「SaaS(Software as a Service)」という用語は、現代のビジネス世界ではもはや避けて通れない存在。テックタッチ株式会社の「大企業のSaaS活用に関する実態調査(2023)」によれば、大企業の74.7%がSaaSを導入しているとのことです。
これほど広まっているため、実は知らないだけでSaaSを使っているケースは多々あります。たとえば、Gmail、Zoom、Netflixなど私たちの生活には欠かせないサービスはSaaSです。しかし、「そもそもSaaSとは? 」「どのようなメリットがある? 」「自社がSaaSを提供する可能性はあるのでは? 」と疑問に思う方もいるはずです。
考えてみれば、大企業でも約3割がSaaSを未導入であり、中小企業も加えるとその数はさらに多くなるでしょう。そこで本記事では、今一度「SaaS」とは何か? なぜ現代のビジネス環境で急速に重要性を増しているのかについて、わかりやすく解説します。
SaaS(サース、サーズ)とは「Software as a Service」の略であり、インターネットを通して提供されるソフトウェアサービスです。ユーザーはソフトウェアを自分のコンピュータにインストールするのではなく、ウェブブラウザやアプリを通してオンラインでアクセスし、サブスクリプション(定額料金制)でサービスを利用します。
より簡単に言うと、インターネット経由で利用する定額制のソフトウェアサービスです。
「アプリ」と呼ばれることもありますが、こちらも正しい表現です。なぜならアプリとは「ソフトウェアアプリケーション」の略だからです。
SaaSがASPサービスと似ていると思った方もいるかもしれません。SaaSは基本的にASPの進化系です。ビジネスモデル自体は昔からありますが、テクノロジーの進歩に伴い、ASPサービスが進化したモデルが2000年代にSaaSと定義され、各ベンダーが「SaaS」という呼称を使い始めたという理解でよいかと思います。
SaaSには、BtoC(一般消費者向け)やBtoB(企業向け)に多種多様なサービスがあります。
BtoCのSaaS例:Zoom、Netflix、Amazon Prime、G-suite、他
BtoBのSaaS例:以下のような領域のSaaS
今の若い方のように、最初からSaaSを活用している人はピンとこないかもしれませんが、昔はソフトウェアというものは、自社開発をするか高額なライセンス代を支払って購入することが一般的でした。
たとえば、企業が自社でシステム開発する場合(オンプレミスと呼ばれます)、高額な費用(数百~何千万円)がかかります。また、カスタムを行い実装されるまで長期間かかるため、すぐに利用できないことがデメリットです。
高い金額をかけたら最高のシステムができるかといえばそうでもなく「こんなはずじゃなかった……」という結果になることもあれば、「訴えてやる!」となることも少なくありませんでした。
完成後も、運用する社内のIT人材が必要であり、構築〜運用までにかなりのコストがかかります。大きな予算を投じて作ったので、たとえ出来栄えが不満でも長期間使い続ける必要がありました。
しかし、テクノロジーが進化してSaaSが登場したおかげで、いつでも、どこでも、安価でソフトウェアを活用できるようになりました。SaaSはサブスクリプションなので、自社に合わなかったら途中で違うサービスに切り替えることも可能です。
もちろん、ソフトウェアの活用がここまで便利になるまでには、長い歴史がかかっています。以下にソフトウェア技術の進化の歴史を簡単に記載します。
【1960年代】
IBMをはじめとするメインフレーム・コンピュータ中心の時代です。タイムシェアリングやユーティリティ・コンピューティングと呼ばれるサービスで、複数ユーザーが同時にソフトウェアを活用できるようにしていました。
【1990年代】
インターネットが普及し始め、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)と呼ばれる、コンピューティングが登場しました。コンセプトは現在のSaaSに近いものです。しかし、ネット環境は今ほど高速でないことなどもあり、爆発的な普及とまではいきませんでした。
【2000代】
ASPが進化し「Software as a Service(サービスとしてのソフトウェア)」と定義されます。SaaSは基本的にASPモデルの考え方を拡張したサービスです。
特徴は、ユーザーが自由にカスタマイズできる機能の提供、複数のユーザーが同一のアプリケーションを共有するマルチテナントアーキテクチャ、Webサービスを通じた幅広い連携の実現です。インターネットの高速化に伴い、SaaSは急速に普及を始めました。
【2010年代】
米国を中心にセールスフォース・ドットコム、Zurora、HubSpotなどのユニコーン企業が続々と登場し、SaaSベンダーが増加します。
2010年代前半には、それまでオンプレミスを軸にしていたアドビ、マイクロソフト、SAP、オラクルなどの大手ソフトウェアベンダーが本格的にSaaS市場にシフト。業界が膨張しつつ競争も激化していきます。
以下はエンタープライズ向けSaaSの、2019年のQ1のシェアです。1位マイクロソフト、2位セールスフォース・ドットコム、3位がSAPオラクルでした。
