ソーシャルメディアは今や生活インフラとしてすっかり定着し、日本人は一人平均3.5のソーシャルメディアを使っています。総務省の調査によると、日本人のソーシャルメディアトータルのユーザー数は2022年時点で1億200万人と、ほぼ人口に匹敵する規模です。
誰もがちょっとした空き時間に動画やSNSを楽しむような時代、ソーシャルメディアマーケティングが有効なことは言うまでもありません。とはいえ、これまでニッチな領域でマーケティングを行ってきたBtoBマーケターとしては、公開の場でどんな内容を発信すべきか? 顧客に好意的に受けとめられるかなどを思案することも多いと思います。
そこで本記事では、ソーシャルメディアマーケティングのメリット・デメリット、各メディアのユーザー層や特徴、BtoB企業の成功事例を紹介します。
ソーシャルメディアマーケティングとは、企業がFacebook、X(Twitter)、YouTube、口コミサイトなどのソーシャルメディアを活用してリード獲得、ブランディング、顧客エンゲージメント向上などにつなげるマーケティング手法です。
ソーシャルメディアマーケティングの主要な打ち手には以下があります。
総務省の「令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」から、日本のソーシャルメディアマーケティングに役立つ最新の統計情報をピックアップします。
(出典:総務省 令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査)
ソーシャルメディアマーケティングは、企業とユーザーが双方向にコミュニケーションをとれるマーケティング。そのため顧客と信頼関係を構築しやすく、ブランディングや売上げアップに効果的な一方、炎上などトラブルが起きやすい面もあります。
ソーシャルメディアマーケティングは初期投資が小さく(場合によってはゼロ)、ブランディング、リードの獲得、コンバージョン拡大などが期待できる、コストパフォーマンスに優れた施策です。
昨今は、取引前に相手企業のSNSでの発信、評判を確認することが自然に行われる時代になりました。評価経済社会になりつつあるためSNSのフォロワー数、人脈の質、発信する内容の印象が企業や個人の信頼度に影響を与えます。
未上場企業、無名企業もソーシャルメディア上でそれなりの人脈を持ち、周囲から信頼されていると発注候補として浮上しやすくなっています。逆に無名企業でソーシャルメディアに情報なしだと不安視されかねません。
ニッチな領域で価値ある情報を発信していくことでソートリーダーシップを確立し、中小企業が業績を伸ばしているケースは多々あります。ソーシャルメディアマーケティングは、潤沢な予算を持たない企業がブランド認知を高める最適な手法です。
CMの例が典型的ですが、人にはザイオンス効果と言って何回も見る対象を次第に信頼する傾向があります。ソーシャル メディアで継続的にメッセージを発信していくと、社名や商品に親しみをもってもらえるようになるのです。
BtoBとはいえ結局は人と人との取引。発注者も担当者の個性や企業の社風との相性は気になります。ソーシャルメディアを通して企業のカルチャーや働く人たちの人柄などがわかると安心します。
プラットフォーム上でのコミュニケーションやコミュニティでのやりとりも可能なので信頼関係を築きやすく、見込み客、顧客のエンゲージメント向上が期待できるでしょう。
ソーシャルメディアはたった一つの投稿が1万人に拡散される(ハズる)こともあるため、Webサイトへのトラフィック増加が期待できます。
投稿内のリンクなどでWebサイトへ流入する仕組みを作ったうえで、日々価値ある情報を発信すれば、Webトラフィックも比例して増加します。
米国の統計となりますが、2021年のSocial Media Examiner の調査では、マーケティング担当者の約 10 人中 9 人が、ソーシャル メディア マーケティングはWebサイトのトラフィックの増加に効果的だと認めています。
(画像出典:https://contentmarketinginstitute.com/articles/drive-web-traffic-social-media/)
米国ソーシャルメディア支援ツール企業Sprout社の「2023 Sprout Social Index™」によると、消費者がソーシャルメディアでブランドをフォローする主な理由の68%は、新製品や新サービスに関する情報を入手すること。フォロワー獲得イコールリード予備軍の獲得です。
プロフィール欄にCTA(資料ダウンロード、デモ申込み、問い合わせなど)を設置し誘導すれば、フォロワー以外からリード獲得につながることもあります。広告も年齢、性別、嗜好などユーザーの属性で絞り込んで展開できるため、質の高いリード獲得が期待できます。
