Web訪問者がWebサイトを初めて訪問した際に、いきなり問い合わせや資料請求をすることは極めて稀です。BtoB企業の担当者は時間をかけて入念にベンダーやサービス提供者の情報を調べ、社内調整や予算取りの可能性が見えてから買い手側にアプローチをします。
マーケティング担当者であれば、そのようなタイミングになった買い手に自社の情報を届けたいと考えることも多く、そのような際にこちらからアプローチする方法のひとつとして、リターゲティング広告が存在します。
しかしながら一般的なオンライン広告と比較すると、リターゲティング広告を出稿することは少なく、リターゲティング広告についてあまり知らないマーケティング担当者も多いのが現実。それゆえ、リターゲティング広告の出稿を検討しているものの、費用面でわからないことが多くて、不安を感じていないでしょうか。
前述したように、Web初回訪問時にコンバージョンする割合は非常に少なく、わずか2%と言われていることから、再訪問を促す施策は欠かせません。
過去に自社サイトなどを訪れた人に絞って広告を配信するリターゲティング広告は、再訪問を促すのに適しているため、必要なタイミングで活用するのもひとつの大切な打ち手になります。
本記事では、リターゲティング広告の費用や効果について、以下の内容を解説します。
- リターゲティング広告の課金の仕組み
- 費用に関するデータ
- クリック率やコンバージョン率に関するデータ
リターゲティング広告を効果的に利用することで、広告の費用を抑えつつ、見込み客の獲得や販売を伸ばすことが可能です。自社の売上げや利益を効率よく拡大するために役立てられるので、ぜひ最後までお読みください。
リターゲティング広告の課金の仕組み
まずはリターゲティング広告の課金の仕組みを解説します。広告を出稿する際にかかる費用を把握するためにも、基礎となる知識を押さえておきましょう。
リターゲティング広告とは
(リターゲティングの仕組み)
リターゲティング広告は、一般的なバナー広告ではなく、オンラインターゲティング広告の一種です。すでに自社のWebサイトを訪れたことのある人や、リードや顧客などのデータベース内の連絡先に配信されます。(HubSpotより引用)
「ある製品をネットで見たら、その製品の広告がいろいろなサイトで出てくるようになった」という経験がある方もいらっしゃるかと思います。そのようにして見かける広告が、リターゲティング広告です。
リターゲティング広告を出稿できる媒体は主に以下の4つであり、「リターゲティング」の呼び方には微妙に違いがあります。
- Google広告:リマーケティング
- Yahoo!広告:サイトリターゲティング
- Facebook広告:リターゲティング
- Twitter広告:リターゲティング
それぞれの用途や目的に大きな違いはありません。本記事では、名称を「リターゲティング」に統一して解説します。
BtoBの製品サービスの場合、買い手が初めて訪れたWebサイトで、そのまま購入に至るケースは多くありません。買い手は購入するかどうかを時間をかけて検討することが一般的ですが、検討期間が長引くほど、自社の製品サービスのことを忘れられてしまう恐れが大きくなります。
その対策として、リターゲティング広告を出稿することが有効です。買い手に広告を見せて製品サービスを思い出してもらい、あらためて購入を促すきっかけを作れます。
ただし、リターゲティング広告は万能ではありません。自社サイトを訪問済みの買い手に出稿する広告であるため、新規に立ち上げたサイトへの訪問者を増やすことには向いていません。
新規サイトへの訪問者を増やしたければ、サイト内のコンテンツを充実させるなど、インバウンド型の営業手法を取り入れる必要があり、リターゲティング広告ばかりに頼っていると、見込み客の数が減っていってしまう恐れがあるため注意しましょう。
リターゲティング広告の仕組みや始め方は別記事で詳しく解説しました。ぜひあわせてお読みください。
課金の仕組みとそのタイミング
(課金のタイミング)
リターゲティング広告の課金の仕組みには、「インプレッション課金」と「クリック課金」の2種類があります。どちらの課金方式で広告を出稿するかは、広告配信時に選択可能です。
インプレッション課金は、「広告が表示される度に課金される」方式です。広告がクリックされたかどうかは、費用に関係ありません。そのためインプレッション課金では、買い手の関心をひきつける広告を出稿し、多くのクリックを集めることで、広告の費用対効果を高めることが重要です。
クリック課金は、「広告がクリックされる度に課金される」方式です。広告が表示された回数は費用に影響しません。広告費をかけたぶんだけ確実にクリックしてもらえるのがメリットですが、間違えてクリックされた際にも費用がかかる点には注意しましょう。
インプレッション課金とクリック課金のどちらのほうが費用対効果が良いかは、さまざまな条件によって変わります。両方の課金方式を試してみて、ROIやROASを比較し、自社の場合はどちらが適しているかを判断するとよいでしょう。
リターゲティング広告の費用に関するベンチマーク一覧
リターゲティング広告を出稿するとどれだけ費用がかかるのか、気になる方は多いのではないでしょうか。そこでリターゲティング広告の費用に関連する、以下のベンチマークを紹介します。
- ROIが最も効果的なKPI(重要業績評価指数)だと考えるマーケターは54%
- Google広告での平均クリック単価は0.66〜1.23ドル
- 予算の割合は「10%以下」の企業が51%
ROIが最も効果的なKPI(重要業績評価指数)だと考えるマーケターは54%
(最も効果的なKPI)
上図の調査結果によれば、54%のマーケターが「リターゲティング広告の最も効果的なKPI(重要業績評価指数)」として、ROIを挙げています。リターゲティング広告においては、「広告費に対して得られた利益の割合」であるROIが、最も重視されているのです。2位は「広告費に対して得られた売上げの割合」であるROASでした。
