買い手の情報収集の方法は多様化しており、対応するために多くの企業がマーケティングチャネルを複数利用するのが当たり前になってきました。
しかし、その複雑化したマーケティングチャネルのせいか、51.7%のBtoB企業が「費用対効果が見えづらい」と感じているという調査結果があり、課題を抱えている企業は少なくありません。
そこで役立つのが、アトリビューションです。アトリビューションとは、買い手とのタッチポイントがコンバージョンにどれだけ貢献したかを分析するための指標。アトリビューションによって各チャネルの貢献度を把握できれば、どの媒体へ優先的に注力すべきかがわかります。
検討期間が長い傾向があるBtoBやSaaSの契約では、買い手は最終決定までに多くのチャネルから情報収集するのが通常です。そのため、アトリビューションの分析が効果を発揮することがあります。
本記事では、BtoB企業やSaaS企業のマーケティング担当者向けに、そのアトリビューションについて基礎から詳しく解説します。
すでに行っているマーケティング施策の効果を測定し、今後の対策を立てるために、アトリビューションが役立つでしょう。効果的な対策をすることで、マーケティング予算を増やすことなく、コンバージョンの増加につなげられます。ぜひ最後までお読みください。
(アトリビューションの考え方)
アトリビューションとは、買い手が望ましい結果に至るまでに経由した、各タッチポイントの貢献度のことです。「望ましい結果」とは主にコンバージョンのことを指します。
買い手は主に、以下の媒体を経由してコンバージョンに至ります。
コンバージョンの直前のタッチポイントだけを見ていたのでは、各媒体の貢献度の正確な評価はできません。経由した媒体すべてをアトリビューションによって評価してこそ、的確な施策を行えるようになります。
単価の高い製品ほど、買い手はいろいろな広告やコンテンツを経由して検討するのが一般的です。車を購入する際には、900以上ものタッチポイントを経由するというデータもあります。
BtoBの製品はBtoCよりも単価が高く、検討期間が長くなることが多いです。買い手は広告だけでなく、以下のようなさまざまなタッチポイントと接触します。
これらのうち、どれがコンバージョンに貢献しているかがわかれば、そのタッチポイントに予算を集中することで、売上げアップにつながる可能性があります。感覚ではなくデータに基づいて、思い切った施策を行えるようになるのです。
たとえば、マーケティング支援を行う株式会社ベーシックは、以下のような媒体を運営し、買い手との接点を用意しています。
オウンドメディア「ferret」
(出典:マーケターのよりどころferret)
マーケターのよりどころferretは、ベーシック者が運営する会員数約49万人をほこる日本最大級のWebマーケティングメディアです。2014年にオープンしてから、Webマーケティングのノウハウ記事、インタビュー記事、ツール紹介など多彩な記事を紹介することで、デジタルマーケティングに関心のあるリードを惹きつけています。
FacebookやX(旧Twitter)などのSNSでも、マーケターのよりどころferretのアカウントを設け、連携して記事を拡散しています。
ウェビナーのフォローアップを徹底することで、商談を増やす具体策を解説した資料も無料ダウンロードできます▼https://t.co/KfTSaRPxcF
— ferret(フェレット) (@ferretplus) October 12, 2023
セミナー・イベントも多く、マーケティングの基本から最先端のトレンドまでの幅広いテーマでウェビナー、カンファレンスを開催しています。
興味を持った方はお役立ち資料の無料ダウンロードが可能です。。なんと300種類以上も用意されています。
(出典:ferret One お役立ち資料ページ)
さらに、ツールを試してみたいユーザーは無料デモでダッシュボード、ページ編集、リード管理などの主要機能を気軽に試すことができます。
(出典:ferret One 無料デモ体験ページ)
このようにタッチポイントを増やすことで、SaaSのWebマーケティングツール「ferret One」の契約に向けた、買い手の導線を作っているのです。
いずれも重要なチャネルですが、アトリビューションの分析をした結果、仮に「X(Twitter)の貢献が特に大きい」とわかれば、「専任の担当者を新たに配置する」などの施策につながります。このように「次に何をすべきか」をデータから明確にできる点が、アトリビューションを活用する大きなメリットです。
