デマンドジェネレーションとは「Demand(需要)」と「Generation(創出する)」を組み合わせたマーケティング用語で、顧客を創造する一連のアプローチのことを指します。
インターネットが世界に普及し、オンライン上で世界中の見込み客との接点を持てるようになった今の時代、また、デジタルツールが大量に存在する今の時代、デマンドジェネレーションはマーケティング部門が戦略的、長期的に取り組むべき最重要事項のひとつだと言えるでしょう。
本記事では、BtoBマーケティング関係者が知っておくべきデマンドジェネレーションの基本、始めるタイミング、戦術について解説します。
デマンドジェネレーションとは、マーケティング戦略において新しい見込み客との接点を創り出し、信頼関係を醸成し、製品サービスの購入を検討してもらい、購入後も取引を長く続けてもらうための一連のアプローチを指します。
具体的にはマーケティング戦略、ペルソナを設定し、各マーケティング施策(インバウンド・アウトバウンド)を実行。さらに効果を検証し改善していくPDCAを回し続け、見込み客の需要(企業にとっての営業機会)を創り出していくことです。
日本の場合は、これまで営業部門がデマンドジェネレーション領域の一部(オフラインでの営業機会の創出)を担ってきたことも多く、まだ多くの企業のマーケティング部門にとって、ノウハウを構築できていない領域かもしれません。
日本で1997年からBtoBマーケティングに携わり、さまざまな業界の大手企業にマーケティングサービスを提供してきたシンフォニーマーケティング株式会社の庭山一郎氏は、「日本の企業のマーケティングは『リサーチ』と『企業ブランド』については欧米ともあまり遜色がないものの、売上に直接貢献する案件創出の領域(デマンドジェネレーション)がまだあまり根付いていない」と分析しています。
また、シンフォニーマーケティング株式会社の庭山氏も「日本企業が業績を上げるためには、デマンドジェネレーションを担当する組織『デマンドセンター』がどうしても必要」と語っています。
デマンドジェネレーションとはあくまで概念であり活動の総称。個別の施策をさすものではないので、ときどきの環境変化で重要マーケティング施策は変わっていきます。
ご存じのとおり2020年にはCOVID-19が発生し、多くの企業が影響を受けました。米国MarketingChartsの調査によると、BtoBマーケティング担当者は、デマンドジェネレーションの予算を、イベントや他活動からの予算の再配分により維持していました。
デマンドジェネレーションの予算を増やした企業が、予算を減らした企業の2倍以上もあり、その大きな動機は「収益を重視していること」です。デマンドジェネレーションの目的は需要創出。売上げ、収益へ直結している領域のため経営環境がどのように変化しても、目的からぶれずに施策を柔軟に変えたことがうかがえます。
なお、マーケティング担当者が2021年に予算を増加させるチャネルと戦術の上位にあげているのは「アカウントベースマーケティングプログラム(ABM)」「高品質なリードプログラム(レイトファネル、HQL/SRL)」「企業ウェブサイトでのインバウンドマーケティング」「メールマーケティング」です。戦術のトレンドもどんどん変化していくでしょう。
日本企業は、高度経済成長期や80年代、90年代は高機能の製品サービスを製造していれば買い手が購買をしてくれる経済が上昇基調の時代でした。しかしながら、製品機能や価格帯で競争力のある途上国企業が同様の製品サービスを製造するようになり、相対的に値段の高い日本企業の製品は国際的な競争力を失いました。
同時に、海外勢が日本の市場を積極的に攻めてきており、日本でも海外製品を選択する顧客が増加しました。
近年はインターネットの登場、スマートフォンの爆発的な普及、Web上のメディアやプラットフォームが増加。以前のように売り手しか抱えていなかった情報に買い手が簡単にWebでアクセスできることが可能になり、買い手が自社の課題に基づいた製品サービスを選ぶことが可能になりました。
見込み客の購買行動が複雑化したこと、トレンドの移り変わりも速くなったことに比例して、マーケティング施策の難易度も増しました。広告、SEO、展示会、ブランディングなどそれぞれの専門性が高くなり、各施策に全体性をもたせる必要が出てきたため、マーケティング施策を一元管理するデマンドジェネレーションの概念がより重要に変化しています。
このような外部環境の変化に対応する必要性からも、企業の購買担当者は売り手側との信頼関係を大切にしています。BtoB企業の購買データを見ると、初めて接点を持った売り手企業から製品を購入するパターンが最も多いというデータがあり、マーケティング担当者が一貫したデマンドジェネレーションを行う重要性が増しています。
