インターネットによりEメールやSNSが普及した現在でも、電話は営業活動において必須のツールです。
BtoBビジネスにおけるバイヤーの購買行動も完全にオンラインに移行した訳ではなく、オンラインとオフラインの両方から接点を深める「ハイブリッド営業」に取り組んでいる企業こそが成長を遂げていると、米コンサルティング企業・マッキンゼーのレポートで紹介されています。
とはいえ、やはりインターネットが顧客の購買行動に与えた影響度合いは、見過ごせるものとはいえません。現代の顧客購買行動により合致する「インバウンド型」のマーケティング手法や営業手法に世間の注目が集まっているのも事実です。
そこで本記事では、そのような「インバウンド型」のマーケティング・営業手法の対比として置かれることが多い「アウトバウンドコール」について、その意味やタイプ別の目的、最新の統計的データなどをまとめて解説します。
アウトバウンドコール(Outbound call)とは、企業から顧客に向けて電話などを用いて発信を行う業務のことを言います。
「アウトバウンド(Outbound)」には英語で「外に向けた〜」といった意味があります。英語圏ではよく使う表現です。たとえば、電車などで中心街から郊外に向けて走る路線を「Outbound line(下り線)」、反対に郊外から中心街へ向かう「内向きの」路線は「Inbound line(上り線)」といいます。
具体的には、企業側から顧客に向けて製品やサービスの提案などを目的として、能動的に電話をかけることを「アウトバウンドコール」と呼び、反対に顧客から企業にかかってくる電話の対応を行うコール業務が「インバウンドコール」と呼ばれます。
パッと言葉の定義だけを聞くと、「アウトバウンドコールは営業的?」「インバウンドコールはコールセンター的?」という印象を受けるかもしれません。
実際にはそのように単純に分けられるものではなく、掘り下げていくと少々複雑なのですが、両者の背景や歴史を辿っていくと、もともとは両方とも同じくコールセンター業務から派生したものであることがわかります。
日本でコールセンターが一般的になったのは1980年代からといわれていますが、国土が広大であるアメリカではかなり古くからビジネスに電話が取り入れられてきました。
(出典:River B2B)
世界初のコールセンターは、1957年にDialAmerica社によって設立されました。企業の顧客問い合わせの窓口を一本化して請け負ったところ、これが大ヒットします。
1960年代にはアメリカ中の企業にコールセンターが受け入れられるようになり、同様のコールセンター企業が多く設立されました。またこの頃から顧客の問い合わせを受けるだけでなく、顧客のリストに従って企業からアプローチをかける「テレマーケティング」によるセールスの効果が認められるようになりました。
1970年代には、企業がテレマーケティングを営業活動に用いるのはもはや常識となり、BtoC・BtoBを問わず広い分野のビジネスで活用されるようになります。ただ、この頃はデータの整理などが困難で、マーケティングの戦略はあってないようなものだったようです。
1980年代になるとコンピューターによるデータ管理が可能となり、テレマーケティングのコストパフォーマンスは飛躍的に向上します。企業のテレマーケティングへの平均投資額が、ダイレクトメールの平均投資額を上回り出したのもこの頃です。
ところが1990年代になると、このテレマーケティングの手法を用いた詐欺や悪徳商法が横行するようになってしまいます。これに対して政府が「Do Not Call Registry」などに代表される条例を厳しく制定するようになりました。またこのような悪徳商法への警戒心から「電話営業を嫌う」顧客が多くなったのもこの頃といわれています。
インターネットの普及により、顧客がより能動的に欲しい製品やサービスの情報を取得できるようになった2000年以降は、顧客に自社を見つけてもらうというインバウンドのスタイルを主体としたデジタルマーケティングがより注目されるようになってきています。
ただ、アウトバウンドコールを用いた営業活動は依然として一定の効果があるとされており、まだまだ広く使われています。
インバウンドマーケティングについてはこちらの記事でも紹介しておりますので、ぜひ併せてご一読ください。
同じくコールセンターから派生し、営業的な側面も持つようになったアウトバウンドコールとインバウンドコールですが、それぞれどのようなものがあり、それぞれの目的はどのように異なるのでしょうか?