アトリビューションの前身として、1950年代にマーケティング・ミックス・モデリング(MMM)が使われており、テレビ広告や新聞広告、ラジオ広告などの媒体に加え、季節や天候などコントロールできないものも評価の対象でした。
MMMを用いることで、各媒体の効果の定量的な把握が可能になったのですが、個人の行動の追跡はできないため、コンバージョンへの貢献度までは測定できないという点が課題だったのです。
インターネット技術の発展に伴い、2000年ごろからcookieを利用したリアルタイムの追跡が可能になりました。これにより、買い手が購買に至るまでのタッチポイントを把握できるようになったのです。
現在では、コンバージョンへの経路がますます多様化しています。オンラインでは、以下の施策に取り組んでいるBtoB企業やSaaS企業は多いでしょう。
企業のマーケティング施策はオンラインのみにとどまりません。
(現在実施しているマーケティング施策)
MEDIXの調査によると、上図が示すように多くのBtoB企業がさまざまな施策に注力しています。以下はオフライン施策の一例です。
(マーケティング施策全体における課題)
このように多くの施策を実行しつつも、上図の通り「費用対効果が見えづらい」と感じている企業は少なくありません。企業の規模によらず、BtoB企業にとって「効果を測定する」ことは、マーケティング施策における大きな課題となっているのです。
BtoBやSaaSでは、購入決定までに関わる意思決定者が多く、プロセスが複雑になる傾向があります。そのため、各施策がどれくらいコンバージョンに貢献しているのかが、余計に見えなくなりがちです。そこで「費用対効果が見えづらい」ことへの有効な対策として、アトリビューションが効果的と考えられています。
マーケターがアトリビューションを考えるメリットを紹介します。
マーケティング施策の選択肢は年々広がっています。オンライン上には、従来のペイドメディア、自社のオウンドメディア、SNSなどのシェアードメディアがあり、しかも年々新たなメディアが増えています。
アトリビューションは、このような異なるマーケティング施策やチャネルが最終的なコンバージョンにどれくらい寄与しているかを理解できます。
たとえば、オウンドメディアなら特定のページが訪問者をコンバージョンに導く役割を果たしているかもしれません。一見地味なページやタッチポイントが実際に重要な役割を果たしていることがあります。
目に見えるかたちでCVに貢献していないものの、実は成果に多大な影響を与えている施策を明確にすることは、マーケティングの意志決定の精度を上げるでしょう。
有料広告だけでもディスプレイ広告、ターゲティング広告、検索連動広告などさまざまな種類があります。今は多くの企業がオウンドメディアを持ち、SNSアカウントを持ち、自ら発信して見込み客にアピールしています。
このようなさまざまなマーケティングチャネルにおいて、どれにどの程度予算を配分すればよいかはマーケターの悩みの種です。
しかしアトリビューション分析することによって、どのチャネルが最も効果的であるかを特定することや、成果に貢献していないチャネルを把握し無駄な予算を削減することができます。それにより、CPAを最適化できるのです。
たとえば、米国の AdRoll とEconsultancy がヨーロッパ、アジア、北米のマーケティング専門家に対して実施した2017年の調査では、担当者の約 3 分の 2 が自社キャンペーンの一部に、何らかのアトリビューション分析をしていることがわかりました。
主目的は、「メディア ミックスの最適化、アトリビューションの最大の利点はチャネル間での予算のより適切な割り当て」と回答しています。以下はアトリビューション分析した後の予算配分の結果です。
↓「緑」が増加、「赤」が減少、を示しています。
(出典:Marketers’ Use of Attribution Is Having A Mixed Effect on Their Spending Patterns)
このように、アトリビューションを使用して施策の成果を把握することによって、予算配分を最適化していくことができます。ただし、この調査では10人中7人が、アトリビューションから得た洞察を行動に移さないと解答しているなど、現実にアトリビューション分析を使いこなして成果を上げることの難しさもうかがえます。
マーケティング施策全体で見れば、成果のあるコミュニケーションチャネルはどこでしょうか?