(出典:techcrunch.com)
日本でも「2018年はSaaS元年」と言われるように、SaaSが普及し国産スタートアップも増加し始めました。
【2020年代】
多くの企業が急速にSaaSシフトした結果、大手企業を中心にオンプレミス回帰の動きも出てきています。これは100%回帰というよりも、SaaSを活用した結果オンプレミスの利点も理解し、SaaSとオンプレミスを使い分けるハイブリッド型を志向する企業が増えていると見てとれます。
ソフトウェア技術は以下のように、集中型、分散型と波のように揺れながら進化してきました。2024年現在については、一部オンプレミス回帰の動きもありますが、SaaSの普及スピード、予測される市場規模などのデータをふまえれば、分散型システムが急速に普及している状況と言えるでしょう。
ここでは、SaaSとオンプレミスの詳細な違いを見ていきましょう。オンプレミスは、自社の物理的な施設内にソフトウェアをインストールし運用する方式です。
企業はデータの完全なコントロールとカスタマイズの自由度を保持できる一方、ハードウェアの購入やソフトウェアの維持・更新などにかかるコストや労力が発生します。また、オンプレミスでは、セキュリティ対策やデータバックアップも自社の責任となります。
SaaSとオンプレミスの違いを理解するために、オフィスビルの例を考えてみましょう。オンプレミスはあなたがビジネス用にオフィスビルを建設し、完全に所有することに似ています。ビルには、ビジネス運営に必要な全ての設備(コンピュータ、サーバー、ネットワーク機器など)が含まれており、メンテナンス、セキュリティ、アップグレードを全て自分で管理します。
オフィスビルを所有することのメリットは、ビルを自由にカスタマイズできること、ビジネスのニーズに合わせていつでも改修や拡張ができることです。しかし、大きな初期投資が必要であり、維持管理にもコストと労力がかかります。
一方SaaSは、ビル内にあるオフィススペースをレンタルするようなものです。設備の初期投資やメンテナンスの心配がなく、必要に応じてスペースを増減できます。初期投資は少なくて済みますが、レンタル契約の条件内でのカスタマイズとなります。
このような違いを踏まえると、SaaSはコスト効率や運用の容易さを重視する企業に適しており、特にスタートアップや中小企業向けです。一方、オンプレミスはデータセキュリティや規制遵守の面で厳格な要件を持つ大企業や、特定の業界に適しています。
SaaSを理解する上では、同じくクラウドサービスに分類されるPaaSとIaaSとの違いを把握しておく必要があります。
PaaS(Platform as a Service)は、ソフトウェア開発者向けのプラットフォームやツールを提供するサービスです。Amazon Web ServicesやMicrosoft Azureなどが該当し、これらは開発者が独自のアプリケーションを開発し、テストし、実行するための環境を提供します。
サーバーやネットワークの管理はサービス提供者が担当し、開発者はコードの開発に集中できます。
IaaS(Infrastructure as a Service)は、サーバー、ストレージ、ネットワークなどの基本的なインフラストラクチャを提供します。Google Compute EngineやAmazon EC2が代表的です。企業は物理的なインフラの購入やメンテナンスを行わずに、必要なインフラストラクチャリソースをオンデマンドで利用可能です。
先ほどのオンプレミスとの違いの続きで、オフィスビルを例にすると下記の通りになります。
サービスタイプ |
比喩 |
提供されるサービス |
ユーザーの責任 |
オンプレミス |
オフィスビルの所有 |
ビルの所有、全ての設備、インフラストラクチャ |
全ての管理、メンテナンス、セキュリティ、アップグレード、内装の設計と実装 |
IaaS |
空きオフィススペースのレンタル |
建物の基本構造(電気、水道、インターネット接続) |
内装、家具、コンピュータシステムの設置、管理 |
PaaS |
家具付きオフィススペースのレンタル |
基本構造に加え、家具や基本的なオフィス機器(コンピュータ、電話システム) |
特定のソフトウェアやツールを使用した業務の運営 |
SaaS |
完全に装備されたオフィススペース |
完全なサービス(受付、清掃、セキュリティ、事務サポートなど) |
オフィスに入り、提供された設備とサービスを使用して業務に専念すること |
SaaSのビジネスモデルは、ソフトウェアをサブスクリプションベースで提供する方式です。顧客は年間や月間のサブスクリプションを通じてソフトウェアを利用し、ベンダーは一度の購入費用ではなく、定期的な収入が得られます。
サブスクリプション料金の他、カスタマーサポートやAPI利用料、追加機能や拡張サービスの料金などが含まれます。多くのSaaS企業は、フリーミアムモデルを採用しており、基本的なサービスを無料で提供することで、導入ハードルを下げているのです。
この戦略により、初期に無料でサービスを提供し、顧客がサービスの価値を認識した上で、より高度な有料プランにアップグレードすることを促します。
(出典:HubSpot)
