Webサイトを効果的に運営するには、訪問者の行動を詳しく分析すべきです。
アクセスデータの中で確認すべき項目のひとつに、「直帰率」があります。直帰率とは、訪問者が他のページに移動せず、Webサイトから離脱した割合のことです。
直帰率が高いと、Webサイトの設計が悪いと考えられがちです。しかし、直帰の理由はさまざまであるため、単純に「直帰率は低いほど良い」とはいえません。
業界ごとに見ると、BtoBの直帰率の平均値は75%と、他よりも高い傾向があります。Webサイトの運営担当者が他社と比べたくなる気持ちはわかりますが、じつは平均値をさほど気にする必要はありません。
本記事では、直帰率について以下の内容を解説します。
直帰率について正しく理解することで、Webサイトを的確に改善できるようになり、買い手と良い関係を構築しやすくなります。ぜひ最後までお読みください。
(直帰と離脱)
直帰率とは、Webサイトを訪れた人が1ページだけを閲覧して離脱した割合のことです。
Googleアナリティクスの公式ヘルプでは、「1ページのみのセッション数をすべてのセッション数で割った値」と定義されています。セッションとは、訪問者がサイトにアクセスして離脱するまでに行う一連の行動のことです。「1ページのみのセッション」が「直帰」です。
訪問者が直帰するのには、たとえば以下の理由が考えられます。
訪問者のニーズとWebサイトの内容が合っていないと、直帰率は高まります。一方で、探していた情報がすぐに得られた場合にも、訪問者は直帰します。直帰率だけでは、Webサイトの良し悪しは判断できないことに注意が必要です。
離脱とは、訪問者がWebサイトを離れることです。直帰は離脱の中に含まれます。Googleアナリティクスでは、離脱は以下のように定義されています。
訪問者の離脱には、以下のような原因が考えられます。
「離脱されることは悪いことだ」と認識されることが多いようです。実際、トップページでの離脱が多いのであれば、訪問者がすぐに目的のページを見つけられるように改善すべきでしょう。
その一方、離脱されることが自然な場合もあります。たとえば、申し込み後のサンクスページに到達したのであれば、すでに訪問者の目的は達成されているので、離脱されるのは当然です。
なお、あるページからどれだけ離脱されたかを表す指標として「離脱率」があります。ページが閲覧された回数である「PV数」を用いて、以下の式で計算されます。
離脱率(%) = 離脱数 ÷ PV数 × 100
回遊率とは、1回の訪問あたりのPV数のことです。1回の訪問で閲覧したページ数が多いほど、回遊率は高くなります。回遊率は以下の式で計算されます。
回遊率(%) = PV数 ÷ セッション数 × 100
訪問者がWebサイトを有益だと判断し、いろいろなコンテンツを閲覧すると、回遊率は高まります。また、なかなかほしい情報が見つけられず、探し回る訪問者が多いときにも、回遊率は高くなるでしょう。
回遊率は必ずしも高いほうが良いわけではない点には、留意しておくべきです。
直帰率は、以下の計算式で求められます。
直帰率(%) = 直帰数 ÷ セッション数 × 100
特定のページの直帰率を計算する際には、セッション数は「そのページへの訪問から始まるセッション数」を使用しましょう。
BtoB企業のWebサイトにおける各ページの直帰率の計算例を、LEAPTのホームページを例に紹介します。
直帰率を計算する際は、Webサイト内の重要なページをピックアップし、それぞれの数値を比較しましょう。
<直帰率を確認するページの例>
これらのページについて、架空の数字をもとに直帰率を計算してみます。
(LEAPTのトップページ)
<トップページ>
直帰数:100
セッション数:500
直帰率:100 ÷ 500 × 100 = 20%
(LEAPTのブログ記事)
<ブログ記事>
直帰数:150
セッション数:300
直帰率:150 ÷ 300 × 100 = 50%
(LEAPTのサービス紹介ページ)
<サービスの紹介ページ>