近年は、プラットフォーム各社がアトリビューションレポートを提出しているので、限定された範囲であれば情報には困りません。
たとえば、Yahooでは2022年より、キャンペーン単位、広告グループ単位でコンバージョン貢献度を可視化する「アトリビューションモデル比較レポート」の提供を開始しています。Facebook、X(Twitter)などにもアトリビューション分析機能があります。
しかし、あくまでそのプラットフォームの影響する範囲内ですし、各プラットフォームごとに解釈も多少異なります。マーケターは全体の中でのチャネルごとの貢献、チャネル内のタッチポイントのアトリビューション分析をする必要があります。
もし、正確に成果のあるコミュニケーションチャネルがわかるなら、マーケティング成果が高くなることは間違いないでしょう。アトリビューション分析を行うと、最終的な結果だけでなく、コンバージョンに至るまでの各チャネルの影響度を知ることができます。
たとえば、わかりやすい例としてGoogle Analysis360 (有料)の、アトリビューション解析結果が以下です。コンバージョン プロセス内のマーケティング チャネルの重みづけが、色合いと%によって表示されています。
ここまでわかりやすいUIではないものの、2023 年9月から、GoogleAnalysisには無料データドリブンアトリビューション機能が標準装備されています(後述)。
(データドリブン アトリビューション モデル エクスプローラ- Googleアナリクスヘルプ)
このようなレポートは、チャネルの評価を一変させることもあります。
2016年の think with Googleの記事に、米ハーツ社がForward3D社、Google Analytics Premium(GAP)と提携し、データ駆動型アトリビューションプログラムを導入したときの結果が取り上げられています。
「ディスプレイ広告がいかに過小評価されていたか」が判明したという内容であり、300〜400%以上のコンバージョンがディスプレイ広告に起因していることが判明したため、ハーツ社はこれにもとづき予算配分を調整し、よりよい結果を得られるようになりました。
(How Attribution Analysis Can Drive Better Budget Allocatio | think with Google)
アトリビューション分析は有効な手段ですが、データ管理と分析のコストがかかる場合があるうえに、複雑なタスクでもあります。
アトリビューション分析によって、マーケティング成果を多少上げたりコストを削減できたりしても、導入コストがそれを上回れば意味はありません。導入する前に、企業はその必要性をよく検討する必要があります。
以下は、アトリビューションが特に有益なビジネスモデルの特徴です。
マルチチャネル戦略を採用している企業は、顧客との接触が複数のデジタルチャネルを介して行われることが一般的です。アトリビューションは、これらのチャネルの相互作用と貢献度を理解し、最適な予算割り当てを行うのに役立ちます。
商品やサービスの購買に時間がかかる場合、顧客のカスタマージャーニーにおいて複数のタッチポイントに影響を与えることがあります。アトリビューションは、長期的なカスタマージャーニーを評価し、ブランド認知や関与を構築するのに役立ちます。
大規模な広告予算を運用する企業は、広告のリターゲティングや最適なメディアチャネルの選定において、アトリビューションデータを活用することが効果的です。無駄な広告費の削減やROIの向上に寄与します。
データドリブンなアプローチを採用する企業は、顧客データを活用し、戦略的な意思決定を行います。アトリビューションはデータ駆動のマーケティング戦略をサポートし、効果的なキャンペーンを設計するのに役立ちます。
アトリビューションは、基本的にお客様の検討期間が長く、その間に複雑な動きをするビジネスに向いています。
アトリビューションの分析では、アトリビューションモデルと呼ばれるパターンを使って貢献度の割り振りを行います。その代表的なモデルの種類を紹介します。