また、マーケティングツールを活用することでオンライン上の施策の検証が行えるようになった点も影響しているでしょう。施策の成果がデータで把握できるため、よりよい効果を出すために改善できるようになりました。
2019年にMarketingChartsが公表したデータ(Demand Gen Reportのデマンドジェネレーションベンチマーク調査)では、BtoBマーケティング担当者のデマンドジェネレーションの優先順位の1位は「コンバージョンレイトの改善」、2位が「マーケティング効果の測定・分析能力の向上」です。
リード獲得コストを業界平均と比較することもできます。以下は2016年のHubSpotのデマンド・ジェネレーション・ベンチマーク調査による業界別のリード一人あたり獲得コストです。海外の数値のために直接の参考にはなりませんが、比較対象の一つとして覚えておくこともありかと思います。
これらのデータが示すようにデマンドジェネレーションのデジタル化は進んでいます。デジタルに非常に強いHubSpotのデータが見せるように(筆者は元HubSpotの日本マーケティングの責任者)、オフラインの施策と比較して、デジタルでのデマンドジェネレーションの獲得単価は低いことが理解できるかと思います。
前述したように日本企業や日本市場において上記のようなベンチマークが成立するか?と言われると100%成立するとはいえません。また、BtoB業界によっては、レガシー業界と言われるようなまだまだデジタルに移行していない業界が存在したり、BtoB SaaSであればVerticalと言われる領域で一部の業界はまだまだデジタル化していません。
そのような場合は、デジタルとオフラインを混ぜ合わせたデマンドジェネレーションの戦略を持つことが大切であることを念頭においてください。
弊社はBtoB SaaS企業やIT企業に特化していることもあり、その視点からのお話をさせて頂くと、デマンドジェネレーションを始めるタイミングは、プロダクトマーケットフィット(PMF)をした後と言えるでしょう。
プロダクトマーケットフィット(PMF)とは、製品サービスが市場に受け入れられ(ニーズがある状態と判断できる)状態をいいます。多くのBtoB企業であれば、既存製品があり売上も立っていることでしょうから、PMFをクリアしているはずです。詳しくはこちらの「プロダクトマーケットフィットを見極めるには?」という記事をご覧ください。
一方で、BtoB企業の新規事業やBtoB SaaS企業で新しい挑戦をする企業でシード状態であれば、PMFの前段階であることが多くあります。PMF前段階はデマンド(ニーズという方がわかりやすいかもしれません)があるかどうか不確約状態のため、ある程度のマーケティングコストを投下する必要のあるデマンドジェネレーションを行うタイミングではありません。
この段階ではあくまで、プロダクトマーケットフィットを行うことにマーケティング活動の主軸をおいてください(専任マーケターは必要ないかもしれません)。
デマンドジェネレーションを行うタイミングは、こちらの記事で紹介している「Go-to-Market-Fit」の後期のタイミングと、「Growth and Moat」のタイミングです。
「Go-toMarket-Fit」では、マーケティング活動で注意すべき点であるスケーラブル、かつ測定可能なマーケティングチャネルを用い、試行錯誤しながらROIの良いチャネルを見つけるために活動を広げ始める段階。
この段階では、個人のツテや身内以外のアーリーアダプターを買い手として獲得する必要があるため、デマンドジェネレーションを行い始めることが欠かせません。
ただし、この段階の前半ではチャネルなどが定まっていない段階であり、後述するようなデマンドジェネレーションを構成する3要素「リードジェネレーション(見込み客創出)」「リードナーチャリング(見込み客育成)」「リードクオリフィケーション(見込み客の絞り込み)」の流れを全て構築することはまだまだ難しい状況です。
そのため、効果的なチャネルが見つかってから本格的なデマンドジェネレーションの準備に入るのが良いでしょう。
「Growth and Moat」では、買い手をさらに広げるためにマーケティングと営業の連携が必要になり、デマンドジェネレーションを構成する3要素「リードジェネレーション(見込み客創出)」「リードナーチャリング(見込み客育成)」「リードクオリフィケーション(見込み客の絞り込み)」を作り上げ、活動を強化していきます。
