BtoBオウンドメディア担当者の抱えている課題の上位に、おそらく「クオリティの高い記事を書けるライターさんが少ない……」があるでしょう。
オウンドメディア担当者は、一般に短期間で多数のコンテンツを作成しなければなりません。外部のライターさんに仕事をふらなけば、ほぼ間に合わないペースです。
しかし、ニッチな専門領域に特化しているBtoBの場合は業界に詳しい人材が少なく、加えてSEO知識もある人材となるとなかなか見つけられません。
また、記事の質はライターさんによっていろいろで、ほぼ他サイトのコピペのような記事が納品されるケースもあります。コピペする気はなくとも業界知識が浅いライターさんだと記事が表面的になってしまい(深堀できず)、結果的にコピペ率が高くなることもあるでしょう。
そもそもBtoBオウンドメディアの場合、各社がSEOを意識した見出しを構成するので、似てしまいがちな前提もあります。
理由はともかく、コピペ記事は著作権侵害で訴えられるリスクがありますし、Googleをはじめ検索エンジンは、コピペ(複製された)記事を評価しません。
何よりオウンドメディアの記事を読んだ見込み客層から「どこかで読んだ気がする……コピペ記事か? 」と思われたら、ブランディングどころかイメージダウンにつながります。そこで本記事では、記事のコピペをチェックする方法、さける方法、コピペチェックツールを紹介します。
まず、コピペとは何かについて簡単に説明します。コピペとは英語のCopy &Paseteの略で、コピー(複製)してペースト(貼る)ことを指します。
もちろん、パソコン作業で自分の資料作成の際に、自分が作ったテキストをコピペするのは何ら問題ありません。コピペが問題になるのは、他者の作成した著作物をコピペした場合です。
著作物とは広範な範囲を指し、芸術であれ、ビジネスであれ、SNSでの個人の発信の世界であれ、他者が制作した文章なりイラストなり画像などのコンテンツは著作物であり「著作権」が発生します。
著作権保護法で保護されている著作物には以下があります。
(出典:e-Gov法令検索)
BtoBメディアであれば、他社サイトのコンテンツ(文章、画像、イラスト)、参考にした書籍の文章、画像などが当てはまるでしょう。
ただ、すべてが該当するわけではありません。以下のように著作権保護の対象にならないケースもあります。
【著作権保護の対象外】
(出典:文化庁)
つまり、ありきたりな表現です。例えば「企業の生産性を高めるには従業員のモチベーションアップが重要」などといった文章は、著作権侵害にはあたらないでしょう。誰もが知ってる事実もそうです。
コピペは法律に触れるリスクが高く、社会通念上も問題です。さらに、BtoBオウンドメディア担当者にとって以下の点で問題があります。
専門性の高いBtoB領域のオウンドメディアは、お客様に有益な情報を発信することが存在意義です。
まず、信頼が何よりも重視されるBtoBの世界では、内容が優れていても他者が制作したコンテンツの内容を、いかにも自分の意見のように発信するのはお客様をあざむくことであり、信用が失墜するのでNGです。
また、BtoBメディアの想定読者は業界のプロ、もしくは新規参入を検討中などバリバリのビジネスマンがメイン。大手マスコミ、メディアにでてこないような業界のレアな情報、表に出にくいノウハウ、最新ニュースなどをオウンドメディアに期待します。
ところが、オウンドメディアの情報がコピーコンテンツだらけだったらどうでしょう。まったく有益でないだけではなく、そのような記事を出す企業姿勢にガッカリされるのが落ちです。ブランディングどころかイメージダウンになります。
有用でないコンテンツを検索エンジンは嫌う
Google 検索セントラル(旧称 Google ウェブマスター)の上級者向けSEOのページには、「Google では、無断複製されたページやオリジナルのコンテンツがほとんどなくユーザーにとって価値のないページを表示することでランキングに入ろうとするドメインに対して、処置を取ります。」と記載があります。
(出典:Google)
そして、「無断複製されたコンテンツ」に該当するものとして以下などが挙げられています。
”他のサイトのコンテンツをコピーし、独自のコンテンツや付加価値を加えることなく転載しているサイト”
