製品サイトはもちろん、オウンドメディアなどを運営する上で気になるのがPV数。個人ブログやWebメディアなどで〇〇万PV突破といった、投稿やニュースを見たことがあるかもしれませんが、BtoB企業にとっての目安はあるのでしょうか。この記事で、解説していきます。
PV数の目安とは?
結論から言うと、BtoB企業にとっては「ない」といえます。
そもそもターゲットとする顧客の母数に制限があるのが一つ。また、後ほど紹介しますがHorizontal SaaSかVertical SaaSかなど、取り扱う製品の種類によって必ずしもPV数を追う施策が有効とは限らないためです。
これが一般消費者を対象とするBtoC企業であればターゲットの母数が多く、広く商品を認知してもらう必要があるため、一定の目安を掲げて運用していく必要があるかもしれません。
一方で法人を相手にするBtoB企業は一回の契約で高額な取引が行われたり、見込み客との接触点がイベントや展示会といったオフラインであったりと、必ずしもPV数の上昇が成約まで至らないケースもあるでしょう。そのためBtoC企業やWebメディアなどと比較し、PV数の目安を決める必要はないといえます。
(それでも)PV数を気にすべき理由
とはいえ、現在はデジタル全盛。グーグルの検索数も増加傾向にあります。少し古いデータとなりますが、米メディアのSearch Engine Landによると2000年の年間検索数は140億でしたが、2016年には2兆以上まで推移しているといいます。
知りたい情報があったとき、検索エンジンにキーワードを入力して調べるのが当たり前の現在。年間検索数そのものも増加傾向にあり、「まずはインターネットで検索してから」という見込み客も少なくありません。
そんな、見込み客のニーズを満たす情報提供ができているかどうかを把握する目安として、PV数はやはり気にしたほうが良いでしょう。
BtoCのトップクラスのウェブサイトのPV数は?
BtoB企業はコーポレートサイトとオウンドメディアなどの二本立てで行うことが多いです。一方でBtoC企業は自社サイト単体、もしくはアフィリエイトを通じたサテライトサイトからの流入など、構造が異なります。
そのため、両者を比較するのはナンセンスであるという前提のもと、参考までに代表的なBtoC企業のサイトのPV数をシミラーウェブで見てみましょう。例えばユニクロオンラインストアの合計訪問数は7233万。訪問別ページビュー数は8.78なので、7233万をかけると、PV数は約6億3500万といえます。
参考元:ユニクロオンラインストア
もちろん、BtoB企業の場合、このPV数に到達することはありえません。一般消費者を対象とするBtoCの母数は、国内の全人口にあたる約1.2億人。BtoB企業が主なターゲットとする国内の全企業数は360万社です。そもそもの母数に差があるため、あくまでも参考程度に知っておきましょう。
ではウェブサイトやメディアの目標PV数はどうすれば?BtoBのPV数の目安を分解して考える
ではBtoB企業は、PV数の目標をどう設定すれば良いのでしょうか。それには、コーポレートサイトとオウンドメディア、それぞれでPV数のバランスを考える必要があります。なお一般的に余程有名な企業でない限り、オウンドメディアの方が10倍以上ほどPV数は大きくなってもおかしくはないのが前提です。
ただし、本記事でご紹介する事例企業は、それらの数字とはバランスが異なります。後述しますが、コロナ禍によってビジネスが後押しされた企業、CMを多く活用している企業など、一般的なBtoB企業とは異なる市場環境や施策を打っているからです。
指名検索を寄せるコーポレートサイト
指名検索とは、サービス名や企業名などで検索すること。自社のサービスをすでに知っているユーザーの検索行動といえます。基本的にコーポレートサイトを訪問するのは、指名検索による流入です。
指名検索を行い、コーポレートサイトを訪れる見込み客は、導入を検討している可能性が高いといえます。サービスの機能や導入事例などのコンテンツを拡充することで、サイトを訪問した見込み客のニーズを満たし、PV数を上げていく必要があるでしょう。
とはいえ、自社取り扱っている製品により、PV数を上げる施策に注力すべきかどうかは異なります。
例えば業界・業種を問わない利用を目的としたHorizontal SaaSは、幅広い層へのリーチが大切。競合も比較的多く、シェアを獲得するためにも指名検索によってコーポレートサイトへの流入を増やす施策に注力したほうが良いでしょう。その結果、「〇〇ツールと言えば〇〇」と覚えてもらえれば、とくに効率化が遅れるレガシーな業界の人たちにもアプローチしやすくなります。
コーポレートサイトのコンテンツを充実させるだけでなく、ビジネスブログやSNSを含めてより多くのチャネルをカバーし、指名検索のPV数を増やす施策も有効。汎用的なコンテンツを用意し、非指名検索から指名検索につなげていきましょう。
対してある特定の業界に特化したVertical SaaSは、ほかに競合がおらず、新しい市場を開拓するケースが多いでしょう。見込み客がインターネットで検索して情報を知りたいとすら思わない。つまりは課題すらも、まだ顕在化していない状態。そのため、オウンドメディア のPV数を増やし、コーポレートサイトへの流入にもつなげるといった施策は通用しずらいといえます。