2024年に株式会社リンクアンドパートナーズがSNSマーケティングを行う企業のマーケティング担当者に調査した結果では、70.2%の企業が成果があったと回答。39.8%が良かった点として「新しい顧客層を開拓できた」と回答しています。
(出典:株式会社リンクアンドパートナーズ【ベンチャー企業のSNSマーケティングに関する調査】)
ソーシャルメディアマーケティングはオープンな場でコミュニケーションが行われるため、従来のマーケティングとは違うスタンスが求められます。また、トラブルが起きるリスクもあるでしょう。
ソーシャルメディアは、プライベートタイムに視聴されることが多いため、発信内容にセンスや面白さを感じられるほうが好まれます。固い内容だけでなくクスっと笑える情報があったほうが離脱されにくいでしょう。
BtoC企業は一般消費者にアプローチするため、親しみやすい言葉遣いやビジュアルがより有効に働きます。BtoBSaaSも活用するユーザーが従業員であるため、ややBtoCに近いところがあり、カジュアルな発信に親しみをもってもらいやすい業界です。
BtoB、BtoC両方の事業部がある企業も同様。例えば、NECはXやInstagramで固い内容のあいまに#Nめしというハッシュタグでランチメニューを紹介しています。食べ物ネタはSNS上でも人気のテーマですし、内部情報も垣間見えるので関心を集めやすい仕掛けです。
例:NECのInstagram
(出典:NEC公式Instagram)
いわゆる炎上。メールもそうですがテキストコミュニケーションは誤解が生まれやすい傾向があります。オープンな場なので、まったく予想もしない相手からネガティブな反応をされてしまうこともあるのです。
顧客情報を漏洩してしまう、差別的な表現をしてしまう、求職者や社員に対して上から目線の発信をして多くの人から怒りをかってしまうなど、発信者の認識不足によるミスがしばしば問題になっています。ソーシャルメディアでの発信はあっという間に拡散し、情報を完全に消すことが難しいため注意が必要です。
なお、SNSマーケティングを支援する株式会社コムニコ「2023年炎上レポート」によると、もっとも炎上が多い炎上元媒体は「X」でした。
(出典:「炎上レポート」2023年版-コムニコ)
ソーシャルメディアで見込み客に認知してもらうまでには、継続的に投稿する必要があります。ユーザーの興味を惹く内容を日々考えるのは簡単ではなく、ネタ切れにもなります。
コンテンツマーケティング全体に言えることですが、記事の量が蓄積されるまでメディアとして認知されません。高額なコストはかからないものの労力はかかりますし、手間暇の割に簡単な仕事に見られやすい点も、担当者のストレスでしょう。
デジタルマーケティング支援をしている株式会社ニュートラルワークスが2022年に行った、企業の公式SNSアカウント運用に関する意識調査でも、体制・運用下での課題で「何を投稿するかなどの企画や時間に手間がかかる」が第1位です。
プラットフォームのアルゴリズム変更は、企業のマーケティング戦略にしばしば影響を与えます。例えば、TwitterがXとなってからアルゴリズムは頻繁に変更されています。インプレゾンビと呼ばれる個人ユーザーが増える影響もありました。
2024年8月にはイーロン・マスク氏が「小規模アカウントの魅力的なコンテンツを目立たせる」ためにアルゴリズムを変更すると投稿しています。Xの倒産の可能性も話題。オーナーが変わりアルゴリズムが大幅にアップデートされるかもしれません。いずれにせよアルゴリズムが頻繁に変わると効果測定が難しくなります。
マーケティング成果に影響するケースもあります。例えば、Facebookのアルゴリズムが変更されたことで、トラフィックの減少や売上げ低下につながり打撃を被った大企業がありました。なお、米Facebookはアルゴリズム変更により若手ユーザーを増やしているそうです。日本もそうなるかもしれません。
マーケティング担当者は、このようなアルゴリズムの変化を常にキャッチアップし、都度マーケティング戦略の見直しをすることが求められます。
ソーシャルメディアを大きく分けるとブログ、SNS、動画共有サイト、メッセージアプリ、口コミサイトなどのカテゴリがあります。メディアの特性を理解し、どのメディアをどのマーケティングステージに使うかがポイントです。
(出典:令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査 -総務省)
以下に、BtoBマーケティングに活用しやすいブログ、SNS、メッセージングアプリ、情報共有サイト(口コミサイト)の概要と、主力メディアを紹介します。
(出典:note.com)
ブログとは、個人が日々の出来事や考え、趣味、関心にあるテーマについて自由に書き込み公開するウェブサイトのことです。日記のようにコンテンツが時系列で更新されていきます。
有力なブログサービスプラットフォーム上でブログを連載すると記事がシェアされたり、読者と交流が活発にできたりするため、結果的に多くの見込み客にリーチできます。検索エンジンやSNSと連携しやすいためSEO施策にもなります。
