BtoBマーケティングにおいて、ナーチャリングの重要性が増しています。ある調査によれば、新規リードの96%が、購入の準備ができていないと判明。購買準備ができていない見込み客が相手であれば、コンテンツを通してリードと信頼関係を構築し、購買意欲が高まった段階で商談設定をしなければ、案件化は難しいでしょう。
しかし、膨大な量のデータを収集しているものの、「エクセルでのリード管理に限界を感じている」「思うようにデータを活用できていない」と悩む方は多いのではないでしょうか。そこで役立つのがマーケティングオートメーション(MA)ツールです。
Ascend2の調査では、マーケティング担当者の80%が「ナーチャリング効果を向上させるには、自動化ソフトウェアの導入が重要」と回答しています。確かにMAツールを導入すれば、パーソナライズ化した体験の提供が可能になりますが、場合によってはMAツールが不要なケースもあります。まずはMAツールの導入条件やナーチャリング手法などを理解し、自社に本当に必要なのかどうか検討しましょう。
本記事では、ナーチャリングの特徴やよくある誤解、マーケティングオートメーションで行う手法と施策を解説します。
ナーチャリング(見込み客育成)とは、購買意欲の醸成を目的に、長期にわたってリードとの良好な関係を築き、購買プロセスを進んでもらうことを目指す考えです。
マーケティング部門が行うナーチャリングでは、コンテンツを活用して、Eメールマーケティングやウェブサイトの自動最適化、広告出稿など、さまざまなマーケティング手法を用います。その瞬間のリードにとって価値ある情報を提供し、商材理解の促進や悩みの解決を行っていくという流れです。
80%の新規リードは顧客化しないのに対し、リードナーチャリングに優れた企業は33%も低いコストで、確度の高いリードを50%以上も多く創出しているという調査があるように、適切なナーチャリングができるかどうかで案件化率は大きく異なるのです。
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HubSpotによればマーケティングオートメーション(MA)とは、Eメールマーケティング、ソーシャルメディアへの投稿、広告キャンペーンなど、繰り返し発生する作業を自動化することで、マーケティング部門の業務効率を向上させるソフトウェアです。、さらに、それぞれの顧客に合わせてパーソナライズされた体験を創出することを可能にします。
リード管理やセグメント別のコンテンツ配信、リードのスコアリングなどさまざまな機能を備えています。詳しいナーチャリング手法は後述しますが、マーケティングオートメーションを導入すれば、リードにとって最適なタイミングで最適な価値を届けられるようになり、商談化率や受注率の向上を見込めます。
(出典:DIGITAL JOURNAL)
しかし、マーケティングオートメーションを導入する際には、自社にとって最適なステージかどうかを確認しましょう。デジタルマーケティングのソートリーダーとして知られ、書籍『BtoBマーケティング偏差値UP』の著者でもある庭山氏は「MAを導入する企業の90%は失敗する」と言います。筆者の経験からも、下記条件を満たしたときにマーケティングオートメーションを導入することを推奨しています。
https://twitter.com/ShoheiToguri/status/1270128879638687745
この中でも、特に重要なのが新規リード創出です。毎月200〜300件ほどの新規リードが創出できていない場合、マーケティングオートメーションを導入しても、ただのメール配信ツールになってしまいます。まずは何かしらの方法を用いて、安定的にリードを獲得する施策を作り上げることに注力しましょう。
マーケティングオートメーションで行うナーチャリング施策を見ていく前に、まずはナーチャリングに関するよくある勘違いを3つ解説します。
ステップメールとは、特定のアクションを起こしたリードに、あらかじめ準備していたメールをスケジュールに沿って配信する手法です。マーケティングオートメーションで良く実践される手法ですが、これはナーチャリングではありません。
そもそもナーチャリングとは、顧客が自ら次のフェーズ(態度状況)に進むことを前提としているため、インバウンドの思想(顧客それぞれに合った価値ある体験やコンテンツを提供する考え)が重要です。ユーザー属性に合ったコンテンツを提供するセグメント配信ならばナーチャリングに効果的ですが、コンテンツを一方的に発信するステップメールはナーチャリングとは言えません。
一方的な架電もまた、顧客の都合を考えていないアウトバウンドな手法といえるでしょう。ナーチャリングを効果的に実践するには、営業やインサイドセールスがリードの行動履歴から事前にニーズを考えたうえで、架電をする必要があります。一方的な架電は、顧客離れの原因となるでしょう。