そこで、PV数を目安にするよりも、PR・広報や展示会などを通じて直接アプローチし、成約につなげるのが効率的です。
このように自社が取り扱うサービスの特徴を踏まえ、指名検索を増やす意味はあるのか、理解しておく。すると、自ずとPV数を目安にした方が良いかどうかもわかってくるでしょう。
非指名検索を寄せるオウンドメディア
オウンドメディアの役割は、基本的に社名やサービス名を知らない見込み客へのアプローチかと思います。こうした見込み客は、自社サービスを名指しで検索するのではなく、自分の困り事を解決してくれるようなキーワードで検索する非指名検索による流入が一般的。カスタマージャーニーマップをもとに、認知から導入までの過程でコンテンツの種類を分けてみると、PV数の把握に役立ちます。
基本的に「認知」から「情報収集」の段階が、非指名検索。情報収集でサービス名を知り、「比較検討」の段階で指名検索を行います。基本的に認知の段階で制作するコンテンツは、主に課題解決を目的としたもの。その後、課題解決の手段としてツールの導入があることを知ったユーザーが、具体的なサービスをリサーチ・比較検討するといった流れです。
とくに認知の段階のユーザーに情報を届けるのであれば、PV数を増やす施策を考えなければなりません。PV数の増加=より多くの潜在見込み客にリーチできている証拠であるためです。当初は質以上に量に重きを置いて、オウンドメディアを運営していく必要もあるでしょう。
一方で情報収集の段階であれば、PV数よりもコンテンツの質を高める方向にシフトするといった方針をとれます。このようにカスタマージャーニーマップを作成すると、目安のPV数も自ずと絞れてくるはずです。
なお当然ですが、検索結果に上位表示されるかどうかによって見込めるPV数は変わります。そのため、PV数を増やしたいなら、検索順位を上げるSEOなどの施策も頭に入れておきましょう。
外から見るBtoB企業のPV数の参考値
最後に、BtoB企業が運営するサイトのPV数を、参考までに紹介していきます。
ブイキューブ のコーポレートサイトとテレキューブ
参考元:ブイキューブ
ビデオコミュニケーションツールを提供するブイキューブ。コーポレートサイトのPV数は、90.35K×1.85=約16万7000です(K=1000)。
対してオウンドメディアのテレワークナビのPV数は、152.92K×1.20=約18万5000です。
参考元:テレワークナビ
コーポレートサイトとメディアのPV数に、比較的差がない例といえます。これは、ビデオコミュニケーションツールという、コロナ禍では多くの企業にとってマストアイテムとなった製品を取り扱っている。また「テレワーク」という、広く一般に普及した言葉を、コーポレートサイトで使用しているなどの理由があるといえそうです。
ラクスのコーポレートサイトと配配メールのメディア
参考元:ラクス
楽楽精算などのクラウドサービスを提供するラクスのコーポレートサイトのPV数は、101.01K×3.38=約34万1000です。
対してオウンドメディアのPV数は、約116K(86.31K×1.34)です。
参考元:メルラボ
これは「ラクス」という企業名の認知度が比較的高いこと。さらに、CMも打っている「楽楽精算」などの主力製品により、コーポレートサイトへの流入が多いと考えられます。
また、メールマーケティングという比較的ニッチな分野に絞って情報提供を行っており、オウンドメディアとしてはそこまでPV数が大きくないなどの要因がありそうです。
Smart HRのコーポレートサイトとメディア
参考元:Smart HR
人事労務の効率化ツールを提供するSmart HRのコーポレートサイトのPV数は、1.52M×4=約600万800です。
対してオウンドメディアのPV数は、274.88K×1.26=約34万6000となっています。
参考元:SmartHR Mag.
こちらも、コーポレートサイトのほうがPV数が多い例。会社名と製品名が一致しており、「Smart HR」自体の認知度が高いこと。さらにテレビCMの効果やお役立ち資料の充実などが、PV数を増加させていると予想できます。
ご紹介した企業3つは上記の様に特殊な市場環境とCMなどのマス施策によってPV数を伸ばして行っている企業です。一般的なBtoB企業であればあくまでコーポレートサイトとオウンドメディアのPV数のバランスは(正確なベンチマークは存在しないものの)1:10くらいを一つの目標とするのも良いと思います。
しかしながら、繰り返しになりますが、目安は存在しておらず、それはあくまでペルソナやコンテンツ化するトピックをどこまで深堀していくかに強い影響を受けるからです。
まとめ
今回はシミラーウェブを使い、代表的なBtoC企業とBtoB企業のPV数を見ていきました。前提としてBtoB企業には、PV数の絶対的な目安はありません。またVertical SaaSのように、PV数を増やす施策があまり役立たないケースもあります。
ただ、どうしても目安が知りたいという場合、自社で取り扱っている製品の特徴と似ていたりターゲットが被る企業のウェブサイトのPV数を、まずは無料のシミラーウェブで把握する。そしてその数値を、一旦の目安に据えてみるのも良いかもしれません。