ここではアウトバウンドコールとインバウンドコールのそれぞれのタイプと、目的の違いについて解説します。
企業から顧客へ電話をかける、と聞くと、まず「テレアポ」を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか?
日本では営業的なコール業務をまとめてテレアポと呼ぶことも多いですが、狭義でのテレアポの目的はその名の通り「アポイントメントの設定(Appointment setting)」です。一般的なテレアポ業務は顧客へ電話をかけ、自社の営業担当との商談の機会を創出することが主な目的となります。
電話でできる限りのアポイントを設定するのはもちろん、設定したアポイントで営業担当がうまく商談を進められるよう、顧客の心をうまく掴み購入意欲を高めておくというのも重要です。
テレマーケティング(Telemarketing)とは、電話を通して直接的にアプローチを行うマーケティング手法で、その大きな目的はリードジェネレーションです。
リードジェネレーション(Lead generation)とは、自社の製品やサービスを購入してくれそうな潜在顧客(リード)を新規に創出することです。当ブログのこちらの記事でも紹介していますので併せてご一読ください。
テレマーケティングでは、電話を通して自社製品やサービスに対する興味や購入意欲を喚起し、電話相手を潜在顧客(リード)に昇格させることが主な業務となります。
新規リードの創出、という側面から全く新しい相手(こちらの電話を予期しておらず購入意欲もほぼない相手)へ電話をかける、いわゆる「コールドコール(Cold calls)」となりやすいのも特徴です。
テレマーケティングとよく似ているので混同されがちですが、テレセールス(Telesales)はテレマーケティングよりも商談のクローズ、つまり実際に製品やサービスを購入してもらうことを大きな目的としています。そのため、テレマーケティングの先にテレセールスを設置している企業も多いです。
テレセールスでは実際の成約率、コンバージョンレート(CVR)がパフォーマンスの判定にシビアに影響します。そのため「コールドコール」をかける際には個人の営業スキルの影響度合いが非常に高くなる側面を持つほか、すでにリード育成がなされている、いわゆる「ウォームコール(Warm calls)」をかける際にも、精度の高いリスト構築が肝心となります。
アウトバウンドコールは既存の製品やサービスを提案・販売するためだけに使われるわけではありません。市場を調査し新製品やブランドの方向性を見定めるためにも活用されます。
市場調査を目的としたアウトバウンドコールでは、ランダムもしくは特定層のターゲットに対して電話でいくつかの質問を行い、ターゲットの素性や置かれている環境、課題や自社もしくは自社製品に対する印象などを調査します。
調査された内容は市場(顧客)のセグメンテーションの分析に活用され、新製品の開発やブランディングの方向性決定などのマーケティング戦略を組み立てることに使われます。
市場のセグメンテーションについては、こちらの記事でも紹介していますのでぜひご一読ください。
カスタマーサービス(Customer service)では、多くの場合既存の顧客からの電話に対応します。形態は扱う製品や企業によりさまざまですが、一般的に電話の内容には自社や自社製品に対するフィードバックやリクエスト、質問や見積りの依頼のほか、支払いの確認なども含まれます。
カスタマーサービスにおける最大の目的は、顧客満足度を高めることと、それによる顧客維持率(リテンションレート)の向上です。
顧客の質問やリクエスト、あるいはネガティブなフィードバックに対して適切な対応を行い、顧客の心が自社から離れないようにすることが重要となります。
カスタマーサービスに含まれることも多いですが、自社製品の使用中に起きたトラブルなどに関する問い合わせへの対応を行うテクニカルサポートも、インバウンドコールのひとつです。
テクニカルサポートの目的も、カスタマーサービスと同様に顧客満足度とリテンションレートの向上です。
