新規の見込み客獲得をデジタルに頼るご時世では、どれだけ俊敏にデジタルマーケティング活動のPDCAを回すかが施策の効果を最大化する鍵となります。しかしながら、企業構造が複雑なBtoB企業では、マーケティング部門単独でGoogle アナリティクスなどの設定すら容易でなく、現実的には工数がかかってしまい、PDCAどころではない……という企業も多く存在します。
このようなBtoB企業の事情を踏まえ、この記事ではかんたんにPV数を調べる目的ややり方について解説していきます。
PV数(ページビュー数)とは?
PV数とは、Webサイト内のあるページに、どのぐらいのアクセスがあったかを数値化したものです。ユーザーがブラウザ上でページを表示するごとに、PV数がカウントされます。
セッション数との違い
1人のユーザーがあるウェブサイトに訪問し、複数ページを開けば、PV数は2以上になります。つまり「実際に何人のユーザーがWebサイトに訪問したか」を測定することはできません。そこで、何人のユーザーが訪問したかを把握する際に用いるのが、セッションです。セッションが多いほど、サイトを訪問するユーザーの数が多いということになります。
基本的に1回のセッションで、1ページしか閲覧しない場合もあれば、何ページも閲覧されるケースもあります。例えばあるWebサイトに訪問したユーザーがAページを閲覧後、Bページを訪れ、サイトから離脱するとセッションは1。一方でページを閲覧したのは2回なので、PV数は2となるわけです。
トラフィックという解釈との違い
トラフィックはPV数とよく混同されますが、正確に言うと、一定時間内におけるアクセスの総量を指します。つまりどの時間帯が一番、サイトへのアクセスが多かったのかを把握する際に持ちいる言葉です。
たとえば夕方頃にPV数が多くなるようなサイトであれば、その時間帯に合わせて新着記事を投稿する、といった判断に役立てるのです。
BtoB企業がPV数(ページビュー数)を調べる意味
そんなPV数ですが、なんとなく知っても意味はなく、まずは目的を明確化することが大切です。
たとえば、PV数がいくら以上あればオンラインでの施策を優先し、満たなければオフラインやPRを優先するといった目安を設定するためです。また、オンライン上でリード獲得を行いたいとき、「そもそもユーザーのニーズを満たすためのコンテンツは揃っているのか」なども確認しておきましょう。
ファネルのどこに穴があるかを可視化できる
実際にPV数を把握すると「認知」→「情報収集」→「比較検討」→「購入」というファネルのどこに穴があるのかを可視化することにつながります。
その結果、オンライン施策の課題が見えてくるかもしれません。
たとえば「会社概要」や「トップページ」のPV数が多い場合、製品や企業名で検索を行う「指名検索」が多いと推測できます。つまり、検討・決定のフェーズにいる人たちがPV数を産んでいる可能性があるといえます。それ以外のFAQやブログへのPV数が多い場合は「非指名検索」が多いと推測でき、認知の段階にいるユーザーからのアクセスが中心というわけです。
どのタイプのコンテンツの制作を優先すべきか理解できる
PV数が多い箇所がわかれば、どういったコンテンツを優先して作るべきかの施策に役立ちます。
前提として「認知」から「情報収集」の段階までは、非指名検索。そして、情報収集でサービス名を知り、「比較検討」の段階で指名検索を行うのが一般的です。
ここでFAQやブログへのPV数が多い、つまりは非指名検索が多く、逆に指名検索が少ない場合、現状のコンテンツでは自社製品についてあまり訴求できていないと考えられます。
そこで、他社製品と比較検討を行う際に役立つ「○○ツール おすすめ」という記事内で、自社製品のメリットを訴求します。そのほか、導入事例や技術資料のホワイトペーパーなど、より製品について詳しく紹介できるコンテンツを拡充する必要があるでしょう。
また、ブログ記事から導入事例やホワイトペーパーのダウンロード画面への導線が適切でない、といったことも考えられるでしょう。
既存施策の効果を把握できる
PV数が多い場所を把握できれば、既存施策の効果も確認できます。製品サイトのPV数が少ない場合、製品名を露出する施策が不十分、もしくは現状の打ち手の効果が薄いと考えられます。
その場合、プレスリリースや外部メディアとの連携によるPRで、製品名を露出する施策が有効でしょう。またSNS広告や記事広告、リスティング広告をはじめとしたオンライン広告を行っているのであれば、コンテンツの内容を見直し、設定しているターゲットやキーワードなどは適切かどうかも確認してみましょう。
BtoB企業が楽にPV数(ページビュー数)を調べる
冒頭でも述べた通り、部門構造が複雑なBtoB企業では、Googleアナリティクスの設定ですら数週間かかってしまうこともあります。タグなどの埋め込みは他の部門、もしくは管理自体を別部門にお願いしないといけないケースも。そこでこの記事では、タグの埋め込みなどが必要なく、マーケティング部門で完結させることができるツールを紹介します。
なお、Google アナリティクスの設定方法が気になるという方は、以下のサイトで確認してみてください。
参考元:Google アナリティクスの設定
おおよそ全体像がわかるSimilarWeb
Similarweb(シミラーウェブ)は、URLを入れるだけでそのサイトのアクセス状況がわかるツールです。
参考元:Similarweb
無料版と有料版があります。
以下のように、無料版であっても月間セッション数や訪問数などを、他サイトと比較しながら確認できます。
参考元:Similarweb
なお無料版と有料版の大きな違いは、閲覧できる過去データの期間に制限があることです。有料版だと最大3年間の情報を閲覧できますが、無料版は直近3ヶ月の情報のみ。そのほか、有料版では業界分析などの機能も利用できます。