HubSpotの例を挙げると、同社は永久無料プランを提供しており、新規ユーザーは初期投資なしでCRMと基本的なマーケティングやセールスツールなどを利用できます。
ユーザーがサービスに満足し、追加機能が必要になった場合、より包括的な有料プランへのアップグレードを促します。このプロセスを通じて、初期の無料ユーザーが継続的な収益を生み出す優良顧客へと転換されるのです。
SaaSが一気に普及したのは、当然多くの顧客に支持されたからであり、SaaS業界でユニコーン企業が増えるのは、SaaSベンダーが着実に成長しているからです。ここでは、ユーザー側とベンダー側のSaaSのメリットを紹介します。
まずはユーザー側のメリット5つを見ていきましょう。
SaaSはインターネット環境さえあればどこからでもアクセスできるため、ユーザーはオフィス、自宅、移動中など場所を選ばずに利用できます。インターネット接続があればスマートフォンからでもアクセスできるため、リモートワークや外出の多い営業主体の企業は重宝するでしょう。
SaaSは使用した期間だけ料金を支払う仕組みです。初期投資が少ない上に、長期的な契約に縛られることなく、企業のニーズに応じてスケールアップやダウンができます。たとえば、クラウドベースのCRMやERPシステムは、小さなビジネスにも手頃な価格で利用可能で、伝統的なオンプレミスシステムに比べて導入が容易です。
システム構築の必要性がないのも大きなメリットです。従来のオンプレミスのように、ハードウェアの購入や複雑なセットアップは必要ありません。
基本的にアカウントを作成しログインするだけで、すぐにサービスを利用開始できます。これにより、ITインフラストラクチャに関する専門知識が限られた企業でも、容易にデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進できるでしょう。
SaaSは常に最新のソフトウェア機能を利用できるという点も重要です。ベンダーが定期的に提供するアップデートにより、ユーザーは最新の機能にアクセスし続けることが可能です。この点は、ソフトウェアのメンテナンスやアップデートにかかる時間とコストを削減する面でもメリットがあります。
SaaSはAPIを通じて他のアプリケーションやサービスと簡単に統合できるため、異なるツール間でのデータのやり取りがスムーズになり、業務の効率化が実現します。
たとえば、Salesforceと取引先データ統合ツールuSonarを連携すれば、Salesforceに記録されている企業の最新情報を迅速に収集し、営業効率を向上させることが可能です。このような他のサービスとの連携は、SaaSをより強力かつ柔軟なビジネスツールに変え、ユーザーの生産性や戦略的意思決定を支援します。
企業側のメリットは下記のとおりです。
SaaSモデルの特徴として、低い初期コストがあげられます。従来型のオンプレミスよりも初期投資が少ないため、スタートアップや中小企業にとって魅力的です。低コストで始められることは、新規顧客が試しやすい環境を作り出し、導入ハードルを下げます。
また、複数のSaaSの市場拡大に関するデータが示す通り、この業界は急速に成長しています。富士キメラ総研によると、2022年の国内SaaS市場規模は1.09兆円で、2023年は1.24兆円、2024年は1.39兆円にまで伸びると予測されているのです。
さらに、SaaSモデルはフリーミアムや無料トライアルといったマーケティング手法を容易に採用できます。先にもご紹介した通りHubSpotなどのSaaS企業は、無料プランを提供し、ユーザーが製品の価値を体験後に有料プランへアップグレードするという戦略を採用しています。
実際にOpenViewによれば、フリーミアムモデルはセールス主導型モデルよりも2倍の速さで成長するとのこと。市場の拡大、導入ハードルの低さから、SaaSは新規ユーザーの獲得が容易というわけです。
SaaSでは、顧客に長期間利用してもらうことで、継続的な収入を確保し、企業の財務安定性を高める効果があります。
たとえば、あるSaaS企業が月額1万円のサービスを500人の顧客に提供している場合、1カ月の収益は500人 × 1万円=500万円、年間で500万円 × 12カ月 = 6000万円となります。
さらに、年間10%の顧客が解約すると仮定すると、1年後には500人のうち10%、つまり50人が減少し、450人の顧客が残ります。しかし、毎年100人の新規顧客を獲得し、さらに解約率を10%から5%に減らす戦略をとると、以下のように計算できます。
このように顧客数を約675人まで増やすことができれば、年間収益は675人 × 1万円 × 12カ月 = 8100万円に成長します。
この計算例から、新規顧客の獲得と低い解約率を維持することで、SaaSモデルが長期間にわたり安定した収益を生むことが分かるでしょう。また、収益の予測もしやすくなります。
また、長期間の関係性を築いた顧客はロイヤルカスタマーとなり、新たな顧客を創出してくれるのです。Temkin Groupの調査によれば、顧客の77%が「たった一度のポジティブな体験の後、そのブランドを知人や友人に薦める」と回答しています。
SaaSビジネスでは、一人でも多くのユーザーに長期間利用してもらうことで、安定収益とさらなる新規顧客の創出を見込めるわけです。