技術的な対応が必要となるため、より専門性の高い人員の配置が必要となるほか、製品がうまく機能しない、壊れているなど、基本的に顧客のフィードバックがネガティブなところから対応がスタートすることが多いため、対応者には安定した精神力が要求されることもあります。
既存顧客からの電話の中には、現在使用している製品のアップグレードや更新を依頼するもの、もしくはそれらの提案の余地があるものがあります。そのような電話に対して適切な対応を行うのも、インバウンドコール業務のひとつです。
寿命が近づいている製品やサービスを適宜更新してもらうことで、リテンションレートの向上が図れるほか、顧客の状況に応じたアップセルやクロスセルの提案を行うことで全体的な売上げの向上も見込めるため、このようなコールに対する対応も非常に重要です。
企業によってはカスタマーサポート・テクニカルサポートとまとめて製品購入後の既存顧客のアフターケアとして「カスタマーサクセス(Customer success)」という部署を設けているケースもあります。
インバウンドコールの中には、既存顧客だけでなくまだ取引のない潜在顧客(リード)からの問い合わせも含まれ、このようなコールは「インバウンドセールスコール(Inbound sales call)」と呼ばれます。
先に紹介した、企業からの能動的なアウトバウンドコールでのリードジェネレーションと違い、このような問い合わせを行う相手は既に自社や自社製品に対して一定の興味を持っているため、企業はこのようなコールを受けた時点で受動的に新規のリードを創出したことになります。
インバウンドセールス業務では、リードの自社への興味や関心を高めるリード育成(リードナーチャリング)、それからリードの購入意欲がどれほどかを正確に判別するリード選別(リードクオリフィケーション)が大きな目的です。
インバウンドセールスは企業の事業形態や規模などによって、コールセンターが兼務で担っているケースや、インサイドセールスなど専門の部署をおいているケースがあります。
前章で述べた通り、アウトバウンドコールの目的として大きく分けて以下が挙げられます。
このような目的を達成するために、アウトバウンドコールに取り組むメリットについてもう少し掘り下げましょう。
リードジェネレーションとは、潜在顧客(自社の製品・サービスに興味を持ちそうなユーザー)と接点を持ち、商談を進める目的で、相手企業の担当者名・連絡先・決裁者情報などを獲得することです。また、リードクオリファイとは、獲得したリードについて受注可能性などの評価をして「商談へ進めるべきかどうか」と選別を行うことを指します。
アウトバウンドコールを行うことで、潜在顧客と直接の対話を通して「製品・サービス導入に関する検討度合いは?」「導入が実現しそうなタイミングは?」「相手の社内における決裁者は誰か?」など、詳細な情報を深堀りすることが可能になるため、リードジェネレーションとリードクオリファイが可能になるのです。
アウトバウンドコールでは低コストで顧客と接点を持つことができます。例として、Web広告を出稿してリード獲得を図る手法と比較してみましょう。
1カ月間に100万円の予算で取り組むと仮定します。BtoBビジネスにおけるリード獲得単価(広告施策によるもの)の相場は「1万円前後」というデータを参考にした場合、単純計算するとこのWeb広告施策では「100件程度のリード獲得を見込める」と考えられます。
この概算を、アウトバウンドコールを行う場合と比較してみます。自社内に顧客データベースを保有していれば、そのリストに基づいてどんどん架電して見込み客と対話できると想定されるため、「1カ月に100万円かけて、100件のリードを獲得する」というよりは、もっと効率よく見込み客に関する詳細な情報を取得できるでしょう。
また、架電する環境をどのように構築・運用するか工夫次第で、比較的低コストで構築・運用できます。
たとえば、CRM・SFAでSalesforceを使用しているとします。SalesfoeceにCTIシステム(コンピューターと電話を統合する仕組み)を組み込む方法が一例として考えられます。クラウド型のCTIシステムを選ぶことで、電話システムを社内にオンプレミスで構築する手間・時間を省けるため、初期費用を低減しつつスピーディーに環境構築が可能です。通話にはインターネット回線を利用するので、通話料をはじめとする運用費用を比較的抑えることができるでしょう。