有料版は「マーケティングパッケージ」「アフィリエイトマーケティングパッケージ」「ディスプレイマーケティングパッケージ」の3プランが月額199ドル(約2万2000円)。これら3つのプランに、さらにサポート機能などがついたプレミアムプランの料金は問い合わせを行う必要があります。
オーガニック検索やKWがわかるahrefs
Ahrefs(エイチレフス)はSEO分析ツールの一つです。
参考元:Ahrefs
自社サイトだけでなく、競合サイトの被リンク分析や検索エンジンの上位表示コンテンツ、想定流入キーワードなどの把握が可能です。
以下のような用途で利用できます。
- オーガニック検索数や検索順位などの調査
- 競合サイトの上位表示コンテンツを調査
- ソーシャルメディアで話題になっているコンテンツを調査
- 流入していないキーワードから新規コンテンツを検討
- 自社と競合サイトのキーワード難易度を調査
- サイトの順位変動をチェック
SEO分析ツールという名の通り、検索エンジンが評価するコンテンツの傾向を把握し、提供するブログ記事などの制作に役立てるといった使い方が可能です。利用できる機能に合わせて、以下4プランが用意されています。
- ライト:月額99ドル(約1万円)
- スタンダード:月額179ドル(約2万円)
- アドバンスド:月額399ドル(約4万4000円)
- エージェンシー:月額999ドル(約11万円)
検索順位の推移がわかるSERPWatcher
SERPWatcherも、分析したいサイトのURLを入力するだけで検索順位の推移などがわかるツールです。
参考元:SERPWatcher
検索順位での変動情報を毎日取得。順位変動があった場合には、アラート機能により、メールなどで知らせてくれます。
こちらは10日間無料トライアルが用意されており、有料版は以下3つのプランがあります。
- ベーシック:月額29.90ドル(約3300円)
- プレミアム:月額39.90ドル(約4400円)
- エージェンシー:月額(約8800円)
PV数(ページビュー数)を調べた後にすべきこと
企業の売上がPV数の上下に依存する場合、PV数を上げるための施策は必須といえます。
また、そもそもウェブサイトからコンバージョンにつながっているのかも理解しておく必要があるでしょう。コンバージョンにつながっているのであれば、早急にPV数向上を狙った施策を打ちたいところ。とはいえ、ペルソナが検索エンジン経由で情報を調べるかどうかなども確認した上で、オンラインの施策に注力していく必要があります。
以上を踏まえた上で、以降ではPV数が「右肩上がり」「右肩下がり」「水平飛行」3つのパターンに合わせ、やるべきことを解説していきます。
右肩上がりの場合
PV数が右肩上がりで、なおかつ自社製品がターゲットとしているユーザーからの流入があるようなら、コンバージョン率を高める工夫を行いたいところです。
たとえば、ブログ記事を充実させ、PV数は順調に増えていて、なかなか指名検索が増えないといったケース。この場合、ブログ記事から導入事例やホワイトペーパーのダウンロードなど、より詳しい情報を知るための導線が適切か、確認しましょう。
大概の場合、ナーチャリング(顧客育成)の流れが不明瞭なケースが多いため、一度カスタマージャーニーマップをもとに顧客が購入に至るまでの流れを可視化してみると良いでしょう。
右肩下がりの場合
右肩下がりの場合、実施している施策の量と内容を検討し直す必要があるでしょう。
たとえば下がり始めたタイミングから、記事の更新頻度なども減っている場合、全体のPV数がこれまでより下がるのは自然な状態といえます。
PV数は減ったものの指名検索の割合はそのまま、もしくは増えているようであれば、自社製品の認知度は向上している証拠。右肩下がりの状況が本当によくないかどうか、確認してみましょう。
水平飛行の場合
水平飛行の場合、PV数を上げる施策に注力していきましょう。たとえば自社製品サイトに誘導することなどが目的の「オンライン広告」はひとつの方法。前述した通り、ウェブ上で展開されるSNS広告や記事広告、リスティング広告などが該当します。
オンライン広告は、従来の新聞や雑誌などのオフライン広告と違い、トラッキングのためのパラメーター仕込むことが可能。そのため、正確なROI(費用対効果)の追跡ができます。さらに、SNS広告であれば行動属性などに合わせ、特定の見込み客にピンポイントでアプローチできるといった特徴もあります。
そのほか、コンテンツを制作する手間はかかりますが、ビジネスブログ(オウンドメディア)の運営を通じて認知を図る方法もあるでしょう。仮に非指名検索を狙い作成したコンテンツが、検索結果で上位表示されれば、多くの潜在見込み客にアプローチできる可能性があります。
さらに「PR TIMES」などのサービスを利用し、自社製品のプレスリリースを配信することも有効でしょう。
参考元:PR TIMES
市場から認識され、自社サイトにアクセスが集まってきたら「プレスキット」も設置したいところ。プレスキットとはメディア関係者向けに作成する、プロモーション用の資料・画像・動画素材をまとめたもの。企業側が発信したい情報を、媒体側で正確に取り上げてもらいやすくなります。
まとめ
PV数の把握は、単に自社サイトへの流入がどれだけあるかを知るだけにとどまりません。PV数を把握すると、ファネルのどこに穴があるのかが分かり、その結果オンライン施策の課題が見えてきます。
ただお伝えした通り、タグなどの埋め込みが必要となるGoogleアナリティクスの利用は、BtoB企業にとってなかなかハードルが高いでしょう。そこでSimilarWebなど、まずは無料のツールでPV数を把握してみてください。