この段階に来ると確実にどの企業でもデマンドジェネレーションが必要となります。詳しくは、こちらの記事をご覧いただけます。
デマンドジェネレーションは「リードジェネレーション(見込み客創出)」「リードナーチャリング(見込み客育成)」「リードクオリフィケーション(見込み客の絞り込み)」の3つの段階で構成されています。
繰り返しになりますが、あくまでデマンドジェネーションは概念であり、具体的なマーケティング施策を指す言葉ではありません。そのため、デマンドジェネレーションで行うべき施策は自社の顧客像によって様々。オフライン重視の企業もあればオンライン重視の企業もあります。あくまで、自社のペルソナやカスタマージャーニー次第であることに留意ください。
リードジェネレーション(見込み客創出)とは、それまでまったくご縁のなかった潜在的な見込み客との接点を創り出すフェーズです。広告、展示会、ウェビナー、オウンドメディア、SNSなどさまざまなマーケティング施策で見込み客を惹きつけます。オフラインであれば営業が電話でアプローチし名刺交換することもリードジェネレーション領域に含まれます。
リードジェネレーションは大量のリードを集めるだけでなく、質の高いリードを確保することを目的とします。そのためにはペルソナとカスタマージャーニーを作成し、自社の見込み客に出会える適切なチャネルを選定することが重要です。
一般に、BtoB企業の購買担当者はニーズが顕在化するかなり早期から「自社に役立つ可能性があるかもしれない」といった理由で情報収集する傾向があるため、この時点でのリードのニーズは興味があるという程度のあいまいとしたものです。リードの学びにつながり、自社の抱える課題に気づいてもらえるような啓蒙的なコンテンツを提供し、リードジェネレーションを通じて見込み客を獲得します。
リードナーチャリング(見込み客育成)とは、リードジェネレーションで創出したリードそれぞれの購入意欲にあわせた情報提供を行い、信頼関係を築くとともに製品サービスへの関心を持ってもらうフェーズです。
リードナーチャリングに移行するときにはリードの重複をなくすなどスクリーニングを徹底し、属性によってセグメントします(リードが大量の場合)。その上で、ファネルの購買モデルにそって、情報を提供しながらリードとの信頼関係を醸成していきます。
MA(マーケティングオートメーション)を活用している場合は、Web閲覧履歴などをもとにしたスコアリングも参考にしながらパーソナライズされたコミュニケーションを試みます。企業によっては電話やメールなどのインサイドセールスでアプローチします。
特にMAのメール機能を用いる場合は、前述の大量のリストを獲得し続ける入り口であるリードジェネレーションの仕組みが機能しているかが成功の肝になります。
その上で、リード状態に合わせてコンテンツ(情報)を見つけてもらうために、カスタマージャーニーにそって各チャネルにおいて、バーチェスファネルのTOFU(興味関心)、MOFU(検討段階)、BOFU(購入段階)それぞれのステージに適した段差設計のあるコンテンツを提供します。
リードナーチャリングをどの部署が担当するかは、企業の組織体制によりますが、マーケティング部門と営業部門が分業している場合、ホットリードを営業に引渡して商談が成約しなければ再びマーケティング部門がリードを担当し、引き続き情報提供を行うこともあります。また、顧客化後も継続してナーチャリングを行う企業もあります。
こちら記事「BtoB企業がリードナーチャリング(見込み客育成)を成功させるためのステップ」で詳細をご覧いただけます。
リードクオリフィケーション(見込み客の絞り込み)とは、信頼関係が醸成されてきたリードに対し、無料トライアル 、無料デモンストレ―ション、期間限定のキャンペーンなどを案内することでリードの関心度を測定し、見込み度の高いホットリード(有望見込み客)を絞り込んでいく段階です。
インサイドセールス部門がある場合、担当者が決裁権者か、購入意欲があるかを見極めて商談のアポイントを取得し、営業担当に引き渡します。
と、言葉で説明するのは簡単ですが、リードの角度の見極めは業界はもちろん、製品・サービスによって適切なタイミングが異なります。もっと言えば、個々の営業マンによっても異なります。そのため、ホットリード(有望見込み客)の基準をあいまいにしたまま引き渡しを行うと営業部門とマーケティング部門でしばしば見解の相違から軋轢が起きがちです。
事前に両部門でSLAを交わし、ホットリードの条件を書面で定議し共通認識を持つことが必要です。
