最近、公表されたトライベック株式会社の調査によると、中小企業のWebマーケティングへの取り組みは2極化しているようです。Webサイトこそ力を入れているものの、SEOやWeb広告、SNSマーケティングなどについて、今後も取り組む予定がないとした企業が50%前後にのぼります。
手をつけたくない企業の気持ちもわかります。Webマーケティングの施策の種類は数多く、カタカナ用語のオンパレード。ノウハウ記事を読んでも何をどう取り組めばよいのか、明確な成果が上がるのかわかりにくい情報ばかりです。
そもそも予算なし、人材なし、が中小企業のリアル。下手に手を出して火傷をするのは避けたくもなるでしょう。しかし中小企業の場合、Webマーケティングといってもあれこれ手を出す必要はありません。
公式HPに過不足ない情報を掲載し(ここが意外にできていないのですが)、一つのマーケティング施策に取り組むだけでもそれなりに成果は出ます。本記事では、中小企業がWebマーケティングを行う際の実践ポイントと施策例を解説します。
Webマーケティングとは、Web上でできるマーケティングの総称です。施策はバラエティに富んでおり、代表的な打ち手だけでも以下があります。
前述のとおり、中小企業がこのすべてに取り組む必要はありません。公式HPに過不足ない情報をのせて、オンライン上での見込み客の流入を増やす施策を一つ作るだけでも十分です。
例:
HP + SNS マーケティング
HP +メール マーケティング
HP +SEO(検索エンジン最適化 )
Webマーケティングの目的は、ブランディング、認知拡大などさまざまですが、中小企業の場合、基本的にオンラインからの見込み客獲得です。営業部門とは別に売上形成のルートを作ることが重要になります。
なぜ、Webマーケティングが重要かというと、営業ひいてはビジネスの主戦場がリアルからオンラインにシフトしているからです。購買担当者は、今や購買の初期工程の約70%をネット上で完結します。以下に、具体的なメリットを記載します。
Webマーケティングは、パソコンやスマートフォンを活用するすべての人に認知拡大できる施策です。リアルだけで市場を広げるには限界がありますが、Webマーケティングなら地理的に遠い見込み客、これまでのブランドとは違う属性の層に容易に認知を広げられます。
Webマーケティングはお金をあまりかけずに始められます。テレビや雑誌の広告に手が出ない中小企業でも、Web上では無料もしくは低コストでアピールが可能。インターネットが普及した現代は、恵まれた環境です。
無料でできること:
予算0でもWebサイトを作成して宣伝するくらいはすぐスタートできます。有料広告も多くは成果報酬型で紙メディアより安価。また、当初は出さなくてもよいでしょう。
しかし手間ひまはかかります。成果がでるまで一年かかるかもしれません。担当者も必要です。ただ、中長期的に見ればコストパフォーマンスが高いので、中小企業だからこそ取り組むべきです。今後は無料サービスが有料になる可能性もあります。今のうちに取り組みましょう。
Webマーケティングなら、対象を絞り込んでアプローチできます。
見込み客が人事部であれば「人事部 悩み」「採用コスト」など、人事担当者が検索しそうなキーワードで検索した人のみに広告を表示させられます。SNS広告なども以下のように、配信対象を絞り込めます。
YouTubeやGoogle、SNSなどは閲覧履歴にもとづいて情報を表示させるアルゴリズムがあります。リアルなマーケティングより狙った層に届きやすい点が長所です。
Webマーケティングは成果が明確に数字ででます。それも最終的成果だけでなく、以下のようにプロセス上の成果も測定可能です。
データにもとづき成果の出る方法を続け、出ない施策を見直したり中止したりできます。見込み客がどの部分で離脱したかもわかるので、どこを強化すべきか見える点もメリットです。
マーケティング部門がない、広告宣伝部門がない。または営業部門すらない中小企業もあるでしょう。ここでは、ありがちな中小企業のマーケティング課題を解説します。
