企業名や製品・サービス名で検索してもらう「指名検索」。指名検索の数が増えれば、自社の認知度が向上した証とみなすことができます。ただ、ニッチなサービスを扱うことも多いBtoB企業の場合、「なかなか指名検索の件数が伸びない」「どうやって指名検索を伸ばせばよいのだろう?」と、頭を悩ませている方も多いでしょう。
そんな方に向けて、この記事では指名検索を増やす方法を紹介していきます。
指名検索とは、サービス名や企業名などで検索すること。つまり、自社のサービスをすでに知っているユーザーの検索行動です。
指名検索を行うユーザーは、導入を検討している可能性が高いということ。サービスの機能や導入事例などのコンテンツを提供し、サイトを訪問したユーザーのニーズを満たしていきます。
一方で、社名やサービス名を知らないユーザーにもアプローチする必要があるでしょう。こうしたユーザーは、自社サービスを名指しで検索するのではなく、自分の困りごとを解決してくれるようなキーワードで検索する「非指名検索」による流入が一般的です。
一例をカスタマージャーニーマップをもとに考えてみましょう。
基本的に「認知」から「情報収集」の段階までは、非指名検索。そして、情報収集でサービス名を知り、「比較検討」の段階で指名検索を行うのが一般的です。
まだ自社を知らない「潜在見込み客」向けの対策として、非指名検索から流入するコンテンツ制作を行います。このとき制作するコンテンツの種類は、主に課題解決を目的としたもの。その後、課題解決の手段としてツールの導入があることを知ったユーザーが、具体的なサービスをリサーチ・比較検討するといった流れです。
たとえばクラウド型会計ソフト「ABC会計」を提供する、BtoBのSaaS企業を例に考えてみます。
ある中小企業は、インストール型の会計ソフトをこれまで使用していました。ただ、1つのパソコンでしか会計作業をできない状況だったため、経理担当の一部しか会社の財務状況を把握できていません。経営者がリアルタイムで数字が見えない状況を解決したいと考えているとします。
こうしたユーザーが、いきなり「クラウド型 会計ソフト」と検索したり、メディアやSNSで情報を探したりすることはほとんどありません。まずは「経営状況 見える化」といった課題軸の単語で情報を探すことが予想されるでしょう。その際、検索エンジンの窓に「経営状況 見える化」とタイピングをする。これが、いわゆる「非指名検索」です。
そして、検索結果で表示されたブログ記事などのコンテンツを読んだユーザーが、問題を解決する手段として「クラウド型の会計ソフト」があることを知ります。
その後ユーザーは、クラウド型の会計ソフトの導入に向け、より具体的な製品を知りたいと考えるでしょう。すると、ユーザーは「クラウド型会計ソフト おすすめ」の記事を、関連記事としてサイト内で探す可能性も出てきます。
その記事のなかで、他社と比べたときの自社製品の優位性について触れると効果的です。もっと詳しい情報を知りたいと考えたユーザーは、その製品の導入事例や機能を知りたいと考え、企業名や製品・サービス名で検索するかもしれません。これがいわゆる「指名検索」です。
まとめると、次のような流れとなります。
●「ABC会計」というクラウド型会計ソフトが「指名検索」されるまでの流れ |
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非指名検索 |
「経営状況 見える化」 |
潜在見込み客 |
↓ |
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「クラウド型会計ソフト おすすめ」 |
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↓ |
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指名検索 |
「ABC会計 導入事例」 |
見込み客 |
つまり困りごとを解決する課題解決型のコンテンツを用意し、非指名検索を増やす。そして、もっと詳しい情報を知りたいというユーザーに向け、導入事例やダウンロード型コンテンツなどを用意しておくことが大事です。この一連の流れのなかで、非指名検索から指名検索へとつなげることができます。
