Webマーケティングに取り組みたいと思いつつも、何から始めればよいのかわからず、お困りではないでしょうか。2021年には「インターネット広告費がテレビなどマスコミ四媒体の広告費を初めて上回った」という調査結果もあり、Webマーケティングの重要度は高まってきています。
Webマーケティングで成果を出すためには、戦略を持って施策を実行していくことが大切です。しかし、従業員数が少ない中小企業では、マーケティングの専任者がいないことも多く、場当たり的な対応ばかりになってしまうこともあるようです。そこで本記事では、以下の内容を解説します。
Webマーケティングにはどのような施策があるのかを理解し、自社が取るべき戦略を考える助けになるでしょう。効果的な施策を行えれば、インターネット経由の集客と販売が増え、売上げの増加が期待できます。ぜひ最後までお読みください。
Webマーケティングとは、オンライン上でビジネスを展開することであり、ビジネスに最も関心のある人々にリーチするための費用対効果の高い方法です。(WebFXより引用)
費用対効果を高めやすい大きな要因は、オフラインでのマーケティングと比較して「データを集めやすい」ことにあります。オンライン上では、閲覧数やクリック数などのデータを、数字で詳細に把握できます。
そのうえ、データはリアルタイムに入手できるため、計画を立てて施策を実行し、効果を検証し、改善を行うという「PDCAサイクル」を素早く回せるのです。なおWebマーケティングは、オンラインマーケティングと呼ばれることもあります。
Webマーケティングの施策は、「自社ドメイン配下で行う手法」と「自社ドメイン外で行う手法」の2つに分類できます。それぞれの具体例は以下の通りです。
<自社ドメイン配下で行う手法>
<自社ドメイン外で行う手法>
中小企業がまず取り組むべきなのは「自社ドメイン配下で行う手法」だといえます。自社ですべて管理できるため手をつけやすく、コントロールが容易だというメリットがあるからです。自社サイトのコンテンツを充実させたり、オウンドメディアを通じたリードジェネレーションに注力したりすることから、始めるとよいでしょう。
Webマーケティングは、予算規模が小さくても取り組みやすいという特徴があります。テレビCMをはじめとしたマス向けの広告は、ある程度の予算規模がないと、出稿すらできません。その一方、WebサイトやSNSの運営であれば、無料で始められます。広告の出稿も「1日あたり1000円」などの低予算で可能なため、中小企業でも実施しやすいのです。
(年間マーケティング予算のうち、Webマーケティング予算が占める割合)
上図は2019年に、株式会社メディックスがBtoB企業を対象に行った調査の結果です。企業の売上げ規模別に「年間マーケティング予算のうち、Webマーケティング予算が占める割合」がまとめられています。
この結果を見ると、売上げが「1億円未満」の企業は「25%未満」の割合が高く、Webマーケティングに予算をかけていない企業が多いことがわかります。しかし、売上げ規模が1億円以上の企業であれば、傾向にはそこまで大きな違いはないようです。
たとえば、売上げが「1億円〜10億円未満」の企業が、Webマーケティングに「50〜75%未満」の予算をかけている割合は26.4%と、他の売上げ規模の企業よりも高いのです。中小企業もWebマーケティングに取り組んでいることがわかります。
(現在実施しているマーケティング施策)
上図は、同調査における「現在実施しているマーケティング施策」の結果です。売上げ規模によらず「WEB広告」の割合は比較的高く、Webマーケティングの施策として多くの企業に取り入れられていることがわかります。
一方「テレビCM」「雑誌広告」「展示会・イベント出展」などは、売上げ規模が100億円を超える企業の割合が高く、小規模な企業にはあまり利用されていないようです。これらの施策は、多額の費用がかかる傾向があることが背景にあると考えられます。
「PDCAサイクルを素早く回せる」というWebマーケティングのメリットを生かすうえで、予算規模が小さいことは不利な要因にはなりません。むしろ意思決定までのプロセスが複雑ではない中小企業のほうが、迅速な改善を行うためには有利な面があるのです。
中小企業の注力が読み取れる前述の調査結果は、Webマーケティングの特性を反映しているといえます。予算規模が小さくても取り組みやすいWebマーケティングは、中小企業にこそおすすめです。
中小企業によるWebマーケティングのイメージをつかんでいただくため、事例として以下の3社を紹介します。自社に取り入れられそうな施策はないか、ぜひ参考にしてみてください。
