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この3か月、起業家の皆さんは激動の時を乗り切ろうと、財務状況の安定を図り、製品メッセージの戦略を転換し、リモートワークの文化を育むために力を結集させてきたことでしょう。そして今、次の重要な判断を迫られています。
それは、成長に向けて再び舵を切るべきか? もしそうならどれくらいのスピードで進めるべきか? というものです。
個人的には、どのタイミングからどれくらいの速さでスケールさせるべきかという問題に、何年も前から興味を持っていました。あまり性急に進めると、貴重な資本資産が回収不能になり、破産状態に陥ってしまうおそれもあります。とはいえ悠長に構えていれば、せっかくのチャンスをみすみす逃し、競合他社に先を越されてしまうでしょう。
これほど高いリスクを伴うにもかかわらず、多くの企業の経営陣や役員会が科学的でデータドリブンなアプローチではなく、数値化できない直感に頼っているという事実に、私は驚きを隠せません。ここ数年、私は投資家、経営者、役員としてアーリーステージのベンチャー企業と関わる中で、より厳しい目でこのような判断を下してきました。そうした取り組んだ成果として、以下の3つのフェーズから成るフレームワークをまとめることができました。
このフレームワークでは、フェーズ完了のマイルストーンを測定指標によって設定しています。
さらに、フェーズが進むにつれて、たとえば価格、必要な人材、営業プロセスといったGo-To-Marketにおける主な意思決定で重視されるポイントも変化していきます。
この記事では、科学的なスケールのフレームワークの各フェーズについて詳しく解説していきます。
フェーズ1:プロダクト マーケット フィット
「プロダクト マーケット フィットに達したときですね」
いつスケールすべきだと思うかと起業家たちにたずねると、必ずと言ってよいほど、この答えが返ってきます。そんなとき、私はもう1つ面白い質問を付け加えるようにしています。
「プロダクト マーケット フィットとは何ですか?」
これは、起業家エコシステム全体に広く浸透しており、スケールに踏み切るタイミングを見極めるための重要なコンセプトですが、厳密には定義されておらず、多様な意味を持っています。よくご存じの方なら、マーク・アンドリーセンによる「マーケットを満足させるプロダクトが適切なマーケットに提供されている状態」という定義が頭に浮かんでいることでしょう。ただし、これはあまりにも主観的な解釈に頼った定義であり、特に「満足」と「適切」の指すところがあいまいです。
ここで頭の切れる皆さんは、シーン・エリスが掲げた「顧客アンケートで『もしこの製品が使えなくなったらどう感じますか』という質問に対し『とても残念』と回答した割合が40%に達している状態」という定量的なアプローチを思い出されたかもしれません。しかし、顧客アンケートによって集めたデータと実態に食い違いが生じていて、評価を誤ってしまうという懸念が残ります。
そこで、さらにデータドリブンに、科学的なアプローチで考えてみたいと思います。
まず私は、比較的優秀な企業は、プロダクト マーケット フィットのインジケーターとして、長期的な顧客定着率に着目していることに気付きました。「顧客のサイフに話させろ」とはよく言ったもので、更新やリピート購入に踏み切るという事実が、製品に対する顧客の満足度の高さ、つまりプロダクト マーケット フィットを示す何よりの証拠です。IT業界全体では、90%以上が年間顧客定着率の世界的なベンチマークとなっています。したがって、年間の顧客定着率が90%を上回ったとき、その企業はプロダクト マーケット フィットに達していると言えるでしょう。
これは良い着眼点ですね。顧客定着率がプロダクト マーケット フィットの度合いを表すのに最適な統計データという点には私も賛成します。しかし、顧客定着率はラギングインジケーター(遅行指標)です。今すぐその数値を知りたいと思っても、本当の定着率がわかるまでには数四半期、ときには1年を要することもあります。そんなに長い期間、待ってはいられません。特にアーリーステージの企業は、時間とお金を味方につけられないので、テストと学習のサイクルを速いペースで繰り返していく必要があります。
こうした理由から、特に優秀なスタートアップ企業では、プロダクト マーケット フィットを計測するために、リーディングインジケーター(先行指標)を活用して顧客定着率を予測しています。シリコンバレーの一部の起業家たちは、このリーディングインジケーターを「アハモーメント」と呼びます。主観的でなく客観的な基準であり、長期的な定着率と真の相関関係を持っているため、限られた時間の中でデータドリブンにプロダクト マーケット フィットの度合いを把握することが可能になります。
