を持つ各チームを統括し、共通の目的に向かって進めるようにマネジメントします。

noteにも書きましたが、マーケティングといっても各領域の専門性は高く、まったく関連性のないといってもいいくらいに内容が異なります。そのため、マーケティング担当者は、同じ部門にいながらも他チームの役割や意義にうとくなりがちであり、部分最適にとらわれることが少なくありません。

意識的にマネジメントしないとサイロ化しがちであり、方向性がバラバラになり全体的な成果を上げられないリスクがあります。

マーケティングオペレーションは組織内の人材のスキルを把握し、適切なチームやプロジェクトの編成を行うとともに、目標に沿って各チームやプロジェクトの適切なプロセス管理を行います。

 

マーケティング業務の分断化

 

Data Transparency(データの透明性)

昨今のマーケティングは、データビジネスといっても過言ではありません。マーケティングの成果を出すためには、すべてのデータを一元管理し可視化します。たとえば、収集されたデータは現場に点在するのではなく、MA、SFA、CRMなどの他のシステムと同期されている必要があり、大体の企業ではそのデータの同期がうまくいっていません。

BtoB企業でよくある名寄せ問題も同期をうまくいかせることができない要因の一つで、企業名に後株、前株などがあり、平仮名やカタカナ、アルファベットなどの表記パターンが複数ある日本語では避けることのできない問題です。

また、マーケティングや営業部門は隣り合う部門ながら、異なるツールを使っていることが多く、ツール間でのデータの整備や定義づけを双方交換の合意のもと行う必要があります。しかしながら、その定義づけまで正しく行っている企業は少なく、担当者が誤ったデータの同期をしっぱなし……ということも多々見受けます。

マーケティングオペレーションは、上記のような課題から、マーケティングチームの活動状況を把握し、データを収集・分析し、可視化して全体で共有できるように管理します。また、マーケティングチャネルごと、ステップごと、プロジェクトごとの効果を測定しチームメンバーに共有します。

各メンバーがより正しい意思決定ができるようにデータの透明性を維持しましょう。

Process Repeatability(プロセスの再現性)

マーケティングオペレーションは、チームメンバーが効率的に成果を出せるように効果的なマーケティングプロセスを追及します。常に、各データに目を配り、環境の変化に適したより最適なマーケティングプロセスを設定しましょう。

もちろん、最近のマーケティング環境は、変化が非常に速く最適なプロセスも変化し続けますが、データをもとに、成功確率の高いプロセスを特定することは可能です。再現性が高いプロセスを一定期間実行できれば成果が上がりやすくなり、非効率なプロセスで浪費していた時間・コストを軽減できます。

たとえば、どのようなマーケティングキャンペーンが実際のMRRに貢献しているかが可視化できていれば、リソースを集中させさらなる収益貢献を再現することが可能です。よくあるのが、効果が見られないためにランダムにブログ記事やeBookなどを作成し、指標をトラフィックなどの直接貢献指標とは言い難い数値のKPIにしていることです。多く見られます。

マーケティングオペレーションは。このようなデータの整備を行い、BIツールなどとCRMやMAのデータを連携させ、どのマーケティングキャンペーンが実収益に効果があったかを特定し再現する手助けを行います。

筆者の前職のHubSpotのマーケティングオペレーション担当は、BIツールに非常に深く精通しており、データウェアハウスやツール間でのデータの同期について全て知り尽くしている印象でした。そのデータに基づいたインサイトをマーケティング担当者に共有してくれるため、定量的にROIに貢献しているキャンペーンを知ることが可能でした。

マーケティングオペレーションを導入するステップ

ここでは、マーケティングオペレーションを導入するステップを解説します。

マーケティングオペレーション導入ステップ

(画像出典:slideshare

オペレーションにおける課題の明確化

まず、マーケティングオペレーションチームあるいは担当者が何を達成すべきかを明確にします。最初のステップはマーケティング組織全体の大きな目標を提示することです。その上で、マーケティングオペレーションチームメンバーとともに、解決しなければならない課題を捉えていきます。

たとえば、顧客、ステークホルダー、従業員のニーズを解決するためのマーケティングオペレーション戦略があります。具体的には、メール運用、システム分析、顧客データとマーケティング、ユーザー運用、リードローテーションなどです。

マーケティングオペレーションが管轄する領域は幅広いため、誰を対象として課題から解決まで行うかの優先順位を絞り込むことで、実行可能なものになります。

例:

  • 質の高いリードの獲得
  • より効果的なセミナー集客
  • マーケティングキャンペーンのROIの改善
  • 適切なマーケティングテクノロジーの導入

ToDoを細分化する

目標を達成するために、マーケティングオペレーションのチームメンバーに目標達成に貢献する具体的なタスクを明確にします。さらにToDoを細分化してもらい、実行可能なステップまでに落とし込みます。これにより現実的な計画が立てられるでしょう。また、各チームメンバーがToDoを実行することで、組織的なマーケティング施策が可能になります。

たとえば日本企業でよくあるセミナー集客。この集客がうまくいかない理由に、「望ましいリストを作ることができない」という原因があります。そのような場合、根幹のデータ設計がうまくいっていないことが多く、必要な情報を元にリストを作るためのデータ自体が存在していない、もしくはツール間で正しく同期されていない、などがあります。

CRMを利用している企業であれば、営業側のオペレーションを担当するセールスオペレーションとマーケティングオペレーションが会話を行い、効果的な営業活動に必要なデータは何か話し合います。

そのデータをCRMからマーケティング担当たちが利用するマーケティングオートメーション(MA)やマーケティングCMSツールで実装されるように、正しく同期する必要があります。

成果指標を決める

マーケティング戦略やプロジェクトが成功したかどうかを判断する、測定可能な成果指標を決めます。どのように測定するかも明らかにします。

測定可能な指標があればタスクを遂行していくなかで、プロジェクトの成功の可能性を判断できるようになります。達成したい目標と現実の結果の乖離を明らかになるため、必要に応じてプロセスを改善したり、再現性の高いプロセスを特定しメンバーに共有し業務を効率化できます。

前述したセミナーに対してのオペレーション改善の指標も建て方は様々。一番大きな指標はどれだけROIが改善したか、これらについてはマーケティング部門長、マーケティングオペレーション担当、営業部門長、セールスオペレーション担当が緊密に話す必要があります。

現場レベルであれば、新しいデータ定義で作成されたリストが効率的な結果に結びついているか、非購読数の低下、エンゲージメント率の上昇に寄与しているか、などを確認すれば良いでしょう。

まとめ

近年のマーケティング施策は、テクノロジーの活用が不可欠です。マーケティングオペレーションは企業によって仕事の領域は異なるものの、マーケティング部門のテクノロジーのインフラを整え、データを可視化し、各担当者にインサイトを提供する役割であることは共通しています。

マーケティングオペレーションは、プロジェクトマネージャー、マーケティング部門の専門スタッフが成果を発揮していけるようにバックアップし続ける「縁の下の力持ち」的な存在であり、一見、目立ちませんが収益に大きく貢献します。

世界的にDXが進むなかマーケティング手法も常に進化させていく必要があります。常に効率的なプロセスを追及し、最新テクノロジーをキャッチアップし社内インフラを整備するマーケティングオペレーションは、日本のBtoB企業でも今後必要になっていくでしょう。

マーケティングオペレーションは、新しい領域の職種なため即戦力のある人材を採用するのは一般に難しく、マーケティング部門内でデータマネジメントスキルの高い人材、自社のIT部門、外部企業のデジタルマーケティングのエキスパートなどを採用し育成していくことが重要です。

戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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