昨今は、世の中にさまざまなコンテンツが溢れています。テキストベースのコンテンツも増える一方ですが、インフォグラフィックを活用したアイキャッチの素晴らしいコンテンツ、ブラウザ上で動画を視聴したり、アンケート、投票ができたりするインタラクティブなコンテンツも増えてきました。
このような双方向型コンテンツがどのくらい効果があるかは、マーケターの方も気になるところかと思います。
なんと、最近の米国の調査ではマーケターの81%がインタラクティブコンテンツは静的コンテンツより注目を集めると回答。さらに別の調査では93%のマーケターが、インタラクティブコンテンツは従来の静的コンテンツよりも効果的であると認めています。
そこで、本記事ではインタラクティブコンテンツとはどのようなコンテンツか? 種類やマーケティングにおいて具体的にどのような効果があるかなど、マーケターが知っておくべきポイントを解説します。
インタラクティブコンテンツとは、ユーザーが能動的に関与できる(対話したり、試したりする)ことができる、あらゆる形式のコンテンツのこと。語源は以下のとおりです。
最もわかりやすい例は、プラットフォーム上でいいね!やコメントのやりとりができる各種SNSでしょう。そのほか、Web上のチャットボット、ブラウザを移動せずタップすると視聴ができる動画コンテンツ、見積もりシミュレーションほか、チャットボット、ARシミュレータ―など多彩な種類があります。
ここで少し、インタラクティブコンテンツ発展の背景について紹介します。
インタラクティブコンテンツは、インターネットそのものの発展、そしてブログやSNSといった、読者がコメント・シェアなどで「参加できる」コンテンツの発展に伴い、徐々に育ってきたといえます。
現在では、個人利用に限らず、企業も製品・サービスについて日頃から手軽に情報発信をできるようになっています。コンテンツ読者との間で「いいね!」「コメント」「シェア」などを接点に、双方向にコミュニケーションを取ることができ、コンテンツに関する感想や、企業に対する意見などをクイックに得られる機会が急速に増えました。
「ニュースサイトやオウンドメディアの記事を読んだ」「PDFをダウンロードして読んだ」というだけでは、インタラクティブとはいえません。これらは、読者にとって「受動的な」コンテンツ消費の例だといえます。
たとえば、企業が、製品・サービスについて詳細に紹介するWeb記事やeBookを提供しているケースを考えてみましょう。
ページビュー数やファイルのダウンロード数は、サイト分析ツールなどで定量的に追いかけることが可能ですが、定性的な読者の感想までは分かりません。後日、企業と見込み顧客がオフラインで対面する機会(例:展示会や、業界の交流会など)があれば、「実は御社のオウンドメディア記事や、eBookを読んだことがあるんですよ」などと直接声を聞く機会に恵まれるかもしれません。
しかし、読んでもらった即時にフィードバックを得ることは難しいでしょう。日々製品・サービスを改善していく必要がある企業にとっては、即時的にコメントやフィードバックを取得できることは事業活動上重要になります。
そして、コンテンツの読者側の視点でも考えてみましょう。現代のインターネット環境は、膨大かつ玉石混交の情報で溢れ返っている状態です。
その中で、「単に読むだけ・見るだけのコンテンツ」よりも、参加型・対話型のコンテンツのほうが強く印象に残るでしょう。たとえば「診断コンテンツ」のように、能動的に参加することで、自分の興味関心に沿ってより具体的な情報を提供してくれるコンテンツが挙げられます。
このように、インタラクティブコンテンツとは「コンテンツを提供する企業側」にとっても、コンテンツを受け取る「読者・視聴者側」にとっても、有用な存在になっているといえるのです。
ここで、インタラクティブコンテンツがコンテンツマーケティングにいかに有用であるか、そして、読者の関心をいかに引き付けているかについて、データを見てみましょう。グラフィックソフトを開発・提供するドイツの会社「Linearity GmbH」が、2023年12月にブログで公開したデータの一部をご紹介します。
(参考:95 Interactive Content Statistics: Video, B2B, and B2C)