(株式会社OKANの公式サイト)
株式会社OKANは、法人向け置き型社食サービス「オフィスおかん」などを提供している企業です。
OKANはWebマーケティングの施策として、オウンドメディア「おかんの給湯室」の運営に注力しています。企業の福利厚生や健康経営などに関する記事を公開し、多くの訪問者を獲得しています。
記事を閲覧した人に対して、お役立ち資料のダウンロードを促すことで、リードの獲得につなげている点もポイントです。福利厚生や健康経営に関心を持っている、自社と相性が良い見込み客に絞って個別にアプローチすることで、効率の良い営業を実現しています。
またOKANは、効果的にリスティング広告を利用している点が参考になります。たとえば、「社員食堂」「社食」といったキーワードに対して広告を出稿し、資料のダウンロードやお問い合わせを促しているのです。これらのキーワードで検索した人は、「オフィスおかん」のサービスに関心を持つ可能性が高く、サービスの契約につながりやすいと考えられます。
オウンドメディアのコンテンツを充実させ、アクセス数を増やすには時間がかかります。OKANのように即効性のあるWeb広告と組み合わせることで、バランスの良いWebマーケティングを行えるでしょう。
(株式会社ベーシックの公式サイト)
株式会社ベーシックは、SaaSのBtoB向けマーケティングツール「ferret One」などを提供している企業です。
ベーシックは「マーケターのよりどころ」をコンセプトとした日本最大級のWebマーケティングメディア「ferret」を運営しています。リード獲得用のお役立ち資料は、ferret監修の資料だけでも140件以上を用意しており、訪問者の幅広いニーズに対応可能です。結果として、無料で登録できる「ferret会員」が48万人を超えるという成果を得ています。
ferretの認知が広まることで、同じ名称を使用している「ferret One」の宣伝にもつながるため、非常に効果的なメディア運営をしている点が参考になるでしょう。
ベーシックはSNS運営を成功させていることも、注目すべきポイントです。ferretのTwitterのフォロワーは約1万2000人、Facebookのフォロワーは約3万8000人にも達しています。これだけのフォロワーがいれば、SNSに投稿をするだけで、瞬時に多くの人に情報を届けられます。SNSへの投稿は無料で行えることを考えると、フォロワーを多く抱えることは大きな価値を持つのです。
SNSのアカウントでは、主にferretの記事を共有する投稿を行うことで、フォロワーを集めています。有益な記事を作成することが、メディアへのアクセスを増やすだけでなく、SNSアカウントを伸ばすことにもつながっています。
(株式会社ブイキューブの公式サイト)
株式会社ブイキューブは、SaaSのWeb会議ツールやオンラインイベントツールなどを提供している企業です。
ブイキューブのWebサイトは、見やすく整えられている点が参考になります。製品・ソリューション別に充実した紹介ページが用意されており、訪問者は詳細を確認したうえで、お問い合わせや資料請求を行えます。メニューは画像付きでわかりやすく表示されているため、興味のある製品のページに迷わずアクセスが可能です。
また、ブイキューブはWebセミナーを頻繁に開催しています。「ライブ配信」や「オフィス移転」といった、自社の製品と関連性が高いテーマでセミナーを行うことで、参加者に自然に製品をアピールする機会を作り出しているのです。参加者が有益だと感じるセミナーを提供することで、自社への信頼感を高め、成約につながりやすくしてます。
セミナーをオンラインで行えば、会場を確保するコストがかからないうえ、申し込む側にとっても手軽に参加できるメリットがあります。イベントをオフラインでしか行っていない企業は、オンラインでの開催を検討してみるとよいでしょう。
中小企業がWebマーケティングを始めるステップを、以下の6つに分けて解説します。ひとつずつ実行していくことで戦略を考える助けになり、効果的なWebマーケティングを行いやすくなるでしょう。
まずは自社サイトの現状を定量的に知ることから始めましょう。もしまだWebサイトを持っていない場合は、できるだけ早く開設することをおすすめします。WebサイトはWebマーケティングの中心となるので、どんな施策に注力するにせよ、用意しておくべきです。
(Googleアナリティクス)
「Googleアナリティクス」は、Webサイトの現状を知るために使えるおすすめのツールです。Googleが提供しているウェブアナリティクス用のツールであり、無料で利用できます。Googleアナリティクスで把握できるデータは、たとえば以下の通りです。