BtoBマーケティング向けブログサービス
ビジネス・経営に関するブログが多い |
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男性が約70% 30代が中心。経営者ブロガーが多い |
会員数1230万人 |
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女性ユーザーが75%、30~50代中心 ファッション、生活などのテーマ |
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女性ユーザーが約7割、社長Blog多数 |
1日閲覧者3000万人 |
BtoB企業なら、ビジネス系ブロガーが多い「note」「はてな」、経営者ブログが多い「ライブドア」などもおすすめです。
BtoBマーケティングに活用しやすいSNSプラットフォームには、以下があります。ユーザー数について公開しない企業も多いため、複数ソースからまとめました。
X(旧Twitter) |
国内月間アクティブユーザー ※若手を中心に幅広い年代 |
・情報拡散力が断トツ ・リアルタイム性に優れる ・テキストコミュニケーションが中心 |
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国内月間アクティブユーザー ※ヘビーユーザーは40代以上 |
・実名SNSなのでフォーマルな雰囲気 ・企業の中間管理職層が多くBtoBマーケティングに適している |
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国内登録ユーザー約 300万人 ※高学歴・高収入層のユーザーが多い |
・ビジネス特化型SNS ・人脈作り・キャリア形成目的の利用者層 ・アカウントベースドマーケティング向き |
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国内月間アクティブユーザー約6600万人、※月間利用者数5500万人(statistics 2024.1) ※女性が約6割 |
・画像や動画などなコンテンツを共有 ・商品のビジュアルを魅力的に発信できる ・BtoC企業のマーケティングに最適 |
※ユーザー数はJAPAN BUZZ、Statistics、各社公開情報をもとに記載
以下に、一件ずつ具体的に解説します。
(出典:X)
X(Twitter)とは、自分の気持ちを「つぶやき」として投稿し共有できるSNS。テキストコミュニケーションがメインで気軽に投稿できるためリアルタイム性、拡散性に優れます。
国内月間アクティブユーザー:6700万人以上
メインユーザー層:幅広い年代が利用。特に20代は81.6%、30代が61%と高い利用率。
特徴:
(出典:Meta)
Facebookは、世界最大のSNSサービスです。世界月間アクティブユーザーは30億人以上。
国内月間アクティブユーザー:2600万人以上(2019年時点)
メインユーザー層:幅広い年齢層に利用されていますが、国内ヘビーユーザーは40代以上の男性が半数を占めます。
特徴:
(出典:LinkedIn)
Linkedlnは世界最大のビジネスSNS。FacebookやXとは異なり、完全に「仕事関係の人とつながるため」のSNSです。
国内ユーザー数:300万人以上
メインのユーザー層:ビジネスパーソン・経営者。※グローバル企業等ハイクラス多め
特徴:
(出典:Applestore)
Instagramとは、写真や動画などを共有し楽しむSNSです。全世界で月間10億人以上が利用。Facebookを運営しているメタ社が提供しています。企業アカウント作成も無料です。
国内月間アクティブユーザー:6600万人以上 ※月間利用者数5500万人以上(Statistics 2024.1)
メインユーザー層:女性が約6割、男性4割弱 ※特に10~30代の女性に人気
特徴:
動画共有サイトは日本の10〜80代までに浸透しています。YouTubeの月間アクティブユーザーはFacebookやXを上回ります。また、近年はTikTokが若い層を中心にユーザーを増やしており10代の70%が利用しています。
(出典:YouTube公式サイト)
世界最大の動画プラットフォームです。企業アカウント作成を無料で作成し、動画を発信できます。
国内月間アクティブユーザー:7120万人以上(2023年 Think with Googleより)
メインのユーザー層:日本の10〜40代の 90%以上が利用。
特徴:
TikTokとは、5秒〜1分ほどのショート動画共有プラットフォームです。タイパを重視する現代人の人気を集め、世界の月間アクティブユーザー数は数十億人以上。企業も無料でビジネスアカウントを作成し、動画を発信できます。
国内月間アクティブユーザー:2700万人以上
メインのユーザー層:特に10~20代の若年層に人気