インタラクティブコンテンツは、BtoBマーケティング担当者の間で「静的コンテンツと比較すると、読者から見てもらえる時間が長く、啓蒙に有用だ」とデータを根拠に認識されていることが伺えます。
インタラクティブコンテンツとは双方向性があるコンテンツです。ユーザーは情報を受け取るだけでなく、自分から発信したり、ボタンを押して何らかの意思表示したり、自分の選択で用意されているコンテンツを視聴することができます。
これに対し、一般的なブログ記事、動画などのようにユーザーが情報を受け取るだけのコンテンツは「パッシブコンテンツ」です。インタラクティブコンテンツは、マーケティングの現場において驚異的な効果をもたらしていることが、さまざまな統計で示されています。ここでは複数の統計から、BtoBマーケターが知っておくべきメリット・デメリットをピックアップします。
まず、5つのメリットについて紹介します。具体的には以下のポイントが挙げられ、読者・視聴者の積極的な関与を引き出せる点が大きなメリットだといえるでしょう。
2016年の米国のコンテンツマーケティングを研究組織Content Marketing Institute のレポート「 DELIVER PEAK EXPERIENCES WITH INTERACTIVE CONTENT」では、エンゲージメントについて、以下の調査結果が報告されています。
こちらは、Demand Metric researchによる2014年の「Content & Buyer's Journey Benchmark Report」からの抜粋です。パッシブコンテンツ(ブログなど受け身のコンテンツ)とインタラクティブコンテンツのコンバージョンレートを比較した結果です。
リードジェネレーション(見込み客創出)とは、まったくそれまで縁がなかった見込み客を何かのコンテンツで惹きつけて自社に気付いてもらい、興味をもってもらい、メールアドレスを登録するなどしてリードになってもらうことです。
この2つが特に重要なプロセスなのですが、まずインタラクティブコンテンツは視覚的にも注目を浴びやすく有利です。前述のContent Marketing Institute の調査では、81%のマーケターがインタラクティブコンテンツは注目を集めると回答しています。
さらに試してみようという意欲を喚起させるので、前述のようにコンバージョンを促進させますし、試すことにより関係性が強まりエンゲージメントを向上させる働きがあります。適切なインタラクティブコンテンツであれば、リードジェネレーションの各プロセスで有効に働くといえるでしょう。
適切なインタラクティブコンテンツを適切に配置できれば、カスタマージャーニー全体にわたって良い効果を発揮します。前述の Content Marketing Institutの調査では、コンテンツ マーケティングにおける11 種類のインタラクティブコンテンツの有用性を調べています。
調査の結果、カスタマージャーニーの「アーリーステージ」「ミドルステージ」「レイトステージ」で、マーケティング担当者が効果があると感じたインタラクティブコンテンツは以下のタイプです。
※なお、この質問はブログ記事、事例記事などのパッシブコンテンツは含まれていません。インタラクティブコンテンツのみの比較です。
(出典: DELIVER PEAK EXPERIENCES WITH INTERACTIVE CONTENT)
ここで1件、ツールベンダーが出している調査結果も紹介します。以下はインタラクティブコンテンツ生成ツールを提供するOutgrow社の公表している、自社ツールを使用したクライアントの統計データです。コンバージョン率が向上し、直帰率は下がり、シェア率が向上しています。
(出典:Ourgrow)
(参考:Content Marketing Institut、business2community.com、Demand Metric research、Ourgrow)
前述の通り複数のメリットがある一方で、実装する前に留意すべき点も挙げられます。具体的には、ある程度のコストがかかることや、UI・UXへの影響をあらかじめ想定に含める必要がある点です。