直帰数:60
セッション数:200
直帰率:60 ÷ 200 = 30%
3つのページの直帰率をまとめると、以下の通りです。
この結果から、トップページの直帰率がもっとも低いとわかります。
一般的にブログ記事への訪問者は、求める情報だけを閲覧して検索エンジンに戻ることが多いので、直帰率が極めて高くなる傾向があります。しかし、それは情報を収集している買い手が、自分の探している情報をピンポイントで見つけた、ということができるため、意図した検索クエリに経由できたウェブ訪問者が多い場合は気にする必要はないでしょう。
また、BtoBサイトの直帰率の目安は25〜55%です。上記の例での直帰率であれば、トップページが20%、サービス紹介が30%と目安よりも低いことから、訪問者にとってわかりやすいWebサイトの設計が行えていると評価できます。直帰率はただ計算するだけで終わらせるのではなく、このような分析を加えるとよいでしょう。
自社サイトの直帰率を確認した際、それが平均と比べてどの程度なのかが気になるかもしれません。
直帰率の平均値は、業種やチャネルによって異なります。業種の特性によっては、訪問者がサイトを回遊することが前提となっており、直帰率が低くなる傾向があります。
また、チャネルによって訪問者のアクセス意図や関心の度合いが異なるため、直帰率に影響があるものです。業種別・チャネル別の直帰率の平均値と、その傾向について解説します。
Contentsquareの調査によると、業種別の直帰率の平均値は以下の通りです。
toBの直帰率の平均値は、75%と最も高いです。自社がBtoB事業を中心としているのであれば、他業種の企業と比べて直帰率が高いからといって、焦る必要はない場合が多いといえます。
エネルギー、旅行、食料品の業種は、いずれも40%前後と低い数値です。この3つの業種で直帰率が低いのは、買い手がWebサイトで以下の操作をすることが多いからだと考えられます。
求めるものを探して購入するWebサイトでは、訪問者がサイト内を回遊することが前提です。そうしたWebサイトが多い業種においては、直帰率の平均値は低くなる傾向があります。
(チャネルごとの直帰率平均)
直帰率は、チャネルによっても平均値に違いがあります。上図はCXLの調査による、チャネル別の直帰率の平均値です。以下に数値を抜き出しました。
最も直帰率が高いのはディスプレイ広告です。ディスプレイ広告は製品に興味のない人にも表示されるため、広告をクリックしてアクセスしたものの、すぐに離脱する人が多いことを反映しています。
オーガニック検索は43.60%、Eメールは35.20%と、いずれも直帰率が低い傾向があります。検索エンジンで検索する人は製品への関心が高く、サイト内を回遊して情報収集することが多いことから、直帰率が低くなるのでしょう。
Eメールの場合は、買い手はWebサイトを訪れる前にメールを読み、URLをクリックするという選択をしています。アクセスした時点で製品への興味があると想定されるので、直帰率は低くなりやすいといえます。
直帰率の平均値は目安としては使えますが、参考にしすぎるべきではありません。その理由と直帰率が高まる原因について解説します。
検索エンジンは、検索者が求めていると予想されるページを結果画面に表示させています。ブログ記事やサービス紹介のページが検索結果に表示されることも多く、Webサイトのトップページが表示されるとは限りません。
(Googleの検索結果)
たとえば上図では、Googleで「プロダクトポートフォリオマネジメント」と検索した際に、LEAPTのブログ記事が検索結果に表示されました。
プロダクトポートフォリオマネジメントについて知りたい検索者がこの記事を読んで、求めていた情報を得られれば、他のページに移動せずに離脱するでしょう。この場合は直帰にあたりますが、当初の目的を達成できたので、訪問者にとっては満足できる体験だったといえます。
