「昨今は共起語がSEOにおいて以前ほど重要でなくなった」と言われるようになりました。Googleが年々、キーワードうんぬんよりも品質の高いコンテンツを高評価するようになっているのは、マーケターのみなさんもよくご存知のとおりです。
しかし、まったく無視してよいのかといえばそうでもない感じもします。大事なのかそうでないのか、一体どの程度大事なのか、いろいろな情報を見ても見えづらく、もやっとしている方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、Google検索1位をとったサイトのコンテンツの共起語の割合を、実際に共起語サーチツールなどで調べて、共起語の重要性について検証してみます。
共起語とは、ある言葉と一緒に文中でよく出てくる言葉のことです。SEO領域では、「あるキーワードと一緒によく使われる単語やフレーズ」を指します。
サジェストと似た印象を持つかもしれませんが、サジェストはあくまでユーザーの検索上位のワード、つまりユーザーがもっとも知りたいことを示すキーワードであり、テーマを説明する際によく出てくる用語と同じとは限りません。
例えば、「芽が出たじゃがいも」のサジェストは「植える」「レシピ」「保存方法」。
一方、共起語は「野菜」「方法」「部分」といったように、かなり異なる場合がしばしばあります。
「SaaS」の共起語とサジェストも、やはり異なります。
※サジェストは地域・人によって多少違います。
SEO(Search Engine Optimization=検索エンジン対策)の基本は、ユーザーにとって有益な情報を盛り込んだコンテンツを作成し、検索エンジンから評価されることです。
そこで、なぜ共起語が重要とされてきたかというと、コンテンツに共起語を組み込んでおくと、ユーザーの知りたい情報をカバーする確率が高くなり、検索エンジンはそのコンテンツが特定のトピックやテーマに関連している、ユーザーの検索意図に対する情報を持っていると判断し高評価する可能性が高くなるからです。
しかし、近年はGoogleのアルゴリズムの進化に伴い、共起語ももちろんそうですが、キーワードを入れ込むこと自体が単独でSEOに影響を与えることは少ないと言われます。
また、Googleはキーワードの乱用(同じ単語や語句を不自然なほど繰り返すこと)には注意を促しています。
Googleのアルゴリズムの構成要素を調査している米国企業の調査では、2021年時点で、ページ内キーワード使用率の重要度は15.04%でしかありません。2023年の結果ではページ内キーワードの記述も見当たりません。以前よりプライオリティは下がっていると言えるでしょう。
共起語については、あくまで思考の幅を広げ、ユーザーに真に役立つ高品質なコンテンツ作成に役立てる、基本にそったアプローチが有効だと考えます。
共起語に関する情報には、正しい説もあれば真偽不明な説もあります。昔は正解だったかもしれませんが今は間違い、というケースも少なくありません。
SEOの世界は非常にトレンドの移り変わりが速いのですが、なぜか一度浸透してしまった微妙なノウハウが定説のように伝えられ続けることがあります。
以下に、共起語にまつわる都市伝説を3つ紹介します。
共起語の都市伝説のひとつに「含有率3%ルール」があります。特定のキーワードを含むWebページのテキストコンテンツ内で、そのキーワードの出現率が3%程度であることが最適であるというルールのことです。
含有率が3%を超えるとgoogleからペナルティを受けるという噂があり、キーワード出現頻度チェックツールなどを確認し超えないように調整したり、逆に少なすぎるとキーワードを継ぎ足して3%近くにもっていくなどの作業が、制作現場ではよくされていました。
このルールは過去にSEO支援業界より提唱されたものだそうで出所不明です。
共起語は適切に使われるべきものですが、何%と決められるものではありません。なぜならあるテーマに対し、コンテンツの切り口は100通りでも考えられるからです。本来、共起語が多い場合も少ない場合も想定されるのに、無理にコンテンツ内のキーワードの数を合わせようとすると、むしろオリジナリティを損ないかねません。
また、前述のように現在はGoogleのアルゴリズムが進化しているので、少なくとも単純な含有率による評価は行われていないでしょう。