SaaSモデルでは、一つのアプリケーションを多くの顧客に提供するため、従来のオンプレミスで必要だった一人一人の顧客に別々のソフトウェアを用意する必要がなくなります。
同じソフトウェアを多くの人が使うことで、新しい顧客を追加する際のコストを大幅に下げることが可能です。これを「規模の経済」と呼び、効率よく多くの顧客にサービスを提供できます。
また、SaaSモデルでは、ソフトウェアのアップデートや保守を各顧客ごとに行う必要はありません。その結果、開発・運用コストの削減につながります。顧客サポートの面でも、全顧客が同じバージョンを使用するため、サポートプロセスが単純化され、サポートコストの削減が可能です。
SaaSはクラウドベースのインフラを利用してサービスを提供するため、新しい機能やアップデートを迅速に展開し、全ユーザーに即座に提供できます。
従来のソフトウェアの場合、新機能を追加するためには、各コンピューターに手動でのアップデートが必要でした。これは大きな手間がかかり、新機能を容易に追加できません。SaaSなら、一度のアップデートで全ユーザーのシステムが最新になるため、手間がかからないのです。
このメリットにより、SaaSベンダーは顧客のフィードバックや市場の動向を基に、製品修正や新機能の追加をすることで、顧客満足度を高められます。後ほどご紹介しますが、HubSpotやSlackなどの成功を収めたSaaSは、例外なくユーザーの声を製品改善へと反映させているのです。
SaaSには多くのメリットがある一方、顧客とベンダーが知っておくべきデメリットもいくつかあります。
まずはユーザー側の3つのデメリットを見ていきましょう。
ユーザー側におけるデメリットのひとつに、他のSaaSサービスへの乗り換えに手間がかかる点があげられます。特に、データ関連の問題は主要な障壁となります。SaaSベンダーによってデータ管理やフォーマットは異なり、移行プロセスが複雑になるためです。
また、契約終了時にユーザーデータが削除されるケースが多々あります。このため、サービスを解約する際は、重要なデータを失わないようにエクスポートしなければいけません。しかし、SaaSベンダーが独自のデータ形式や汎用性が低いデータ形式を提供する場合、データ移行に大きな手間が生じ、ダウンタイムが発生してしまいます。
SaaSアプリケーションは、一般的に広範な顧客向けに開発されます。そのため、特定の業種や企業固有の要件に合わせた自由度の高いカスタマイズが困難です。また、企業独自のビジネスプロセスやワークフローを、SaaSアプリケーションに完全に合わせるのが難しいケースもあります。
たとえカスタマイズが可能であっても、追加コストや時間がかかることがあります。カスタマイズによって発生するコストは、SaaSサービスの全体的なコスト効率を低下させるリスクがあるのです。
SaaSサービスはクラウドベースであり、インターネット接続やサービスプロバイダーのシステムに依存するため、サービス障害が発生した場合に業務が停止してしまう可能性があります。
たとえば、社労士向けSaaSサービス「社労夢」がランサムウェア攻撃を受けた際、多くの社労士や経理担当者が給与計算業務に支障をきたしました。また、大企業のマイクロソフトでさえも障害が発生することがあり、規模の大小に関わらずリスクは存在します。
サービス障害のリスクを軽減するためには、データのバックアップや復旧計画の策定が不可欠です。また、重要な業務プロセスに対する代替手段を用意しておくことも有効です。たとえば、バックアップデータを別のシステムで利用可能にする、または重要な業務をオフラインで実行できるように準備するなどの措置が考えられます。
企業側のデメリットは以下の通りです。
SaaSベンダーは、顧客から預かる多くのデータをクラウドで管理します。これには機密情報や個人情報が含まれることが多いため、データ漏洩、不正アクセス、サービスの中断などのリスクに対して、厳格なセキュリティ対策が求められます。
たとえば、ランサムウェア攻撃やフィッシング、DDoS攻撃などのサイバー脅威への対応として、セキュリティ体制の強化が不可欠です。過去の事例として、ソリトンシステムズのファイル共有サーバ「FileZen」の脆弱性が悪用され、日本の政府機関の情報が漏洩したケースがあります。
(出典:トレンドマイクロ)
トレンドマイクロの2024年のサイバーセキュリティの脅威予測レポートによれば、クラウドツールのAPIのセキュリティ不備を狙う攻撃のリスクが増加すると予測されています。このような攻撃を受けると、SaaSベンダーは賠償金の支払いや顧客信頼の喪失などの重大な問題に直面する可能性があります。
そのため、SaaSベンダーはセキュリティ専門家の採用、定期的なセキュリティ監査、最新のセキュリティ技術への投資など、セキュリティ対策に継続的に投資する必要があります。重要なのは、データの暗号化、アクセス管理、ネットワークセキュリティなど、多層的なセキュリティ体制を築くことです。
しかし、これらの対策は企業のリソースに負担をかけ、特に中小規模のSaaSプロバイダーにとっては大きな挑戦となる場合があります。したがって、セキュリティ対策の強化は、SaaSビジネスにおける重要な投資分野であり、継続的な注意とリソースの割り当てが必要です。