そもそも自然検索(オーガニック検索)とは、検索エンジン上に表示される、通常の検索結果のこと。広告枠を除いた検索結果ページからユーザーがURLをクリックし、特定のページに入るまでの一連の流れを指します。
では、どうやって自然検索を増やすかというと、検索結果で上位表示されるようなコンテンツを作るしかありません。
基本的に指名検索であれば、同じ名称の製品やサービスがない限り、上位に表示されます。しかし、非指名検索による流入も目的としたコンテンツであれば、SEOなど上位表示させるための施策が必要です。非指名検索系のコンテンツの場合、検索結果で上位表示されてはじめて、ユーザーに自然検索を行ってもらえるといえます。
指名検索が多いほうがよいのは、なぜなのでしょうか? 以下の3つの理由が挙げられます。
1点目は、成約に近い見込み客との接点が増えることです。指名検索とは、ブランド名や製品・サービス名で直接検索することです。指名検索ボリュームは、ブランドや製品・サービスの認知度を測るひとつの指標です。
ユーザーが指名検索をする場合、あなたの会社のブランドや製品・サービス名をすでに知っていて、興味を持っていることを示しています。これらのユーザーは、他の一般的な検索者よりもコンバージョンに近い、確度の高い見込み客であることを示唆しています。
たとえば「ABC会計 メリット」「ABC会計 デメリット」など、「製品・サービス名+疑問」で構成されたキーワードでどれだけ検索しているか、把握してみましょう。「『ABC会計』という製品について、ユーザーはメリットやデメリットを知りたくて検索しているのだな」と、見込み客の情報ニーズを洞察できます。
「製品・サービス名+疑問」といった検索キーワードが多い場合、見込み客は、あなたのブランドと競合他社を比較検討しています。ここで、見込み客の疑問や不安を払拭できるコンテンツを提供することで、彼らはあなたの会社と契約することに対して、より検討度合いが高まるでしょう。
このように、指名検索ボリュームが増えるほど、確度の高い見込み客との接点も増えるといえるのです。
2点目は、既存顧客に向けて常に適切な情報発信をすることで、彼らの関心を継続的に引くことができることです。既存顧客が定期的にあなたの会社のブランド・製品・サービス名で指名検索する行動は、彼らが引き続きあなたの会社に関心を寄せている証拠だといえます。
たとえば「ABC会計 年末調整 やり方」「ABC会計 API連携 やり方」といった検索キーワードが多い場合、製品のさらなる活用法を自ら求めて検索しているという洞察につながります。
このような場合、製品を紹介するWebサイトで、活用法に関するコンテンツを用意しておけば、既存顧客は製品導入後の疑問・不安を払拭できます。その結果、ブランドへの信頼・満足につながり、長期的な顧客ロイヤルティの向上を後押しするでしょう。
既存顧客に、製品の活用に関する情報を適切に提供し続けることは、顧客満足度を高める近道だといえるのです。
3点目として、検索上位表示を取りやすく、検索アルゴリズムの変動に強くなることも挙げられます。
検索アルゴリズムとは、検索エンジンが検索結果の順位を決定するための仕組みで、定期的に変更されます。
検索エンジンは、特定のブランド・製品・サービスに関連するコンテンツで、他サイトからも参照(言及や、被リンク)が多い場合「権威性のあるもの」だと判断しやすくなります。
たとえば、あなたの会社で「ABC会計」という自社製品に関するオフィシャルブログを運営していて、「導入前の不安に応えるコンテンツが多い」「導入後の疑問に応えられるコンテンツも充実している」といった理由から、他のWebメディアから言及、被リンクが豊富な状況を実現できているとします。
すると検索エンジンは、あなたの会社のブログを「『ABC会計』に関して、権威性のあるサイト」として高く評価する可能性があります。
その結果、SEO評価が高まって検索ランキングで上位となり、アルゴリズムの変動による影響を受けにくくなるのです。
指名検索を増やすメリットが複数ある一方で、留意すべき点もあります。具体的には次の3点です。
指名検索のデメリットとして、自社が意図していないページが表示される可能性が挙げられます。たとえば、自社の公式のページが表示されて欲しいが、自社サイトに提供するべき製品・サービス情報が不足しているがゆえに、他社のサイトが検索上位に表示される場合などです。