CTIシステムを導入していると、オペレーターなど実際に架電を行う人は、パソコンの画面でCRM・SFAの画面(顧客リスト、これまでの応対履歴など)を見て「今までこの人とは、どんな会話をしてきたか?反応はどうだったか?」など、細かく確認しながら通話できるようになります。
また、通話を自動で録音することも可能なため、後から応対内容の確認・振り返りも可能です。「具体的にどのようなアプローチをすると有効か?」などヒントを得られて、アウトバウンドコール施策そのものの継続的な改善に役立てられるでしょう。
アウトバウンドコールに取り組んでいる中で、リアルタイムな対話を通して、見込み客などの要望に即時に応えられるようになる場面も想定できます。
たとえば、見込み客に電話をして、自社の製品・サービスについて検討してもらえるよう、さまざまな角度からアプローチを試みているとしましょう。会話の中で見込み客から「今、ビジネスで課題に直面していて困っている」などと話が出てきたら、その場で「では、このような解決策があります」など、即座に切り替えしをして、ビジネスに役立つ提案をできる場面もあるかもしれません。
その結果、自社の製品・サービスに少しでも興味を持ってもらえたら、見込み客と接点を維持しつつ継続的な状況伺いなどをして、やがては商談の機会が実現する可能性も考えられます。
見込み客とリアルタイムに直接の対話ができる接点を持っていると、「自社の商材について、見込み客はどのような印象を持っているか?」「ニーズはどうか?」など、具体的な声を直接獲得・収集できるようになります。
通常、このようなお客様からの声はアンケートやマーケットリサーチをしなくてはいけませんが、リアルタイムで直接的にフィードバックを数多く集めることで、最短で自社のビジネスを取り巻く市場への洞察を深めるヒントを得ることができます。
また、顧客の声を着実に自社の製品・サービス改善に反映させることで、製品・サービスの質の向上やそれを実現したことにより顧客からの信頼獲得につながり、結果的に顧客との長期的な関係維持にも役立つと考えられます。
ここまでアウトバウンドコールとインバウンドコールについて、それぞれのタイプや目的の違いについて触れてきましたが、実際のビジネスシーンでは両者はどのように受け入れられているのでしょうか?
ここでは統計的データに基づく両者の違いについて比べてみましょう。
(出典:RAIN Group)
セールスコンサル・リサーチ会社であるRAIN Groupによるリサーチによると、営業員の70%は現在でもアウトバウンドコールを通じて潜在顧客とのミーティングを創出しているそうです。
また同社のリサーチでは、82%のBtoBバイヤーが積極的にアプローチをかけてきてくれた営業員とのミーティングを快く受けると回答しています。
(出典:Novocall)
インターネットやSNSを活用したインバウンド型の営業が普及しており、従来のアウトバウンドコールの効果が薄れてきているのでは?という疑問を払拭する結果となっています。
ただ、このリサーチではアウトバウンドコールの結果は1位のEメールに次ぐ2位です。同じアウトバウンドでも電話からEメールへと営業手段が移行している、というようにも読み取れます。
アメリカのセールスコンサルティング会社であるBrevet社のリサーチによると、受注までたどり着く電話営業のうち、約80%が5回以上のコールを必要としたという結果が出ています。
しかし同じくアメリカのセールスオートメーションツール開発会社であるSpotio社によるリサーチでは、44%の営業員はわずか1回のアウトバウンドコールでリードへのアプローチを諦めてしまうそうです。
また、The Bridge Grou社によるとアウトバウンドコールを主とする営業員が1日にかけるコールドコールは平均45件で、そのうち営業活動に有用となるコールは平均5.1件だそうです。
このデータからは、アウトバウンドコールを成功させるためには1日・1リードあたりに多くのアプローチ(リソース)が必要になるということのほか、アウトバウンドコールを行う営業員への精神的ストレスは大きく、実際に必要な量のアプローチを行うことは非常に難しい、ということが読み取れます。