特徴:
メッセージングアプリは、SNSのように公開されたプラットフォームではなく、クローズドな環境で限定されたメンバーでコミュニケーションをとるソーシャルメディアです。
メッセージだけでなく、音声通話、ビデオ通話、グループチャットなどが可能です。LINE、WeChat、WhatsAPPなどがあります。
(出典:LINE)
日本でもっとも利用者の多いソーシャルメディアサービスです。SNSの要素を持ちながらもクローズドであるためコミュニティ機能も果たします。
メインのユーザー層:幅広い年齢層。日本人の94%以上がLINEを利用。
特徴:
(出典:WeChat)
WeChat(ウィーチャット)は、中国の生活で利用されている人気アプリです。月間アクティブユーザーは13億3400万人(2024年4月時点- Statistia より)。日本ではFacebookアカウントで登録が可能です。
日本のユーザー層:主に中国出身の人々や中国ビジネス関係の日本人、中国人観光客。
特徴:
(出典:食べログ)
口コミサイトは、日常生活やビジネスのあらゆるシーンで活用されています。BtoCなら、食べログ、ぐるなび、買い物なら価格コムなどが有名です。SaaSなら、ITreview、ITトレンド、BOXIL SaaSなどの口コミサイトがあります。
マーケティングへの活用方法としては、ユーザーにレビュー記載を推奨し自社の好評価を増やすことが基本。高評価のレビューは広告よりも影響力があるため、Webサイトや営業資料に記載し活用できます。
リード獲得にも繋げられます。例えば、ITreviewは無料で情報を掲載でき、レビューが3件たまると掲載ページにお問合せボタンが設置可能。レビューを見たユーザーがアクセスし、リード獲得につながることが期待できます。
■ITreviewの活用方法
ソーシャルメディアマーケティングのポイントを解説します。
ソーシャルメディアは、日々コンテンツを発信していく必要があるため、ワンパターンにならないよう多彩なコンテンツを組み合わせることがポイントです。以下のテーマを上手く配分しましょう。
テーマ例
「70:20:10ルール」といわれるように7〜8割が役立つ情報、残り1〜2割が人間味が伝わる情報や宣伝といったバランスが最適です。なお、このルールはコンテンツマーケティング全体に言えることです。
各プラットフォームによって表現形式は異なりますが、発信する内容には企業として一貫性を持つ必要があります。経営者や複数の社員がそれぞれ個人アカウントで発信している場合でも、企業としての最低限のルールは決めましょう。
SNS運用ガイドラインを作って、投稿の基本ルールを決めると、炎上などが防げます。また、何人かの社員が投稿してもブランドイメージを一定に保てます。
コミュニケーションのトーン&マナー(言葉の選び方、感情の込め方など、コミュニケーションの「口調」のようなもの)を決めるケースもあります。担当者が離職しても引き継ぎがスムーズな点がメリットです。ただし、制約が多すぎると面白みのない投稿ばかりになるので、そこはバランスが求められます。
ソーシャルメディアは、交流するためのメディア。投稿に対しコメントがついたら、何かしらフィードバックするのがコミュニケーションの基本です。
感想や質問に返答することで交流が深まりますし、それを見ている他ユーザーへも好印象を与えます。難しい場合は「いいね」をつけるだけでもよいでしょう。その他、プラットフォーム上にあるコミュニティ機能を活用して交流を深めることもできます。
ユーザーとのコミュニケーションを活発にするには、興味を惹きつけて反応したくなるようなビジュアル付きコンテンツ、インタラクティブコンテンツを投稿することがポイントです。
複数のソーシャルメディアプラットフォームに投稿を行う作業を効率化するために、ツールを有効活用しましょう。
◆一括投稿ツール
複数のソーシャル メディアの投稿の予約、運用、分析などが可能な一括管理ツールがあると運用がスムーズ。ツールによって対応SNSの数は異なります。
Facebook、X(Twitter)、Instagramに対応 |
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Facebook、Instagram、X(Twitter)、TikTok、YouTube、LINE、note、Pinterest、Threads、mixi、LinkedIn、Blueskyに対応 |
画像を使う場合は、Canvaのソーシャルメディア用レイアウトの活用がおすすめ。Facebook、Pinterest、X/Twitter、Instagramなどの100点を超える美しいビジュアルレイアウトを活用できるうえ、無料で利用できます。
(出典:Canva)
競合他社がソーシャル メディアをどう活用しているかチェックしましょう。同業界の企業がリード獲得に使っていると思われるプラットフォームであれば、当然、自社のリード獲得のチャンスも高いと考えられます。