インタラクティブコンテンツのデメリットとしては、まずコスト面があるでしょう。無料で利用できるX(旧 Twitter)の投票機能、SalesForce などすでに活用しているツールのインタラクティブメール作成機能、YouTube動画をインタラクティブにするなどの方法もありますが、本格的なインタラクティブツール作成ツールを使うと費用が発生します。以下は目安です。
とはいえ、前述のさまざまな効果事例を見る限り、しっかり設計されたインタラクティブコンテンツであれば、投資をはるかに上回る効果が期待できるでしょう。
インタラクティブコンテンツについて、ドイツのグラフィックソフト開発会社「Linearity GmbH」のブログで「ROIが高い施策」「マーケティング担当者の約半数が、リード生成のための強力な手段の1つであると回答」と言及されています。
加えて、同ブログで「ある電子機器サプライヤーは、インタラクティブ コンテンツを通じて64%という優れたリード送信率を達成」といったBtoBマーケターにとって興味深いデータも示されている点は要注目です。
よって、自社にとっての費用対効果を十分に考えて取り組むとよいでしょう。具体的にはまず、「コンテンツ制作〜実装にかかる費用」について制作会社などから見積もりを取って、「自社が目標とするリード獲得数」「リード獲得単価」などを計算のうえ、互いのバランスを判断して考えるのがおすすめです。
ほかに懸念するのは、あまり懲ったインタラクティブコンテンツを作成すると、表示速度が遅くなりGoogleの評価が下がるリスクや、タイムパフォーマンスを重視する昨今の視聴者が待てずに去ってしまうリスクです。
Googleは、「ページの読み込み時間が1 秒から 3 秒に長くなると、直帰の可能性が32% 増加する」と述べています。よって、インタラクティブコンテンツを実装したい場合、制作・実装を外注する企業との打ち合わせ段階で「実装すると、ページスピードにどれぐらいの変化が見込まれるか?」といったポイントをよく確認してから進めるのがよいでしょう。
また、チャットボットのような完全自動化でリプライするコンテンツは、適切な回答でなければむしろユーザー体験を邪魔してしまいます。
AIチャットボット「WhosOn」を開発している英国の会社・Parker Softwareは、ブログでチャットボットのベストプラクティスに関するヒントを記載しています。
一例として、「チャットに招待するポップアップがどれぐらいの頻度で出現するかを熟考する必要がある」と述べています。招待が多すぎると、しつこく迷惑な印象を与えかねません。逆に招待が少なすぎると、ユーザーをチャットに誘導する機会を逃してしまいます。
よって、ポップアップの出現タイミングや頻度は、サイト上におけるユーザーの行動に合わせて慎重に調整することが必要です。加えて、チャットに誘導後も、対話内容がユーザーの質問に対して的外れになってしまわないよう、シナリオやFAQの精査・ブラッシュアップが不可欠だといえるでしょう。
つまり、単に静的なコンテンツをインタラクティブにすればよいというものではなく、ユーザーの体験を十分に考慮した上でのコンテンツ設計が求められます。
ここでは、BtoBマーケティングで有効なインタラクティブコンテンツの具体例をいくつか紹介します。
(出典:HubSpot)
HubSpotの計算ツール「CalCulator」は、指定のフォーマットに「業界」「国」「Webサイト訪問者」「コンバージョンレート」「リードからの成約率」などを入力すると、自動的に以下のようにマーケティングROIが表示されます(%の下に実際の金額が表示)。詳細なレポートもダウンロードできます。
初心者マーケターにとってROIの計算は、所定の計算式を使ってもやや不安がある人も少なくないものです。大手のマーケティングツールプラットフォーマーがこのような無料ツールを提供すると、計算や検証用に活用できて大変便利ではないかと思います。
HubSpotの見込み客はマーケティング実務者なので、ペルソナのエンゲージメントを高める効果があるでしょう。なお、同様に、Salse Hubのページでは営業ROIが計算できます。
(出典:https://www.outbrain.com/blog/video-marketing-quiz/)
