自社サイトを構築するにあたって、コンテンツ管理システム(CMS)の導入をお考えではないでしょうか。CMSの中で最もシェアが高いのはWordPressですので、候補として検討している方もいらっしゃるでしょう。実際、WordPressの日本でのシェアは2022年12月時点で83.9%であり、圧倒的な人気があるのは事実です。
しかし、WordPress以外にもCMSは多数存在します。自社に最適なCMSを導入してこそ、効果的なマーケティングを行えるようになり、売上げアップの可能性が高まります。十分に検討せずにWordPressの導入を決めてしまうと、せっかくのチャンスを逃してしまいかねません。そこで本記事では、以下の内容を解説します。
CMSの種類やそれぞれの違いについて理解を深めることで、どんな基準で選ぶべきかがわかってきます。すると、自社のマーケティングに適したCMSを選びやすくなるでしょう。ぜひ最後までお読みください。
コンテンツ管理システム(CMS)は、コンテンツを管理するために使用されるアプリケーションで、複数の投稿者が作成、編集、公開することを可能にします。CMSのコンテンツは通常、データベースに保存され、Webサイトのように一連のテンプレートに基づいて、プレゼンテーションレイヤーに表示されます。(Optimizelyより引用)
CMSを使えば、HTMLやCSSなどのプログラミング言語の知識がなくても、Webサイトの構築が可能です。日常的にエンジニアに協力してもらうことが難しい場合でも、マーケティング担当者だけで手軽に扱えます。そのため、人材不足に悩む中小企業でも利用しやすいでしょう。
CMSのメリット・デメリットについては、別記事で詳しく解説しました。ぜひあわせてお読みください。
CMSが登場する以前は、パソコンの内部にWebサイトのデータを保存しておき、更新の度にアップロードすることが一般的でした。しかし、このやり方では特定のパソコンからしか更新が行えないうえ、複数人での管理が難しいという課題がありました。
一方、その後に発展したCMSでは、インターネットを通じてサーバーにデータを保存する「クラウド型」がほとんどです。どの端末からでも更新作業が行えるようになり、チームでWebサイトを管理することが容易になりました。
CMSが登場した1990年代には、企業が独自に企画・制作する「独自開発型」のCMSが多く使われていました。しかし2000年代になると、無料で利用できる「オープンソース型」のCMSが急速に発展し、現在の主流となっています。
(WordPress)
WordPressはオープンソースのCMSです。Webサイトやブログを構築したい、コーディング経験のない個人にも人気のあるツールです。このソフトウェアはコストがかかりません。誰でも無料でインストールし、使用し、修正できます。(HubSpotより引用)
WordPressは世界で最も使われているCMSです。「W3Techs」のデータによれば、2022年12月時点でのWordPressシェアは世界で63.9%です。日本に限ればシェアはさらに高く、83.9%に達しています。
利用者が多いため、WordPressに関する情報はインターネット上にたくさんあります。そのため困ったことが起きても、インターネットで検索すれば、解決策を見つけられることが多いです。社内に気軽に相談できる人がいないマーケティング担当者にとっても、使いやすいツールだといえます。
2003年にWordPressの最初のバージョンが公開されました。WordPressは当初、ブログを作るためのツールとして開発されていました。
その後、WordPressはブログに限らず、幅広い種類のWebサイトの制作に使われるようになります。度重なるバージョンアップにより、CMSとしての機能も強化されていきました。
(企業によるWordPressの利用状況)
上図は、企業がどのようにWordPressを利用しているかについての調査結果です。左端の「主にCMSとして利用している」企業の割合は年々高まり、2019年には79%となっています。一方、右端の「主にブログプラットフォームとして利用している」企業の割合は低下を続け、2019年にはわずか2%でした。
また、豊富なプラグイン(拡張機能)を利用できることが、WordPressの特徴です。多くの人に使ってもらえると期待できるため、エンジニアがプラグインの開発に注力し、機能が充実することでますます利用者が増えるという好循環が起こっています。
CMSには「オープンソース型」と「独自開発型」の2種類があります。 CMSを導入する際には、それぞれの強みと弱みを理解したうえで、自社に適したほうを選びましょう。
オープンソース型のCMSは、ソースコードが一般に公開されています。開発はボランティアの手で行われることが一般的です。
多くのオープンソース型のCMSは、大規模な企業サイト向けに設計されているわけではありません。そのため、企業が利用する場合には、比較的小規模なサイトを構築する際に適しているといえます。
オープンソース型の最大の強みは、無料で利用できることです。サーバーの契約や有料オプションの利用などで、ある程度の費用はかかることが多いですが、独自開発型のCMSと比較すれば安価で済むでしょう。
「CMSを導入したいものの、予算はあまり確保できない」という方もいらっしゃるかと思います。そういった場合には、費用を抑えやすいオープンソース型がおすすめです。
一方でオープンソース型では、プログラムに不具合や脆弱性があったとしても、すべて自己責任となります。また、公式のサポートも存在しない場合がほとんどです。トラブルが起きたら自力で対処する必要があるため、そのぶん手間や時間がかかることは覚悟しておく必要があります。
独自開発型は、マーケティングなど特定の目的のために開発されたCMSです。用途に合わせて開発が行われるため、適切なCMSを選べば大規模なサイトにも対応できます。