”他のサイトのコンテンツをコピーし、(語句を類義語に置き換えたり自動化された手法を使用したりして)若干の修正を加えた上で転載しているサイト”
(引用:Google)
つまり、いくら頑張ってオウンドメディアの記事を増やしても、Googleはコピペが多いコンテンツのサイト、他サイトの内容とほぼ同じで表現だけ変えたサイトは有益ではないサイトと判断し低評価します(上位表示されません)。
そうなると、オウンドメディアを立ち上げて予算を投資して多数の人材の労力を使って、いったい何をしているんだろうという結果になってしまうのです。
2021年5 - 6月にGoogleの検索アルゴリズムのアップデートがあり、筆者の知っている限りでは、ジェネリックで検索上位のコンテンツを焼き増ししたような似たり寄ったりな記事を公開している企業のオウンドメディアのトラフィックが軒並み下落していることに気づきました。
このように、コピペや焼き増しコンテンツは、お客さんを欺く上に、検索エンジンからも高い評価を得ることができないのです。
コピペは「される心配」と、「うっかりコピペしてしまう」リスクの両方があります。
オウンドメディアの場合、大抵の会社が同じサジェスト、共起語などのキーワードを活用するためオリジナルで考えたつもりでも似たような見出し、内容になってしまうことは少なくありません。
基本的な対策として「コピペチェックツール」で必ずコピペチェックを行う必要があります。入稿されたときのチェックに使ってもよいのですが、発注時にツールを指定してコピペ率〇%以下と指定する方法もあります。
以下におすすめの無償コピペチェックツールを紹介します。
(出典:無料コピペチェックツール【CopyContentDetecto】)
CopyContentDetectoは、株式会社ウェブサークルが提供しているコピペチェックツールです。簡単・正確・安い(無料版あり)の3拍子がそろっています。
無料版でもかなりの文量のコピペチェックができます。操作は簡単で、コピーチェックしたい文章を貼り付けて「チェックする」ボタンを押すだけです。
チェック結果も見やすく「類似率25% 良好」「類似率50%要注意」と表示されます。コンテンツのどの文章がどのサイトのコンテンツと一致しているか、似ているかが赤、黄、青で3色表示されるのですぐわかります。
(出典:株式会社ディーボ)
sujiko.jpは、株式会社ディーボが運営する重複コンテンツ・ミラーサイト・類似ページ判定ツールです。方法は自社のサイトと類似度を確認したいサイトのURLを貼り付けて「判定」ボタンをクリックするだけです。
利用料は無料で、なおかつ操作も簡単です。ただし、時間はサイトのページによって数分~かなりかかりますので、他の作業をしながら気長にチェックする使い方がおすすめです。
判定結果は、以下のように「類似度の%表示」があり、検索エンジンからペナルティ判定させる可能性についても判定してくれます。
コピペはダメな行為ですが、他社のサイトや出版物をまったく参考にできないかというわけではありません。
著作権法でも、以下のように「引用」は認める記載があります。
(引用)
第三十二条公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
2 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。
(引用:法務省)
もっとも、この32条の「正当な範囲」がどこからどこまでかの解釈が難しいため、ときにいろいろ問題が起きるのですが、引用できることはできます。
官公庁、地方自治体、公益法人など役所が周知を目的に出している資料は(無断転載禁止の表記がなく著作権名義が役所なら)引用が可能です。
まず、他者の著作物を自分のコンテンツ内で紹介する方法には、「引用」と「転載」の2種類があります。いずれの場合も、以下のように明確に他者の作成したコンテンツだと区別する必要があります。
例:
では、引用と転載は何が違うかというと「主従関係(文中の割合)」です。
以下に、それぞれのルールを記載します。
転載とは文章中の主従関係で、他者の文章の割合が自分の割合より多くなる紹介の仕方であり、以下のルールがあります。