また、一般には通常の営業活動に比べ、マーケティング部門が創出した案件は、当初の見込み度合が低目です。2018年のHubSpot社の調査で以下のデータが出ています。経路も違えば人の関わりのあるなしという大きな違いがあるので差が出るのは当然です。営業部門にはこの差異を踏まえてアプローチしてもらうことが望ましいでしょう。
最初から購入見込みがある見込み客の割合
(参照:HubSpot)
デマンドジェネレーションとは、営業機会を創出するマーケティング活動全体の総称であり、概念としてインバウンド型マーケティングとアウトバウンド型マーケティングの2つに大きくわかることができると思います。
ここでは簡略的にインバウンドマーケティングとアウトバウンドマーケティングという呼び方をさせて頂きます。
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弊社はBtoB SaaS 企業を中心に、インバウンド型マーケティングの支援を提案することが多いため、本記事ではインバウンド型マーケティングの施策や考え方を中心にご紹介させて頂きます。
ここでは、デマンドジェネレーションで活用できる戦術を一般化するために、便宜上デマンドジェネレーションを、ブランドアウェアネス(認知の段階)、コンシダレーション(検討)、リテンション(顧客化後の段階)の3フェーズに分けて紹介します。
デマンドジェネレーションをモデルにした、初期-中期のDemand Waterfall(デマンドウォーターフォール)では、その時代背景などからカスタマーリテンション(顧客維持)のことを考慮していません。
※デマンドウォーターフォールとはファネルをBtoBのマーケティング向けに具体的な行動に落とし込み、問い合わせがあってからの受注までのプロセスを可視化したものです。問い合わせ→マーケティング部門が見込み客選別→営業担当者が確度の高い見込み客を選別→受注までのプロセスであり、売上から逆算して行動プロセスごとの目標を決める際に役立ちます。
こちらの記事で「ファネルとは?BtoB企業のマーケティング担当者と営業担当者が知っておくべきこと」を詳しくご覧頂けます。
今回あえて3分割にしてカスタマーリテンション(顧客維持)を含めているのは、昨今のビジネスではサブスクリプションモデルが増加しており、カスタマーリテンションという要素が非常に大切であるためです。
また、弊社のお客様にSaaS企業の方達が多く、ご相談内容がデジタルに寄っているため、リテンションを含めた便宜上3分割かつデジタル視点で解説をさせて頂きます。
自社の製品サービスや社名を知ってもらい需要を創出するためは「潜在見込み客に自身の課題について具体的に気づいてもらう」必要があります。そのためには、課題軸のコンテンツを作り上げ、適切なチャネルにおいて、継続的に情報発信して見込み客を惹きつける仕組みを作り上げなくてはいけません。
BtoB企業でNikeのように一般社会で知られている企業はまず存在しておらず、見ず知らずの買い手が「株式会社〇〇〇〇」のように直接検索してくることはほとんどありません。
検索をしてくる人は業界関係者、ライバル企業、すでに繋がりがある見込み客や顧客に限定されるのがほとんど。当然、それら以外の人たちに自社を見つけてもらわないと事業拡大を見込むことができないのは想像に難くありません。
そのため、たとえば給食サービス事業者であれば「株式会社〇〇〇〇 サービス価格」や「社食 福利厚生」と検索する人よりもはるかに多いと想像ができる「従業員満足度を上げる方法」という情報を求めている人たちと関係を作る必要があります。このような段階をブランドアウェアネスを作ると呼びます。
では、そのような状態のブランドアウェアネスで一般的に有効と言われる欠かせない戦術(打ち手)を見ていきましょう。
ブランドの第一想起を獲得する前に、潜在的な見込み客がどのような人々かを明確にする必要があります。そのためには、バイヤーペルソナとカスタマージャーニーの作成が不可欠。どのような人物が自社の製品サービスに関心を持ち愛用してくれるかを、自社のバイアスを取り除き、正しく把握することをまずは最初に行いましょう。
ペルソナ策定やカスタマージャーニー策定に苦戦される企業は多いものです。というのが、自社のビジネスを行っていると自社が訴求したい内容が自社関係者の頭の中にあり、その情報ベースでペルソナやカスタマージャーニーを作成してしまうことが多いからです。
商流を考えると想像がつきやすいのですが、一般的な社員の多くが接点を持つお客様は既に自社のことを知っている状態の方がほとんど。セミナー参加者、自社イベントにくる方、問い合わせをする方々...…など。