シングルソースアトリビューションは、買い手がコンバージョンする際に最初に接触した、あるいは最後に接触した媒体のみを評価するモデルです。
シンプルなモデルであるため、初めて分析をする方でも扱いやすいでしょう。以下の2つのモデルについて解説します。
(ファーストタッチアトリビューションモデル)
ファーストタッチアトリビューションモデルは、買い手が最初に接した媒体のみを評価するモデルです。製品サービスの「認知」を重視するモデルともいえます。
認知のための媒体といえば、広告を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし実際には、見込み客が接触するあらゆるものが、ファーストタッチになりえます。
(認知のきっかけとなった媒体)
上図のMEDIXの調査によれば、SaaSを含むBtoBのIT製品・サービスにおいて、以下の媒体が認知のきっかけとなっています。
1位:検索エンジン(55.1%)
2位:IT系Webメディア(37.8%)
3位:ビジネス系Webメディア(35.4%)
4位:ソーシャルメディア(25.8%)
5位:IT専門雑誌(25.4%)
認知のきっかけの1位は検索エンジンです。このことから、検索結果での上位表示を目指す「SEO」に注力することが、自社の認知を広めるために効果的であることがわかります。
上記以外の媒体では、買い手の検索の受け皿となるオウンドメディアも、ファーストタッチとして重要です。
たとえば、買い手が検索エンジンからオウンドメディアの記事にたどり着いて自社を認知し、その後にサービスの契約に至ったとします。この場合、ファーストタッチアトリビューションモデルでは、オウンドメディアが最も貢献度が高いと評価されるのです。
(オウンドメディア「ferret」)
例として株式会社ベーシックは、マーケティングの話題を専門に扱うオウンドメディア「ferret」を運営しています。このように専門分野に特化した記事を継続的に掲載することで、自社と相性が良い見込み客に、効率よく認知を広めることが可能です。
SaaS企業であれば、自社サービスに関連した記事を公開できないか、検討してみるとよいでしょう。オウンドメディアという形でなく、自社サイト内のコンテンツを充実させるだけでも、ファーストタッチの機会を増やせます。
(ラストタッチアトリビューションモデル)
ラストタッチアトリビューションモデルは、コンバージョンする直前に接触した媒体のみを評価するモデルです。コンバージョンが確定する瞬間を重視し、貢献する媒体に注力します。
コンバージョンに至った媒体は容易に特定できるため、ラストタッチアトリビューションモデルで用いるデータは集めやすいでしょう。
たとえば、Web広告で自社のサービスを認知した買い手が、最終的に営業担当からのプレゼンテーションを聞いて、その場で契約を決定したとします。この場合、ラストタッチアトリビューションモデルでは、営業担当のみを評価するのです。
(最終意思決定に最も影響を与えた情報収集源)
上図のMEDIXの調査によれば、IT製品・サービスの購入において、最終意思決定に最も影響を与えたタッチポイントは、以下の通りです。
1位:検索エンジン(26.3%)
2位:ベンダー・メーカーの営業担当(14.6%)
3位:IT系Webメディア(11.9%)
4位:取引のあるSier・販売代理店の営業担当(9.5%)
この調査結果からは、オンラインだけでなくオフラインのタッチポイントも重要だとわかります。営業担当との接触が、最終意思決定に大きな影響を及ぼしているのです。
オンラインでの施策に注力していると、オフラインがおろそかになってしまう場合があります。Web上での施策を行う場合でも、営業担当との連携を考えることが大切です。
マルチソースアトリビューションは、買い手がコンバージョンに至るまでに貢献した媒体を、すべて評価するモデルです。カスタマージャーニー全体を見通し、購買プロセスを把握します。
マルチソースアトリビューションにはさまざまなモデルがありますが、代表的な以下の2つを紹介します。
(リニア(線形)アトリビューションモデル)