2018 年の米国の調査では、ビデオがない Web サイトよりも、ビデオがある Web サイトに88% 多くの時間を費やしたとのことです。
上記の「あなたのマーケティングIQは?」というキャッチコピーのコンテンツは、グローバル広告プラットフォームベンダーOutbrain社の動画マーケティングに関するクイズです。
ビデオマーケティングについての質問に回答していくと、100点満点で何点かスコアが出ます。そして「初心者」「精通しています」などの判定と、それに対するポジティブなメッセージが出る後味のよいクイズです。
試した感想としては、自分のレベルを知れたことに対するちょっとした感謝や、運営サイトへの好印象がわくようなコンテンツかと思います。
BtoBの場合、娯楽としてクイズを楽しもうと思う見込み客はあまりいないでしょうが、ビジネス課題に何かヒントが得られたり、自分や会社の判定が得られたりするクイズは、十分吸引力を持つでしょう。
(出典:HubSpot)
こちらは、HubSpotの「ペルソナジェネレーター」です。いくつかの項目を入力するだけで、ペルソナ作成、ペルソナシートが自動生成できます。無料でサインインも不要です。
手順も実に簡単で、15人のアバターから近いタイプを選び名前をつけて、以下を選択・設定していくだけで時間もかかりません。
このようなアウトプットのフォーマットでペルソナができあがります。
ペルソナ作成というのは、従来紙やExcelのテンプレートに書き込むかたちで作られることが多いのですが、正直いってその間迷いも生じ、挫折する方も多々いらっしゃいます。
このジェネレーターの項目はHubSpotの英知がつまっているため、簡単に答えられるとはいえ、ペルソナ作成において重要な要素が盛り込まれています。初心者でもそこそこのレベルにしあがります。初心者マーケターにとっては「学び系コンテンツ」、ベテランならそのまま仕事に活用できるでしょう。
もう一つのカスタマージャーニー生成無料ツールと併用すれば、マーケターにとってちょっと面倒なペルソナ作成とカスタマージャーニー作成のハードルがぐんと下がります。前述のcalculatorと同じく、マーケティング担当者にとって非常に役だつツールが無料で使えるため、HubSpotへの好意や興味、信頼が増す効果があるでしょう。
(出典:OpenAI)
チャットボットは今や珍しくないツールですが、2022年11月にOpenAIから登場した「ChatGPT」は、まさしく破壊的テクノロジーだといえるでしょう。現在は無料で試せるため、2023年2月には月間1億ユーザーに到達しています。有料化を待ち望む見込み客を全世界にあっというまに増やしました。
最近の調査によると、昨今は特にマーケティング関係の専門家がAIの活用に熱心で、ChatGPTなどを含めたAIを37%が仕事で使った経験があるそうです。マーケティング関係の専門家の次には、技術者、コンサルタントの順で使用経験率が高くなっています。
もっとも現状は、メールの下書きやアイデアの発案、リサーチなど、思考促進ツール的活用のようです。
今後は、ChatGPTを活用してどのようなコンテンツを作成して、自社のユーザーを惹きつけるかも当然考えていくでしょう。
すでにChatGPTで記事構成や制作、画像生成、動画作成が簡単にできるとして作成方法についてのコンテンツが次々に公開されています。さらにプラグインも出ています。できることが無限大のChatGPTですが、幸い日本は語学の壁と保守的な国民性のおかげで、このような波がいつも遅れて到達します。
今のうちに、AIチャットボットをどう活かすかシナリオを考えることが、アドバンテージになるでしょう。国内でアーリーアダプターになるべく早めに使い慣れることをおすすめします。
(出典:wistia.com/)
ブログ記事やSNS上でタップするだけでそのまま視聴できるコンテンツは、ユーザーにとって手軽であり、ユーザー体験を向上させるでしょう。
動画のサムネイルのアイキャッチ、サムネイルが静止画像か動く画像かによっても効果が異なるようです。