前述した通りアウトバウンドコールの効果は依然として大きいものですが、その分気をつけないと営業リソースやコストを大きく消費してしまうかもしれません。
アメリカの大手テクノロジー企業IBM社は、自社のインバウンドソーシャルセリングプログラムにより、売上げを400%も向上させたと発表しています。
またアメリカの経営誌であるHarvard Business Reviewによると、インサイドセールス部隊の設置は従来のフィールドセールスのみの営業活動に比べ、営業にかかるコストを40-90%削減できるとされています。
どちらのデータも、インバウンドコールを含むインバウンド型のマーケティング・営業戦略の企業の売上げ向上に対する期待値の高さを実証するエビデンスとして、充分なものといえるでしょう。
アメリカのリサーチアナリストファームForrester社の記事によると、インターネットやSNSが発達した昨今では、顧客は企業の営業員による製品提案よりも自ら率先して行う製品やサービスのリサーチに重きを置くようになっているといいます。
それを実証するようにGartner社のリサーチでは、BtoBにおける購買行動のうち、バイヤーがサプライヤーと接触する時間は全体のたった17%に過ぎないと発表しています。
(出典:Gartner)
これは、顧客の情報取得能力が以前と比べ高くなっており、サプライヤーの営業員からの提案ではなく、自らの手で得た情報をより信頼して購買行動を起こしていることを顕著に表しています。
さらにHubSpot社によるリサーチでは、BtoBソフトウェアの購入検討時にバイヤーが参照する情報のソース元として、ソーシャルメディア上の口コミやネット記事が、サプライヤーの営業員からの提案を大きく上回るという結果も出ています。
(出典:HubSpot)
つまり、昨今では顧客は企業のアウトバウンドコールによる提案でサプライヤーを決めているというよりも、自ら必要な情報をリサーチしてサプライヤーを絞り込み、購入の最終的な検討をするために選択した企業に問い合わせする、というのが主流となってきているということです。
そのため、自社に問い合わせしてきた顧客は必然的に購入意思の高い「ホットリード」となる可能性が高くなります。そのようなホットリードを逃さず効果的に受注につなげるインバウンド型の活動が、今の時代に合っているといえるかもしれません。
ここからは、アウトバウンドコールの成果を評価・改善するために、測定するべきKPIの例を紹介します。たとえば、次のような指標が考えられるでしょう。
それぞれ、なぜ測定したほうがよいのか理由を詳しく解説します。
架電数とは、「電話を発信した数」のことです。具体的には、架電する人(オペレーターなど)一人あたりが、「1時間に何件電話を発信できたか」「1日の発信件数」「1週間の発信件数」を管理者(コールセンターのマネージャーなど)が測定・評価することが推奨されます。
たとえば、「架電したい対象者リスト」があって、「いつまでに架電を完了したい」とスケジュールを立てているとしましょう。期限内に実際の架電件数が少なければ、オペレーターを増員するか、スケジュールを再考するか、ビジネスの目的に向けて取り組みを進めるために管理者が検討する必要があるでしょう。よって、「オペレーター1人あたりの架電効率」を測定・評価することが必要だといえます。
ただし、「架電数」はあくまで電話した「数」を問うもので、応対内容の「質」を測定・評価することはできません。そのため、次項以降で紹介する他の指標も組み合わせる必要があります。
接続率とは「発信した件数に対して、実際に通話がつながって話すことができた割合」のことです。「コンタクト率」と呼ぶ場合もあります。
たとえば、架電したいリストが手元にあって、目的の相手(会社)に電話をかけることができたとしても、時間帯によって出てもらえないことや、留守電にメッセージを残さざるを得ない場合も出てくるでしょう。「せっかく電話しても、目的の相手とつながらない」といった時間帯・曜日に活動しても、コールセンター全体で生産性は上がりません。
よって接続率を測定・評価し、電話をかけるのに適切な(接続率の高い)時間帯や曜日を把握・可視化することで、コールセンターの生産性向上につながるでしょう。