こうしたデータを収集し、数値を確認しましょう。なんとなくの感覚で判断するのではなく、定量的に分析を行うことが大切です。
収集したデータに基づいて、課題箇所を特定しましょう。マーケティングファネルにおいて、見込み客が購入に進むまでのどの段階で、離脱が多いのかを突き止めます。
たとえば、Webサイトへの訪問者が少ないのであれば、訪問者を増やすための施策が必要です。SEOを意識してコンテンツを作成したり、SNSから流入させるために投稿を増やしたりするとよいでしょう。
また、訪問者数を十分に確保できているのであれば、リード獲得につなげる施策が重要となります。資料のダウンロードやお問い合わせにつなげるために、わかりやすい場所に内部リンクを設置しておきましょう。
思うようにリードを獲得できていない場合は、「ダウンロード資料が魅力的ではない」「そもそも資料の存在を訪問者に気づいてもらえていない」といった原因が考えられます。ページ間の遷移数を確認するなどして、課題箇所をできるだけ絞り込みましょう。
顧客データをWebサイトと紐付けすることで、より効果的にWebマーケティングを行えるようになります。Webサイトの訪問者一人ひとりの行動を追跡できるようになるため、どの箇所でどういった施策が必要そうか、より詳細なデータを集められるからです。
顧客データを扱う際には、顧客管理システム(CRM)を導入するとよいでしょう。データを見やすく整理された状態で確認できるうえ、マーケティングに役立つさまざまな機能を簡単な操作で使えます。
(HubSpot)
たとえば、多くの機能を備えながら、使いやすさも兼ね備えている「HubSpot」はおすすめのツールです。Webサイトの改善だけでなく、リード獲得後の個別アプローチにも利用できます。無料ツールも用意されているため、どのCRMを導入するか迷っている場合は、試してみるとよいでしょう。
ここまでのステップを進めると、自社サイトがどのような見込み客に閲覧されているのか、おおよそ理解できるようになります。そこで改善のための打ち手を考え、優先順位をつけていきましょう。
たとえば分析の結果、お問い合わせフォームから連絡をくれた人が、直前にある記事を見ていたことがわかったとします。するとその記事は、お問い合わせにつながりやすい重要なページである可能性があります。だとすれば、その記事への訪問者が増えるように工夫することで、お問い合わせの増加を実現できるかもしれません。記事への訪問者を増やすには、たとえば以下のような方法が考えられます。
どれだけ早く成果を求めるかや、使える予算額を考慮して、どの施策を優先して行うかを決めましょう。
改善を行う際には、どの程度の数値を目指すのか、おおよその目標を定量的に決めておくべきです。KPI(重要業績評価指標)を定め、どれだけの費用をかけるのが適当かを判断しましょう。
KPIを決める際には、ゴールから逆算して必要な数値を決めることが大切です。たとえば、オウンドメディアのゴールを「サービスの契約」と定めるのであれば、以下のような逆算が考えられます。
こうして段階を明確にした後で、ゴールである「サービスの契約数」の目標値を決めましょう。すると、ゴールのひとつ前の段階のKPIも現実的に決められます。こうして段階ごとに考えることで、順番にKPIを設定していけます。
最後に、考えた施策を実行していきましょう。コンテンツ作成や広告出稿などの施策を行う場合、実行方法には以下の3つの選択肢があります。
「内製」が最もコントロールしやすく、費用もかからない傾向があるため理想的です。しかし、人材やノウハウが不足しており、実行が難しい場合があります。その場合は、ある程度の予算を確保したうえで「業者」に任せることを検討しましょう。「内製と業者のハイブリッド」では、コンサルタントに戦略の立案をお願いしたり、施策を実行するする作業者を集めたりします。
企業に依頼したい場合は、依頼したい内容をキーワードに入れてGoogleで検索すれば、業者を見つけられるでしょう。フリーランスの個人を探すのであれば、クラウドワークスやランサーズといった、クラウドソーシングサイトを利用すると便利です。
Webマーケティングは、自社と相性が良い見込み客にリーチするために使える、費用対効果が高い手法です。中小企業でもWebマーケティングで成果を出している企業はたくさんあります。他社の取り組みを観察し、自社に取り入れられそうな点はないか参考にするとよいでしょう。
Webマーケティングを成功させるためには、自社の課題を明確にしたうえで、戦略を持って施策を実行していくことが大切です。定量的な目標を設定し、データに基づいて改善を進めていきましょう。