Googleの検索上位に出すには共起語を考慮する必要がある、といった内容はGoogle検索セントラル(旧ウェブマスター向けガイドライン)には一言も書かれていません。共起語どころか、そもそも上位表示されるためにキーワードをどうこうというテクニックについての文章は、広告作成用にはありますが、コンテンツについては前述の過剰使用の注意喚起以外に見当たりません。
共起語を適切に考慮したコンテンツ作成は品質が高くなる可能性が高いとしても、現実には共起語を考慮していないコンテンツも検索上位になっています(後半で事例を紹介します)。
2023年3月時点でGoogleが評価するコンテンツとして明示している内容は以下のとおりです。
『Google の自動システムは、さまざまな要因に基づいて優れたコンテンツをランク付けするように設計されています。関連するコンテンツを特定した後、最も役に立つと判断されたコンテンツに高い優先順位を付けます。
そのために、どのコンテンツが、エクスペリエンス(Experience)、高い専門性(Expertise)、権威性(Authoritativeness)、信頼性(Trustworthiness)、すなわち E-E-A-T の面で優れているかを判断するための要素の組み合わせを特定します。』(出典:Googleセントラル)
E-E-A-T の概念図
(出典:Google General Guidelines)
共起語対策はどの企業も行っている基本的な対策、というのも都市伝説です。そもそもSEOと共起語に関する統計など、検索で見つけられる範囲では日本はもちろん米国でも存在せず、大多数が対策をおこなっているのか少数の企業が行っているのかわかりません。
Googleのポリシーやコンテンツ制作の基本を理解した企業の中には、共起語対策を必要以上に行わない企業も少なくありません。
以上が、共起語とSEOにまつわる都市伝説です。
とはいえ、対策の如何を問わず、結果として検索上位のコンテンツに共起語が含まれている可能性はあります。
ここでは、実際に検索1位(現在または直近まで)のコンテンツに、どの程度共起語が含まれるかを検証してみます。ツールは無料の共起語検索ツールと共起語カウンターを使用します。
(出典:創業手帳株式会社)
「起業」で検索すると、第1位に創業手帳株式会社のWebサイトが表示されます。官公庁、大手企業のWebサイトやブログを押さえて堂々一位のコンテンツ。共起語の割合はどのくらいでしようか?
まず、共起語検索ツールで「起業」というキーワードの共起語を調べます。こちらのツールではGoogleで検索上位30サイトの共起語が表示されます。使い方は検索ボックスに知らべたい単語を入れて検索するだけと簡単です。
(出典:共起語検索ツール)
次に、共起語カウンターで、「起業」の共起語リストの中から出現頻度の高い「起業」「事業」「資金」「成功」「ビジネス」の出現回数を調べます。
使い方は、共起語カウンターの左側のボックスに記事のテキストをコピペし、右側に含有率を確認したい共起語を入力し、解析開始をタップします。
すぐに対象コンテンツの文字数、各共起語の出現回数が表示されます。
数値をもとに、以下の計算式で共起語の含有率を出します。
共起語の含有率
共起語カウンターの数値をベースに計算式で数字を足すと結果は以下となります。
「起業」の含有率は2.7%、ほか4つの共起語含有率は0.1〜1.06%。
(出典:Bizmates Blog)
ビジネス特化型オンライン英会話サービス「Bizmates」のブログの「英語の勉強は結局何をすればいいの? 具体的な勉強法を解説!」は、「英語学習」というキーワードの検索1位です。
同じように共起語検索ツールで「英語学習」というキーワードを検索し、最も多く出現している共起語「英語」「学習」「紹介」「単語」「勉強」の5つの共起語が「英語の勉強は結局何をすればいいの? 具体的な勉強法を解説!」にどのくらい含まれているか、共起語カウントツールで確認します。
同じく、共起語カウントツールの数値をもとに計算すると含有率は以下のとおり。
共起語の含有率
「英語」が2.76%、他は1%前後。5共起語の平均は1.09%です。
ランダムに例をさがしましたが偶然、創業手帳株式会社と似たようなバランス。
(出典:森永製菓株式会社)
「筋トレ」で検索すると、森永製菓株式会社のプロテイン公式サイトの「【筋トレ初心者向け】自宅でできる筋トレメニューを紹介!」という記事が検索1位に出てきます。お菓子のイメージが強いメーカーなので意外な印象。
共起語検索ツールで調べた、筋トレの共起語の上位5用語を同じように、共起語カウントツールで調べ計算式にあてはめると、コンテンツ内で出てくる共起語の回数は以下のとおり。