稼働率とは、オペレーターが「給与支払い対象時間」に対して、「顧客応対関連に費やした合計時間」の割合を評価する指標です。
オペレーターの仕事は「電話を発信して実際に通話している時間」「通話の後処理(CRM・SFAの入力内容更新など)をしている時間」ばかりではありません。休憩時間や、ミーティング・研修なども適宜必要なため、オペレーターの疲弊を防止し全体で生産性を落とさないために「稼働率100%が良い」と考えるのは間違いです。
目安(適正値)は、日本においては「80〜85%」を掲げるケースが多いといわれています。これは「COPC® CX規格」という、コールセンターやコンタクトセンターに関する国際規格で定められている目安です。
平均通話時間とは、「一回の通話にかかる平均的な通話時間」を指します。つまり、オペレーターひとりあたりが見込み客との会話に費やす平均時間を評価する指標です。
これは、あまり長いと一日あたりに架電できる件数が少なくなってしまいます。全体で架電件数が少なくなってしまうと、そこから商談獲得などコンバージョン発生の可能性も低下するでしょう。
よって、一件一件、真摯に対話することは大前提としても、コールセンター全体で生産性向上を高める観点からは「平均通話時間を短くすること」をオペレーターひとりひとりが理解し、頭の片隅に置きながら活動することも大切だと考えられます。
コンタクトアポイント率とは、「実際に通話がつながった件数」に対して「アポイントを獲得できた数」の割合です。
コンタクトアポイント率は、高ければ高いほど望ましいといえます。獲得したリードを、商談の機会へと転換する効率の良さを表していると伺えるためです。
一方、コンタクトアポイント率が低い場合には「リードを獲得して、商談化できる率が悪い」といえます。そのような状況に陥ると、顧客獲得単価が上昇していくことになるでしょう。この場合、営業担当者でのアポイント獲得までのトークの課題も見直すことも大事かもしれません。十分に興味づけできず通話が終わってしまっている可能性もあります。
また、商談化率は「リードをどのような経由で獲得したか?」によって左右される場合もあります。たとえば、検討度合いが低い層に向けて架電しても、「興味が高まったので、商談の場を設けましょう」とはなりにくいでしょう。
「検討度合いが浅いリード」だと分かった場合には、ウェビナーに招待する、ホワイトペーパーを提供するなど、徐々に業界動向を共有して理解してもらうなど、リードナーチャリングのプロセスを挟むことも考えるのがおすすめです。この観点から、リードクオリファイ(リードの評価・選別)のプロセスも重要なのです。
ここからは、アウトバウンドコールの成果を高めるためのコツについて紹介します。具体的には以下5点が挙げられるでしょう。
それぞれ、推奨される理由について掘り下げて解説していきます。
オペレーターが架電に使用するトークスクリプト(台本)を用意しましょう。
営業電話を受けることについて、それほど快く思わない相手もいると考えられます。仕事中に突然、営業電話がかかってくると「煩わしい」「早く会話を終わらせて業務に戻りたい」などと感じられるケースも少なくないでしょう。
よって、「相手に不快感をなるべく与えないような話の切り出し方をする」「端的にこちらの本題を伝えるようにする」などあらかじめ会話の要点をよく考えて、トークスクリプトに盛り込むことが推奨されます。
社内にオペレーターが複数名いる場合、「トークの展開がスムーズで、商談獲得につながりやすい人」に注目し、そのトーク展開を分析してスクリプトを作成するのもよいでしょう。このような取り組みは、オペレーターの応対内容の録音・分析ができるCTIシステムを導入していると実行しやすくなります。アウトバウンドコールに長期的に取り組むならば、トークスクリプト作成・運用・改善も継続的に必要です。
オペレーターが電話で見込み客と直接話すことで「製品・サービスへの関心度合い・検討度合いは?」「相手が感じているビジネス上の課題は?」「先方の社内における決裁者は誰か?」など、さまざまな情報をリアルタイムに得ることになります。
