プロダクト開発に欠かせない!プロダクトアウト・マーケットインとは?違いと正しい考え方を解説

2022/02/04
プロダクトアウト マーケットイン プロダクト開発に欠かせない!プロダクトアウト・マーケットインとは?違いと正しい考え方を解説

SaaSなどのプロダクト開発に携わる人やマーケティング担当者なら、これまでに「プロダクトアウトではダメ、マーケットインであるべき」「マーケットインはもう時代遅れ」「マーケットインとプロダクトの二元論では語れない」など、多様な意見を目にしたことがあるでしょう。

マーケティングの目線から考えたときも同様ですが、成功するマーケティングや営業活動は常に、買い手目線であることが重要です。当たり前の話ですが、今まで接点がなかった人に対して「(自分よがりに)結婚してください! 」ではなく「(お互いのことを徐々に知るために)今度お茶でもしませんか? 」という、相手の目線にも立った言動が人間関係をスムーズにします。それは、プロダクト開発にしても同様です。

とはいえ、どちらの言説があたっているのか? それ以前に、プロダクトアウト・マーケットインとは具体的にどのようなことを指すのか? など、疑問を持つ方も少なくないかと思います。

本記事では、プロダクト開発に欠かせないプロダクトアウト・マーケットインについての正しい考え方を、事例をもとにわかりやすく解説します。

プロダクトアウト・マーケットインとは

プロダクトアウト・マーケットインとは、製品・サービスを世に送り出す際の起点となる2種類の考え方です。

プロダクトアウトとは

プロダクトアウトとは、企業が新しい商品を開発する際に、すでに持っているリソース(技術、人材、販売ネットワーク)や「こんなプロダクトを開発したい」という思いをベースに、開発する考え方です。

例1:iPhone

iPhone(Apple公式HP)

Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)氏は、iPhoneを世に出すプレゼンの際に「本日、アップルが電話を再発明します。これです」と語っています。

実は、スマートフォンを一番は早く市場に出したのはIBMですが、あまり売れなかったため知られていません。また、iPhone以前、すでにガラケーでネット検索はスムーズにでき、多くのユーザーはそれなりに満足していました。そこに登場したのがiPhoneでした。

実際には後発でありながら、携帯電話の定義を変え、人々のライフスタイルを変化させ、さまざまな業界のプロダクトに影響を与えたのはご存知のとおりです。このように「誰もが予測できなかった革新的なプロダクトを開発できる」のが、プロダクトアウト開発の長所です。

他の例:EV(電気自動車)、ドローン自動運転VR/AR/MR

EV(テスラ公式HP)

(画像出典:https://www.tesla.com/ja_jp/models

 

EV(電気自動車)もプロダクトアウトだと言えるでしょう。一部の人に人気はあるものの、一般人の多くがEV車をぜひ欲しいと言っているわけではありません。むしろ「もし停電が起きたら……」など懸念の声をよく聞くくらいです。

EV開発の根底にあるのは技術の進歩、世界環境への配慮であり(あるいは市場競争戦略のためのルール設定)で、各国の政府やメーカー側が主導して需要を喚起しています。

ドローン自動運転VR/AR/MRなども同じですが、先端テクノロジーについて一般の人はそれほど知識がありません。第4次産業革命といわれたところで、新技術を使った未来がなかなか想像できないため、国や企業主導でプロダクトアウト型の開発が進む傾向があります。

マーケットインとは

マーケットインとは商品を開発する際に、市場のニーズ、顧客の要望を何より優先に考えて開発していく考え方です。「お客様はこんなことで困っている」「このようなプロダクトをお客様は欲しがっている」「お客様ニーズにあわせた売れるプロダクトを創ろう」という発想で開発する考え方です。

例1:キーエンス株式会社

キーエンス社公式HP

 

 

FA機器の総合メーカーキーエンス社は、現場の営業マンによる徹底した顧客ニーズ(製造現場で困っていること、欲しい機能等)のリサーチをプロダクト開発に活かす仕組みを構築し、独自性の高い高付加価値製品を製造している企業です。

工場を持たないファブレス企業であること、マーケットインに徹して顧客に支持されるプロダクトを創ることで高収益体質を構築しており、営業利益率50%以上を継続していることでもよく知られています。営業マンの年収が2000万円を超えることでも有名ですね。

例2:Amazon

AmazonのHP

 

Amazonの企業理念は「地球で最もお客様を大切にする企業であること」です。まさしく顧客視点であり、マーケットイン志向の企業です。

Amazonでは、「いかなるときもカスタマーを起点として考え、行動する。それにより、可能な限り簡単な仕組みを作る。カスタマーからの信頼を獲得、維持するために全力を尽くす」という原則のもと、カスタマーサポート部門が収集した顧客の意見、アイデアをAmazonのプラットフォーム全般に活かし、顧客満足度を向上させ続けています。

プロダクトアウト・マーケットインの発展の経緯

プロダクトアウト・マーケットインは「素晴らしいプロダクトを開発する」「売れるプロダクトを開発する」という目的は同じですが、歴史を振り返ると、その時代のビジネス環境にあった戦略が優先されてきたことがわかります。