リニア(線形)アトリビューションモデルは、コンバージョンまでに経由したすべてのタッチポイントを平等に評価するモデルです。マルチソースアトリビューションの中で、最も単純なモデルだといえます。
分析しやすいモデルであるため、初めてマルチソースアトリビューション分析を行う場合に適しています。
また、すべてのタッチポイントが同様に重要であると考えているのであれば、このモデルを使うとよいでしょう。
(減衰アトリビューションモデル)
減衰アトリビューションモデルは、ラストタッチを最も評価し、さかのぼるごとに貢献の度合いを小さくするモデルです。
ラストタッチアトリビューションモデルと似ていますが、コンバージョンに至るまでに経由したタッチポイントも評価する点が異なります。
認知から購入決定までの期間が長いほど、タッチポイントは分散しやすくなります。そんな中で、コンバージョンの直前の「最後のひと押し」を高く評価するのは、実態に近い場合が多いといえるでしょう。
(接点ベースアトリビューションモデル)
接点ベースアトリビューションモデルは、マーケティングキャンペーンや広告活動などの、複数の接点(タッチポイント)が、それぞれ顧客の購買やコンバージョンに対してどれだけ影響を与えているかを評価するためのモデルです。
このモデルでは、個々の接点がカスタマージャーニーにおいて果たす役割を特定し、それに応じて貢献度を割り当てます。一般的な接点には、広告、ソーシャルメディア、ウェブサイト訪問、メールキャンペーンなどが含まれます。
接点ベースアトリビューションモデルは、多くの広告やマーケティング施策を展開し、検討期間が長い商品やサービスを扱う企業やブランドに向いています。BtoBのように、顧客が購買意思を形成するまでに複数の接点やコンタクトポイントが関与するビジネスモデルに適していると言えるでしょう。
データドリブンアトリビューションは、機械学習アルゴリズムを使用して、複雑なデータセットから貢献度を自動的に学習するアトリビューションモデルです。
ユーザーの行動パターンやタッチポイント間の相互作用をより詳細に捉えて、各タッチポイントのコンバージョンへの貢献度を精度高く分析します。データドリブンアトリビューションは、一般的なアトリビューション分析よりも、大規模なデータセットと高度な分析を必要とします。
BtoB企業やSaaS企業がアトリビューションを考慮するであれば、実際にどのような場合で考えるのが有効かを解説します。日々のマーケティング活動の中で、アトリビューションの分析を効果的に取り入れましょう。
アトリビューションの分析は、コンバージョンへの貢献が大きい「コンテンツの種類」を特定する場合に効果的です。
どのようなコンテンツが成果につながりやすいのかを調べるため、たとえば以下のポイントに注目してデータを集めるとよいでしょう。
これらを分析することで、コンテンツをどのように改善すべきか、方向性を決定できます。
たとえば、フォーマットとして「動画」がコンバージョンへの貢献が大きいと判明すれば、「動画コンテンツを充実させる」と方針を決めるとよいでしょう。同様にあるトピック(テーマ)のコンテンツの貢献度が高ければ、そのトピックの関連記事を増やすことができます。
コンバージョンへの経路をチャネルごとに分類し、優先順位をつけるときにもアトリビューションが役立ちます。
限られた予算の中でマーケティングリソースをどこに投資するか、戦略を明確にしましょう。
たとえば、SaaS企業がSNSとメールマガジンの両方でサービスの案内をしている場合、コンバージョンに貢献しているのは、どちらか一方だけかもしれません。もしSNSの貢献が小さいとわかれば、「思い切ってSNSの運営を中止してメールマガジンにリソースを集中する」ことが、有効な施策になりえます。
マーケティング施策を一定の期間行っており、十分なデータが溜まっている企業であれば、アトリビューション分析はより効果を発揮しやすいでしょう。各チャネルの貢献度を把握して、優先順位を見直すべきです。
コンバージョンのために用意したマーケティング施策以外にも、サイト内で意外な貢献をしているページがあるかもしれません。そうしたページを見つけるには、アトリビューションの分析が有効です。