クラウドベースのサービスでは、一つの障害が全体のサービスに波及するリスクがあり、これがビジネスに深刻な影響をもたらします。
たとえば、データセンターでの技術的な問題、ハードウェアの故障、サイバー攻撃などによって、SaaSサービスがダウンすると、その影響は全ての顧客に及ぶのです。SaaSのダウンタイムは、顧客のビジネス活動に直接的な影響を与え、生産性の低下や収益の損失を引き起こします。そのため、SaaSプロバイダーは高い可用性と信頼性を確保しなければいけません。
SaaSビジネスモデルでは、初回購入では大きな収益はあげられません。SaaSの売上げの大部分は、継続更新やアップセル/クロスセルが占めるのです。また、継続的な開発や顧客サポートなどが必要なため、顧客獲得単価(CAC)が比較的高い傾向にあります。
新規顧客の獲得には多大なマーケティング投資が必要となりますが、1:5の法則や5:25の法則が示すように、既存顧客の維持は比較的低コストです。そのため、既存の顧客を維持し、長期的な関係を築くことが、収益性の高いビジネス運営に直結します。
解約防止戦略の重要性に関して、カスタマーサクセスが極めて重要な役割を担っています。なぜなら、顧客は期待した成果を得られなければ、解約をしてしまうためです。
カスタマーサクセスは、データ分析をして顧客一人一人の課題を把握し、先回りしての課題の解決や計画的なサポートを提供して、単に顧客サポートを提供する以上の活動を行い、顧客の成功を実現することを目指します。
カスタマーサクセスを中心に解約防止に注力することで、顧客は継続的な活用やアップセル・クロスセル、新規顧客への自社ブランド紹介などをしてくれ、結果的に自社の成長を実現できるのです。
ここからは、SaaS選定の際に着目すべきポイントについて解説します。主に次の5点に注目して製品の比較・検討を進めていくとよいでしょう。
まず、SaaSシステムの導入目的を明確に絞り込みましょう。世の中には、財務管理や人事管理、顧客管理、物流管理など、さまざまな業務領域に特化したSaaS製品が存在しています。
しかし、ひとつの会社で多くのサービスを同時に運用していると、管理にかかる手間もコストも増大するのが現実です。まず、複数のSaaSを同時に運用しようとすると、導入・運用費用が増大するという、コスト面の課題が挙げられます。
また、異なるシステム同士を連携させてスムーズなデータ利用を図りたいと考える場合、データ形式を揃える手間などがかかる場合が多く、業務効率化の妨げになるケースも考えられます。
さらに、社員が複数のシステムの操作を覚える必要があり、学習コストがかかることも考慮しなくてはなりません。そのため、「社内でいくつも導入している、クラウドサービスをまとめて管理するためのサービス(iPaaS)」も登場しており、特に北米においてその市場は年々拡大しています。
よって、まずは「自社は今、どの業務領域に大きな課題を抱えているか?」という点を明確にすることが重要です。優先順位に応じて、どの領域のSaaSを導入するのか、どのSaaSを基準にして運用体制を構築していくかを考えることができます。基盤となるSaaSが決まったら、そのSaaSと連携ができるサービスを検討していき、課題解決に繋げられるのかを考えていきましょう。
次に、自社に必要な機能が過不足なく搭載された製品を選ぶようにしましょう。導入を検討しているSaaS製品が「自社のニーズに合った機能を持っているか」なおかつ「不必要な機能を数多く搭載していないか」を確認します。
たとえば、人事管理システムを検討している場合には、
など、自社が必要とする機能を網羅しているかを確認しましょう。逆に、求める以上に機能が豊富すぎると、使いこなせないまま多額の費用を支払うことにもなりかねません。よって、必要な機能を過不足なく提供しているかどうか見極めることが重要です。
また、他のサービスとの連携ができるかどうかも重要なポイントです。たとえば、マーケティングツール(MA、SFAなど)を導入する際には、既存のCRMシステムとスムーズにデータ共有できるか確認が不可欠です。導入後に連携がうまくいかないと、データの二重入力や管理の手間が増え、業務効率が低下してしまいます。
このように、自社のニーズに合った機能を持ち、既存のシステムとの連携がスムーズに行えるSaaSを選定することが、導入後の業務効率化につながるでしょう。
SaaSは比較的安価で導入しやすい製品も数多く見られますが、長期的にかかるコスト面を考えることも重要です。
月額料金は一見高額ではなくとも、半年や年間で見るとそれなりの金額になることも。そのため、長期的に見て費用対効果が合うのかを検討する必要があります。
たとえば、月額料金が1ユーザーあたり数千円のSaaSを導入するとします。1年間での運用費用は数万円に達し、ユーザー数が増えればさらに費用がかさむ、という料金体系も多いです。このコストが企業の予算内に収まるかどうか、またその投資がどれだけの効果をもたらすか、導入前に慎重に評価しなくてはなりません。
また、導入初期に、設定費用などが発生する製品もあります。これらの初期コストを含めて、総合的な費用対効果を算出することが大切です。例えば、「特定業務の効率化を推進した結果、長期的に人件費を削減できるか」など、具体的な目標を見積もる必要があります。