ビデオの作成、編集、マーケティング、インパクトの計測ができるビデオマーケティングプラットフォームWistiaが、自社の動画の静止画像のサムネイル と、動きのあるサムネイル画像 との反応を比較したところ、後者の再生率が 22.5% と高いという結果が出たことを公開しています。(参考:wistia.com)
いきなり動画やGIFを活用したインタラクティブコンテンツ作成はハードルが高いという方には、インタラクティブメールがおすすめです。
インタラクティブメールとは、受信者がメール内でWeb のような感覚でコンテンツに関与できるメールです。以下のようなタイプがあります。
例:Amazonのメール内レビュー
(参考:enginemailer.com)
インタラクティブコンテンツの中では地味な部類だといえるでしょう。しかし、2022年に米国リサーチ会社Ascend2社がBtoBとBtoCマーケターに調査したレポートでは、インタラクティブコンテンツの中で、インタラクティブeメールがもっとも効果的と回答した人は52%で、インタラクティブ動画を押さえて1位です(緑の棒)。
また、インタラクティブメールの実行を難しいと感じる人はほかの手法より少な目で26%しかいません(赤の棒)。簡単で効果があるのなら申し分ありません。
アンケートも、インタラクティブコンテンツのひとつです。BtoBでは「顧客満足度アンケート」などが一例として挙げられるでしょう
次の画像はそのサンプルで、顧客体験調査ツール「Nicereply」を提供するスロバキアの会社・Nicereply社によるアンケートの画面です。「NicereplyというITツールを友人や同僚に勧めたいと思いますか?」という他者推奨意向を聞いています。
(出典:What Is a Feedback Survey? Steps to Create Your Own (+ Examples))
ユーザー側は、ワンクリック(数字を選んでクリックするだけ)で回答が済みます。また、「この企業は、顧客の意見を積極的に取り入れようとしているんだな」など、好意的な印象を抱くことにつながるでしょう。
そして企業側は、顧客からのフィードバック(サービスに対してどれぐらい満足しているか、周囲の人に勧めたいと思ってくれているか)を迅速に収集できます。集めた回答データに基づいて、どのように製品・サービス展開をしていくべきか、意思決定の重要なヒントにもなるでしょう。
たとえば、カスタマーサポートに問い合わせメールを送ってきた顧客とやりとりを進めて、問い合わせ内容(疑問・トラブル)解決後に、このようなアンケートをメールに埋め込んで送ると手軽に回答してもらえるでしょう。
インフォグラフィックとは、統計・データなどをもとに、グラフ・図などを用いて見やすく表現した画像のことです。普段、仕事のプレゼンテーション作成で、データを視覚的にわかりやすく表現しようと工夫している読者も多いのではないでしょうか? それこそがまさに「インフォグラフィック」です。一例として、総務省のサイトでは「情報通信白書」のインフォグラフィックが公開されています。
そして「インタラクティブ インフォグラフィック」とは、読者の関心に応じて表示を変えられるインフォグラフィックのことです。
たとえば、読者が画像内で見たいデータ項目をクリックすることで、グラフの表示が変わるものなどが挙げられ、株式会社サイバーエージェントのIR情報公開ページで採り入れられている例があります。読者にとって、「自分が見たいデータ」をより強いインパクトで捉えられるようになるでしょう。
ウェビナー(Web上のセミナー)にも、インタラクティブなものと、そうでないものがあります。
インタラクティブウェビナーとは、「視聴者がリアルタイムに質問をできて、その場で講師から回答をもらえる」「ウェビナーのチャット欄にアンケートフォームが届いて、その場でウェビナーの内容への感想を送れる」といった、「リアルタイム参加型」のウェビナーが該当します。
一方、双方向ではないウェビナーは、たとえば過去のセミナー動画をアーカイブ配信していて、視聴中にリアルタイムで質問やフィードバックを受け付けていない場合などが該当するでしょう。
インタラクティブウェビナーの開催例として、SEOツールで知られる「Semrush」が挙げられます。同社は、コンテンツマーケティングなどをテーマにしたインタラクティブウェビナーを日頃から開催しています。