例として以下のページの閲覧数が多い場合、買い手の意思決定に大きな影響を与えている可能性があります。
たとえば、検討段階にある見込み客が、最終的に問い合わせようと思えたのは、会社概要に企業理念、コンプライアンス、実績などが明示されており「まっとうな企業」だと安心したからかもしれません。社員ブログで社員の仕事ぶりを察して「良いパートナーシップが結べる」と感じた可能性もあります。
SNSで評判がいいからというケースもあるでしょう。当初は機能や費用対効果を調べるにせよ、実際にやりとりする段階手前になると、社風やスタッフの人となりが気になるのが人間です。
広告やSNSなどの注力している施策だけでなく、自社が提供しているコンテンツすべてを対象として、貢献度を確認するとよいでしょう。
ここでは、ツールを活用したアトリビューション分析のステップを解説します。
まずは、お客様との接点(タッチポイント)となるチャネルをリストアップします。現在、自社が展開しているマーケティング施策をすべてリスト化し、それぞれの実績データも集めてみましょう。
カスタマージャーニーを作成しているのであれば、顧客がその中のどのチャネルを経由して自社を知り、コミュニケーションをとる可能性があるか、ある程度可視化できているでしょう。
作成していない場合は、この機会にカスタマージャーニーを作成するとよいでしょう。その上で、タッチポイント上に自社が展開している施策(お客様との接点)を書き出してみましょう。
次にお客様の行動の仮説を立てましょう。
あくまで仮説なので精度が高くなくてもかまいませんが、長期間マーケティング業務でトライアンドエラーを繰り返してきた担当者自身の勘も、いわばデータや経験値に裏づけられた予測値なので役立ちます。
人の購買心理モデルはすでに研究されており、いくつかモデルはあるものの、気づき→興味関心→リサーチ→比較検討といったステップで進みます。
これまでの経験、現在のトレンドの変化を考慮し、自分なりにお客様の行動をシミュレーションしてみましょう。
仮説を踏まえて、アトリビューションモデルを選択します。分析の目標、マーケティング戦略、およびカスタマージャーニーの長さに依存します。
もし、ブランド認知の向上を重視する場合はファーストタッチモデル、直接的な販売コンバージョンを重視する場合は、ラストタッチモデルなどのシングルソースアトリビューションが適しているかもしれません。
しかし、長期にわたるカスタマージャーニー上のチャネルの効果測定をする場合は、接点ベーストアトリビューションモデルが適しているでしょう。適切なモデルを選択してください。
選択したアトリビューションモデルを用いて、データを分析し、各チャネルやタッチポイントの貢献度を評価するためには、分析ツールの設定とデータ収集も必要です。
さまざまなツールがありますが、それぞれ活用できるアトリビューションモデルは異なるので、目的に合わせて選ぶ必要があります。無料ツ―ルには「Google広告」「GoogleAnalysis」があります。
Google広告を活用するcase
Google広告には、2023年9月時点デフォルトで「データドリブンアトリビューションモデル」「ラストクリックアトリビューションモデル」が標準装備されており、無料で活用できます。
※「ファースト クリック」、「線形」、「減衰」、「接点ベース」のサポートは2023年7で終了
データドリブンアトリビューションモデルとは、前述のとおり高度なAIによるデータ分析と統計モデリングを使用するため、貢献度をより精度高く把握できるモデルです。
「Google 検索広告」「YouTube 広告」「ディスプレイ広告」「ファインド広告」「 デマンド ジェネレーション広告」で発生したすべてのクリックや動画エンゲージメントなどを分析し、貢献度を割り出します。
設定手順:WebサイトまたはアプリにGoogleAnalysisのトラッキングコードを設置し、Google 広告の管理画面で目標アイコンをクリック→セクション メニューでプルダウンの 「コンバージョン」 をクリック→「概要」をクリック。詳細は以下サイトをご確認ください。
