USP(ユニークセリングポイント)とは?競合とは異なる販売ポイントを作るには

2022/06/08
BtoBマーケティング USP USP(ユニークセリングポイント)とは?競合とは異なる販売ポイントを作るには

Amazonでは、新しい企画を立てる際に最初にプレスリリースを書く決まりがあるそうです。スタート段階でいの一番に宣伝する際の「売り」を考える、大変合理的なメソッドだと言えるでしょう。

USP(ユニークセリングポイント)という用語をご存知でしょうか? 企業や商品・サービス、ブランドなどが持つ独自の「売り」のことです。今風に言えば、競合他社にない「独自の価値」であり、プレスリリースならまさに目玉になるところです。

何かを売る以上、自社のセールスポイントを強調するのは必須。ところが意外にそこがあいまいなまま開発したり、売ったりしているケースは少なくありません。おそらく意識はしていても、大まかすぎるか散漫で特徴がぼやけているのだと思います。

御社の商品・サービスの「売り」は何でしょうか。誰に何を届けたいのでしょう。

USPは非常に重要です。2019年の米国「Research In Action GmbH」というレポートでは「明確なUSPを持つことは、マーケティング戦略の成功の35%に相当する」と報告されています。

本記事では、BtoBマーケティング担当者が知っておくべきUSPの意味、優れたUSPの事例、USPの作成方法を紹介します。

USP(ユニークセリングポイント)とは?

USP(ユニークセリングポイント)とは、その企業、その商品・サービスだけが持ち、他社が提供できない価値(顧客のメリット)のことです。語源は英語の「Unique Selling Proposition」であり、訳し方の違いにより「ユニークセリングプロポジション」と呼ばれることもありますが、同じ意味です。

  • Unique :独自の、唯一無二の
  • Selling :売り
  • Proposition:提案

USPは、顧客へ提供できる自社独自の価値の「コンセプト」であり、広告、CM、Webで使われる商品のキャッチコピー、スローガンなどはその「伝達手段」です。

考えと発展の背景

USPは、1940年代に米国のTV広告会社テッド・ベイツ&カンパニーのRosser Reeves(以下、ロッサー・リーヴス)氏が提唱した法則です。ロッサー・リーヴス氏は、30年にわたる広告宣伝の経験をもとに、自社独自のセリングポイント(売り)を提案する重要さと法則性を発見し、USP(ユニークセリングポイント)を提唱しました。

ちなみに、ロッサー・リーヴス氏は新聞記者を経て当時小さかったテッド・ベイツ&カンパニーに入社し、コピーライターとしての才能を遺憾なく発揮しながら、会社を世界第4位の大手代理店へ成長させたことで知られます。米国の「広告の殿堂」入りも果たした凄い人物です。

著書『USP ユニーク・セリング・プロポジション 売上に直結させる絶対不変の法則』は大ヒットし、世界28カ国で50年以上も読まれ続けています。

書籍『USP ユニーク・セリング・プロポジション 売上に直結させる絶対不変の法則』

(出典:Amazon

バリュープロポジュションとの違いは

しかし、ここまで読んで「USPはバリュープロポジションと同じ意味では? 」と思った方も多いのではないでしょうか。実際、ほぼ同じと言えるでしょう。広義では事業戦略やマーケティングの核、狭義ではステイトメントと理解されている点までよく似ています。

バリュープロポジションとは、1988年に米国のコンサルティングファーム、マッキンゼー& カンパニー社の論文がきっかけで世にでてきた概念。世界のマッキンゼーの提唱するコンセプトだけあって、大手企業を中心に広く普及しています。

なお、マーケティング領域では同じ意味合いのことを異なる人が異なる名称で定義するケース、時代とともに言葉の定義が拡張されていくことは珍しくありません。USPもバリュープロポジションもほぼ同義なので、自分が使いやすいほうを使って問題ありません。

多少の違いを言えば、バリュープロポジションは理論構築がしっかりしており、関連フレームワークもたくさんでています。一方、運用が難しいという意見も聞きます。日本語のバリュー(価値)は多様な意味があるため、社内でコンセンサスを得る際に誤解が生じることもありえるでしょう。

その点、USPの「独自の売り」という意味は、誰にでも理解されやすいところが長所。1940年代といえばフィリップ・コトラー氏、マイケルポーター氏などが活躍する前の時代ですが、天才コピーライターが生み出した「売上に直結するUSP」は、実にシンプルで明快です。