自社で使用しているシステムと緊密に連携するなど、複雑なカスタマイズが求められる場合には、オープンソース型では対応が難しいことが多くあります。その場合は、独自開発型のCMSを導入する必要があるでしょう。
独自開発型の強みは、自社の目的や用途に特化したCMSを導入できる点です。たとえば「リードジェネレーションを推進したい」という目的があるのであれば、それに適したCMSを選ぶことで、成果を得やすくなります。
また、CMSの提供事業者がプログラムの不具合や脆弱性に責任を負うため、オープンソース型よりも安心して使いやすいでしょう。サポートも充実していることが多いので、豊富な機能を使いこなしやすい点も強みです。
ただし、独自開発型は費用面が弱みだといえます。月額で料金がかかる場合が多く、導入時には初期費用を請求されることもあります。期待できる成果の大きさと費用のバランスを考えて、導入するCMSを選ぶことが大切です。
CMSを導入する場合、幅広い用途に使えるWordPressは、多くの企業にとって候補になるでしょう。とはいえ、企業の状況によっては他のCMSのほうが適している場合もあります。
そこでWordPressと比較すべきCMSを「オープンソース型」と「独自開発型」に分けて紹介します。各CMSの違いを理解し、自社に最適なものを選ぶための参考にしてください。
オープンソース型のCMSとして、以下の3つを紹介します。いずれもWordPressと同様に、無料で利用できる点が大きな魅力です。
(Drupal)
Drupalは、カスタマイズすることを前提に設計されているCMSです。用途に応じて柔軟な運用が可能なので、大規模で複雑なWebサイトにも対応しやすいのが特徴です。サイトに「モジュール」を追加することで、手軽に機能を強化していけます。
複数のモジュールがあらかじめ組み合わされた「ディストリビューション」も利用可能です。ディストリビューションは、「コーポレートサイト」や「Eコマース」など、さまざまな用途向けに提供されています。自社が構築するサイトに合ったものを活用することで、作業量を大幅に減らせるでしょう。
ただし、Drupalのカスタマイズには専門的な知識が必要となる場合があります。社内のエンジニアの協力が得られる環境であれば、Drupalを活用しやすいでしょう。
(Joomla!)
Joomla!は、機能が多いことが特徴のCMSです。「エクステンション」と呼ばれる拡張機能を使うことで、さまざまな用途に対応できます。メールフォーム作成やユーザー管理の機能が標準で使えるため、マーケティングに利用しやすいでしょう。
企業が使用する際には、比較的大規模なサイトを構築する際に用いられる傾向があります。小規模なサイトでは、Joomla!機能の多さを持てあましてしまうためです。設定すべき項目が多いので、WordPressよりも上級者向けのCMSだといえます。
(Concrete5)
Concrete5は、簡単な操作で直感的に扱えるCMSです。「画像」や「フォーム」などのブロックを、ドラッグ&ドロップで組み合わせることで、コンテンツを作成できます。標準機能で「メンバー限定の会員サイト」を作ることも可能です。
ただし、機能面では対応できることがそれほど多くなく、他のCMSと比べると見劣りする部分があることには留意しておきましょう。とにかく手軽に扱えるCMSを探している場合には、Concrete5をおすすめできます。
独自開発型のCMSのうち、とくにマーケティングに有用なものを3つ紹介します。豊富な機能や充実したサポートを重視するのであれば、導入を検討するとよいでしょう。
(Wix)
Wixは、スモールビジネスやEコマースに適したCMSです。直感的な操作で、ホームページに関する豊富な機能を利用できます。「ホームページプラン」では、データ容量や機能に応じて、以下の4つのプランから自社に合ったものを選択可能です。
ただし、Wixはマーケティングツールとの連携に標準で対応していない場合が多いため、連携作業に苦労する場合があります。Wixは低コストで取り急ぎサイトを立ち上げたい場合に、おすすめのCMSです。
(Sitecore)
Sitecoreは、充実したマーケティング機能が特徴のCMSです。プラグインを使用することで、CRM(顧客関係管理)システムとの連携も簡単に行なえます。複数のツールを組み合わせつつ、マーケティングを実行可能です。
Sitecoreのライセンスは、以下の3種類に分類されています。
それぞれのライセンスの費用は、必要とする機能やページ数などの条件によって変動します。そのため、費用が事前にわかりにくい点は、Sitecoreの弱みです。
(HubSpot CMS Hub)
HubSpot CMS Hubは、マーケティングに特化したCMSです。「HubSpot CRMプラットフォーム」の以下のソフトウェアと簡単に連携でき、豊富な機能を使えます。
自社のマーケティングに必要なソフトウェアのみを選んで導入できるので、費用を抑えやすい点が特徴です。HubSpot CMS Hubには無料ツールが用意されているほか、以下の3つの有料エディションもあり、ニーズに合わせて選択できます。
マーケティングオートメーション(MA)やCRMシステムをCMSと別々に管理すると、それぞれ別の担当者が必要になり、運用コストが高くなる傾向があります。HubSpot CMS Hubであれば、各種マーケティングツールを一体で管理できるため、スムーズに運用しやすいでしょう。
WordPressは世界で最もシェアが高いCMSです。簡単にWebサイトを構築できるうえ、プラグインを活用することで豊富な機能を使えるため、多くの企業におすすめできます。
ただし、WordPressの他にも有用なCMSは複数あり、オープンソース型のCMSは費用を抑えて利用できる点が魅力です。また、複数のツールを組み合わせてマーケティングを行う場合には、独自開発型のCMSが適しています。
各CMSの特徴を理解し、十分に比較したうえで、自社に最適なものを選びましょう。