そのため、既に具体的な機能やサービスに直結するワード「社食 福利厚生」などをコンテンツの主軸においてしまいます。ただし、前述の通り「従業員の満足度を上げる方法」を考える人の方が「社食 福利厚生」を考える人よりもはるかに多く、このようなブランドに直結しない教育コンテンツの存在がデマンドを作り出す上で欠かせません。
そのためデマンドジェネレーションを根本から行いたい方は必ず、自社のバイアスを取り払った状態でペルソナやカスタマージャーニーを作ることからまず始めてください。
2019年の米国のAscend2の調査によると、もっとも効果的なリードジェネレーションの1位はソーシャルメディアマーケティング(SNS)です。
SNSがブランドアウェアネスの段階に有効なのにも明確な理由があります。まず、ブランドアウェアネスの段階の人たちは、課題軸のソリューションを明確かつ能動的に探していない人たちが多い(そのように定義しているとも言える)ので、ウォールに自分の興味のある情報が流れてくるSNSの構造と相性が良いという点です。
また、SNSは同様の価値観やコミュニティを作る場としての構造があり、課題軸のコンテンツがエンゲージメントされたときに、同様の属性の人たちに一気に波及しやすい点があります。
たとえば、私の前職であるHubSpotの本社側(米国)アカウントでは、SNSに流すコンテンツは必ず課題軸のコンテンツであることが必要とされており、会社のPRニュースや別メディアとのタイアップ記事の紹介などはありませんでした。
これはペルソナの重要性を前段落でお伝えした通りの理由で、課題軸でしか情報を探すことができない人たちに見つけてもらうことが大切であることに加え、受動的な人に対してSNSがアルゴリズムでレコメンド(オススメしてくる)をしてくる特性をうまく掛け合わせているからです。
世界のSNSアクティブユーザー数は増え続けており一つの国の人口を上回るSNSも少なくありません。SNS広告はもちろん、企業アカウントから投稿する内容も企業イメージ、製品の品質、カルチャーと関連づけられるため、長期的に続けると良いイメージを多くの人に持ってもらうことができるでしょう。
訪問者を惹きつけるにはブログ、オウンドメディアも有効。上記のSNSと比較して、能動的に検索をしている人たちを惹きつけるために用いることが多いのですが、どちらにせよブランドアウェアネスでのコンテンツの軸は課題であることは同じです。
見込み客が気になるトピックについて記事を書き、そのコンテンツを検索エンジンに最適化させることで、サイトに訪問者を有機的に引き寄せることができます。常にブログが更新されることで見込み客にブランドを認知してもらえるようになるでしょう。
また、ビジネスブログやオウンドメディアによって記事を作っていくことにより、サイト構造がSEO的に強化される可能性を秘めています。ブログやオウンドメディアで焦点を浴びることが多いのはコンテンツSEOですが、サイトのドメインという視点からのドメイン強化の視点でも、コンテンツ強化が必要という言い方もできます。
加えて、ペルソナの求める情報を記事コンテンツなどにすることによって、被リンクを獲得することや、業界での「ソートリーダーシップ」を確立することも可能。
ブランドアウェアネスの段階にて、ビジネスブログやオウンドメディアを構築する際はコンテンツSEOだけを意識したコンテンツ作りは絶対にやめ、ペルソナに対して役に立つコンテンツを作る一環としてのコンテンツSEOであることを念頭においてください。
BtoCの購買行動の始まりのほとんどは広告起点で始まるのですが、BtoBでも広告起点から購買行動が始めることは多少あります(多くはない)。
この理由も簡単で、課題に気づかないとBtoBの買い手はそもそもアクションをしません。つまり、BtoCであれば衝動買いや、友人が持っているブランドを見て、単純な「欲しい」という感情のもと購買行動を起こしますが、BtoBでその購買行動が発生する確率は非常に低いです。
また、BtoCとは異なりBtoBは専門メディアなども少なく広告出向先メディアが非常に少ないなどの理由もあります。
多くのBtoB SaaS企業で見られるのが、この段階の人たちに対して積極的に問い合わせや資料請求の広告を出してしまう広告出稿の仕方です。前述したように、このような状態の見込み客は、まだ悩みや課題に気づいていない潜在見込み客。情報収集のために能動的にGoogle、受動的にSNSを回遊しています。
つまり、潜在見込み客のコンテキスト(文脈)にあっていないことが多く、出すべき広告であればブランドアウェアネス向けのコンテンツに対する広告、フォーマットとしてネイティブアドなどとすることの方が相性が良いわけです。