前述のように、役所が周知を目的として作成した資料は、無断転載禁止と書かれていなければ転載可能ですが、引用元の著作者が「企業」「個人」の場合は許可をとらなければなりません。
ただし「無断転載禁止」と書かれているサイトでも、この言葉は転載禁止ではなく、無断で転載するなという意味です。転載許可依頼を出すと転載を許可してもらえるケースもあるので、希望する場合は転載許諾依頼メールを出しましょう。
出版社のサイトには転載許諾申請フォーマットを用意しているケースもあります。日本経済新聞社も有料ですが記事利用・リプリントサービスを活用すれば転載できます。各社のルールは違うため、確認してから所定の方法で依頼しましょう。
引用とは、文章中の主従関係で他者の文章が自分の文章より少ない紹介の仕方です。
「引用」については、著作権法32条にあるように「公正な慣行に合致」し、「正当な範囲」であれば無断でできます。引用時のルールは以下のとおりです。
繰り返しますが、この主従関係(自分と他者の文章の割合)は、自分の主観ではなく客観的に判断されます。自分は引用のつもりでも、他者から転載と判断される場合があることに留意しましょう。
文化庁のHPに、判例をもとにした「引用」注意事項が記載されていますので、あわせてご覧ください。
とはいえ引用は無断でできると知っても、各社のサイトを閲覧したり、書籍を読んだときに「無断転載禁止」と書かれたりしている場合、引用でも許可が必要か迷うかと思います。
出版物については、日本書籍出版協会のWebサイトに以下の記載があります。
”「無断転載禁止」と表示されている本からでも、引用の要件を満たしていれば、著作権者の許可を得ずに引用することが可能です。 逆に、このような表示がないからといって、引用の範囲を超えて転載することは著作権侵害に当たることは明らかです”
(出典:一般社団法人日本書籍出版協会 著作権&A)
長いので割愛しましたが、「無断転載禁止」の記載があるかないかで法律上の効果が変わってくることなどが書かれていますので、この後半もご一読をおすすめします。
他社サイトの引用にも法律上同じ解釈はできるかと思いますが、現状、主従関係の割合について明確な基準がないので、迷いがある場合は転載許諾依頼メールを出したほうが安全でしょう。
コンテンツを制作する際は、さまざまなサイトや本・雑誌の文章、データなどをリサーチして、思考を整理してコンセプトを固めると思います。その多くが、コンテンツに影響を与えているでしょう。
引用や転載以外に、その中で第3者のメッセージをそのまま伝えるのではなく、自分なりに文章を変えて伝える表現を Paraphrase(パラフレイズ)といいます。
例えば、大量の文章でそのまま紹介できないので、要約してまとめて記載する例などです。パラフレイズには以下のルールがありあす。
昨今は自動パラフレイズツールなどもありますが、パラフレイズしても趣旨がほぼ同じであれば結局は引用元のサイトと似てしまいます。
パラフレイズツールは自分の語彙力を補強するくらいの使い方にして、もともとの原稿に自社オリジナルの事例やデータを盛り込み、他にないコンテンツに仕上げると、結果的にパラフレイズした部分も活きてきます。
著作権法は時代に合わせてたびたび改正されています。また、違法ダウンロード問題では対象が広すぎると論争も呼びました。理解するもキャッチアップするのもなかなか大変な領域です。
BtoBオウンドメディアの歴史自体がまだ浅いので、メディアにも法律については初心者の方が担当になるケースは少なくありません。外部のWebライターについても同様です。
しかし、何より信用が大事なBtoBオウンドメディア。うっかりコピペ記事を出して著作権法違反にならないように注意しましょう。そもそもコピペの多い原稿、オリジナリティのない原稿を量産しても、検索エンジンが評価しないのBtoBオウンドメディアの目的を達成することにはつながりません。
BtoBオウンドメディアにはある程度の記事の量が必要ですが、レアな情報、価値ある情報を含んだオリジナルコンテンツであれば、月1回の発行であってもそのページは検索上位になることは珍しくありません。
ある程度、制作工程に余裕を持たせて幅広く情報収集し、内容を自分たちで咀嚼し、見込み客が読んで満足するような独自性の高い記事を着実に増やしていきましょう。