中小企業はそもそも広告をあまり出しません。無料ホームページサービスを提供するアイ・モバイル株式会社が、2021年に 中小企業を対象に行った調査によると、一年間の広告宣伝費用の平均は「98万円」でした。
とはいえ、内訳をみると5万円未満が25%、20万円以下の予算の企業が53%。リアルさを感じられるのではないでしょうか? 一部の何百万円も予算を持っている企業が平均値を上げているだけであり、多くの企業はそれほど予算がありません。
Webマーケティングは無料でできることが多いので、20万円以下でもある程度の活動はできるでしょう。しかし、担当にとって厳しいやりくりが必要なことはたしかです。
(出典:アイ・モバイル株式会社)
人的リソースとは「従業員の資源」のことです。マーケティング人材がいないだけではなく、以下も含めての課題です。
このような環境で、たとえばSNSになじみのある若い従業員にSNSマーケティングなどを任せても、担当者がすべてを自力で行うことは難しいでしょう。指導する人はもちろん、仕事上の成果を正しく評価できる人もいないので、モチベーションが上がりにくいことが予想されます。
以下は、株式会社タナベコンサルティンググループが実施したマーケティングに関する課題の調査結果ですが、1位は人員不足です。
(出典:「2023年度ブランド&マーケティングアンケート調査」株式会社タナベコンサルティンググループ)
仮に広告宣伝の担当者がいても、Webマーケティングの経験やスキルが不足していることは珍しくありません。ベテランでも展示会やパンフレット作成、業界紙の広告展開しかしたことがないケースもあります。
総務がWebサイトを制作したり、営業企画部門が広告宣伝、マーケティングなどを兼務したりするケースでは、Webマーケティングまで手が回らないケースがほとんど。こうなると、経験値では若手人材と大きな差はありません。
世は人材不足で、マーケティング人材は引っ張りだこです。経験豊富なマーケターの採用は難しく、かつ大手企業の経験者が必ずしも合うわけではありません。
実はマーケティング領域は大手企業になるほど担当が細分化されており、かなり狭い領域のプロであることが珍しくありません。優秀なのですが、その方の持っているスキルが自社のWebマーケティング施策に合っていないと、お互いに残念な結果になります。
企業は人件費をムダにしますし、人材側は転職歴が増えるなどキャリアに傷がつきます。
このように、人材不足、ノウハウ不足、予算不足という3重の課題があります。そのため、比較的若い世代に担当になってもらい裁量権をもたせる方法がどうしても浮上するでしょう。YouTube、InstagramなどのSNSを使い慣れている世代なら、まだWebマーケティングとの親和性が高いからです。
ただし、ここで丸投げをすると大抵失敗します。会社として初めてのWebマーケティングなら、一人のマーケターにまかせるのではなく、経営層がコミットして取り組むことが重要。すぐに成果が出ないことを前提に、最低1年は続ける必要があります。
中小企業向けのWebマーケティング施策の例を紹介します。どの施策を手掛けるかは、自社のリソース(予算、人的資源)をもとに考えてください。
Webサイトには「公式Webサイト(コーポレートサイト)」「サービスサイト」「オウンドメディア」の3種類があります。
(出典:アイ・モバイル株式会社)
もっとも大切なのが公式HP(コーポレートサイト)。Webマーケティングの基本です。上記は前述のアイ・モバイル社の別調査ですが、中小企業にとってもっとも費用対効果が高い施策はHPという結果です。
中小企業は、Webサイトに過不足ない企業情報(会社概要)を記載することが何より重要。会社概要、設立年月日、代表者氏名、従業員数、事業内容、電話番号またメール掲載はマストです。
デザイン性、かっこいい理念、キャッチコピーなどは基本情報が充実して初めて効果を発揮します。なぜなら、検索している見込み客が初期に気にするのは、しっかりした組織か? 反社でないか? 取引上で悪い評判がないかなどの与信管理だからです。