上段で紹介した一括投稿ツールのコムニコマーケティングスィート、Social Insightは競合他社のアカウント分析もできます。
自分で調べる場合は、以下をチェックしましょう。
・他社はどのプラットフォームを利用しているか? |
・気づき、認知、検討、シェアそれぞれのプラットフォームは? |
・どこに誘導しているか(LP、公式サイト、動画、etc) |
・アカウントを何件運用しているか? |
・どのような部署が担当しているか? |
・どのような内容のコンテンツを発信しているか? |
・人気の投稿はどんな内容か? |
日々の投稿からどこに誘導しているか(どのような導線か)はポイント。大手企業は多様なコンテンツを持っているので分散しますが、中堅・中小企業は「事例ページ」「ブログ」「ランディングページ」「ウェビナー」の内、一つ二つに集約させる傾向があります。
最初のステップは、ソーシャル メディアマーケティングの目標を絞り込むことです。
一般に企業のソーシャルメディアマーケティングの目的は、リード獲得、ブランド認知度向上、Web サイトのトラフィックの増加、顧客エンゲージメントの強化、顧客満足度、ソーシャルリスニングなどがあります。
前述の株式会社リンクアンドパートナーズが行った「企業のSNSマーケティングに関する調査」の結果は以下のとおりです。
ソーシャルメディアのユーザーの中にいる届けたい人にメッセージを送るために、ペルソナを作成しましょう。対象の年齢、性別、企業規模、個性、活用しているSNSなどをまとめます。
ペルソナ作成にはテンプレートを活用することがおすすめ。HubSpotのペルソナ作成ツールなどを使いながら、人物像をイメージしていきましょう。
次にカスタマージャーニーを作成し、ペルソナがどのようなSNSを日ごろ使っているか?購買を検討する際にどのSNSをどのフェーズでどのSNSを使うかをシミュレーションします。年齢層、個性からある程度予測はできるはずです。
全年代に浸透しているプラットフォームはYouTube、X。担当者がZ世代ならTikTokもあり。アカウントマーケティングのように、限られた業界の大手企業にピンポイントでアプローチしたいならFacebook、LinkedInなどが向いています。
総務省の「年代別のソーシャルメディア活用率」のデータも参考にしながら、カスタマージャーニーにあてはめてみるとよいでしょう。
(出典:令和5年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査 -総務省)
ペルソナにアプローチするプラットフォームを選定します。
もちろん、自分の工数、マーケティング予算も考慮しなければなりません。その上でファネルにあてはめて考えてみましょう。
他の施策とも組み合わせるので、必ずしもすべてのフェーズでソーシャルメディアを活用する必要はありません。どこをSNSで強化したいかという視点でOKです。
SNSの活用例:
ソーシャルメディアは、ブランド認知からリード生成、コンバージョン、高評価の拡散まで期待できるメディアです。主要KPIは以下があります。
KPI |
内容 |
リーチ |
投稿を見たユニーク ユーザーの数 |
フォロワー数 |
一定期間内に獲得した新規フォロワー数 |
クリック数 |
コンテンツまたはアカウントのクリック数 |
シェア数 |
共有、拡散された数 |
エンゲージメント |
コンテンツへの反応、コメント、シェアの数を、視聴者の割合 |
コンバージョン率 |
投稿が、販売、ダウンロード、申込などのコンバージョンにつながる頻度。 |
プラットフォームに適したコンテンツを作成します。コンテンツカレンダーなどを作り、計画的に投稿すると効率的です。同じ内容でも以下のようにプラットフォーム表現を変えて、相乗効果が出るようにします。
例:業務管理ツールをFacebook、X、YouTube、ブログで発信していく場合
(出典:Instagram インサイト)
日々の投稿の反応を分析・検証することで、どのような内容がシェアされやすいのか? どの時刻が投稿に適しているかなどさまざまなことがわかります。
各プラットフォームが無料の効果測定ツールを用意していますので、データは日々確認できますし、月度のレポートなどの作成も容易です。
■各プラットフォームの無料効果測定ツール
ツイートを見た回数、リツイート数、いいねした数、返信数、動画アクティビティ |
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リーチ、エンゲージメント数、投稿コンテンツごとの指標 |
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Facebookページのフォロワー数の増減やリンクのクリック数、動画の再生回数など |