さらに、契約期間にも注意が必要です。長期契約の場合は割引がある一方で、「契約年度の途中で解約しようとすると、解約料を求められる」など途中解約が難しいことも。そのため、長期的な視点で見て、そのSaaSが本当に自社にとって有益かどうか評価することが重要です。
導入実績と、サポート体制をあらかじめチェックしておくことも重要なポイントです。
導入実績は、そのサービス自体の信頼性を示す指標となります。多くの企業が導入している場合、そのサービスが広く受け入れられ、信頼性が高いことが伺えるでしょう。また、ユーザーが多ければ、それだけ多くの活用ノウハウが蓄積されている可能性も高くなります。
導入実績が豊富なサービスは、初期設定や運用の際に直面しがちな問題点や課題に対する解決策が、すでに確立されている場合が多いでしょう。このため、新規に導入しようとする企業にとっても、スムーズに運用を開始することができます。
さらに、他の企業の成功事例を参考にすることで、「この事例のように活用すると、自社ももっと業務効率化できるかもしれない」など具体的なヒントを得られるでしょう。
そして、サポート体制も重要な検討要素です。たとえば、操作が分からない場合に迅速に対応してくれるサポートや、より自社の課題に即した活用方法を提案してくれるカスタマーサクセスチームの存在が挙げられます。トラブル発生時にも迅速に対応してもらえるため、業務の停滞を最小限に抑えることが可能です。24時間対応のサポート窓口や、専任担当者がつくサービスなどが有益だと言えます。
SaaS製品を導入する際、セキュリティ面の確認も非常に重要です。
以下のポイントに注目して、製品提供側がしっかりとセキュリティ対策を講じているか確認しましょう。
データのアップロードや保存時に、暗号化に対応しているかを確認しましょう。暗号化されていれば、万が一データが第三者からアクセスされても、中身を読み取ることはできません。
強力なパスワード、二要素認証(MFA)、役割に応じたアクセス権限の制御があるかを確認します。これにより、権限を持つ人だけがデータにアクセスできるようになります。
ベンダー側が定期的にセキュリティ監査を行っているかを確認しましょう。外部の専門家によるテスト(ペネトレーションテスト)が行われているとさらに安心です。
ベンダー側が情報セキュリティに関する規格や規制(例えば、SOC2、GDPR、ISO2700など)を遵守しているか確認します。これにより、データの扱いが正しく行われていることが保証されます。
セキュリティインシデントが発生したときの対応計画が整備されているか確認します。迅速な対応ができる体制があれば、被害を最小限に抑えることができます。
また、自社内でもリスク対策をしておく視点も大切です。たとえば、日ごろからデータをバックアップしておき、いざというときには他のシステムや、オフラインで業務遂行できるよう備えておくことや、復旧計画を立てておくことなどが有効でしょう。
つづいて、国内外の代表的なSaaSを5つをご紹介します。
(出典:Salesforce)
Salesforceは、クラウドベースのCRM(顧客関係管理)プラットフォームを中心に展開する企業です。
プラットフォームを通じて、セールス、マーケティング、カスタマーサービスなど、ビジネスのあらゆる面で顧客データの一元管理を可能にし、より効率的な顧客対応を実現します。
Salesforceは、高度なセグメンテーションやカスタマイズ性の高さが強みのため、複雑なカスタマージャーニーや大企業などにおすすめです。
また、Salesforceの特徴はその豊富なエコシステムにあります。豊富なアドオンや統合ソリューションを通じて、SalesforceのCRM機能をさまざまなビジネスツールやプラットフォームと連携させることが可能です。
Salesforce AppExchangeでは、多様なアプリケーションや拡張機能が提供されており、企業が特定のビジネス要件に合わせてシステムを拡張できます。さらに、継続的なイノベーションとアップデートにより、常に最新のトレンドや技術を取り入れている点もSalesforceの強みです。
SaaS製品としては珍しく、製造業や金融業、自動車業など業界別ソリューションを提供しており、まさに業種や企業規模を問わないSaaS製品と言えます。
(出典:HubSpot)
HubSpotは、CRM(顧客関係管理)システムを基軸に、マーケティングやセールス、カスタマーサポートなどの業務を効率化するソフトウェアです。
HubSpotを導入することで、顧客情報の一元管理をし、各部門が同じ顧客情報をもとに最適なアプローチを実施できます。一見するとSalesforceと似ていますが、HubSpotは料金が比較的割安かつ直観的なユーザーインターフェースのため、ITに精通した人材や資金が少ない中小企業向けのツールです。
HubSpotの特徴として、フリーミアム戦略があげられます。基本的な機能はすべて永久的な無料プランで提供し、ユーザーが製品に満足したり、さらなる機能拡大を目指したりする場合に、有料プランへのアップグレードを推奨する仕組みです。
また、毎月のように製品アップデートをしていることからも、ユーザーのフィードバックを重視していることが分かります。
(出典:Slack)
