SaaS用語/指標をアイウエオ順で網羅!これからのBtoBマーケティング担当者が知っておくべき用語解説

2021/07/13
SaaS BtoBマーケティング SaaS用語/指標をアイウエオ順で網羅!これからのBtoBマーケティング担当者が知っておくべき用語解説

SaaS業界ではARR、MRR、LTV、CACリード、チャーンなどほかの業界ではあまり使用しない英文字やカタカナ用語がよく使われます。そのため、予備知識なしで情報を理解しようとするとチンプンカンプンな状態になってしまうかもしれません。

本記事では、BtoBマーケティング担当者が必ず知っておくべき、重要なSaaS用語や指標をアイウエオ順に紹介します。

マーケティングの成果を出す上で重要な指標でもあるので、それぞれの定義を正確に押さえておきましょう。

ARPA (Average revenue per account:アープ)

ARPAとは1契約者(アカウント)あたりの月次平均売上のことです。

Average(平均)、Revenue(収益)、Per(~につき)、Account(口座、契約者の意)を組み合わせた用語で「アープ」と呼びます。

以下の式で算出します。

  • 売上総額 ÷ アカウント数=ARPA

SaaSの多くは月単位の契約であり、毎月の売上を積み上げていくビジネスモデルです。

また、ビジネスモデルによってはARPU(average revenue per unit)という表現を使う場合もあります。これはID課金の場合、その最小単位をunitと表現するためです。

ACV (Annual Contract Value)

ACVとは顧客の平均年間契約額です。一年間の基本料金だけでなくオプションサービスもすべて含んだ金額です。Annual(年間)、Contract(契約)、Value(価値、価格)を組み合わせた用語です。以下の式で計算します。

月額契約の場合:

  • ACV = 月額料金×利用月数 + オプション料金

年額契約の場合:

  • ACV = 年間契約料金 + オプション料金

ARR (Annual Recurring Revenue):エーアールアール

ARRとは 顧客のサブスクリプションサービス利用料金の年間合計金額です。初期費用、オプションサービスは含まれません。

Annual(年の)、 Recurring(繰り返す)、 Revenue(収益)を組み合わせた用語で毎年決まって発生する収益を意味します。「アニュアル・リカーニング・レベニュー」または略して「エーアールアール」と読みます。

月額契約の顧客のARRを算出する場合は以下の式で計算します。

  • ARR = MRR x 12ヶ月

MRR (Monthly Recurring Revenue:エムアールアール)

MRRとは毎月、決まって発生する収益のことを指します。
Monthly(月ごと)、 Recurring(繰り返し得られる)、 Revenue(収益)を組み合わせた用語で「マンスリー・リカーニング・レベニュー」または略して「エムアールアール」と読みます。

  • MRR = ARPU(月の平均顧客収益) × 顧客数

Expansion(エクスパンション)

既存顧客がサービスをアップグレードしたり、追加して発生する収益の増加を指します。Expansion(拡張)という意味であり、アップセル、クロスセルによって発生します。

MQL(Marketing Qualified Lead:エムキューエル)

MQL (Marketing Qualified Lead) とは、マーケティング部門がさまざまなチャネルから獲得した見込み客(リード)のことを指します。営業に引き渡すほどのニーズが明確でなく興味・関心がある段階の見込み客を多く含みます。マーケティング活動の成果を測る指標です。

Marketing(マーケティング)、 Qualified(適格な、値する)、Lead(見込み客)を組み合わせた用語で「マーケティング・クオリファイド・リード」または略して「エムキューエル」と読みます。

SQL(Sales Qualified Lead:エスキューエル)

SQLとは、営業部門がフォローする必要があると認定した見込み客を指します。具体的にはマーケティング部門やインサイドセールス部門がリードナーチャリングを行い、ニーズを確認できた段階で営業に引き渡して良いと判断できた見込み客のことです。

Sales(営業)、Qualified(適格な、値する)、 Lead(見込み客)を組み合わせた用語で「セールス・クオリファイド・リード」または略して「エスキューエル」と読みます。

SaaS Quick Ratio

SaaS Quick Ratioとは、一定期間における収益の成長(新規MRR + 拡張MRR)と収益の縮小(解約MRR + 収縮MRR)の比率です。成長と解約の単純な比率を算出することで、収益成長の健全性を測る指標です。

 

SaaS Quick Rationの方程式

 

CAC(Customer Aquistion Cost:カック)

CACとは、一顧客を獲得するためにかかった費用。つまり顧客獲得単価です。マーケティング費用だけでなく営業活動費用もすべて含んだトータル獲得コストです。月単位、年間単位など期間を決めて計算して算出します。

Customer(顧客)、Acquisition(獲得)、 Cost(費用)を組み合わせた用語で「カスタマー・アクイジョン・コスト」または略して「カック」と読みます。

  • CAC = 営業・マーケティング費用の総額 ÷ 新規顧客獲得数

CAC Payback Period(カックペイバックピリオド)

CAC Payback Periodとは、CAC(顧客獲得コスト)を回収するまでにかかる期間を指します。 一顧客あたりの収益性を測る指標です。当然、期間が短いほど費用対効果は高くなります。一般に6〜12ヶ月が目安とされています。

CAC(意味は前半参照ください)、Payback(投資回収)、 Period(期間)を組み合わせた用語で「カック・ペイバック・ピリオド」と読みます。

  • CAC Payback Period = 平均CAC ÷ (ARPA x 売上総利益率)

NRR(Net Revenue Retention:ネットレベニューリテンション)