もし検索結果にブログのトップページが表示されたとすれば、訪問者は目的の記事を探すために、サイト内を移動しなければなりません。サイト内を移動する人が増えれば直帰率は下がりますが、訪問者にとっては余計な手間がかかり、快適ではなくなってしまいます。
だからこそ検索エンジンは、検索者が求めるページを表示させるのです。検索者がすぐに目的を達成できることが増えるほど、直帰率は高くなる傾向があります。
ペルソナやカスタマージャーニーの精度が高まると、訪問者は最初に閲覧するページだけで求める情報をすべて得られることが多くなります。その結果として、直帰率が高まる可能性があるのです。
ペルソナとは、製品やサービスのターゲットとなる代表的な顧客像のことです。BtoB企業がWeb集客をする際は、検索者を企業の担当者だと仮定し、以下のような項目をもとにペルソナを作り込みます。
たとえばCRMシステムを提供しているSaaS企業の場合、ペルソナとして以下のような顧客像を設定できます。
<ペルソナの例>
ペルソナを設定すると、知りたいであろう情報を予測して、製品の紹介ページに盛り込みやすくなるでしょう。するとペルソナはそのページを見るだけで十分な情報が得られることが多くなり、直帰率が高まると予想できます。
カスタマージャーニーについても同様です。ペルソナの行動や感情を想定し、それに沿ったサイト設計をすることで、ニーズに合った情報をピンポイントで提供できるようになります。結果として、直帰率が高まりやすくなるのです。
直帰率の平均値は業界によって異なりますが、同業界であってもWebサイトに掲載されているコンテンツの量によって直帰率は変化します。そのため、直帰率の平均値はあまり意味をなしません。
コンテンツが多く、訪問者を他のページへの移動に積極的に促すWebサイトであれば、直帰率は低くなりやすいでしょう。一方でコンテンツが少なければ、直帰率は高くなる傾向があります。
直帰率よりも重視すべきなのは、「検索者のニーズとコンテンツの内容が合っているか」という点です。
たとえば、広告をクリックしてWebサイトを訪問したとしても、広告とサイトの内容がかけ離れていれば、すぐに離脱されてしまうでしょう。検索エンジンの結果画面からアクセスした場合でも、コンテンツのタイトルと内容が異なっていれば、直帰される可能性は高くなります。
また、Webサイトが「他のページも見たい」と思わせる設計になっているかにも気を配りましょう。訪問者に回遊を促すためには、例として以下のコンテンツに誘導する施策が考えられます。
<BtoB企業のブログ記事の場合>
<BtoB、SaaS企業の製品紹介ページの場合>
(V-CUBE 製品紹介ページ)
企業向けにイベントのオンライン化の支援などを行っている株式会社ブイキューブでは、「製品・ソリューション」のページに、関連ツールの紹介コンテンツへのリンクを掲載しています。このように関連情報へのリンクをわかりやすい位置に設置することで、訪問者はサイト内を回遊しやすくなり、直帰率が低くなると期待できます。
自社サイトの直帰率を平均値と比較しても、それほど意味がありません。Webサイトを使いやすく改善する際に、施策の効果を検証するための指標として、直帰率を利用するとよいでしょう。
直帰率の平均値は、さほど気にする必要はありません。一般的に直帰率は低いほうが良いと考えられがちですが、実際には訪問者が不満を感じるWebサイトでも、直帰率は低くなる場合があるからです。業界やチャネルごとの直帰率の平均値は、参考程度に考えておきましょう。
自社サイトの直帰率を平均値と比べるよりも、ペルソナやカスタマージャーニーに沿って考え、コンテンツやサイト設計を工夫すべきです。また、各ページの改善の前後で直帰率を確認して、施策の効果の把握に役立てましょう。
直帰率を下げるためには、訪問者が関心を持ちそうな関連ページに誘導すると効果的です。訪問者が快適にサイト内を移動できるようにすれば、自然と直帰率は低くなります。
買い手と良い関係を構築するために、自社サイトの各ページの直帰率を確認しつつ、コンテンツやサイト設計の改善を行っていきましょう。