そもそも、ナーチャリング=メールもしくは架電と誤解していないでしょうか。1930年代に提唱された「マーケティングの7ルール(The marketing rule of 7)」によれば、消費者が商材の認知から購入するまでには、平均7回の接触があるそうです。
このルールに基づくと、バーチェスファネルのTOFU(興味関心)、MOFU(検討段階)、BOFU(購入段階)それぞれのステージに適したコンテンツを提供することがナーチャリングで重要だといえるでしょう。各ステージで重視すべき主なコンテンツは以下の通りです。
ステージ |
リードの特徴 |
重視すべきコンテンツ |
TOFU |
深い関心を持っていない |
入門ガイド、チェックリスト、業界レポート、短時間の紹介動画など |
MOFU |
比較検討をしている |
ケーススタディ、電子書籍、ホワイトペーパー、ランディングページ、ウェビナーなど |
BOFU |
購入検討をしている |
無料デモ申込ページ、見積もりフォーム、商談などの購買につながるコンテンツ、顧客の声、FAQなど不安を払拭するコンテンツ |
リードのステージに応じて、最適な情報を最適な形式で提供することで、効果的にナーチャリングできます。マーケティングファネルに関しては、下記記事で詳細に解説しておりますので、ぜひこちらもご参考にしてください。
マーケティングファネルとは?BtoB企業のマーケティング&営業担当者が知っておくべきこと
正しくナーチャリングを理解したところで、マーケティングオートメーションで行えるナーチャリングの施策一覧を見ていきましょう。
マーケティングオートメーションを使った定番のナーチャリング施策はメール配信です。Ascend社の調査によれば、マーケターの47%が「Eメールマーケティングがナーチャリングに最も効果的な手法」と回答。Salesmateの調査では、78%のマーケターがナーチャリングに重要なチャネルとしてEメールを挙げています。
BtoBの購買行動においては、検討期間が半年以上かかることも珍しくありません。定期的にメール配信をすれば、長い検討期間においても、自社のことを思い出してもらえ、徐々に購買意欲を醸成できます。
(出典:Salesmate)
特に、セグメント配信はナーチャリングに有効です。マーケティングオートメーションでは、企業規模や役職などのユーザー属性、特定のURLをクリックしたユーザーや自社サイトに繰り返し訪問しているユーザーなどの行動にもとづいてリードをセグメント分けし、自動でコンテンツ配信できます。
Ascend社の調査では、マーケターの51%が「メールマーケティングに最も有効な手法はセグメント配信」と回答しています。マーケティングオートメーションでリードの行動履歴を把握し、受注につながる見込みの高いリードをセグメントして、最適なコンテンツを届けましょう。
マーケティングオートメーションを導入すれば、ウェブサイト上におけるリードの行動を把握できます。行動データをもとにすることで、ウェブサイトの最適化をし、コンバージョン率を向上できるでしょう。
例えば、コンバージョンにつながったユーザーが特定のトピックのコンテンツを閲覧している傾向にあれば、そのトピックに関するコンテンツを増やす施策を立案できます。マーケティングオートメーションを導入したら、まずはリードの行動を把握し、ウェブサイトの最適化を目指しましょう。
また、リードライフサイクルなどに合わせてウェブサイトの表示情報を自動的に変化させることも可能で、ウェブ訪問者にとっては自然なコンテンツが表示されることになります。
例えば、Amazonのウェブサイトに行った際に、過去の購買履歴や閲覧履歴に合わせて「おすすめ」が表示されるように、BtoBのウェブサイトでもリードライフサイクルに合わせてコンテンツの自動表示最適化を行いナーチャリングできます。
スコアリングとは、リードの属性や行動情報に対してスコアを付与し、アプローチの優先度を決める機能です。確度の高いリードを判別できる便利な機能ですが、行動データをもとにスコアを付与する性質上、必ずしも購買意欲のあるリードのスコアが高くなるとは限りません。
(出典:OnePageCRM)
例えば、まだ購買意欲は低いものの、自社サイトに何度も訪問して情報収集するリードのスコアが高くなるケースは多々あります。そのため、スコアだけではなく、リードの行動データも確認しなければいけません。まずはマーケティングオートメーション上に十分な行動データを蓄積してから、スコアリングに取り組むのがよいでしょう。
BtoBにおけるリードの98%はコンバージョンしない、と判明した調査があります。自社に一度は興味を持ちながらも、何らかの理由でコンバージョンしなかった大量の失注リードを放っておくのは大きな機会損失です。