指名検索をするユーザーは、すでにあなたの会社のブランド・製品・サービス名を知っていて、事業内容・サービス内容についてもっと知りたいと思っています。具体的には、レビュー、他のブランドとの比較、ブランドロゴなど、ブランドに関するさらに詳しい情報を探している可能性が考えられるでしょう。
ところが、次のような「意図しない」指名検索の事例もあります。
Google画像検索で「Instagram ロゴ」と入力して、Instagramのロゴ画像を探そうとすると、Meta社が提供するオフィシャルコンテンツには容易にたどり着けません。上位には非公式のコンテンツばかりが並んでいます。
これは、検索意図が一致しないページの一例です。ユーザー体験を損ない(ここでは、公式ロゴ画像を探しているのに、なかなか目的の情報にたどり着けない、ということ)、ブランドの信頼性にも影響を及ぼす可能性があります。
(出典:Google画像検索)
このように、指名検索は意図しない結果をもたらすリスクもあるため、ユーザーが求める適切なページが上位表示されるように、SEO対策を継続する必要があるといえます。
指名検索のデメリットとして、自社製品に関するオフィシャルブログなどを運営していても、SEO対策が競合他社に劣る場合、ユーザーが他社サイトに流入してしまう可能性が考えられます。
たとえば競合他社が、あなたの製品(例:『ABC会計』)に関して、指名検索ユーザーにとって有用な情報を詳細に提供している場合、ユーザーは他社のサイトを見に行く可能性も考えられます。
競合他社が『ABC会計 XYZ会計 比較』といった比較コンテンツを公開している場合を想定してみましょう。類似の複数製品を比較検討しているユーザーに対し、各製品のメリット・デメリットを独自の視点で詳細に解説するようなコンテンツがあれば、ユーザーは「ABC会計に対する他社の評価も読んでみよう」と考えるなどして、他社サイトを見に行くかもしれません。
このような事態が生じると、せっかく指名検索が発生しても自社サイトへの訪問者数を競合他社に奪われ、結果的に売上げやブランド認知度に影響を及ぼすリスクも考えられます。
また、他社のリスティング広告でも同様の事態は起こり得ます。たとえば、自社の製品・サービス名で検索した場合に、競合他社の広告が表示されるケースです。これは、競合他社がリスティング広告の出稿時に、多くの関連キーワードを設定している場合に生じる可能性があります。
このような場合には、競合他社に対して申し入れをして、「お互いの製品・サービス名が表示されないよう、設定を見直しませんか?」などと、互いに協力体制を築くアプローチをするとよいでしょう。
これらの観点から、ユーザーが求めるコンテンツを充実させ、なおかつ正確な情報を届けられるよう整える取り組みが重要だといえます。
指名検索には、季節性や時事性による変動がある可能性もデメリットとして挙げられます。
たとえば会計ソフトであれば、「年末調整」「確定申告」など特定の時期やイベントが近づくと、指名検索のトラフィックが大きく急増することが考えられます。一方、年末年始でなければ「年末調整」「確定申告」のキーワードの検索量はそこまで多くないかと思います。
このような、季節性や時事性により指名検索ボリュームの変動が多い場合には、指名検索のトラフィックを前年の同時期と比較することで、より正確な進捗状況の把握が可能となります。なおかつ、この季節変動を理解し、適切なSEO対策、流入元確保に向けた対策を講じることが必要です。
上記の例でいえば、年末調整や確定申告の時期には、申請の手順や書類の書き方などのノウハウを、わかりやすく解説するコンテンツを充実させるのが効果的です。検索上位に表示されるようSEO対策を強化し、SNSやWeb広告などにも取り組んで、季節性の高いコンテンツへの流入元を確保する、といった施策が考えられます。
業界・業種を問わない利用を目的とした「Horizontal SaaS」の場合、幅広い層へのリーチが求められます。サービスの競合も比較的多く、シェアを獲得するためにも非指名検索からいかに指名検索を増やせるかが大事です。「MAツールといえば〇〇」と覚えてもらうことで、とくに効率化が遅れるレガシーな業界の人たちにも、アプローチしやすくなるといえます。