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視聴回数、再生時間、チャンネル登録者数、視聴者の年齢・性別等の属性が把握可能 |
複数のメディアを使っている場合は、以下のような有料ツールを活用してもよいでしょう。
X、Instagram、Facebook、TikTokのアナリティクスデータをまとめて表示。わかりやすいUI、月次レポートの自動作成機能あり |
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SNSアカウント 2~10個まで一括管理可能 (価格は月1480~4万円) |
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Facebook、Instagram、X、TikTok、LinkedIn、Pinterest、YouTubeなどのデータを一元管理 |
Xの活用事例、大手メーカーの複数メディア活用事例、小規模事業者のショート動画活用事例、海外企業のLinkedInを活用したアカウントベースドマーケティング(ABM)の成功事例を紹介します。
シャープ株式会社のX(Twitter)アカウントは、「それってあなたの乾燥ですよね」「日本、梅雨やめるってよ」といったクスっとしてしまうツイート、家事に役立つ情報、多くの人が共感するつぶやき、面白さで大人気でフォロワー数83万人を超えます。
社員の個性的なツイートを許容する風土があってこその成功だと考えますが、中の人のコミュニケーションの在り方など、一般企業がお手本として見習う点も多々あります。
愛知学院大学とセンコークリエイティブマネジメント株式会社が企業の7年分の投稿データをもとに発表した「企業 Twitterアカウントによる共感を生み出す呟きの分析」によると、シャープのつぶやきに出てくる頻出単語は以下の通りです。
日々「ありがとう」と感謝を述べていることやリプライなどの会話に積極的であることが表れていると分析されています。2番目に多いのが「oO」で個人の心情のつぶやき、その次に社名です。
(出典:YouTube)
クボタ株式会社は、食料、水、環境領域で事業を展開する売上高約3兆円のメーカーです。X、Facebook、YouTube、Instagramの運用アカウントはグループ企業も含めて22。共通のソーシャルメディアポリシーで展開しています。
メディア特性を活かして運用しており、以下は農業機械事業部の活用です。
特にYouTubeは動画数895本と力を入れています。大型機械の魅力がリアルに伝わる動画を見ていると、メーカーと動画マーケティングの相性の良さがわかります。
(出典:YouTube)
YouTubeやTikTokを見ているうちに「本物の弁護士が1分で要約~」から始まるショート動画を眼にしたかたもいるのではないでしょうか?
法律に関係ないテーマも多く「なぜ弁護士が解説するんだ??」と疑問を持ちつつも割と見てしまい、いつの間にか最後の「アトム法律事務所!」の声が脳にのこり覚えてしまう動画です。
まるでCMを見ているような、ザイオンス効果の見本のような動画マーケティング。これは、岡野氏が英語圏のマーケットを分析して見習ったことが成功の秘訣とのこと。代表がユーチューバーとして表に出る効果、ショート動画の威力がわかる事例でもあります。
YouTube再生数は主要テレビ局アカウントと同レベル、TikTokフォロワー数は約68万人。驚異的な成功例です。
(参考:okanotakeshi.com/、Wantedly)
(出典:LinkedIn)
米国のAdobe Experience Cloud チーム は、「関係性に基づく営業活動を広範なマーケティング活動」を行う目的でビジネスSNSの LinkedIn を活用し成果を上げました。LinkedIn の有料のアカウントベースフレームワーク、広告ツールを使って、企業の購買ユニット全体にアプローチした結果は、以下のとおりです。
(参考:Adobe のケーススタディ - LinkedIn)
海外事例ですが、日本でも大手企業には複数の購買メンバーがおり、担当者だけを説得してもなかなか受注までたどりつけません。この点、LinkedInはユーザーにハイクラス層が多く役職等も公開されているため、ABM(アカウントベースドマーケティング)に活用しやすい点が長所です。他社があまり利用していない今こそトライをおすすめします。
ソーシャルメディアマーケティングは、比較的低コスト(場合によっては無料)でスタートでき、ブランド認知、リード獲得、顧客エンゲージメント向上などさまざまな成果が期待できる優れたマーケティング手法です。
BtoB発注担当者もプライベートではソーシャルメディアを活用している時代。ソーシャルメディアマーケティングがリードジェネレーションや顧客エンゲージメント向上に効果を発揮することは十分期待できるでしょう。
まずは、ソーシャルメディアマーケティングを実施する目的を明確にして、適したメディアをピックアップすることから始めてみましょう。