アメリカ企業の調査によれば、営業担当がフォローしなかったリードのうち約8割が2年以内に競合他社の製品を購入しているとのこと。失注リードと判断しても、適切にナーチャリングすれば受注につながる可能性は高いです。
ただし、失注リードの対応は営業に後回しにされる傾向にあります。また、そもそもマーケティングオートメーションを導入するほど新規リードを創出できている場合、失注リードの対応まで加われば、営業の負担が大きくなるでしょう。
そこで、マーケティングオートメーションを活用し、フォローアップメールの送信やスコアが上がったリードにインサイドセールスが連絡するなどのナーチャリングをして、適切なタイミングで営業に引き渡すのが効果的です。
シナリオ設計とは、リードナーチャリングの道筋において、いつ・どこで・どのような情報を提供するかを定める機能です。
例えば、セミナーに参加したリードには商談申し込みメールを送信するなど。しかし、シナリオ設計は複雑で難しいため、シンプルなシナリオ設計から始めましょう。いくつもの複雑なシナリオメールを制作する企業が多いですが、リードにメールを送信しすぎないためにも、カスタマージャーニーの各ステージで3通程度のシナリオメールの設計で十分です。
ナーチャリングは強力な施策ですが、適切に進めなければ期待した成果は見込めません。ここからは、適切なナーチャリング施策を進めるステップをご紹介します。
自社が抱えている課題によって、ターゲットや最適な施策は異なります。
例えば、活用されていないハウスリード数が多い場合、新規リードの創出ではなく、既存リードに対するナーチャリングで商談数を増やすのがよいでしょう。まずは課題を整理し、ナーチャリングの大まかな流れを作成してください。
カスタマージャーニーにおける認知から購買までの各フレーズで、リードの課題や求める情報は異なります。
ナーチャリングにおいては、リードにとって最適なタイミングで、最適な情報を提供しなければいけません。マーケターの想像でナーチャリングを進めた場合、リードに不適切な情報を提供するリスクがあり、最悪の場合はリードを失うリスクさえ生じます。
まずはリアルな顧客と接している営業やカスタマーサクセスなどのメンバーを巻き込み、半実在するペルソナの作成とそのカスタマージャーニーマップを作成しましょう。誰が各購買プロセスにおいてどのような課題を抱え、どのような情報を求めているのかを言語化できなければ、効果的なナーチャリングは実施できません。
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カスタマージャーニーとは?BtoB企業がカスタマージャーニーマップ(CJM)を作る重要性
リードナーチャリングにおいては、リードに質の高いコンテンツを提供することで、製品サービス理解の促進や不安の解消をし、信頼関係の構築ができます。カスタマージャーニーの各段階で、リードが求めるコンテンツを用意しましょう。
下記の表は、各ステージにおいて提供する主なコンテンツ例です。
段階 |
内容 |
認知 |
|
検討 |
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購買 |
|
継続 |
|
Forrester社の調査によれば、BtoB購買担当者の60%が「主な情報源として営業担当者と対話することを好まない」、68%が「オンラインで自分で調査することを好む」、62%が「デジタルコンテンツのみに基づき選択基準の作成やベンダーリストの最終決定ができる」と答えています。
この調査が示すように、オンラインでの情報収集がメインとなっているため、質の高いコンテンツがなければ、効果的にナーチャリングすることは困難でしょう。
マーケティング オートメーション ツールの導入がゴールではなく、効果的に活用して成果を出し続けることが重要なため、機能やコスト、操作性などを徹底的に比較しましょう。
特に操作性は重要な要素です。マネージャーや経営層が現場の声を聞かずにツール導入をしたため、現場の人間がツールを使いこなせていないという失敗ケースは多々あります。既存のメンバーと今後関わる可能性のあるメンバーにヒアリングをし、もっとも運用しやすい、かつ自社に必要な機能を搭載していてコスト感も適切なツールを選定しましょう。
適切にナーチャリングを実施すれば、リードと良好な関係を築き、商品理解の促進や購買意欲の醸成ができます。
ナーチャリングはエクセル管理などでもできますが、質の高いリードが2000件以上ある場合、メールの誤配信の防止や適切なコミュニケーションの実施、業務効率化を図るためにもマーケティングオートメーションを導入するとよいでしょう。
ただし、マーケティングオートメーションは使いこなし、安定的に成果を出せなければ意味がありません。目的や使いやすさ、価格などを考慮して、リードナーチャリングを適切に実施できるマーケティングオートメーションを選定しましょう。