Slackは、チームコミュニケーションとコラボレーションを目的としたSaaSプラットフォームです。ビジネスチャットとして広く知られ、リアルタイムのメッセージング、ファイル共有、タスク管理、そして多様なアプリやサービスとの統合を可能にすることで、企業内外のコミュニケーションを効率化し、生産性を高めます。
Slackの主な特徴は、その直感的で使いやすいインターフェースにあります。ユーザーはチャンネルを通じてプロジェクトやトピック別に会話を整理し、関連するメンバーと容易に情報共有できます。また、Slackは強力な検索機能を備えており、過去の会話や共有ファイルを簡単に見つけることも可能です。
事業面としての特徴は、従来のEメールキャンペーンや広告などのマーケティング活動に注力していない点です。Slackは初期のベータ版を限られたユーザーのみに公開し、ユーザーのフィードバックを製品化前に反映させることで、製品の価値を高めました。
また本リリース後も、ヘルプデスクに届く声やツイートなどのユーザーの声を参考にしているとのこと。顧客の声を受け止め、製品のアップデートを続けることで、顧客満足度の高いプロダクトを制作できているのです。
Slackの戦略については、グロースハックについての記事で詳しく解説しているので、ぜひこちらも参考にしてください。
(出典:Zoom)
Zoomは、ビデオ会議とオンラインコミュニケーションのためのSaaSで、ビジネスコミュニケーションの分野で大きな革新をもたらしました。特にリモートワークや分散型チームの普及に伴い、Zoomは世界中の企業や教育機関で広く利用されています。
Zoomの主な魅力は、その使いやすさと高品質のビデオ通信でしょう。ユーザーは、インストールや複雑なセットアップを必要とせず、簡単にオンライン会議を開催したり、参加したりできます。また、高いビデオとオーディオの品質は、安定した通信環境下でクリアなコミュニケーションを提供し、対面での会議に近い体験を実現します。
小規模なミーティングから大規模なウェビナー、オンラインイベントまで、さまざまな用途に対応しているのも魅力です。多機能な会議室管理、画面共有、バーチャル背景、録画機能、リアルタイムの字幕表示などの機能を備えており、ユーザーのニーズに合わせてカスタマイズすることができます。
このようにフリーミアム戦略やユーザーの声の反映のほか、拡大する需要に迅速に対応したことも同社の成功を後押ししました。
新型コロナ感染症の影響で、コミュニケーション・ツールの需要は急速に高まっています。Zoomはユーザー数の増加に合わせてインフラを迅速に拡張し、無料かつ手頃な料金のプランを提供することで、信頼性の高いリモート・コミュニケーション・ツールとしての地位を確立したのです。
(出典:SmartHR)
SmartHRは、人事・労務管理を効率化するための国内SaaSプラットフォームです。人事業務のデジタル化と自動化をサポートし、従業員の入退社手続き、給与計算、社会保険手続きなど、複雑な人事関連業務を簡素化します。特に、従来紙ベースで行われていた各種申請や手続きをオンライン化することで、労務管理の効率を大幅に向上させています。
それでは、SmartHRはどのように事業を拡大したのでしょうか。SmartHRは国内初の人事労務クラウドウェアだったため、当初はブルーオーシャンでした。しかし、競合が増えるにつれて、競合他社との明確な差別化が困難に。そこでテレビCMや交通広告など、ブランド認知度を高める施策を推進したのです。
また、SmartHRの強みは1%未満という圧倒的に低い解約率。同社が解約率を抑えるために重視しているのが、解約理由です。企業の統廃合や経費削減などの解約理由はコントロールできない一方、製品に関する解約理由は対応できます。製品に関する解約理由に優先的にリソースを注ぐことで、解約率の低下を実現しました。
また、解約率の重要性をカスタマーサクセスだけではなく、営業やマーケティングなどの他部門でも強調することで、解約する確率が高い質の低いリードの獲得や無理やりの契約などを防いでいます。
(出典:ANDPAD)
ANDPADは、建設業界向けのクラウドベースのプロジェクト管理ツールを提供する日本の企業です。
同社の主力製品である「ANDPAD」は、建設現場の効率的な管理と運営を支援するために開発されました。このツールは、プロジェクトの進捗管理、スケジュール調整、資料共有など、建設現場でのさまざまな作業を一元化し、デジタル化することで、業務の効率化と品質の向上を実現します。
ANDPADの特徴は、そのユーザーフレンドリーなインターフェースと建設業界に特化した機能です。建設業界に精通した専門家によって設計されたアプリケーションは、現場のニーズを深く理解し、それに対応する機能を提供しています。たとえば、現場での写真撮影や図面の確認、工程の管理など、現場作業に直接関連する機能が充実しています。
また、建設プロジェクトに関わる全ての関係者がリアルタイムで情報を共有できるようにすることで、コミュニケーションの効率化を実現。誤解や情報の遅れを防ぎ、プロジェクトの進行をスムーズにすることができます。
さらに、顧客のフィードバックを積極的に取り入れ、製品の改善に努めています。このような顧客中心のアプローチは、同社の製品が業界のニーズに即応することを保証し、建設業界におけるデジタル化の推進に貢献しているでしょう。