【戦後~1960年代】

⾼度経済成⻑時代。物がない時代なので、作れば売れる時代です。詳細にニーズを把握しなくとも海外先進国にある製品・サービスを真似たり、国内向けにアレンジして開発したりするだけで売上げが伸びました。現在の新興国の状況に近いでしょう。

【1970〜1980 年代

基本的な生活必需品が世の中に行き渡り、市場は成熟化し人々の価値観も多様化し始め、個性的な製品・サービスが求められ始めました。SONYのウォークマンが登場したのは1979年です。1980年代は、女性目線の家電、女性向けのプロダクトが増えるなど、市場のニーズにフォーカスしてプロダクトを出していく「マーケット・イン」という概念が生まれた時代です。

【1990~2000年代

バブルが崩壊しても、すでに市場が成熟化しており物あまりの時代であり、市場ニーズに沿うマーケットイン戦略が継続して重視されました。企業も人も「安くて良い物」を志向するようになります。グローバル化が急速に進んだ時代でもあります。

多くのメーカーが工場を海外移転し、製造コストを削減します。100円ショップが成長するなど、いわゆる価格面での顧客ニーズに応える企業が増えました。

一方、この時代に米国IT業界においてはApple、Google、フェイスブックなど革新的なプロダクトアウト型のサービスを提供する企業が増えていました。日本でも同時期にベンチャーブームが起き、一部革新的なプロダクトアウト型のサービスも登場しましたが、世界的にスケールするまでは成長しませんでした。

【2010年代~現代】

「マーケットインが正しい」「プロダクトアウトが正しい」という極端な言説は少なくなり(存在はしますが)、「両方大事である」という言説が増えてきています。「デザイン思考」「ネクスト・マーケットイン」など、マーケットイン・プロダクトアウトを包括するような新しい概念も登場するなど、さまざまな理論が混在している状況です。

プロダクトアウト・マーケットインの2つは対比されるべきか?

プロダクトアウト・マーケットインは対比される考え方でしょうか? 筆者は、単純にこの2つの思考は、考える順番の違いだと思っています。

プロダクトアウトの成功例のiPhoneであっても、登場タイミングを見る限り、市場調査もしっかり行われていたことは疑いありません。同様に、プロダクトアウト型といわれるケースでも、マーケットをまったく無視してローンチした製品・サービスはおそらく稀でしょう。

考える順番が違うこと、そしてプロダクトアウト・マーケットインのバランスです。

たとえば、創業者がエンジニアの企業はプロダクトアウト寄りかもしれません。営業系の創業者だとマーケットイン思考の傾向が強いかもしれません。

プロダクト開発者やマーケティング担当者は、自社の開発傾向を理解し、プロダクトアウト・マーケットイン双方の長所・短所を知って、開発に活かすことがポイントです。

プロダクトアウト・マーケットインのメリットとデメリット

ここでは、それぞれのメリットとデメリットを解説します。

メリット・デメリットについて

プロダクトアウトのメリットとデメリット

プロダクトアウトは創造性豊かな創業者、開発者がいる企業に適している開発手法です。また、蓄積されたリソース、ナレッジなどが豊富な大手企業にも適しています。

メリット

  • 顧客が予想もしなかったような革新的なプロダクトが生まれやすい
  • 独自性がある高付加価値プロダクトが開発可能
  • 自社リソースをもとに開発できる

デメリット

  • 革新的なプロダクトを開発できても市場に浸透させるコストは高い
  • 誰もが必要としないプロダクトを作る可能性もある
  • ユーザーに不要な余剰な機能をつけすぎることがある
  • 市場をよく捉えておらずローンチのタイミングを大きくはずすケースもある

プロダクトアウトでは、開発者が優秀であれば素晴らしい製品になりますが、顧客の声を聞かないため、独りよがりなプロダクトになるリスクもあります。「うちの会社は技術者が作りたいものを作って市場をみない……」と現場がなげくケースもあり、やはりバランスが大事です。

マーケットインのメリットとデメリット

マーケットインは顧客視点に立ち、顧客のニーズ(欲求、課題)を満たすことを目的にプロダクト開発します。市場の声をプロダクト開発に生かす健全な思想ですが、こちらも長短があります。

メリット

  • 市場調査をしているので一定の売れ行きは確保しやすい
  • 市場調査の段階で新たなマーケットを発見できることがある
  • 顧客満足度の高いプロダクトを開発できる
  • 企業が思いつかない顧客のアイデアをもとに開発できる

デメリット

顧客、見込み客の発想が必ずしも万能とは限りません。特に革新的な技術を活かしたプロダクトとなると、ユーザーはなかなか想像できないので、市場調査をしてもあまりニーズやヒントを得られない可能性があります。