なぜか他の部分は注力しているのに、会社概要ページは申し分ない程度にあっさりしか記載していないケースが非常に多いです。一人会社であっても、2〜3人の会社であっても昨今は特に問題ないので、書くべき情報をしっかり記載しましょう。情報が少ないと不安を持たれます。
オウンドメディア、SNSなどで関心を持って訪れた見込み客が、HPの情報が貧弱で躊躇するのは、マーケティングの努力を考えるともったいないことです。
コーポレートサイトのお手本を紹介します。以下のWebサイトは、Googleで「広告制作会社 中小」で検索すると1〜3位に表示される中小企業です。
例:ホイポイプロダクションズの公式HP
(出典:ホイポイプロダクションズ)
小さい合同会社ですが、誰に向けて商売しているかがはっきりと伝わる「中小企業、個人事業主・ローカル企業の強い味方」という見出しのコピーがあります。
その下には経営陣のこれまでの略歴を記載。その下に提供サービスを簡潔に紹介、さらにその下に事例、お問合フォーム、XなどのSNSアカウントがあります。
デザインが素晴らしいことはさておき、見込み客が知りたい情報がほぼTOPページに集約されておりとてもわかりやすく、このページだけで安心感をもてます。
サービスサイトとは、企業が提供するサービス・商品に特化したWebサイトです。
企業規模が大きくなるとコーポレートサイトでは従業員向け、取引先向け、投資家向けの情報などをバランスよく掲載しなければなりませんが、サービスサイトは商品・サ-ビスの販売をゴールに、コンテンツを作成できます。
以下は、株式会社OKANのサービスサイト「オフィスおかん」。コーポ―レートサイトとは別に運営しているサイトです。なぜ今、置き型社食が好評な理由、どのような種類があるのか? 従業員満足度への影響などを、総務人事部担当者に向けて紹介しています。
例:オフィスおかんのサービスサイト
(出典:オフィスおかん)
広報・PR・コミュニケーションの専門誌『広報会議』が、2024年に調査した「オウンドメディア実態調査」では、運営者の8割が「オウンドメディアの効果」を実感している結果が出ています。
特に「企業イメージ向上、ブランディング(76.7%)」「採用の強化(52.4%)」「社内コミュニケーション(51.5%)」に高い効果があるという結果ですが、「見込み客の獲得(41%)」もランクインしています。
オウンドメディアは自社で編集ができるので、自社が伝えたい情報を、見込み客に向けてあますことなく伝えられます。また、広告とは違い半永久的に見込み客を惹きつけられるでしょう。
たとえば当社も零細企業ですが、このブログ(オウンドメディア)によって認知が広がり、いろいろな見込み客の方、パートナー企業の方と知り合ってきました。マーケティング関連のキーワードで検索して本ブログの読者となり、ある日お問い合わせいただくという流れです。
Web広告の種類は多く、新たな広告のタイプも増え続けています。広告なので有料ですが、何より即効性が長所。SNS、ブログの発信、SEOに比べると短期間で認知を得られます。また、多くが成果報酬型なのでリアル広告より費用対効果に優れています。
中小企業が活用しやすいWeb広告には以下があります。
(リデザイン用参考1)
リスティング広告とは、上記のように検索キーワードに連動して表示される広告。上記は「マーケティング AI 活用」で検索して出てきたスポンサー広告です。
おそらくマーケティング担当者がこのキーワードで検索するだろうという予測で、AIツールを提供している企業が広告を表示させています。
リスティング広告は自社で検索キーワードを設定できるため、ニーズが明確な見込み客のみに広告を表示させられます。
また、クリック課金型なので実際に関心のある人が詳しい内容を見て初めて費用が発生する仕組みで、コストパフォーマンスに優れています。そのため、インターネット広告施策の中でもっともポピュラーです。
(出典:「2024年版 BtoB広告施策の定点調査」-IDEATECH調べ)
