指名検索を増やすには?ニッチなBtoB企業が取り組むべき施策

2021/06/01
BtoBマーケティング 新規獲得 指名検索を増やすには?ニッチなBtoB企業が取り組むべき施策

企業名や製品・サービス名で検索してもらう「指名検索」。指名検索の数が増えれば、自社の認知度が向上した証とみなすことができます。ただ、ニッチなサービスを扱うことも多いBtoB企業の場合「なかなか指名検索の件数が伸びない」、「どうやって指名検索を伸ばせばよいのだろう?」と、頭を悩ませている方も多いでしょう。

そんな方に向けてこの記事では、指名検索を増やす方法を紹介していきます。

指名検索とは?

指名検索とは、サービス名や企業名などで検索すること。つまり、自社のサービスをすでに知っているユーザーの検索行動です。

指名検索を行うユーザーは、導入を検討している可能性が高いということ。サービスの機能や導入事例などのコンテンツを提供し、サイトを訪問したユーザーのニーズを満たしていきます。

指名検索と非指名検索との関係

一方で、社名やサービス名を知らないユーザーにもアプローチする必要があるでしょう。こうしたユーザーは、自社サービスを名指しで検索するのではなく、自分の困り事を解決してくれるようなキーワードで検索する「非指名検索」による流入が一般的です。

例えばカスタマージャーニーマップをもとに考えてみましょう。

 

カスタマージャーニーマップの図

 

基本的に「認知」から「情報収集」の段階までは、非指名検索。そして、情報収集でサービス名を知り、「比較検討」の段階で指名検索を行うのが一般的です。

まだ自社を知らない「潜在見込み客」であれば、非指名検索から流入するコンテンツ制作を行います。このとき制作するコンテンツの種類は、主に課題解決を目的としたもの。その後、課題解決の手段としてツールの導入があることを知ったユーザーが、具体的なサービスをリサーチ・比較検討するといった流れです。

例えばクラウド型会計ソフト「ABC会計」を提供する、BtoBのSaaS企業を例に考えてみます。

ある中小企業は、インストール型の会計ソフトをこれまで使用。ただ、1つのパソコンでしか会計作業をできない状況だったため、経理担当の一部しか会社の財務状況を把握していない。経営者がリアルタイムで数字を見えない状況を解決したいと考えているとします。

こうしたユーザーが、いきなり「クラウド型 会計ソフト」と検索したり、メディアやSNSで情報を探すしたりすることはほとんどありません。まずは「経営状況 見える化」といった課題軸の単語で情報を探すことが予想されるでしょう。その際、検索エンジンの窓に「経営状況 見える化」とタイピングをする。これが、いわゆる「非指名検索」です。

そして、検索結果で表示されたブログ記事などのコンテンツを読んだユーザーが、問題を解決する手段として「クラウド型の会計ソフト」があることを知ります。その後ユーザーは、クラウド型の会計ソフトの導入に向け、より具体的な製品を知りたいと考えるでしょう。すると、ユーザーは「クラウド型会計ソフト おすすめ」の記事を、関連記事としてサイト内で探す可能性も出てきます。

その記事のなかで、他社と比べたときの自社製品の優位性について触れる。もっと詳しい情報を知りたいと考えたユーザーは、その製品の導入事例や機能を知りたいと考えるかもしれません。これがいわゆる「指名検索」です。

まとめると、次のような流れとなります。

 

●「ABC会計」というクラウド型会計ソフトが「指名検索」されるまでの流れ

非指名検索

「経営状況 見える化」

潜在見込み客

「クラウド型会計ソフト おすすめ」

指名検索

「ABC会計 導入事例」

見込み客

 

つまり困り事を解決する課題解決型のコンテンツを用意し、非指名検索を増やす。そして、もっと詳しい情報を知りたいというユーザーに向け、導入事例やダウンロード型コンテンツなどを用意しておくこと。この一連の流れのなかで、非指名検索から指名検索へとつなげることができます。

指名検索と自然検索の違い

そもそも自然検索(オーガニック検索)とは、検索エンジン上に表示される、通常の検索結果のこと。広告枠を除いた検索結果ページからユーザーがURLをクリックし、特定のページに入るまでの一連の流れを指します。

 

BtoBマーケティングの検索結果

 

では、どうやって自然検索を増やすかというと、検索結果で上位表示されるようなコンテンツを作るしかありません。

基本的に指名検索であれば、同じ名称の製品やサービスがない限り、上位に表示されます。しかし、非指名検索による流入も目的としたコンテンツであれば、SEOなど上位表示させるための施策が必要。非指名検索系のコンテンツの場合、検索結果で上位表示されてはじめて、ユーザーに自然検索を行ってもらえると言えます。

指名検索の増加は自社にとって何を意味するのか?