特に、多種多様な会社が存在するSMB(中小企業向け)のHorizontalとなれば、幅広い見込み客の獲得が必要。そのため、ビジネスブログだけでなく、SNSを含めてより多くのチャネルをカバーすることが大切です。また、汎用的なコンテンツを用意し、非指名検索から指名検索につなげていきましょう。
ある特定の業界に特化した「Vertical SaaS」の場合、ほかに競合がいなく、新しい市場を開拓することも多いと思います。今までテクノロジーがまったく導入されていなかった業界に、SaaSの導入を浸透させていくこともあるでしょう。
一方で、Vertical SaaSの場合は、見込み企業の調べる課題軸での非指名検索キーワードはニッチすぎるが故、月間ボリュームが非常に少ないという問題があります。Horizontal SaaSのようにビジネスブログを活用して非常指名検索を獲得して、指名検索を将来的に増やす、という戦法が通用しません。
そのためVerical SaaSの場合、Enterprise対象(大企業向け)のビジネスと同様、そもそも検索するユーザーの「母数」が少ないケースが往々にしてあります。そのため非指名検索からの流入より、PR・広報や展示会などを通じて直接アプローチし、指名検索につなげるほうが効率的なケースもあるでしょう。
全企業数の99.9%ともいわれる中小企業向けビジネスも、シェアを獲得するためにはどうしても幅広い見込み客の獲得が必要。そのため、非指名検索で幅広いターゲットにアプローチし、「中小企業向けといえば〇〇」と言われるよう、指名検索へとつなげていきたいところです。
仮に中小企業向けのクラウド会計サービスを提供しているとします。非指名検索を増やすために「確定申告」というキーワードで、上位表示させるコンテンツを作りたい。このとき、「中小企業 確定申告」と検索するユーザーのニーズを満たすコンテンツが作成できれば、記事が中小企業向けだとわかります。
サイトへの流入も、ターゲットである中小企業のユーザーが、多くなるはずです。このように非指名検索系のコンテンツは、中小企業に合わせた内容を盛り込む必要があるでしょう。
Enterprise向けは、そもそも検索ユーザーの母数が限られています。そのため非指名検索で流入を増やすというよりも、直接アプローチを行うPR・広報といった施策が効率的かもしれません。メディアと関係がない場合、「PR TIMES」などのサービスを使い、自社製品のプレスリリースを配信するなどの方法もあります。
直接アプローチするという意味では、展示会・他社主催のカンファレンスへの参加も有効でしょう。
要するにEnterprise向けは、直接のアプローチによって指名検索を増やす姿勢が求められます。
ここからは、実際に指名検索数を増やすためのさまざまな手法を紹介します。
簡潔にいえば、「認知度向上」を目的とした施策が有効だといえます。
非指名検索から指名検索につなげる方法としては、ビジネスブログ(オウンドメディア)の運営が挙げられます。前述した通り、HorizontalやSMB向けのSaaSを提供している場合に、有効な方法といえるでしょう。
非指名検索を狙い作成したコンテンツが、検索結果で上位表示されれば、多くの潜在見込み客にアプローチできる可能性があります。
とはいえ、コンテンツを上位表示させることはあくまでも手段です。
そのうえでブログ記事の内容に興味・関心を持ってもらい、より詳しい情報を知ってもらう必要があります。たとえば、ホワイトペーパーのダウンロードといった出口を設け、ユーザーを育てる。そして最終的にリードを獲得し、ナーチャリングを行い、指名検索も増やすのが目的です。
では、どんなブログ記事を提供すればよいのでしょうか。
前述した通り、課題解決型のコンテンツ。つまりは、ニュース性のあるものではなく、継続的に読まれるノウハウ系の記事が有効といえるでしょう。
たとえば、デジタルマーケティングの課題解決サービスを提供する「アイレップ」では、自社サービスに関連した「デジタルマーケティングを推進する組織に必要な4つの機能とは?」という記事を提供しています。
「デジタルマーケティング 組織」「マーケティング 組織体制」「デジタルマーケティング部」というキーワードでそれぞれ上位表示を獲得し、非指名検索から指名検索につなげています。
(参照元:デジタルマーケティングを推進する組織に必要な4つの機能とは?|アイレップ)