一度訪れたサイトの商品広告が、後々自分を追いかけてくるようなリターゲティング広告。評価が分かれる広告ですが、業種によっては商品やサービスを検討中の見込み客に自社商品を思い出してもらえる効果があります。
以下の6種類があります。
リターゲティング広告を出せる代表的なプラットフォームには以下があります。
(出典:X)
SNS広告とは、Facebook、X、Instagramなどのプラットフォーム上で配信できる広告です。SNSによってユーザーの年齢層や性別、志向性に個性があるだけでなく、プラットフォームのデータをもとに配信対象者の属性を細かく絞り込むことができます。
閲覧履歴にもとづく広告配信が可能なケースでは、より精度の高い広告配信ができます。たとえば、猫の画像ばかり見ていると上記のように猫ベッドが表示されます。猫を飼っている可能性が高いユーザーに配信されているわけです。
画像広告、動画の配信、一見投稿のように見える広告など形式もいろいろです。
アフィリエイト広告とは、ブログ運営者などのサイトに、企業の商品やサービスの広告リンク(テキスト広告、バナー広告)を表示してもらう広告の仕組みです。
一般に、アフィリエイト・プログラムを提供するプラットフォーム(上記のa8.net)などを通して広告依頼を行います。テキスト広告、バナー広告などの種類があります。多くは成果報酬型で、クリック報酬型広告とアクション報酬型広告に分かれます。
アドネットワーク広告とは、オンライン上の広告プラットフォームを介して配信できる広告です。Web上の広告代理店のような機能を果たすプラットフォームであり、よく知られるプラットフォームには、以下があります。
プラットフォームごとに配信先の特徴や強みがあります。このようなプラットフォームを通すことで効率よくいろいろなWeb上の媒体に広告展開できます。
テキスト広告、バナー広告、動画広告、ネイティブ広告など広告形式も多様。年齢層やエリア、興味関心に応じた配信も可能です。
SEOとは、自社サイトやオウンドメディアのコンテンツを、検索エンジンに上位表示させる施策の総称です。目的は自然検索(オーガニック検索)によって見込み客の流入を増やすことにあります。手順は以下のとおりです。
SEOについては、以前はキーワードを多用するだけで品質の低いコンテンツが上位表示されることもありましたが、検索エンジンのアルゴリズムの進化により、最近は読者の求めているたしかな情報を網羅しているコンテンツが評価されるようになりました。
(出典:2024 年の 100 の魅力的な電子メール統計-Porchgroupmedia)
メールマーケティングとは、メールマガジンの配信や、見込み客への定期的なメール送信により信頼関係を醸成し、問い合わせを増やすマーケティング手法です。
上記グラフは米国Omnisend のデータですが、マーケティング先進国の米国においても、いまだROIの高さではメールマーケティングが1位です。
日本でもメールはいまだビジネスツールのスタンダード。チャットやSNSはあくまで内部やカジュアルなやりとり用であり、正式な依頼、重要情報などはメールでやりとりしています。
見込み客にメールで定期的に役立つ情報を送るだけでも、自社の信頼度を高めることができるでしょう。メールはテキスト情報のみでも完結できるため、費用対効果も高く、イベント開催、オウンドメディアの新記事告知など、他の施策のアシストにも役立ちます。
SNSマーケティングとは、Facebook、X、LinkeIn、Instagramなどの各種SNSヘの投稿や、広告展開を通じて見込み客や顧客と信頼関係を作っていくマーケティングです。
2024年のファストマーケティング株式会社による調査では、コンテンツマーケティングに取り組む企業が、もっとも取り組んでいる施策の1位にSNSマーケティングがきています。
(【コンテンツマーケティングに関する実態調査2024】①国内BtoB・BtoC比較編 - ファストマーケティング株式会社)
これは、Xのような短いテキスト、Instagramのような画像と多少のテキストのみというコンテンツは誰でも簡単に投稿できるので、マーケティング人材がいない会社でも行えることが理由でしょう。