Webサイトに入門ガイド、eBook、ビデオほかダウンロードする価値のあるコンテンツを用意することで潜在見込客の情報を獲得することが可能になります。これまで前述してきた打ち手は、あくまで潜在見込み客(製品サービス名を思いつくことができない状態の見込み客)を惹きつけるための打ち手でした。
この潜在見込み客と接点を持たないことには、次の段階のコンシダレーション(検討の段階)へのアクションを企業側から取ることは難しく、これらのトリガーコンテンツは非常に重要な役割を果たします。
ダウンロードの際は専用のフォームにメールアドレス、氏名などを入力してもらうことで見込み客とのつながりを獲得します(この時点で潜在見込み客がいわゆる「リード/見込み客」となります)。
常に新しいリードを誘致するために提供するコンテンツにバリエーションを持たせる必要があります。いつもホワイトペーパーや事例を提供している場合は動画なども検討しましょう。
自社の製品サービスを課題軸から知ってもらうブランドアウェアネスの次は、実際に自社のことを知ってもらう番です。BtoB企業においては、購買担当者が製品サービスを購入するときには一般的に稟議や稟議に準ずるような形式をとります。
稟議書には製品サービスなどを導入することによって、期待できる効果、事例、時間軸、製品サービス提供会社の情報などを書き込む欄が存在しています。
そのため、BtoBの担当者はそのテーマや製品サービスに対して十分な知識を保有し、エビデンスとなるデータや事例をもとに関係者を納得させるレベルまで業界情報や製品サービスに詳しくなっていなければなりません。
それゆえ、コンシダレーションの段階では、ブランドアウェアネス向けのコンテンツとは異なり、課題を解決する方法として自社の製品サービスを提案する姿勢でコンテンツを作る必要が出てきます。
リードナーチャリングの王道の方法として利用されるようになってきたメールマーケティング。獲得した潜在見込み客に対して、教育的なコンテンツと自社の事例、強みなどを明確に理解してもらえるコンテンツを、ペルソナのタイミングに合わせて送ります。
セミナーやウェビナーなどのフォーマットも、コンシダレーションの段階にとても好まれる打ち手でもあるため、メールマーケティングのコンテンツとして届けるのも良い方法です。ここで注意するのが、メールの内容はあくまでコンシダレーションの段階むけのコンテンツのみに絞り込むこと。
失敗するメールマーケティングは共通して、リストセグメントがカスタマージャーニーにそって作られていない、コンテンツをごちゃ混ぜにして配信する、などの共通点があります。当たり前なのですが、間違った人に対して関係のないコンテンツを送ることは、郵送で間違った住所に手紙を送るようなもので、多くのオプトアウトを生み出してしまいます。
当然ながらエンゲージメントを期待することはできませんので、必ずペルソナとカスタマージャーニーにそってリストを作り、コンテンツを絞り込んで、コンテンツをメールで届けるようにしましょう。
よくある質問(FAQ)とは、他の人が以前に質問したり、営業中にたびたび確認されることがわかっている質問、つまり見込み客が気になる点です。検討段階に入ったリードがよく閲覧するページでもあります。FAQページが充実しており、各質問に論理的で簡潔な回答が記載されていればリードは安心感をもって検討を進めることができるでしょう。
ビジネスブログやオウンドメディアと異なる点が、FAQの具体的な製品サービスに関するコンテンツは検索クエリが存在しないと見なすことができることです。
ブランドアウェアネス向けのビジネスブログやオウンドメディアに惹きつけられる人たちとはカスタマージャーニーの位置が異なるため、FAQをのせるウェブページやドメインなどは、ビジネスブログやオウンドメディアからは完全に切り離すべきで、異なるサブドメインやサブディレクトリにおさめることをおすすめします。
検討段階に入ったリードが気になるのは製品サービスの詳細情報や価格、提供体制などです。Tech TouchやLow Touchが多くなったとはいえ、BtoBの製品サービスの購買プロセスを完全に自動化するにはまだまだいたりません。多くの買い手はできれば営業マンに話したり、問い合わせる前におおよそのトータル予算を知りたいものです。
予算感、想定価格、製品サービスの詳細資料に対してのイメージは企業によってかなり差があるため、見積もりフォームを用意しておくとベンダーにとっても問合せ対応における作業を減らすことができます。
検討のテーブルに上がるための必要要素となりうるコンテンツを、コンシダレーション段階でのトリガーコンテンツとするようにしましょう。