(出典:Semrush Webinars: Insights from Top Digital Marketing Experts)
Semrushのインタラクティブウェビナーに参加を希望するユーザーは、申し込み時にメールや名前などを登録する必要があります。つまり、企業側にとってはリードジェネレーションのきっかけになっているのです。
ゲーミフィケーションとは、コンテンツのビジュアル面を工夫したり、ユーザーが参加を楽しめる仕掛けを盛り込んだりして、ゲーム性を持たせることを指します。「コンテンツのゲーミフィケーションは、BtoCで多そうな事例では?」と思う人もいるかもしれませんが、実はBtoBマーケティングでも活用されている手法です。
その一例として、ビジネスSNS「LinkedIn」の「プロフィールレベルメーター」が挙げられます。LinkedInは、ビジネス上のつながりや、転職のきっかけを求めている人向けのSNSプラットフォームです。ユーザーが、企業のリクルーターから声をかけてもらいやすくなるよう、「プロフィールレベルメーター」というコンテンツが存在しています。
たとえば上図のように、プロフィールをあまり詳しく登録していないユーザーに対しては、LinkedIn側が「プロフィールをもっと充実」「プロフィールを強化」といった案内文をさまざまに提示してきます。「もっと充実させよう」などと言われると、ユーザーの立場では心理的に「では、もっとちゃんと登録してリクルーターから注目されるようにしよう」など、自然にプロフィール充実へと促されるでしょう。
インタラクティブ電子書籍(eBook)とは、ただPDFを読むだけでなく、読者がPDF内をクリックすると動画や音声が再生されるものを指します。このような電子書籍は、PDFファイルに動画や音声を埋め込むことで制作が可能です。
たとえば、「特に強調したいグラフをアニメーションで表現する」「製品の詳細紹介の部分だけ、動画を埋め込んでおく」などが考えられるでしょう。また、電子書籍内の問い合わせボタンにハイパーリンクを貼っておき、読者がクリックするとすぐ問い合わせフォームやランディングページに飛べるなどの仕掛けも考えられます。
「電子書籍を手元にダウンロードして、読んで終わり」ではなく、「見たい情報を視覚的に強いインパクトで理解できる」「企業サイトへスムーズに遷移できる動線がある」といった点がポイントになるといえます。
インタラクティブマップとは、見る人の目的に応じた情報が表示されるマップなどが該当します。
たとえば、これはtoCの一例ではありますが、ランニングやサイクリングなどスポーツを楽しむ人向けのルート案内アプリ「Strava(ストラバ)」のマップについて紹介します。これは「単に道順を確認するためのアプリ」ではありません。
ユーザーが「ランニング」「ウォーキング」「自転車ツーリング」など、どのアクティビティを選ぶかに応じて、表示されるルートが変わります。「平坦」「坂が多い」「舗装」「未舗装」といった道路に関する詳細な情報や、「トレーニングの強度」「難易度」など、トレーニングに特化したデータも返してくれます。
(出典:Stravaマップ)
ユーザーが「その時に詳しく知りたい情報」を返してもらえるアプリだとわかれば、便利で、情報が記憶に残りやすいので繰り返し利用したくなるでしょう。これは、BtoBにおけるインタラクティブコンテンツ提供でも学べるポイントだと考えられます。
ここからは、インタラクティブコンテンツを作成する上で気を付ける点について具体的に紹介します。
「双方向性のコンテンツを新設すれば、見込み客の反応がよくなるだろう」と思い込むのではなく、
前述したように以下のポイントを押さえた上で施策を進めることが重要です。
それぞれ、掘り下げて紹介します。
カスタマージャーニーに合わせたコンテンツを作成すること、すなわち、ユーザーのファネルを意識したコンテンツ設置が大切です。
たとえば、「悩みが顕在化している状態の見込み客に、eBookをダウンロードしてほしい。リード獲得を加速させたい」と考えている場合を想定してみましょう。提供するeBookのストーリーがユーザーの関心・熱量とずれていると、そもそもダウンロードすることに興味を示してもらうのは難しく、リード獲得も進みません。