(出典:Google広告ヘルプ)
広告だけでなく、SNS投稿、ビジネスブログなどコンテンツマーケティング全体のアトリビューション分析をする場合は、GoogleAnalysisのアトリビューション機能を無料で活用できます。
こちらもGoogle広告同様に、9月からデータドリブンアトリビューションがデフォルトになり、以前は有料でしか使えなかった高度な機能が無料で活用できるようになっています。
ITReviewのレビューを見ると、「メディア別の効果分析を測る上で欠かせないツール」「不要な広告を長く使っていたことにも気が付けた」など高評価コメントが並びます。
Google Analytics
(出典:Googleアナリクスヘルプ [GA4] アトリビューション設定を選択する)
設定手順:ダッシュボードの「管理」→「アトリビューション設定」→計測期間の「ユーザー獲得コンバージョンイベント」と「ほかのすべてのコンバージョンイベント」の計測期間を選択→保存(参考:[GA4] アトリビューション設定を選択する)
また、使うにあたって事前に以下の設定が必要です。
手動でも作成できますが、以下の自動作成ツールを活用できます。
(参考:Google Analysisヘルプ)
注意:GoogleAnalysisでは反映されるのが最大90日という期間のしばりがありますので、長期的にどの施策がコンバージョンに貢献したかは分析できません。あくまで直近の動きとして捉えるとよいでしょう。
上記以外では、Yahoo広告を活用している方は、Yahoo広告アトリビューションレポート機能を活用できます。ラストタッチ、ファーストタッチ、線形、接点ベーストの4モデルで、コンバージョンに至るまでのユーザーと広告との接触を時系列で可視化し、貢献度をスコアで表示してくれます。
本格的にアトリビューション分析をするなら、有料のHubSpot Analytics、Adobe Analyticsなどツールを検討するとよいでしょう。モバイルアプリのアトリビューション分析に特化したAppsflyerなど、目的に応じて使えるさまざまなツールがあります。
選択したツールとアトリビューションモデルを用いてデータを分析し、各チャネルやタッチポイントの貢献度を評価します。どの要因が成果にどれだけ影響を与えているかを理解します。
仮説通りであれば、最適化するためにはどうすればよいのかを考えていきましょう。仮説とかけ離れてしまったら、別の仮説をたてて再度検証していきます。
そしてアトリビューション結果をもとに、可能な範囲でマーケティング戦略や広告予算の最適化を行います。成果の高いチャネルにリソースを割り当て、明らかに低いチャネルへのリソースを低減します。
マーケティング環境は変化していくため、アトリビューション分析を定期的に行い各施策の貢献度をモニタリングしていくことが大切です。
ビジネスにおいて「それのROI(費用対効果は)? 」という質問は、当たり前のように問われます。しかし、この基本的な質問にマーケターが答えるのは、決して簡単ではありません。
年々生じている、複雑化する見込み客の動き、オンライン上に増え続けるチャネル、トレンドの変化。それらをまともに分析しようとしたら、時間もコストもかかりすぎるイメージがあるでしょう。
幸いなことに近年はアトリビューションツールが進歩しており、無料ツールでもかなりのことがわかるようになりました。
アトリビューションの分析を行い、コンバージョンに大きく貢献したチャネルを割り出せれば、そのチャネルを集中して強化することで、マーケティングの費用対効果を高められるでしょう。
ビジネスモデルによって必要性は変わってきますが、検討期間が長くタッチポイントが多くなりやすいBtoBやSaaSにおいては、アトリビューションの分析は特に重要です。マーケティング施策を改善するために活用することをおすすめします。
買い手がどのようなタッチポイントを経てコンバージョンに至っているのか、カスタマージャーニー全体を通して理解することが大切です。まずは見込み客とのタッチポイントをすべて洗い出したうえで、自社に最適なアトリビューションモデルを検討するとよいでしょう。