「ブログ記事は充実させているのに、なかなか指名検索が増えない」といったケースもあるでしょう。その場合、導入事例やホワイトペーパーのダウンロードなど、より詳しい情報を知るための導線が適切か、確認してみましょう。大概の場合、ナーチャリングの流れを考えていない場合が多く、一工夫するだけで指名検索を将来的に増やすことが可能です。
とはいえ、課題解決型のコンテンツ以外で認知度を向上させている、BtoB向けSaaS企業のビジネスブログもあります。
それが、企業向けのグループウェアなどを提供している「サイボウズ」のビジネスブログ「サイボウズ式」です。
(参照元:サイボウズ式)
これは、あくまでも自社の知名度を上げることを目的としたメディア。そのため製品とは完全に離れ、世の中で話題になっているトピックやネットユーザーが気になっているニーズに応えるコンテンツを提供しています。
このように、ビジネスブログは非指名検索から指名検索へとつなげる役割だけではありません。「PRや広報的な側面を持ち合わせている」という見方もできます。
なお、サイボウズ式はユーザーからのフィードバックにより新たな製品ニーズが発見できるという想定外の効果もあるそう。遠回りに思えて、新たな価値も創出できている稀な例といえます。
非指名検索の母数が限られている、VerticalやEnterprise向けSaaS。展示会や業界イベントの参加により、ユーザーに直接アプローチする方法が有効です。
たとえば東京ビッグサイトや幕張メッセなど、大規模な会場で開催されるイベントへの出展は、来場者も10万人程度の規模になることもあります。こうした大規模なイベントには、大手企業が参加していることも多いでしょう。そのため、Enterprise向けSaaSを提供する企業にとって、多くのユーザーに直接アプローチできるまたとない機会です。
獲得した名刺情報の管理でCRMやMAツールなどを用いれば、その後メルマガや機能のアップデートメールなど、その後のアプローチも効率化できるはずです。
また、Vertical SaaSを提供する企業は、業界に特化したイベントに参加するのが有効。とくにメディアが主催するイベントは、ユーザーだけでなく媒体ともつながるチャンスです。媒体で自社製品を取り上げてもらう機会が増えれば、PRにもつながります。
また、メディアと関係がない場合は「PR TIMES」などのサービスを利用し、自社製品のプレスリリースを配信することも有効です。
(参考元:PR TIMES)
市場から認識され、自社サイトにアクセスが集まってきたら「プレスキット」を設置するのも大切です。
プレスキットとはメディア関係者向けに作成する、プロモーション用の資料・画像・動画素材をまとめたもの。企業側が発信したい情報を、媒体側で正確に取り上げてもらいやすくなります。
また、メディア関係者が取材依頼を行いやすいよう、最低限「問い合わせ先」はわかりやすい位置に設置しておきましょう。
Co-marketingとは「共同マーケティング」と呼ばれる手法。同じペルソナを持つ非競合企業同士が一緒にマーケティングコンテンツを作成し、指名検索を増やす目的があります。
マーケティング施策に注力し始めたばかりで、あまり聞き馴染みがない方も多いかもしれません。しかし筆者の前職では、共同マーケティングに注力し、見込み客獲得数を爆発的に増加させていました。
(参照元:HubSpotとICONOSQUREの共同マーケティング施策のランディングページ)
共同マーケティングでは、双方の企業でコンテンツだけでなく見込み客リストなども共有し、マーケティング施策を行っていきます。そのため、相手企業の見込み客リストが充実しているほど、高い効果が得られる施策です。
HubSpotとICONOSQUREの共同マーケティングは、ICNOSQUREが多くの顧客情報を抱えており、さらに同じペルソナを持っていることからスタート。作成したダウンロードコンテンツを「ビジネスブログ」「検索連動型広告」「SNS広告」と、多様なチャンネルから双方のペルソナにアプローチしていきました。
共同のコンテンツを作ると、セミナーなどと比べて再利用しやすく、施策の効率化につながる点もメリットです。
リスティング広告を出稿する取り組みも、指名検索数を増やすために有効な手段です。