SNSに定期的に投稿していくと、ザイオンス効果により認知が広がります。顧客とプラットフォーム上で交流することやコミュニティを形成することもできるので、リード獲得だけでなく既存顧客との結びつきを深めるツールとしても最適です。
以下は、コベルコ社の公式Instagram。大型の建設機械の迫力や現場の熱気が伝わります。有形サービスの商品は、写真メインのSNSに非常に映えます。
(出典:【公式】コベルコ建機 Instagram)
YouTubeやTikTokを日常的に活用している人はすでに多数派でしょう。画像以上に、多くの情報をリアルに伝えることができるのが動画マーケティングです。
たとえば、以下は最近話題の退職サービスのモームリ社の動画です。正直、動画を見るまではそこまで必要かな? 代行サービスに依頼するのは少数では? と感じる方もいるかもしれません。
しかし、同社のリアルな退職代行手続きの顧客とのやりとり(企業の音声は変えてある)を見ていると、ブラック企業が蔓延する日本において、このサービスはありかもしれない‥という気持ちになる方も多いでしょう。
これは、登場するオペレーターの礼儀正しい対応、自身もブラック企業出身の社長の解説、そして何より彼らの表情、全身から「退職代行サービスが必要だという信念」が強く発散されているためでしょう。
(出典:退職代行の会社への電話現場をガチ公開【退職代行モームリ】 - YouTube)
動画マーケティングのすごいところは、一つの動画だけで気持ちを大きく変えられる点です。テキストの場合いかに説得力のある文章であっても、読者が納得して強く共感するまで時間がかかります。映像は強力です。
これまでにない新しいサービスを社会に認知させるのは一般に大変ですが、この点、動画マーケティングは効果的です。
また、同社の動画配信はブラック企業への牽制にも、安易に退職代行を使おうとする人材への牽制にもなってる面があります。おそらく今後いろいろな問題が噴出するでしょうが、動画を見ると、そこに逃げずに取り組む姿勢であろうことも伝わります。
コンテンツマーケティング とは、広義ではこれまで紹介したようなSNS、動画、オウンドメディア、公式Webサイト、メールコンテンツ、広告などコンテンツを制作するすべてのマーケティング施策を指します。
個別には紹介できませんでしたが、ウェビナー、ホワイトペーパー、プレスリリースなどもコンテンツマーケティングに含まれます。いろいろなコンテンツで見込み客を惹きつけ、リードを生成していくことを目的とするマーケティングです。
流入経路としてSNS、動画、オウンドメディアの記事を使い、Webサイトに訪問した見込み客の情報を獲得するためホワイトペーパーやメールマガジン登録フォームを設置。入手したアドレスに定期的に情報を送っていき見込み客と関係性を醸成し、問い合わせにつなげていくのが一般的な流れです。
Webマーケティングを始めるときに、いきなりブログを書き始めたりSNSに投稿したりする前に、ちょっとした準備をしましょう。もちろん、何もしないよりは前述の行動をするべきです。しかしWebは広大な世界なので、やみくもに情報を発信しても、読んでほしい人になかなか届きません。以下のステップを踏みましょう。
ペルソナとは典型的な顧客像です。不動産プラットフォームを展開するSaaS企業なら家を購入したい人、経理SaaSの企業であれば経営者や経理責任者、営業代行会社なら中小企業経営者など、自社にとって望ましいペルソナがいるはずです。
見込み客でない方々にいくら情報提供してWebサイトに訪れてもらっても、マーケティングの成果は上がりません。ペルソナを可視化することが必要なので、以下のようなシートに顔写真もはって書き込んでいきます。
顧客像くらいわかっていると思われるかもしれませんが、マーケティング担当者は顧客と接する機会が少ないため、顧客心理ではなく自分の気持ちや考えを反映したり、推測でコンテンツを作ったりすることがあります。