「悩みが顕在化している状態」とはつまり、見込み客自身が「いま、ビジネス上の悩みに直面していて、できるだけ早く解決策を探している」と認識している状況です。
その状況を想定した上で、読んで解決策がわかるeBook本編のストーリーについて熟考し、洗練された内容に作り込むことが大事です。たとえばクラウド会計ソフトなどを提供しているBtoB SaaS企業を想定すると、以下のような具体例(eBookを見込み客にダウンロードしてもらうまでのストーリー)が考えられるでしょう。
<例> 読者は、企業の総務担当者を想定。 現在、業務プロセスが煩雑で、業務効率が悪いことに悩んでいる。特に、いまだに紙の見積書や請求書、稟議書などが多いことが課題。 他社の取り組みなどをさまざまに調べていて、「自社も日頃の業務プロセスにITツールを活用してペーパーレス化を進め、もっと業務効率化を図れないか?」と漠然と考えている状態である。 そこで、業務のペーパーレス化に役立つITツールの情報を検索している。 その中で、「中小企業向けクラウド請求書ソフト」の存在について知る。ソフトウェア提供企業からは、「中小企業の請求書ペーパーレス化」に関する活用事例や他社の成功事例集をまとめたeBookが無料で提供されていることがわかり、eBookダウンロードへと進む。 |
コンテンツ制作から実装までにかかる「時間」と「費用」を十分に検討することも必要です。
インタラクティブコンテンツは「ユーザーからの反響を得やすいコンテンツ」「リード獲得に有効なコンテンツ」である点は、本記事の前半で統計データとともに紹介しました。
しかし「良さそうなコンテンツだから」と、闇雲に時間とお金を費やそうとするのではなく、以下のようなポイントについてよく考えてみることも大切です。
インタラクティブコンテンツは、静的なコンテンツと比較して凝った作り込みが必要なため、制作にかかる費用・時間が大きくなる可能性があります。そのため、上記のようなポイントを社内で十分に精査した上で、インタラクティブコンテンツの制作・実装に臨むことをおすすめします。
インタラクティブコンテンツの制作・実装をすると決めたら、技術的な要件についても協業先(コンテンツ制作・実装を依頼する企業)に確認しましょう。
本記事の前半でも述べましたが、ページスピードを落とさないことも、ユーザーにストレスなくサイトを見てもらうために重要なポイントです。そして、ユーザー視点だけでなく、SEO対策でも重要なポイントだといえます。
ページスピードは、ページエクスペリエンスのひとつだと考えられ、Googleが「Page Speed Insights」というページスピード最適化ツールを無料提供している点からも、「ストレスなく快適に見られるページ」が推奨されていると伺えるでしょう。
インタラクティブコンテンツは「動画」「地図」「インフォグラフィック」など視覚的に訴求できる仕掛けを盛り込みつつ、加えてデータの読み込みも必要など、技術的要件が複雑になるケースも想定されます。
よって、ページスピードを落とさない、ユーザー体験を損なわないために、たとえば以下のような技術的側面にも留意する必要があるといえるでしょう。
<一例>
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今の時代、コンテンツはどんどん進化していきます。テキストベースのコンテンツも物事を深く理解できるメリットはありますが、短時間で人を惹きつけたり、気持ちを変えたり、エンゲージメントを向上させたりするという点で、インタラクティブコンテンツは非常に有用です。
記事内で紹介したように、インタラクティブコンテンツは、見込み客を惹きつけ、エンゲージメントを高め、コンバージョンを促進することを数々の統計が示しています。
インタラクティブコンテンツは、カスタマージャーニーのあらゆるフェーズで柔軟に活用可能です。また、既存のコンテンツと組み合わせることでマーケティング効果を高めます。
BtoBの場合、コンテンツ自体をものすごく凝ったものにする必要はないでしょう。
といったシンプルな活用方法もあります。現在のカスタマージャーニーの弱いところに、インタラクティブコンテンツを組み込んで改善できないか検討してみましょう。