「見込み客が今、製品・サービスについて感じていることを、ダイレクトに知れる」「架電数が多ければ多いほど、数多くのフィードバックを集めることができる」このようなポイントこそがまさに、アウトバウンドコール施策に取り組む大きな意義だといえます。
よって、一人ひとりの顧客から得た情報は、会話を終えた直後にSFA・CRMに顧客データとして入力することが大切です。
会話履歴を詳細に残しておくことで、営業担当者が顧客に対してアプローチをする際の大きな助けになります。たとえば、初回に話した際には商談に至らなかったものの、少し時間が経って再アプローチを試みる際に、前回の会話内容をフックにコミュニケーションが取れるでしょう。
「半年前にお話しさせていただいた際には、〇〇について課題を感じていらっしゃったかと思うのですが」「前回お話しさせていただいた際に、3カ月後くらいに予算について検討するとのことで、その頃に再度ご連絡のお約束をしていたのでお電話させていただきました」といった具体的なアプローチの切り口を考えやすくなります。
相手からしても「闇雲に営業電話がかかってきているのではなく、前回話した内容を踏まえて連絡してくれている」といった印象につながるでしょう。
そのため、顧客データを長期的に蓄積し、マーケティング施策などに活用する重要性をオペレーター一人ひとりにも理解してもらうことが重要です。
なお、本記事の後半で紹介しますが、HubSpot Call Tracking Softwareのようなツールを利用することで、通話記録を自動でCRMにデータとして反映できる場合があります。アウトバウンドコールに取り組み始める前に、活動の効率化に役立つツールについても情報収集・検討するのがおすすめです。
通話の録音をもとに、オペレーターに対するフィードバックを継続的に行うことも大切です。
たとえば、CTIツールなどを活用してオペレーターによるすべての通話を録音しておき、分析してオペレーターに良い点・改善点をフィードバックして応対品質を向上させる取り組みも必要でしょう。人によって「トーク展開がスムーズ」「トーク展開がうまくいかない、アポイント獲得できない」など応対品質のバラつきや属人化を低減できると期待できます。
コールセンター全体で応対品質が向上することで、顧客からの信頼度合い・満足度が高まったり、商談化率が上がったりするなど、長期的に良い影響が考えられるでしょう。
アウトバウンドコールに取り組む中での失敗・損失を未然に防止し、成果を高めるために法令遵守をする観点も重要です。
架電リストを用意して業務を進めることは、そもそも大量の個人情報を取り扱うことを意味します。そして、会話を通じて「相手の部署に関する詳細な情報」「決裁者の連絡先」などさらに個人情報が蓄積されることになります。
よって、「個人情報保護法」について、会社全体で正しく理解して行動することが求められます。アウトバウンドコール施策の責任者だけではなく、オペレーター一人ひとりも理解が必要です。個人情報保護委員会はコールセンター業務を行う国内の事業者に対して以下のような注意喚起をしているので、引用して紹介します。
[以下引用] “ コールセンター業務を実施する個人情報取扱事業者は、多数の顧客等に関する個人データ等を取り扱うことから、その漏えい等を引き起こさないよう、安全管理措置(法第 23 条)及び従業者の監督(法第 24 条)について、より一層留意することが求められます。 また、コールセンター業務自体のほか、システムの運用保守等において、個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合も少なくないことから、その場合、委託先の監督の着実な実施も求められます(法第 25 条)。 “ コールセンター業務における個人データの取扱いに係る安全管理措置、 従業者の監督及び委託先の監督に関する留意点について(注意喚起) |
たとえば、業務上知り得た見込み客などの氏名、電話番号などについて、以下の項目を全社で常時徹底することが必要です。
また、米国・EU市場を開拓し、顧客を獲得する可能性もある企業においては、あわせて米国やEUの法令も理解しておく必要があります。
CTIシステムなど、架電用のソフトウェアを利用することをおすすめします。