リスティング広告とは、ユーザーが特定のキーワードを検索した際に、検索エンジンの結果ページ上位に表示されるテキスト広告です。
たとえばGoogleで「名刺管理ソフト」と検索してみると、検索結果の上位に何件も広告(「スポンサー」と表示されているもの)が掲載されます。名刺管理ソフトについて調べている人に、具体的な製品を広告表示するなど、ユーザーの検索意図に基づいて表示される仕組みです。そのため、ニーズが顕在化している顧客に直接アプローチできて、受注確度が高い見込み顧客を集客するのに適しているといえます。
(出典:Google)
リスティング広告は、クリック課金方式を採用しており、広告がクリックされたときのみ費用が発生します。見込み客が広告を見て、関心を持ってクリックした場合にだけ広告費が計上されるので、テレビCMや交通広告、雑誌広告など他の広告施策と比べて、比較的小さい予算から取り組み始めることが可能です。
広告の掲載順位は「入札単価×広告の品質」によって決まるので、入札単価を上げることだけでなく、広告の品質を高めることも重要です。
SNSの活用も、指名検索数を増やすうえで有効です。
「SNSで社長や社員の投稿がバズって、短期間で一気に自社サイトへのアクセス数増加」といったイメージを持つ方もいるかもしれませんが、「社長や社員がSNSを長期的に上手に活用していて、フォロワー数も多い」といった状況でなければ、なかなか「バズる」状況を生み出すことはすぐには難しいかもしれません。
それよりも、小規模な予算を取って「SNS広告」で認知獲得施策を実施するのがおすすめです。Facebook、X、Instagram、LinkedInなどのプラットフォームを活用することで、多くの潜在顧客にアプローチできるでしょう。SNS広告は、ユーザーの基本属性や興味・関心、行動履歴などに基づいてターゲティングできるため、関心の高いユーザーに直接広告を届けることが可能です。
以下はその一例で、Facebookのフィードに表示されたサイボウズ社の「kintone」の広告です。
BtoBマーケティングで認知獲得のためにSNS広告を出す事例は増えていて、ポイントは「自社製品に興味のありそうな人、製品に関連の高そうな人」にどれだけ届けられるかです。そのためには、自社のターゲット層がよく見ていると考えられる、最適なプラットフォームを見極めることが重要だといえます。
(出典:Facebook)
指名検索数を増やすために、動画メディアへの露出も有効です。
たとえば、ビジネス関連の動画を配信している「PIVOT」といったメディアとタイアップする手法などが挙げられ、出演を通して会社の認知度を高めることができます。
(出典:PIVOT)
PIVOTタイアップ施策の事例として、家電製品などに搭載するためのモーターを製造している「ニデック」という会社は、テレビをあまり見ない若年層にリーチするために取り組みを実施。事業内容を正しく、深く伝える動画をPIVOTとともに作成・配信したことで、「若年層の認知度があがっていった実感がある」とのことです。
さらに、テレビ番組への露出も有効で、一気に認知度を拡大するチャンスです。ただし、そもそもテレビに取り上げてもらうためには、単なる自社の宣伝だけを主目的とするのではなく、ニュースバリューのある取り組み(独自の製品やサービスの開発、社会的な貢献活動など、メディア各社が関心を持つ内容)をPRすることが重要です。
指名検索数を増やすために、テレビCM、タクシー広告、YouTube広告などの動画広告も有効です。視覚と聴覚に訴えることで強い印象を残し、ブランド認知度を高めることができます。効果的に運用することで、指名検索数の増加に大きく貢献するでしょう。
テレビCMは、幅広い視聴者にリーチできるため、ブランドの認知度向上に大きく寄与します。たとえば、人事労務関連のSaaSを提供している「SmartHR」は、テレビCMを活用して大幅な認知度向上を実現。テレビCMは大量の視聴者にリーチできる一方で、費用が高いため、予算に余裕がある場合に適しています。
(出典:【SmartHRテレビCM】家族ドラマ 社員の活躍篇 字幕ver)
また、タクシー広告は、移動中の時間を利用して視聴者にリーチできる広告手法です。特に都市部ではタクシーの利用者が多く、効率的に広告を届けることが可能です。デジタルサイネージを活用した動画広告も多く見られ、経営者や富裕層といった特定のターゲット層に効果的です。