残念ながら、どんな状況にもそれ1つだけで対応できる万能のリーディングインジケーターが存在するわけではありません。しかし、以下のフレームワークを応用することで、あらゆる企業で最適なインジケーターが定義できるでしょう。
顧客のP%が期間T以内にイベントEを達成すれば[カスタマーサクセスのリーディングインジケーター]は「True」
最新のユニコーン企業で採用されているリーディングインジケーターの例を、この式に当てはめてみると以下のようになります。
つまり、P、E、Tの値から、プロダクト マーケット フィットに適っているかどうかを判断できるようになります。それでは、各企業でこの3つの値を設定するためのベストプラクティスをご紹介しましょう。
PはリーディングインジケーターがTrueになるために必要な顧客の割合です。Pを上回った場合、プロダクト マーケット フィットに達しています。どれくらいの数値を設定するとよいのでしょうか。極端な話ですが、5%では低すぎます。もし獲得した顧客のうち5%だけで顧客定着率が十分と判断されるとしたら、その企業がおそろしく脆弱な土台に支えられていることになります。だからといって95%も高すぎます。この分析を行う一番の目的は、スケールの時機を見極めることですから、95%の顧客がその行動をとるまで待つほど慎重になってしまうと、市場のビジネスチャンスを逃し、競合他社に形勢を逆転されかねません。
そして最後のポイントとして、前述したようにIT市場の標準的な年間顧客定着率は90%です。以上を踏まえて、私はPをだいたい60~80%に設定しています。小規模企業と取引する企業なら60%、大規模企業と取引する企業なら80%をお勧めします。というのも、指標を計測して継続的にモニタリングするので、Pを60%にするか70%にするかという細かい議論は不毛だと思っています。もし本当にプロダクト マーケット フィットに適っているなら、スケールフレームワークの次のフェーズに進んでからも、この割合が上昇し続けるはずです。
Eはリーディングインジケーターを象徴する実際のイベントです。製品のセットアップ、使用、結果に関するイベントが一般的に採用されます。Eは最も重要な変数で、じっくり考える必要があります。これを定義するときには、以下のポイントについて検討することをお勧めします。
Tはリーディングインジケーターのイベントが達成されるまでの期間です。学習に使える時間を最大化できるよう、なるべく短い期間を設定するとよいでしょう。とはいえ、現実的な視点も重要です。多くの場合、製品導入がどれほど複雑でどのくらいの期間がかかるのかによって、このTも左右されます。Dropboxなら、ダウンロードとセットアップを行ってその価値を実感するまでの所要時間が数分なので、Tの期間も非常に短くなります。
反対にWorkdayではTがとても長くなるはずです。同社が提供しているのは、大規模企業向けの広範で複雑なHRソフトウェアであり、セットアップやユーザートレーニングのプロセスが数四半期に及ぶことも珍しくありません。Workdayの場合はおそらく6か月以上になると思われます。平均して、ほとんどのソフトウェア企業では1~3か月の間で設定するのが妥当でしょう。
顧客定着率のリーディングインジケーターを定義できたら、コホート分析のグラフを作成し、新規に獲得した顧客のうちインジケーターの条件を達成した割合を追跡しましょう。このアプローチでプロダクト マーケット フィットの進捗を評価することで、スピードを最大化できます。下図のコホートグラフでは、インジケーター条件を達成した顧客の割合が月別にまとめられています。
顧客定着率の早期インジケーター条件を達成した顧客の割合
架空の会社TeleMedを例に、このグラフの使い方を詳しく見ていきたいと思います。TeleMedは医師をターゲットに、患者と対面ではなくビデオでやり取りするためのソフトウェアを提供している会社です。同社では以下のように、顧客定着率の優れたリーディングインジケーターを設定しています。
顧客の70%が2か月以内に患者とビデオ会議を1回実施すれば[カスタマーサクセスのリーディングインジケーター]は「True」
上のグラフによると、1月には24件の新規顧客を獲得しました。この24件のうち、患者とのビデオ会議を実際に開催した割合は、1か月後は3%、2か月後は27%、3か月後は33%と推移していきます。TeleMedのリーディングインジケーターの定義に照らすと、この年の前半はプロダクト マーケット フィットに到達できていません。