また、マーケティングは通常チームで行います。一人マーケターでも外部に制作物を発注するでしょう。そのときに、誰に向かってコンテンツを作るのかを正確に伝える必要があります。これが口頭ではなかなか伝わりません。それぞれが自分なりの顧客像を持つとコンテンツがチグハグな印象になります。ペルソナシートを共有しましょう。
次にカスタマージャーニーをまとめます。人間の個性はさまざまですが、何かを購入するときは「気づき」→「認知」→「検討」という心理プロセスを経ます。カスタマージャーニーとは、見込み客がどこで自社商品を知り、どのような経緯で検討していくかの典型的なシミュレーションです。
テンプレートに、ペルソナの初期〜検討段階の心理やアクションを具体的に書いていきます。
自社の強みを明確にすることも大切です。他社よりダントツに優れている点といわれると、ピンとこないかもしれません。しかし、相対的に優れている点はあるはずです。この点は顧客から支持されているといった長所もあるでしょう。
提供サービスだけでなく、近い、対応が速い、社員が親切などソフト面も差別化要因になります。以下、3点をまず箇条書きにします。
そして、強みを導き出すフレームワーク「USP」の該当する位置にあてはめてみます。自社が提供しており、他社が提供できない(もしくはあまり強くない)、顧客が求めていること(オレンジの箇所)、それが強みです。
Webマーケティングの戦略を立てます。たとえば、中小企業にとっての基本のWebマーケティング施策は公式HPの運用。そして、個別施策を選びます。
SEO(検索エンジン最適化)
SNSマーケティング
メールマーケティング
動画マーケティング
オウンドメディア運営
Web広告
ニュースリリース配信
戦略が理想的でも適任者がいないと不可能なので、人的リソースを確認しましょう。
Webマーケティングも現在の広告宣伝や総務部門に一任すればよいというものではありません。彼らは通常業務があるのでキャパオーバーになる可能性大です。
他部門からマーケティングに適した人材を配置するなら、いきなり高度な施策は無理なので、本人の得意領域からスタートしたほうが現実的です。どの戦略をとるかは人的リソースと照らし合わせて決めます。
Webマーケティングの目的がリード作りの場合、単純にインプレッション数を伸ばすだけではなく、ユーザーの関心度がより高まることや、アクションを起こすきっかけとなる以下のような場を用意する必要があります。
検索エンジン広告を出して見込み客がクリックしたときに、どのようなページが表示されてると理想的でしょうか? SNSで関心を惹きつけたユーザーに次に見て欲しいのはどこでしょうか? そういった場がないとユーザーは通り過ぎていきます。
Webマーケティングを始めるにあたって、予算も確保しておく必要があります。いくつか調査結果を見てみましょう。
以下はECマーケティング株式会社が2023年に行った「コンテンツマーケティングの予算」についての調査です。BtoBでは50〜100万円がボリュームゾーンのようです。
もう一つ中小企業のマーケティング予算についての調査結果です。10〜30万、30〜100万、100〜200万円はほぼ同じような比率です。そして、8割が予算を増やしたいのですが成果がでるかが見えないため、予算を増やせない現状が調査結果に出ています。
とはいえ、悲観することはありません。Webマーケティングは無料でできることもたくさんあります。最初は無料ツールを活用しながらプレッシャーなく取り組み、スキルが蓄積された段階で予算をアップしていくとよいでしょう。以下は予算ごとのイメージです。
ただし、オウンドメディアは初期費用に100万程度かかります。
(出典:HubSpot)
メールマガジンに登録したり、Webサイトに訪問して資料をダウンロードしたり、ウェビナーに訪れたリードのデータは、企業にとっての資産。適切に管理して情報提供していくことが大切です。
初期段階では、メールアドレスと名前など基本情報しかないケースが多いので、ExcelやGoogleスプレッドシートで管理するケースが一般的です。
しかし、将来的にリードが増加するとセグメンテーションして施策を分ける必要も出てきます。後々データ移行する際にまた手間ひまがかかる(表記ルール、ステータスの統一など)より、最初からツールを活用すると効率的です。