そしてYouTube広告は、YouTube視聴者に向けた広告手法で、ターゲティング精度が高いのが特徴です。ユーザーの興味関心や視聴履歴に基づいて広告を配信できるため、効率よくターゲットにアプローチできます。AdobeやSalesforce、佐川急便などもYouTube広告を活用しており、比較的低コストで高い効果が期待できます。
(出典:YouTube)
指名検索数を増やすためには、オフライン広告も有効な手法です。看板広告や雑誌広告、電車の車内広告などを活用することで、幅広い層にリーチし、ブランドの認知度を高めることができます。
看板広告は、交通量の多い場所や人通りの多いエリアに設置することで、多くの人の目に留まることができます。特に都市部では、デジタルサイネージを利用した動きのある広告が注目を集めやすくなります。通行者の視線を捉えるデザインやキャッチコピーが重要です。
また、電車の車内広告は、通勤通学時に多くの人々が目にするため、認知度向上に効果的です。中吊り広告やドア横のステッカー広告など、乗客の目線に自然に入る場所に配置することで、高い視認性を確保できます。また、エリアや路線ごとにターゲットを絞ることも可能です。
そして雑誌広告は、特定の読者層にアプローチできるため、ターゲットを絞ったマーケティングが可能です。ビジネス誌や専門誌など、読者の関心に合った媒体を選ぶことで、効果的にブランドの魅力を伝えることができます。また、広告内容を記事風に見せるタイアップ記事も、読者の興味を引きやすい手法だといえます。
これらのオフライン広告を組み合わせることで、オンライン広告だけではリーチできない層にもアプローチでき、総合的なブランド認知度の向上を図ることができます。
オフライン広告の取り組み事例として、オンラインビジネススクール「GLOBIS 学び放題」は、雑誌「東洋経済」と「東洋経済オンライン」の両方に広告出稿をしました。オンライン広告だけではリーチできない、ビジネスの意思決定層の目に留まって、名前を覚えてもらえることを目指し、このような施策を取ったそうです。
「Webサービスなので、Webを使い慣れている人はWeb上で出会える。あえての逆張りの戦略で「紙」に投資しています」という考え方に基づく戦略とのことです。
ここからは、実際に指名検索数を調べる手順を紹介します。
Googleの無料ツール「Googleキーワードプランナー」を利用します。
(出典:キーワード プランナーで最適なキーワード選択 - Google 広告)
「Googleキーワードプランナー」は、Googleアカウントさえあれば誰でも無料で利用できます。
ただし、このツールはあくまで、Google広告の出稿を補助する目的で提供されているツールです。無料で使いたい方は、まずは広告出稿を何か一つ画面に従って設定し、広告予算も入力して、最後に「広告の運用を停止する(=予算消化を止める)」という設定をしたうえで始める必要があります。ひと手間かかりますが、使い始めにこの設定をしておけば、無料で使い続けることが可能です。
キーワードプランナーの利用開始設定ができたら、「検索ボリュームと予測のデータを確認する」をクリックします。
次に、自社の社名や、製品・サービス名がどれぐらい指名検索されているか、入力して確認します。
ここでは例として「LEAPT」と入力し、「開始する」をクリックします。
過去1年間で「LEAPT」というキーワードは、
とわかりました。
なお、上記のうち「月間平均検索ボリューム」について、無料で利用している間は大まかな表示しかされません。正確な見積もりを知りたい場合には、広告を実際に予算を投じてしばらく出稿して、「月間平均検索ボリューム」についての表示制限が解除されるのを待つ必要があります。
ここからは、自社(ブランド、製品・サービス)に対する指名検索を増やすための手順を具体的に解説します。
まずは、自社がどんな指名キーワードで検索されているかを把握しましょう。自社ブランドや製品名、サービス名の関連キーワードを洗い出します。
たとえば、
といったキーワードの組み合わせを考えてみましょう。