しかし、製品、ターゲット顧客、営業プロセス、オンボーディングアプローチなどを見直し、さまざまな変更を加えた結果、状況が大幅に改善されました。10月の新規獲得顧客は55件で、患者とビデオ会議を行った割合は1か月後にはわずか6%でしたが、2か月後にはなんと70%に上昇しました。見直しが功を奏したのです。こうしてTeleMedはプロダクト マーケット フィットを実現しました。長期的な顧客定着率が判明するまで待たずとも、Go-to-Marketフィットのフェーズに前進する準備が整いました。
顧客獲得コホート分析を設計する際のガイドラインを紹介しておきます。
上記のコホート分析は、大手企業と100万ドル規模またはそれ以上の取引を行っているアーリーステージのベンチャー企業には、有効ではありません。こうしたベンチャー企業では、収益は100万ドルを上回るものの、顧客数は10社以内、四半期ごとの新規獲得顧客も1~2社程度にとどまります。そこで、別のアプローチでプロダクト マーケット フィットを評価する必要が出てきます。
このような場合は、6つほどの条件を設定したうえで、顧客のヘルススコアを計測します。ここで設定する条件は、一般的に以下のカテゴリに分けられます。
役員会で、顧客企業ごとにグリーン、イエロー、レッドのサマリーステータスを割り当て、各条件のスタータスも評価しましょう。新規顧客や展開が遅れている顧客の場合はこの作業が特に重要です。
プロダクト マーケット フィットを科学的に定義しておけば、道を外れずにNorth Star指標を目指せるようになります。多くの企業では、顧客維持の課題が製品や顧客オンボーディングに依拠していると考えられていますが、私の見立ては大きく異なります。顧客維持に関するほとんどの問題が営業とマーケティングに由来しているというのが、私の考えです。
顧客定着率は、マーケティングでターゲットに設定した顧客のタイプと、営業プロセス中にすり合わせた期待値によって左右されています。これは、アーリーステージの企業にとっては不利な状況でしょう。シリーズAの資金を調達した企業のうち、成功を収められるのはわずか20%です。そのため、このステージで上位に位置する企業では、North Star指標となる顧客定着率のリーディングインジケーターをGo-to-Market戦略のあらゆる側面と同期させています。その例として下図をご覧ください。
最初の3項目(ターゲット市場、GTM方針、営業チームに必要な人材)は、プロダクト マーケット フィットのフェーズで最も重要なポイントです。販売する相手としてどのバイヤーを選ぶか、そのバイヤーにどのように販売し、導入を支援するかが、顧客維持を促進させるうえで重要になります。この初期段階の方針を実行するには、1名の営業担当者が必要です。
スケーラブルな需要創出や価格設定、販売報酬についてはまだ検討する時期ではありません。もしこの時点でスケーラブルなコールドコールキャンペーンを企画したり、段階的な価格モデルを導入したり、強固な販売報酬プランを設計したりしているなら、力の入れどころを間違っています。
ビジネスと顧客ベースが発展するにつれ、リーディングインジケーターが本当に顧客定着率と相関性を持っているのかを検証する必要が出てきます。その相関関係を検証できる状態になる前に次のフェーズへと移ってしまう場合も多く、それでも問題はありませんが、強固な基盤が築けていることを確認するためには継続的に分析を行うことが重要です。
先ほど登場した、医師向けビデオ通話ソリューションを提供する架空企業、TeleMedの例で検証してみましょう。念のためTeleMedのインジケーターをおさらいします。
顧客の70%が2か月以内に患者とビデオ会議を1回実施すれば[カスタマーサクセスのリーディングインジケーター]は「True」
*すべての顧客(解約済みの顧客とアクティブな顧客を含む)は12~18か月前に獲得されています。
上の表によると、TeleMedは12~18か月前に68件の顧客を獲得しました。そのうち56件が顧客として残っており、全体の定着率は82%です。さらに、68件中55件がインジケーター条件を達成しました。つまり、55件の顧客が最初の2か月間で患者とビデオ会議を1回でも実施したということです。その55件のうち93%、51件が顧客として残っています。反対に、インジケーター条件を達成しなかったのは68件中13件でした。13件の顧客が最初の2か月間で患者とビデオ会議を1回も実施しなかったことになります。13件のうち、今も顧客でいるのは5件のみ、定着率は39%にとどまりました。このケースでは、リーディングインジケーターによって長期的な顧客定着率をうまく予測できているようです。
*すべての顧客(解約済みの顧客とアクティブな顧客を含む)は12~18か月前に獲得されています。
この例も先ほどのものと似ています。TeleMedは12~18か月前に68件の顧客を獲得し、全体の定着率は82%です。68件中、55件がインジケーター条件を達成し、13件は達成していません。しかし今度は、達成した顧客の定着率は84%にとどまり、達成しなかった顧客の定着率が77%にのぼっています。この結果から、リーディングインジケーターが顧客定着率の予測に役立っていないことがわかります。