見込み客リストに対して電話をかけること自体は、オフィスのビジネスフォンや社用の携帯電話でもできるでしょう。しかし、自動通話録音が必ずしもできない場合もあります。
これから電話システムを新規導入するならば、社内に電話交換機の設置・配線が必要なオンプレミスのビジネスフォンだと導入費も少なからず掛かるでしょう。加えて、コールセンターを運営していくには毎日たくさんの通話料がかかります。
一方、CTIシステムならば、インターネット回線を利用して通話できるなど、比較的通話コストを抑えられます。月々、年間で考えれば運用費の節約になると期待できるでしょう。
さらに、自動通話録音が可能で、CRM・SFAと自動データ連携できる製品も見られます。AIによる会話の自動文字起こし・要約などができる製品もあるなど、活用次第で大幅にオペレーターの作業時間が短縮され、生産性向上に役立つと考えられます。
ここからは、アウトバウンドコールの効率を上げるツールとして以下3つの製品・サービスを紹介します。「アウトバウンドコールの取り組みそのものを効率化する」「見込み客リストを増やす」「通話の応対品質を改善する」といった観点で役立つツールをセレクトして紹介するので参考にしてください。
HubspotにはCRM・SFA・MA・CMSなどさまざまなツールがあり、自社のビジネスに必要な機能を選んで利用できます。そのうち、「Sales Hub® Sales Software」「Call Tracking Software」という製品がアウトバウンドコールに役立つでしょう。
「Sales Hub® Sales Software」は、セールス活動の支援ツールです。リード管理をして、AIの助けを借りながらリードクオリファイができるようになります。
(出典:Hubspot)
一方「Call Tracking Software」は、パソコンのブラウザから電話をかけられるようにするための仕組みです。HubSpotに蓄積された顧客データに基づき、毎日の架電の優先順位を決定し、すべての通話をCRMへ自動的に記録できるようになります。
(出典:Hubspot)
Sales Makerを利用すると、日本の法人データ、人物データ、部署データなどを膨大に利用できるようになります。
通常は、自社のWebサイト上でのページ閲覧履歴や資料ダウンロード履歴など「ファーストパーティデータ」を営業活動で主に利用することになります。しかし、Sales Makerの利用によってサードパーティデータも活用できるようになるため、新規開拓できる対象が大きく拡大すると期待できます。
たとえば、「いま、『オフィス移転』と調べている企業がわかる」「いま『アウトソーシング』と調べている企業がわかる」など、具体的にアプローチすべき対象企業が分かるようになります。自社のサービスに関心を持ってくれそうな企業に絞り込んで、アプローチをかけることができるようになるでしょう。
(出典:Sales Maker)
MiiTelとは、CTIシステムのひとつです。パソコン画面上で電話番号をクリックするだけで効率よく架電できるようになります。また、電話での会話内容を自動録音・文字起こしすることや、AIで解析して応対内容の改善に役立てる機能も搭載されています。
通話に関する記録はCRM・SFAに自動連携されるので、オペレーターが通話を終えた後の処理業務も効率化できるでしょう。
また、スマホアプリも提供されているため、アプリを活用することでリモートワーク環境や外出先でもアウトバウンドコールの取り組みを進めることが可能になります。
(出典:MiiTel)
アウトバウンドコールは古くからある営業の手法のひとつですが、売上げへの期待値はまだまだ高いとされており、依然として多くの企業で活用されています。
とはいえ、飛び込み営業と同じくアウトバウンドコールが一般的に好まれない傾向にあるのも事実。また、インターネットの普及により顧客の購買行動モデルには大きな変化が起きています。長く成功をおさめてきた営業手法も、変化する顧客行動によっては今後通用しなくなるかもしれません。
インバウンドの活動、特にインバウンドコールやコンテンツマーケティングを積極的に取り入れ組み合わせることでコール活動はしやすくなるかもしれません。