(出典:ラクス)
株式会社ラクスが提供する「ラクス」は、企業の業務効率化を支援するクラウドサービスです。
代表的な製品として、
などがあります。
これらのツールは、経費や請求書、販売データの処理を自動化し、手作業によるミスを削減、時間を節約することが目的です。低コストで利用できるため、中小企業から大企業まで幅広く導入されています。
また、導入支援から運用相談まで手厚いサポートが提供されており、たとえば経理システムであれば、バックオフィス業務を熟知した専任担当者による支援を提供しています。また利用者が操作方法やマニュアル、テンプレートなどの資料に常時Web上でアクセスできるコンテンツも豊富に整備されています。
同社は近年、「請求書のペーパーレス化で年間の経費を大幅カット」といった訴求軸で、さまざまな企業を顧客として獲得してきました。最新の決算報告(2024年3月期中間決算)では、売上げが前年同期比で39%増加と、急成長を遂げていることが伺えます。
(出典:マネーフォワード クラウド)
株式会社マネーフォワードが提供する「マネーフォワード」は、企業のバックオフィス業務を効率化するためのクラウドサービスです。
など、幅広い業務をカバーできるツールが豊富に揃っています。
たとえば毎月の請求書発行・送付や、複雑になりがちな年末調整など、手動で行っていた業務を自動化・ペーパーレス化できます。
経理システムを例に挙げると、さまざまな銀行のネットバンキングシステムや、クレジットカード会社の利用明細発行システムなどとデータ連携しやすい点も、大きな長所だと言えるでしょう。法令対応(新たな税制への対応など)や、セキュリティ対策も充実しており、信頼性の高いサービスを提供しています。
中小企業やスタートアップ企業を顧客として獲得するだけではなく、日本航空やカシオ、イオンなど上場企業も同製品をバックオフィスに採用。2024年第1四半期には、過去最高のARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)純増を達成しました。
ソフトウェアやハードウェア、コンサルティング関連企業として知られる米国・Oracle社の記事によると、今後SaaSにはAIや機械学習の組み込みが進む、との見通しが述べられています。
たとえば、SalesforceやHubSpotといった製品において、AIによるコンテンツライティング補助機能や、顧客インサイトの分析機能が既に提供されています。多くの人々が日常業務の中でSaaSの利用を通じて、AIや機械学習の助けを借りながら、より業務の効率化が進むと期待できます。
そして、日本のデジタル庁のサイトを見ると、日本国内では地方自治体がDXの目的で、役所におけるSaaS活用を促進しようとしている動向も伺うことができます。このような動きを踏まえると、今後SaaSは日本国内において「ITやDXに対して積極的な会社が使う」と限定的に見るのではなく、官民問わずより一般化していくのではないか、とも推測できます。
なお現在、日本のSaaS普及率は10%で、アメリカの40%に比べて低い状況にありますが、別の言い方をすれば「まだまだSaaS普及の伸びしろがある」と考えることもできるでしょう。
しかし、本記事で詳しく述べてきたように、SaaSにはメリットだけでなくデメリットもあります。
導入前には、従来の業務プロセスを(たとえば毎日の経理業務など)いかにしてSaaSでスムーズに処理できるように変えていくか(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)を考える必要があります。そして、個人情報や機密情報をどのように保存・蓄積し、SaaSのシステム上で適切に利用するか、社内ルールを厳格に定め、組織内で周知することも不可欠です。
SaaSの利用は今後ますます一般化し、多くの組織が日常的に利用するツールとなっていくとも考えられます。そのような将来が実現するためには、ベンダー側の技術的な進展だけを求めるのではなく、利用者(ビジネスパーソン一人ひとり)自身も、日々安全に利用するために、SaaSの特性について理解を深めていくことも必要でしょう。
ビジネスのデジタル化が進む中、SaaSはその柔軟性とコスト効率で、小規模なスタートアップから大企業まで幅広く選ばれています。
SaaSの最大のメリットは、その手軽さと経済性です。初期投資の削減、柔軟なスケールの調整、最新の機能への常時アクセス、そしてセキュリティやサポートの面倒はすべてベンダーが運用してくれます。一方、ベンダーは新規ユーザーの獲得や安定した収益化、開発・運用コストの軽減などのメリットがあります。
だからこそ、SaaSは世界中で急速に普及しているのです。クラウドコンピューティング市場(IaaS、PaaS、SaaS)の世界の市場規模は拡大する一方で、2021年の4453億米ドルから2026年には9473億米ドルになると予測されています。SaaS業界はまだまだ可能性に満ちあふれています。
本記事を通じて、SaaSの可能性を最大限に活用するための理解を深めていただけたことでしょう。SaaSは単なるテクノロジートレンドではなく、ビジネスを推進し、イノベーションを促進する強力なツールです。ぜひSaaSを賢く活用し、事業の成長を効率化してください。