検証分析を行うときには以下の推奨事項をご確認ください。
ここまでご説明してきたプロダクト マーケット フィットは、堅調に顧客を獲得・維持していくフェーズでした。Go-to-Marketフィットとは、堅調に、そしてスケーラブルに顧客を獲得・維持していくことを指します。その1つの取り組みが、十分に大きな市場をターゲットに設定していることを確認し、成長への意欲を高めることです。
また、成長を目指すうえで、採算の取れる方法で進めていくことも含まれます。アーリーステージの環境においては、営業利益率やEBITDAよりも、ユニットエコノミクスを使用して収益性を測定するのが望ましいでしょう。なぜなら、スケールに伴って変動費は増加しますが、固定費は比較的安定しているからです。ユニットエコノミクスなら固定費だけに絞れるので、財務状況を安定させながらスケールするための自社に適した方法を、より詳細に分析することができます。
したがって、企業の顧客獲得と顧客維持の能力を証明する、強力なユニットエコノミクスが、Go-to-Marketフィットのフェーズにおける数値目標となります。
ソフトウェア業界では現在、ユニットエコノミクスの目標として主に以下の3つが採用されています。
これらの指標によって、Go-to-Marketフィットを科学的かつデータドリブンに定義できます。しかし、プロダクト マーケット フィットのフェーズの顧客定着率と同じ問題が、ここでも行く手を阻みます。そう、ユニットエコノミクスはラギングインジケーターなのです。
顧客定着率と同じように、自社のユニットエコノミクスを正確に計算するには大量の履歴データが必要で、十分なデータが集まるまでに1年かそれ以上の時間を要します。そのため、ユニットエコノミクスについてもリーディングインジケーターを見つけなければいけません。長期的なユニットエコノミクスの目標をあぶりだして、短期的なGo-to-Market活動の目標に落とし込むことが求められます。
LTV/CACのユニットエコノミクス指標を使用した例を以下にお見せします。
きわめてシンプルな代数によって、長期的な目標は以下のように表現できます。
LTV ÷ CAC > 3
短期的なアクティビティで置き換えると、以下のようになります。
たとえば、具体的な数値を当てはめると以下のような結果になりました。
※ 元記事に計算ミスがあります。そのため、数値はそのまま残しております。本体であれば、Sales CACは$375。
プロダクト マーケット フィットのフェーズのコホート分析と同じように、このフェーズでも日別、週別、月別にアクティビティグラフを作成して、Go-to-Marketフィットの到達状況を評価できます。
上図のダッシュボードには、長期的なユニットエコノミクスを追跡するための各指標の月別の最新データが表示されており、実際は週別にも切り替えられます。青い線が赤い線よりも上にあれば順調です。ここでの重要ポイントを以下にご説明します。
Go-to-Marketフィットを科学的かつデータドリブンに定義することで、この新しいNorth Star指標に照準を合わせて、GTM戦略を進化させられるようになります。顧客定着率を維持しながら、スケーラブルなユニットエコノミクスを実現するために、フェーズ1と同様、GTM戦略の各コンポーネントを見直しましょう。
ここまで、「いつスケールすべきか」という1つ目の問いに答える手段として、以下のように厳密なフレームワークを確立してきました。
しかし2つ目の問い「どのくらいのスピードで進めるべきか」についてはどうでしょうか。
スケールの始め方を誤って、シリーズAで失敗してしまうことも少なくありません。さあ今がスケールのタイミングだと判断したときには(年度の初めや資金調達ラウンドの直後だと特に)大勢の営業担当者を一斉に採用してしまいがちです。この数年間で私が関わってきた各社でも、スケールに取り掛かるときにはだいたいこうした動きが見られましたが、効果が出たためしはありませんでした。もちろん世の中にはうまく行った事例もあると思いますが、少なくとも私は経験していません。1月に10名の営業担当者を採用して、年末には2名が離職しているというケースがほとんどでした。
いったん立ち止まって考えてみると、この施策の失敗率が非常に高い理由は明白です。多数の営業担当者の採用、研修、育成、管理を同時に行ううえで大前提として必要になる能力を会社が備えていなかったためです。たとえば採用面に絞って少しイメージしてみましょう。もし翌月からスケールに踏み切ろうと決意し、10名の営業担当者を雇用する計画を立てたなら、その時間を作るためにほとんど夜通し働かなくてはなりません。