上記はHubSpotの無料リード管理ツール。シンプルなデータベースを作り、詳細情報がわかれば追加していくとよいでしょう。Excelだとすぐ限界が来ます。
中小企業がWebマーケティングを成功させるための、具体的なステップを解説します。
なお、Webマーケティングは軌道にのれば見込み客が途切れない仕組みになりますが、1年程度の時間はかかります。その前提で目標と計画を立てないと、成果の出る前段階で挫折してやめがちなので注意しましょう。
Webマーケティングを始めるにあたって、まず定量的な目標を設定します。これは企業にとってもマーケティング担当者にとっても重要。なぜなら、マーケティングは営業活動より具体的な成果が上がるまで時間がかかるからです。
指標がないと順調に成果を上げても不足していると捉えられたり、逆に数字に結びついていないのに成果が出ていると勘違いしたりするケースがあります。担当者も指標がないと達成感が味わえず、作業をしている心理になります。
マーケティングの目標は、以下の表の一次KPIのようにリード数、コンタクト数などになります。ただし注意事項ですが、これまでマーケティング経験がない人材にマーケティング施策をまかせる場合、コンタクト数、獲得リード数などは高すぎる目標です。
挫折してしまうケースもあるので、担当者の習熟度によって適切なKPIを設定してください。新人であればn次KPIの内容で十分です。
(出典:現場のプロが教える! BtoBマーケティングの基礎知識 - Amazon)
誰に向けて、どのようなチャネルで展開していくかを選定します。作成したペルソナとカスタマージャーニーが役立ちます。たとえば、ペルソナが年齢40代、中堅〜準大手の日系企業の総務担当者の場合、以下のチャンネルがイメージできるでしょう。
Webマーケティングはチームで行います。一人マーケターの場合でも、外部パートナーを活用します。内部と外部のバランスは現在の人的リソース次第です。
マーケティング領域には代行事業者が多いので、SNSやマッチングプラットフォームでも簡単に見つけることができるでしょう。しかし、マーケティング経験がないと見極めは至難の技。ここで強いのは紹介です。
2024年Frontier社が行った「Webマーケティングの発注に関する実態調査」によると、パートナー企業の活用で成果が出ている要因第1位は「信頼できる人や企業からの紹介を受けたから」となっています。勉強会、セミナーに参加したら他社のマーケターとつながることも大切です。
Webマーケティング施策の具体的な内容と、四半期、1年のアクションを整理します。担当者ごとに具体的にいつまでに何をするかのスケジュールを組みましょう。
そして、 作成したアクションプランに基づいて粛々と施策を実行します。
たとえば、Googleアナリティクスを活用すれば、Webサイトやオウンドメディアの閲覧数、資料ダウンロード数などを把握できます。また、各プラットフォームはそれぞれ検証ツールを提供しています。
主要な指標には以下があります。
重要な指標(問い合わせ数など)は日々チェックしましょう。週1回ペースで、サイト全体の状況を前週のデータと比較して傾向を把握します。さらに、月1回ペースでレポートを作成し達成状況を評価し、次月以降の施策に生かすとよいでしょう。成果が数字ではっきりわかるのがWebマーケティングの面白さです。
Webマーケティングに初めて取り組もうとすると、やたら難しく感じてしまうかもしれません。しかし、実際はWebサイトを充実させて、そこへの流入経路を作り、見込み客を惹きつける情報を発信し続けるという、3点が肝です。
施策自体はSNSでもブログでもメールマガジンでも社内メンバーの強みを生かせるものであれば問題ありません。小さなことから始めてステップアップしていきましょう。
ただ、Webマーケティングはスタートは容易ですが、続けることのほうが大変。成果が上がるまでタイムラグがあるので、必ず経営者がコミットしてやりきることが重要です。