Horizontal SaaSの場合

業界・業種を問わない利用を目的とした「Horizontal SaaS」の場合、幅広い層へのリーチが求められます。サービスの競合も比較的多く、シェアを獲得するためにも非指名検索からいかに指名検索を増やせるかが大事。「MAツールと言えば〇〇」と覚えてもらうことで、とくに効率化が遅れるレガシーな業界の人たちにも、アプローチしやすくなると言えます。

特に、多種多様な会社が存在するSMB(中小企業向け)のHorizontalとなれば、幅広い見込み客の獲得が必要。そのため、ビジネスブログだけでなく、SNSを含めてより多くのチャネルをカバーする。また、汎用的なコンテンツを用意し、非指名検索から指名検索につながていきましょう。

Vertical SaaSの場合

ある特定の業界に特化した「Vertical SaaS」の場合、ほかに競合がいなく、新しい市場を開拓することも多いと思います。今までテクノロジーがまったく導入されていなかった業界に、SaaSの導入を浸透させていくこともあるでしょう。一方で、Vertical SaaSの場合は、見込みき企業の調べる課題軸での非指名検索キーワードはニッチすぎるが故、月間ボリュームが非常に少ないという問題があり、Horizontal SaaSのようにビジネスブログを活用して非常指名検索を獲得して、指名検索を将来的に増やす、という戦法が通用しません。

そのため、Verical SaaSの場合、Enterprise対象(大企業向け)のビジネスと同様、そもそも検索するユーザーの「母数」が少ないケースが往々にしてあります。そのため非指名検索からの流入より、PR・広報や展示会などを通じて直接アプローチし、指名検索につなげるほうが効率的なケースもあるでしょう。

SMB対象のビジネスの場合

全企業数の99.9%とも言われる中小企業向けビジネスも、シェアを獲得するためにはどうしても幅広い見込み客の獲得が必要。そのため非指名検索で幅広いターゲットにアプローチし、「中小企業向けと言えば〇〇」と言われるよう、指名検索へとつなげていきたいところ。

仮に中小企業向けのクラウド会計サービスを提供しているとします。非指名検索を増やすために「確定申告」というキーワードで、上位表示させるコンテンツを作りたい。このとき、「中小企業 確定申告」と検索するユーザーのニーズを満たすコンテンツが作成できれば、記事が中小企業向けだとわかる。サイトへの流入も、ターゲットである中小企業のユーザーが、多くなるはずです。このように非指名検索系のコンテンツは、中小企業に合わせた内容を盛り込む必要があるでしょう。

Enterprise対象のビジネスの場合

Enterprise向けは、そもそも検索ユーザーの母数が限られています。そのため非指名検索で流入を増やすというよりも、直接アプローチを行うPR・広報といった施策が効率的かもしれません。メディアと関係がない場合、「PR TIMES」などのサービスを使い、自社製品のプレスリリースを配信するなどの方法もあります。

直接アプローチするという意味では、展示会・他社主催のカンファレンスへの参加も有効でしょう。

要するにEnterprise向けは、直接のアプローチによって指名検索を増やす姿勢が求められます。

指名検索の増やし方

ビジネスブログ/オウンドメディア

非指名検索から指名検索につなげる方法としては、ビジネスブログ(オウンドメディア)の運営が挙げられます。前述した通り、HorizontalやSMB向けのSaaSを提供している場合に、有効な方法と言えるでしょう。

非指名検索を狙い作成したコンテンツが、検索結果で上位表示されれば、多くの潜在見込み客にアプローチできる可能性があります。

とはいえ、コンテンツを上位表示させることはあくまでも手段。

そのうえでブログ記事の内容に興味・関心を持ってもらう。より詳しい情報を知ってもらうために例えばホワイトペーパーのダウンロードといった出口を設け、ユーザーを育てる。そして最終的に、リードを獲得し、ナーチャリングを行い、指名検索も増やすのが目的です。

では、どんなブログ記事を提供すれば良いのか。

前述した通り、課題解決型のコンテンツ。つまりは、ニュース性のあるものではなく、継続的に読まれるノウハウ系の記事が有効と言えるでしょう。

例えばデジタルマーケティングの課題解決サービスを提供する「アイレップ」では、自社サービスに関連した「デジタルマーケティングを推進する組織に必要な4つの機能とは?」という記事を提供。「デジタルマーケティング 組織」「マーケティング 組織体制」「デジタルマーケティング部」というキーワードでそれぞれ上位表示を獲得し、非指名検索から指名検索につなげています。