10名の優秀な営業担当者を採用するまでに、いったい何回の対面面接、電話面接を行うのでしょうか。採用に関するタスクが突然大量に積み上がり、既に目一杯のスケジュールの合間を縫って大急ぎで選考プロセスに対応するため、採用の決定もおろそかになります。しかも、会社にとって初めての取り組みなので、自分たちがどんな人材を求めているかも定かではありません。さらに採用基準が誤っていた場合はどうなるでしょう。採用コストは1名分でも相当な額ですが、それをなんと10名分も無駄にすることになります。これでは会社が立ち行かなくなってしまいます。
こうした理由から、スケールを一度きりの大イベントと考えるのではなく、徐々に進めていくことが大切になります。理想的なスケールプランとは、翌月に10名の営業担当者を採用して様子を見てみることではありません。6か月のうちに2名の営業担当者を採用することです。これなら万一失敗しても、いったん立ち止まって軌道修正できますし、失敗しなければもっと速く前進できます。
そろそろ、「どのくらいのスピードで進めるべきか」という問いに答えたいと思います。
その答えは「プロダクト マーケット フィットとGo-to-Marketフィットを維持しながらできるだけ速いペースでスケールする」です。スケールすると、プロダクト マーケット フィットとGo-to-Marketフィットは損なわれます。このステージのベンチャー企業では、10名ほどの従業員がオフィスで働き、その全員が顧客を獲得する方法、継続的な成果を収められるよう支援する方法、そのうえで収益を確保する方法を把握しています。では次の段階として、今後数年で数百名の従業員を採用し、そのノウハウを教えることに乗り出してもよいのでしょうか。それはさらに難しい問題です。
そのため、プロダクト マーケット フィットとGo-to-Marketフィットを維持することを意識しながら、できるだけ速いペースでスケールする必要があります。幸いにも、プロダクト マーケット フィットとGo-to-Marketフィットを測定する方法はもうわかっています。また、それに関する指標が維持されるかどうかを数か月前から確認できるリーディングインジケーターの測定方法も知っています。このリーディングインジケーターを使用して、プロダクト マーケット フィットのセクションでは顧客定着率のグラフを作成し、Go-to-Marketフィットのセクションではスケーラブルなユニットエコノミクスのグラフを作成しました。
この2つのグラフが速度計の役目を果たします。
どれくらいのスピードでスケールすべきか判断するには、まずペースを確立して、速度計を確認しましょう。問題があればペースを落として問題を修正し、順調なら加速します。投資家がスケールの速度をもっと上げるようにプレッシャーをかけてきたときは、次回の役員会までに予測可能なプランを用意し、たとえば「今後6か月の間に毎月2名の営業担当者を採用し、リーディングインジケーターをモニタリングします。効果が見られれば、以降の6か月は月に4名、その後も好調なら月に8名と段階的に増員していきます」と提案することができます。これで、科学的でデータドリブンなスケールアプローチの完成です。
成長には新たなリスクが伴いますが、GTM戦略のコンポーネントと連動させることで、そうしたリスクを軽減できます。
「どのタイミングからどれくらいのスピードでスケールさせるべきか」
これはスタートアップ企業のビジネスと成功を左右する重要な判断です。しかし、アントレプレナーコミュニティは今も、データドリブンの科学的アプローチではなく、あいまいな直感に頼っています。今回の記事がアプローチを見直すきっかけとなれば幸いです。
ご注意いただきたい点として、私が提案しているのは、成長スピードを緩めることではありません。もっと健全な方法で成長することを推奨しています。このフレームワークを採用すると、翌四半期は収益面が停滞してしまう可能性も考えられますが、長期的に見れば、成功のスピードと確率を向上することができます。
また、私がこのフレームワークを試し始めてから、まだ3年ほどしか経っていません。起業家の皆さんとの意見交換を通じて、改善点を見つけ、体系化を続けています。このフレームワークは、私が皆さんから教えていただいたことの集大成です。学びに終わりはありません。ポジティブなものでもネガティブなものでも、お気軽にフィードバックをお寄せください。アントレプレナーコミュニティの皆さんにご協力いただきながら、スケールを科学し、謎の解明を進めていきたいと思います。
本記事はMark Robergeの許諾を得て翻訳している記事になります。本記事の英語版記事はこちら。Mark Robergeのプロフィールについてはこちらをご覧ください。