「トレーニング」は3%弱、ここだけにフォーカスすると3社とも3%ルールがあてはまります。
とはいえ、森永製菓のその他の共起語(上位2〜5まで)の含有率を見るとおしなべて含有率は低く、意図的に共起語を入れ込んだとは思えない数値です。
BtoB向け記事でも、検索1位に表示されるコンテンツにどの程度共起語が含まれるかを検証してみましょう。
(出典:おかんの給湯室)
おかんの給湯室は、株式会社OKANが運営するオウンドメディアです。
上記の「総務の役割とは?業務一覧、スキルや資格、最新トピックまで徹底解説!」という記事は「総務の業務」というキーワードで検索1位に表示されます。
同じように共起語検索ツールで「総務の業務」というキーワードを検索すると、共起語が一覧表示されます。
共起語カウントツールでカウントしてみます。出現頻度の高い「総務」「業務」「管理」「仕事」「内容」の5つの共起語をカウントしてみます。
結果をもとに、共起語の数と含有率の結果はこちらです。「総務」の含有率4.22%、「業務」の含有率が2.67%。この2語の平均は3%前後。ただ、上位5つの共起語の含有率を平均すると1.8%です。
共起語の含有率
(出典:https://media.shouin.io/what-is-hospitality)
クラウド型eラーニングプラットフォームを提供するピーシーフェーズ株式会社のブログページ「shouin+ブログ」。「接遇とは?接客との違いや5原則などを業種別事例からわかりやすく紹介!」は「接遇」というキーワードでGoogleの検索1位に表示されます。
共起語検索ツールで調べた、出現頻度の高い「マナー」「接客」「サービス」「紹介」「研修」の共起語含有率は以下のとおり。
共起語の含有率
「マナー」が1.4%、「接客」が1.07 と%上位5種類の共起語の数値はおしなべて低めで、平均1.25%の含有率です。あまり共起語が影響していなさそうです。
(出典:テレワークナビ)
Web会議システムを提供する株式会社ブイキューブのオウンドメディア「テレワークナビ」の上記記事「地方創生に成功した10の好事例から学ぶ!生産性向上の道とは?」は、「地方創生」というキーワードで長期間検索1位になった記事です。
共起語検索ツールで調べた「地方創生」の上位5つの共起語を、共起語カウンターで調べ、含有率を計算すると以下の結果となります。
共起語の含有率
こちらも、1〜5位までの共起語すべて含有率は高くありません。平均0.75 %です。
(出典:MIL株式会社)
MIL株式会社が提供するインタラクティブ動画専門メディア「MILブログ」の「【2022年版】YouTubeアナリティクスの見方&5つの注目指標をわかりやすく解説!」というコンテンツは、「YouTube アナリティクス」というキーワードで検索1位に表示されます。
共起語検索ツールで調べた「YouTube アナリティクス」の共起語上位5単語
共起語の含有率
こちらは「「チャンネル」」が6%、「「視聴」」が3.47%と高めの数値。ここでは含有率3%を大きく超えても問題ないことがわかります。
(出典:Leapt)
弊社Leaptのブログ「マイケルポーターの『競争の戦略』とは?BtoBマーケティングをする上で知っておいて欲しいこと」という記事は、「競争の戦略」というキーワードで検索1位をとっている記事です。
共起語検索ツールで調べた上位5つの共起語の含有数を共起語カウントツールで調査。
含有率を計算した結果は以下のとおり。
共起語カウンターツールで調べた共起語含有率
「「戦略」」のみ4%超え、「「競争」」が1.51%、ほかの共起語の含有率は0.13〜1.51%、やはり似たようなバランスです。
結論として言えるのは、BtoBに関しては共起語が必須なのかと言われると、顕著な相関性はないように見えます。
適切に共起語がつかわれていれば、ユーザーのコンテンツの理解度を高め、結果として検索エンジンのランキングに影響を与える可能性はあります。
ただし、共起語やサジェストなどにこだわりすぎることで結局よくあるコンテンツになったり、自然な文章でなくなったりすると、むしろコンテンツの品質が悪くなり逆効果と言えるでしょう。
共起語は意識しても無理につめこまない。あくまで、コンテンツ制作において違う視点を得たり、発想の幅を広げたりするのに役立つという認識がおすすめです。良質なコンテンツ制作を上位概念において共起語を有効活用してください。