デマンドジェネレーションにおいてリードの獲得は何よりも重要ですが、契約以後の段階に満足してもらった上で、さらなるデマンド(需要)を創出することも重要事項です。
近年の顧客購買モデルは、ファネルから循環モデルに移行しています。既存顧客の満足度はレビューサイト、SNS等での評価と連動しているため、リテンション施策は、デマンドジェネレーション施策の一つになっていると言えるでしょう。
特に、サブスクリプション型のSaaSビジネスであれば、リテンション施策は解約を抑えるだけではなく、中長期的な機能拡張などによりアップセルやクロスセルを生みます。下記はあくまでイメージですが、BtoB SaaS企業などであれば、デマンドジェネレーションの中にリテンションが含まれていることを理解しておいて下さい。
長くからマーケティングに関わっている方であればリレーションシップマーケティング、最近っぽくいうのであればカスタマーマーケティングがこの段階の施策や戦術にあたります。
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マーケティング関係者ならご存じの「1:5の法則」のとおり、既存顧客からの売上げにかかるコストは新規開拓のわずか1/5。しかもSNS社会。完全な売り切り型ビジネスモデル以外の企業は力を入れるべき施策です。
一度接点ができた顧客エンゲージメントの向上を目指すには、顧客体験を向上させる必要があります。顧客体験と業績の相関関係については2016年にForresterがさまざまな角度から分析した詳細レポート(英語)を出していますのでご覧ください。
素晴らしい新製品・サービスがリリースされたり、既存のサービスに機能が追加されたり、無料のサービスが登場したら速やかに既存顧客に周知しましょう。この段階ではその際に長く愛用していいただいている特典として割引を付与することも効果的です。
ツールを活用してカスタマーマーケティングをソーシャルメディア領域にまで拡張できれば、SNS上で顧客の問題をより素早く察知して対応できるので、より良いブランドイメージを維持することができるでしょう。
定期的なイベントの開催、キャンペーンなどで顧客に感謝の気持ちを示すことも顧客エンゲージメントを高めることにつながります。
多くの顧客と良好な関係性を維持し続けるためには、ユーザーコミュニティを運営もしくは支援することも有効です。
ユーザーコミュニティから製品・サービスについてのフィードバックを積極的に募り、開発に活かしていくことで品質改善につながります。自分たちの意見が大切にされたことで顧客側がよりポジティブな感情を持ち、ブランドに愛着を持ってもらえることも期待できるでしょう。
また、たとえばSaaSなどのように活用する側に多少の専門知識が必要なサービスは、使いはじめた当初はわからないことが多いもの。気軽に質問できるコミュニティがあると、挫折せずに使い続けられる人が増えるでしょう。ユーザーコミュニティがあることによって企業と顧客、顧客同士のつながりが強くなるため、離脱していく顧客を少なくすることも期待できます。
NPSは1~10の範囲で「親しい人に製品サービスを勧める可能性」を質問する簡単な調査です。NPSは顧客ロイヤルティを測る有力な指標の一つであり、業績との相関関係が高いといわれます。
顧客を3カテゴリ(推進者9~10、中立者7~8、不支持者1~6)にわけ、以下の式でNPSスコアを出します。
NPSスコアを競合他社と比較することで、自社顧客の満足度の水準を知ることができます。また、NPSの結果で自社ブランドの推奨者、企業にとってもっとも大事にすべき顧客が誰かわかります。
たとえば、推奨者に顧客インタビューを依頼すれば、製品サービスのポジティブな面だけでなく、改善の余地ある点についても率直な意見を聞くことができるでしょう。顧客事例への登場を依頼しても受けてもらいやすいかもしれません。ペルソナ設定の参考にもなります。マーケティング施策をよりよいものにするためにNPSの活用は有効です。
デマンドジェネレーションとは、リードジェネレーション、リードナーチャリング、リードクオリフィケーション、顧客化後のリテンションまでを含むマーケティング活動の総称です。
マーケティングの世界は戦術やマーッテックと呼ばれるITツールのトレンドが非常に速く移り変わりますが、デマンドジェネレーションの目的は見込み客創出、需要の創出、売上げへの貢献と変わることはありません。
2020年以降、世界は激変している状況ですが、経営環境、自社の立ち位置、戦術のトレンドを俯瞰してとらえ、売上げに直結する有効なマーケティング戦略を立てていきましょう。