この作業は、社内でブレインストーミングや、ディスカッションを行ったり、Googleサーチコンソール(自社サイトが、どんな言葉で検索されて訪問されているかなどを確認するためのツール)を使用したりすることで、実際に検索されているキーワードを確認できます。
ディスカッションによって、指名検索キーワードがいくつか出てきたら、後々の管理のためにリスト化しておきましょう。
次に、現時点での自社の検索パフォーマンスを確認します。具体的には、コンテンツの検索順位やトラフィックを分析しましょう。
ここでは、「特定の指名検索キーワードで、検索順位はどうか?」「どれぐらい流入数を獲得できているか?」などを確認する必要があります。このような場面で役立つ無料ツールとして、キーワードリサーチツール「ラッコキーワード」がおすすめです。
(出典:ラッコキーワード)
分析の結果、検索順位が低い場合には、コンテンツの見直しや改善が必要です。
パフォーマンスの確認を定期的に行うことで、強化すべきコンテンツや改良点を明確にすることができますので、必要に応じて調整を行うことが重要です。
次に、指名キーワードの選定を行います。
つまり、最初に社内ディスカッションなどからリストアップしておいた自社の指名キーワードから、『今後はこの語句で検索上位を目指す』といった目標を明確に定めます。どの語句で検索上位を目指すのか、ゴールを明確に決めることは、SEO対策に取り組むうえで重要です。
洗い出したキーワードの中から、特に自社ブランド、製品・サービスとの関連性が高く、検索ボリュームの多いものを選びましょう。
次に、そのキーワードに対応する既存のコンテンツを確認し、パフォーマンスを確認したうえで、必要に応じて新規コンテンツを作成します。
具体的には、製品ページやサービス紹介ページ、FAQページなど、ユーザーが求める情報に迅速にアクセスできるようなコンテンツを準備するのが有効です。選定したキーワードを含むブログ記事やホワイトペーパーなどを作成するのも、指名検索ユーザーの疑問・不安を払拭し、製品・サービス理解を深めてもらうためによいでしょう。
SEO対策を行うには、内部リンクの整備が不可欠です。内部リンクとは、サイト内の複数ページ間をリンクでつなぎ、互いに回遊しやすくすることです。
内部リンクは、ユーザーが関連情報にアクセスしやすくなるだけでなく、検索エンジンがサイト全体の構造を理解する助けになります。ナビゲーションバーやフッターに重要なページへのリンクを追加し、関連するブログ記事や製品ページに適切な内部リンクを設置します。
また、コンテンツのメタデータやタイトルタグ、ヘッダータグなども最適化し、検索エンジンにとって理解しやすい構造を構築しましょう。これにより、検索結果での上位表示を目指すことができます。
SEO対策の効果を測定するには、定期的なパフォーマンス分析が必要です。Googleアナリティクス>やGoogleサーチコンソールを利用して、トラフィックの変動やコンバージョン率の変化をモニタリングします。
また、キーワードランキングの変動やページの閲覧数、直帰率などを分析し、SEO対策の効果を評価します。
このような分析作業を進めるうえでは、有料ツールではありますが「ahrefs」のようなSEO分析ツールを使うことがおすすめです。
など、迅速かつ効率的に可視化できるので、分析にかかる手間と人手を節約できます。
データをもとに、SEO戦略の見直しや改善に取り組むことで、継続的に指名検索数の増加を目指しましょう。
(出典:ahrefs)
指名検索は、製品・サービスに興味関心を持っている確度の高い見込み客と接点を持てる絶好のチャンスです。その後のコンバージョンにつなげるためには、Webサイトやコンテンツを通して、見込み客の欲しい情報を探しやすい導線で設計することが大事です。
そして、指名検索を増やすためには、適切なチャネルを検討する必要があります。WebサイトやCM、広告、SNSなど見込み客が情報を探すチャネルは多様化しています。自社のペルソナはどのようなチャネルを使って情報収集をするのかを分析したうえで、チャネル選択をするとよいでしょう。
合わせて、自社のビジネスが「Horizontal SaaS」それとも「Vertical SaaS」なのか、中小企業がターゲットなのか、大手企業がターゲットなのかによっても、施策のアプローチは変わってきます。営業戦略・マーケティング戦略全体を考慮して指名検索を増やす方法を検討してみてください。