ROIやROASよりも重視されていない指標の例は、以下の通りです。
- CPA(顧客獲得単価)
- CTR(広告のクリック率)
- CPC(1クリックあたりの費用)
個々のクリックやコンバージョンよりも、「予算全体を見る大きな視点」が重要だと考えられている傾向があります。リターゲティング広告を運用する際には、ROIやROASを意識するとよいでしょう。
Google広告での平均クリック単価は0.66〜1.23ドル
Google広告におけるリターゲティング広告の平均CPCは、0.66〜1.23ドルです。これに対し、Googleの検索広告の平均CPCは1~2ドル、ディスプレイ広告では1ドル以下です。リターゲティング広告のCPCは検索広告よりは低く、ディスプレイ広告よりは高い傾向があるといえます。
広告の費用対効果を高めるためには、出稿しているリターゲティング広告が「買い手にとって有益である」と、Googleのアルゴリズムに評価してもらうことが大切です。具体的には、「広告の画像やキャッチコピー」と「ランディングページ」の整合性を高めることを意識しましょう。ランディングページの内容とは関係ない画像を広告に使用すると、CPCが高くなってしまう恐れがあります。
予算の割合は「10%以下」の企業が51%
(リターゲティング広告の予算の割合)
上図はマーケティング予算全体のうち、リターゲティング広告に費される割合がどれだけであるかを調査した結果です。リターゲティング広告の予算割合が10%以下である企業は51%で、最多であることがわかります。
この結果が示す通り、リターゲティング広告に多くの予算を費やしている企業は少ないといえます。リターゲティング広告は、あくまでも他のマーケティング施策を補助する目的で用いられることが多いのです。リターゲティング広告ばかりに費用をかけ過ぎることがないように、予算全体に占める割合には注意しましょう。
リターゲティング広告のクリック率やコンバージョン率に関するベンチマーク一覧
リターゲティング広告が有効な施策であることは、データから読み取れます。リターゲティング広告のクリック率やコンバージョン率に関する、以下のベンチマークを紹介します。
- クリック率はリターゲティングされた買い手の方が3倍も高い
- インターネット利用者の25%がリターゲティング広告を好んでいる
- B2Bのコンバージョン率はB2Cの402%
- 平均クリック率は通常のディスプレイ広告の10倍
- 同じ広告を使い続けるとクリック率は50%近く減少する
クリック率はリターゲティングされた買い手の方が3倍も高い
広告のクリック率は、リターゲティングされた買い手のほうが、新規の場合よりも3倍も高いというデータがあります。リターゲティングの対象となる買い手は、過去に自社のWebサイトなどを閲覧しているため、関連した内容の広告に興味を持つ確率が高まるのです。
現在Web広告を運用しており、クリック率が低くてお悩みであれば、リターゲティング広告を利用してみるとよいでしょう。
インターネット利用者の25%がリターゲティング広告を好んでいる
インターネット利用者の25%がリターゲティング広告を好んでいます。また、約60%はリターゲティング広告を好きとも嫌いとも思わず、中立的な立場です。
買い手自身が興味を持っているものに関する広告なので、まったく関心がない広告よりも、好まれる傾向があるのだと考えられます。自社やブランドへの好感度を損ねたくない企業にも、リターゲティング広告はおすすめです。
B2Bのコンバージョン率はB2Cの402%
B2Bのリターゲティング広告はB2Cよりも、広告表示回数あたりのコンバージョン数が多いというデータがあります。B2Bのコンバージョン率はB2Cの402%と、4倍ほども高いのです。
B2Bでは、見込み客に関する調査が十分に行われている場合が多いため、コンバージョンにより多く結びついているのだと考えられます。リターゲティング広告を出稿する前に、見込み客がどんな情報を求めているのかを推測し、適切なタイミングで効果的なメッセージを届けているのです。
リターゲティング広告は、出稿すれば必ず成果が得られるものではありません。事前の調査が重要であることを忘れないようにしましょう。
平均クリック率は通常のディスプレイ広告の10倍
リターゲティング広告の平均クリック率は0.7%である一方、リターゲティングを行わないディスプレイ広告では0.07%です。つまり、リターゲティング広告のクリック率は、通常のディスプレイ広告の10倍にも達しているのです。
クリック率を高められれば、ランディングページを訪れる人が増え、コンバージョンの増加につながります。リターゲティング広告の有効性を、よく示しているデータだといえるでしょう。
同じ広告を使い続けるとクリック率は50%近く減少する
リターゲティング広告において、同じ広告を5カ月間運用すると、CTRが50%近く減少します。そのため、広告は数カ月ごとに別のものに差し替えましょう。
同じ広告を何度も目にし続けると、買い手は飽きてしまい、広告を不快に感じる原因となってしまいます。別の画像や広告コピーを用意して、買い手に製品サービスへの関心を持ち続けてもらうことが重要です。
まとめ
リターゲティング広告には「インプレッション課金」と「クリック課金」の2つの仕組みがあり、どちらを選ぶかによって、かかる費用は変わります。両方を試してみて、自社に適したほうを選ぶとよいでしょう。
リターゲティング広告を活用することで、広告の費用対効果を高められる可能性があることは、さまざまなデータから明らかです。ただし、新規に立ち上げたサイトへの訪問者を増やすことには向いていないなど、リターゲティング広告が有効ではないケースもあります。リターゲティング広告の効果を過信せず、他の施策もバランスよく組み合わせることが大切です。