 

irepのウェブサイト

(参照元:デジタルマーケティングを推進する組織に必要な4つの機能とは?|アイレップ

 

「ブログ記事は充実させているのになかなか指名検索が増えない」といったケースもあるでしょう。その場合、ブログ記事から導入事例やホワイトペーパーのダウンロードなど、より詳しい情報を知るための導線が適切か、確認してみましょう。大概の場合、ナーチャリングの流れを考えていない場合が多く、一工夫するだけで指名検索を将来的に増やすことが可能です。

とはいえ課題解決型のコンテンツ以外で認知度を向上させているBtoB向けSaaS企業のビジネスブログもあります。

それが、企業向けのグループウェアなどを提供している「サイボウズ」のビジネスブログ「サイボウズ式」です。

 

サイボウズ式のWebサイト

(参照元:サイボウズ式

 

これは、あくまでも自社の知名度を上げることを目的としたメディア。そのため製品とは完全に離れ、世の中で話題になっているトピックやネットユーザーが気になっているニーズに応えるコンテンツを提供しています。

このように、ビジネスブログは非指名検索から指名検索へとつなげる役割だけではありません。「PRや広報的な側面を持ち合わせている」という見方もできます。

なお、サイボウズ式はユーザーからのフィードバックにより新たな製品ニーズが発見できるという想定外の効果もあるそう。遠回りに思えて、新たな価値も創出できている稀な例と言えます。

業界露出/PR

非指名検索の母数が限られている、VerticalやEnterprise向けSaaS。展示会や業界イベントの参加により、ユーザーに直接アプローチする方法が有効です。

例えば東京ビッグサイトや幕張メッセなど、大規模な会場で開催されるイベントへの出展は、来場者も10万人程度の規模になることも。こうした大規模なイベントには、大手企業が参加していることも多いでしょう。そのため、Enterprise向けSaaSを提供する企業にとって、多くのユーザーに直接アプローチできるまたとない機会です。

獲得した名刺情報の管理でCRMやMAツールなどを用いれば、その後メルマガや機能のアップデートメールなど、その後のアプローチも効率化できるはずです。

また、Vertical SaaSを提供する企業は、業界に特化したイベントに参加するのが有効。とくにメディアが主催するイベントは、ユーザーだけでなく媒体ともつながるチャンス。媒体で自社製品を取り上げてもらう機会が増えれば、PRにもつながります。

また、メディアと関係がない場合は「PR TIMES」などのサービスを利用し、自社製品のプレスリリースを配信することも有効。

 

PR TIMESのトップページ

(参考元:PR TIMES

 

市場から認識され、自社サイトにアクセスが集まってきたら「プレスキット」を設置するのも大切です。

プレスキットとはメディア関係者向けに作成する、プロモーション用の資料・画像・動画素材をまとめたもの。企業側が発信したい情報を、媒体側で正確に取り上げてもらいやすくなります。

また、メディア関係者が取材依頼を行いやすいよう、最低限「問い合わせ先」はわかりやすい位置に設置しておきましょう。

Co-marketing

Co-marketingとは「共同マーケティング」と呼ばれる手法。同じペルソナを持つ非競合企業同士が一緒にマーケティングコンテンツを作成し、指名検索を増やす目的があります。

マーケティング施策に注力し始めたばかりで、あまり聞き馴染みがない方も多いかもしれません。しかし筆者の前職では、共同マーケティングに注力し、見込み客獲得数を爆発的に増加させていました。

 

HubSpotとICONOSQUREの共同マーケティング施策のランディングページ

(参照元:HubSpotとICONOSQUREの共同マーケティング施策のランディングページ

 

共同マーケティングでは、双方の企業でコンテンツだけでなく見込み客リストなども共有し、マーケティング施策を行っていきます。そのため、相手企業の見込み客リストが充実しているほど、高い効果が得られる施策です。

HubSpotとICONOSQUREの共同マーケティングは、ICNOSQUREが多くの顧客情報を抱えており、さらに同じペルソナを持っていることからスタート。作成したダウンロードコンテンツを「ビジネスブログ」「検索連動型広告」「SNS広告」と、多様なチャンネルから双方のペルソナにアプローチしていきました。

共同のコンテンツを作ると、セミナーなどと比べて再利用しやすく、施策の効率化につながる点もメリットです。

まとめ

指名検索を増やす方法は

  • ビジネスブログで非指名検索からの流入を増加させる
  • 展示会への参加やPRを行い、直接ユーザーにアプローチする

といった方法が挙げられます。

取り扱うサービスは「Horizontal SaaS」なのか、それとも「Vertical SaaS」などを踏まえ、自社に合った施策を試してみてください。

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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