NRRとは、純収入の維持率のことを指します。

総収益(アップセル、クロスセルなどを含む)から、解約(契約満了、解約、ダウングレード)された減収益分を差し引いて計算します。

Net(純、正味の)、Revenue(収益)、Retention (維持)を組み合わせた単語です。

 

NRRの方程式

 

LTV(Life Time Value:ライフタイムバリュー)

LTV(Life Time Value)とは「顧客生涯価値」つまり、一顧客から生涯にわたり得られる収益のことを指します。SaaSは解約が容易なビジネスモデルのため、LTVが大きい = 顧客が満足してサービスを継続利用し続けたことを意味します。

LTVを計算するには複数の方法がありますが、SaaS企業でよく用いられる簡単な計算方法の一つはARPU(月次平均収益)を解約率で割って計算します。

  • LTV = ARPU / Revenue or Customer churn.

Lead(リード)

Lead(リード)とは、BtoBマーケティングの世界では「見込み客」を指します。単にWebを訪れたりウェビナーを視聴したりするのではなく、氏名やメールアドレスなど何らかの個人情報を提供してくれた見込み客を指します。Leadの数が多いほど顧客になる数が増えるため、売上を予測する重要な指標です。

VISITOR TO LEAD(ビジタートゥリード)

ウェブサイトの訪問者が、リードに転換する率です。サイト訪問者数をポップアップ、メール購読、無料ダウンロード、ランディングページなどに登録したリード数で割り出して計算します。

 

vist to leadのコンバージョンの計算式

LEAD TO CUSTOMER

リードから顧客への転換率を示す包括的なコンバージョン率です。リードの質が適格であればコンバージョン率は高くなり、適していないリードを大量に生成するとコンバージョン率は低くなります。

 

lead to customerの計算式

Churn(チャーン)

Churn(チャーン)とは解約率のことです。

売上単価が小さく、しかも月単位で解約できるSaaSは、いかに解約率を抑えるかが成長する上での大きなポイントです。解約率が1%違うだけでMRRの成長曲線に驚くほどの差がでます。

 

Churn率とMRRの伸び

(出典:RECUR by Profitwell

 

以下の種類があります。

Customer Churn(カスタマーチャーン)

customer churn(カスタマーチャーン)とは、一定期間の顧客の解約率です。

  • Customer churn(カスタマーチャーン) = 失った顧客数 ÷ 期初の顧客数

Net Churn(ネットチャーン)

Net Churn とはその月に解約されたMRRとアップセル、クロスセルによって増えたMRRを考慮して計算する解約率です。

  • Net Churn =(その月に失ったMRR-Expansion(拡張)やアップセルによって増えたMRR)÷ 期初のMRR

Nagative Churn(ネガティブチャーン)

Negative Churnとは、サービスの拡張やクロスセル、アップセルによって増えたMRRの増加分が、退会によって失った収益低下分を上回った場合のレートのことです。

 

Nagative Churn(ネガティブチャーン)

Revenue Churn(レベニューチャーン)

Revenue Churn(レベニューチャーン)とは、解約やダウングレードによって失われる経常収益の指標です。一定期間に失われた収益と、その期間の初めに得られた収益との比率で表されます。以下の計算式で出します。

  • Revenue Churn=(解約されたMRR)÷(期首のMRR)

Gross Churn(グロスチャーン)

顧客の解約やサービスのダウングレードなどで発生する月の損失金額の総額。

  • Gross Churn=月に失ったMRR÷月の最初のMRR

Unit Economics(ユニットエコノミクス)

Unit Economics(ユニットエコノミクス)とは、SaaS業界では一顧客あたりの採算性(損益)を示す指標です(ほかの業界では製品・サービスごとの場合もあります)。

どのようなビジネスでも売上-経費=利益の公式は同じです。売上を最大化し、経費を最小限にすることを追及する必要があります。しかし、新規事業の場合一定の投資期間が必要で、当初は赤字が続きます。LTV (顧客から生涯得られる収益)>CAC (顧客獲得コスト)になって初めて利益が出ます。

 

LTV (顧客から生涯得られる収益)>CAC (顧客獲得コスト)

(参照:Bretwaters

 

とはいえ投資期間に赤字をいくらでも出していいわけではありません。健全なビジネスを行っているか測る指標がUnit Economicsです。以下の計算式で算出します。

 

  • Unit Economics=LTV(顧客生涯価値)÷CAC(顧客獲得単価)

Unit Economicsが「3以上」だと健全な経営だとみなされ黒字化が早まるといわれており、投資家のベンチマークのひとつになっています。

 

ユニットエコノミクスの健全な指標

(参照:Slideshare

 

ZERO CASH DATE( ゼロ・キャッシュ・デート)

Zero Cash Date (ZCD)は、現在新たな収益が発生しないと仮定した場合に、スタートアップ企業がキャッシュアウトする予測日です。新たな資金調達を行うべき時期の目安でもあります。キャッシュフローが豊富になればなるほど、ZCDは先に進んでいきます。

まとめ

SaaSは、損益分岐点が一般の業界よりかなり先にあるビジネスモデルです。しかし、上記のような指標によって将来的な成果が予測しやすいビジネスモデルでもあります。多くのSaaSスタートアップが赤字にも限らず資金調達にこぎつけているのは、各指標から事業の健全性が分析できるためです。

指標の意味を理解し、自社のビジネスの状況を把握し適切なときにアクセルとブレーキを踏めるようになりましょう。

 

 

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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