  • 顧客の想像を超えた革新的なプロダクト開発は難しい
  • 競合他社と似たプロダクトになる可能性がある
  • コモディティ化しやすく価格競争になりやすい

このように、プロダクト・マーケットインのどちらかに偏るとメリットだけでなくデメリットもでてきます。一度、自社のプロダクト開発がどちらかよりかをチェックして、2つの視座で開発を考えるようにしましょう。

SaaS BtoB企業が気をつけるべきこと

SaaS企業は歴史が浅いので、プレイヤーもベンチャー企業、スタートアップ企業が中心です。アイデアや技術力がある創業者が多いためプロダクトアウト思考の開発も可能ですし、組織が小さいため柔軟に体制を変えやすく、マーケットイン戦略もとりやすいでしょう。

ここでは、SaaS BtoB企業がプロダクトアウト・マーケットイン戦略をとる際に気を付けるべきポイントを紹介します。

マーケットを正しく選ぶ

マーケットイン戦略をとる場合、前提となるマーケットを正しく選択することが重要です。正しい選択とは、自社の技術力を活かせて、自社が営業しやすいエリア、業界、企業層を市場にすることです。

なぜならいかにニーズがわかっても、そのニーズに応える技術力や営業力がなければ、作りよう、売りようがないからです。あらかじめ自社に適した市場をセグメンテーションして、その上でニーズを収集することで、売れるプロダクトを開発しやすくなり、ローンチ後の営業活動もスムーズになります。

セグメンテーションとは

価格を安くしすぎない

近年の日本の産業界全体に言えるかもしれませんが、顧客の出せる金額を想定してプロダクトを開発し、高品質なプロダクトを低価格で提供し、顧客から絶大な支持を受けているのに、あまり収益が上がらない課題を持つ企業は少なくありません。

SaaS起業家の多くは、素晴らしいプロダクトを創りたいという思いが強いためか、価格戦略をそれほど真剣に検討していないことがよくあります(もしかしたら、あまり考えたくないのかもしれません)。

しかし、SaaSの月々の価格は千円単位の低価格。しかも、必ず一定の解約者が出ます。損益分岐点はかなり先にあるため、安くしすぎてしまうと延々赤字のままになる可能性があります。

マーケットイン、顧客起点で考えるということは何でも顧客に合わせるという意味ではありません。安くて良い品をつくるために下請け業者、従業員の給与にしわ寄せがいくことも多いのですが、結果的に国の消費が伸びなくなり負のサイクルになっていることもよく指摘されます。

株式会社はステークホルダー(株主、取引先、従業員、地域社会等)に適正な利益分配をすることで、社会に貢献できます。そのためには、適正な価格設定を行うように意識しましょう。

開発時だけでなく常にマーケットイン思考を持ち続ける

コロナ禍でSaaSは一気に多くの企業に普及しました。ITリテラシーが高くない従業員の多い企業も、急ごしらえでテレワークを導入したのが2020~2021年だったと言えるでしょう。

業界としては追い風だったわけですが、2021年6月のLayerX社のSaaS7導入企業のアンケートでは70%以上がSaaSの操作の難しさを課題としてあげています。

(LayerX社)アンケート結果

(画像出典:https://layerx.co.jp/news/pr210622/

70%という数字はかなりの割合です。企業が勢いでSaaSを導入した時期はすぎて、2022年以降はある程度の知識をもってSaaSを選び始めます。おそらく切り替えも多くなるでしょう。

現状の顧客ニーズは、「新たな機能が欲しい」ではなく「使いやすくしてほしい」であると理解しましょう。おそらく今後、顧客は機能面と同様にベンダーのサポート体制、機能の改善スピードなどを重視していきます。売ったあとこそ、マーケットイン思考でサービスを改善し続けることが、SaaSを切り替えられるか継続してもらえるかの分岐点になるでしょう。

まとめ

BtoB企業とは、かけはなれて感じるかもしれませんが、例えばラーメン店で「〇〇にこだわる唯一無二のラーメン店」「ご当地ラーメン」など、店主が出したい味にこだわって経営しているラーメン店はプロダクトアウト型です。根強いファンを持っています。

一方、特別美味しくはないものの、そこそこの味で価格も手頃でビジネスマンのニーズに対応したラーメンを提供する「ラーメン日高屋」などの大手チェーンは、マーケットイン戦略です。ボリューム層のニーズに合わせて売上げを上げています。セグメンテーションも素晴らしいです。両方とも、自社が届けたい顧客層に届けたい味を提供して、目標とする売上げを出しているのであれば成功と言えるでしょう。

ただし、美味いラーメンを作るには職人の腕が必要なように、プロダクトアウト型はそれなりのリソース(企業なら優れた開発力、発想力にすぐれた人材)などが必要です。そのため、リソース豊富な大手企業はプロダクトアウト戦略をとる傾向があります。リソースがあまりない中小企業の場合は、どちらかというとマーケットイン戦略をとる傾向があります。

とはいえ前述のように、プロダクトアウト・マーケットインは、あくまでどちらが先か、どちらに比重を置くかの違いです。1つの視点に偏りすぎず、2つの視座を持つことが素晴らしいプロダクト開発につながります。

戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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