「差別化の核となる独自性を発見する」という目的は同じなので、マーケターとしては、プレゼンする相手、使用する局面にあわせて、両方を使い分ければよいかと思います。

USPの事例

ここでは、優れたUSPの事例を3社紹介します。

「明日くる」という明快なUSPのASKUL

ASKUL公式HP

(出典:アスクル株式会社

ASKUL(アスクル)の由来は翌日配達です。ブランド名でもありアスクル株式会社の社名でもあります。

「Office用品が明日来る」というUSPはわかりやすく、当時のEC市場では画期的なサービスであり、同じ規模で同等のサービスを提供できる企業はなく、ASKULは急成長しました。

最近も、コロナ禍が追い風となり2021年5月期連結業績は4221億5100万円で過去最高を更新しています。

2021年度のJ.D. パワー ジャパン社が主催した「2021年法人向け通販サービス顧客満足度調査℠」でも、Amazonを押さえて第1位。ASKULは法人市場でゆるぎないブランドになっています。

「タフな時計」というUSPで世界にヒット:「G-SHOCK」

G-SHOCKのCM(YouTube)

(出典:YouTube

カシオの「G-SHOCK」の企画書は「落としても壊れない時計」というたった1行の企画書でした。1行であるものの時計は高級品、繊細でこわれやすいという当時の常識とはまったく角度の違う、異次元のポジショニング、独自の価値観でした。強力なUSPです。

ヒットのきっかけは、米国で流したCMのアイスホッケー編が誇大広告と疑われ、テレビ番組で実験され本当に壊れないと証明されたことです。アメリカで大ブレイクし、日本に逆輸入されました。

「タフな時計」というコンセプトは人が普遍的に持つ「強さへの憧れ」を刺激するのか、当初開発者がイメージしていた現場で働く人たちだけでなく、世界の幅広い層の人たち(特に男性)にG-SHOCKは人気をとなり大ヒット。累計で1億個以上、今でも売れ続けるロングセラーとなっています。

「アイスホッケー編」「GPSナビゲーション編( オーストラリア)」「ダイバー編(UK)」など、各国のCMは表現が異なれど、タフな時計の凄さ、強さへのこだわりが伝わってきます。近年はスマートフォンとの連携も充実。タフな時計は進化し続けています。

社名がUSPとなっているSalesforce

セールスフォース・ジャパンHP

(出典:セールスフォース・ジャパン

SaaS業界でUSPが明確な会社といえば、セールスフォース社でしょう。何しろ社名のSalesForceを直訳すると「営業力、営業員」です。

  • Sales=営業、
  • force=力、強さ、エネルギー、軍隊

セールスフォースのことを何もしらなくても「営業に対する並々ならぬパワー」を感じることは間違いありません。コアの事業が営業領域だとすぐ伝わります。SaaSの先駆者セールスフォース社は、営業領域クラウド(SaaS)のCRM、SFAの先駆者でもあったので、社名=独自のセリングポイント(USP)でした。

世界中のどの企業も、売上げを上げることは命題と言っても過言ではありません。経営者、経営幹部にとって、営業支援でも代行でもなく「あなたの会社の営業部門を強くするサービス」というコンセプトは、新鮮かつ力強く映るでしょう。ASKULもそうですが、何がUSPなのか、社名でわかるのは強力です。

USP(ユニークセリングポイント)を構成しうる要素

ここでは、USPのもとになる要素を紹介します。「ユニーク」という言葉は、日本では「面白い」という意味で使われることが多いのですが、英語では「独自の、唯一の、他に存在しない」といった意味になります。

他社にもあって、ちょっと自社が優れている程度ではなく、圧倒的に優れている、自社だけが提供できるお客様のメリット、と理解しましょう。USPを構成する要素は以下のように多々あります。

要素1:自社だけが提供できる、自社だけの特徴

  • 〇〇地域に特化している
  • 〇〇領域に特化した唯一のサービス
  • 他社にない最先端のテクノロジーを活用
  • 独自の開発ストーリーがある
  • 創業100年以上(蓄積された技があある)
  • 学生ベンチャー、スタートアップ(未来的、新しいことに強い)

要素2:際立った品質のよさ

  • 同じ機能でも他社より精度がずば抜けて高い
  • 他社にない優れた機能を持つ
  • 操作性が抜群
  • 頑丈、優美、デザイン性
  • 拡張性(SaaSならエコシステム等)

要素3:コストパフォーマンス

  • 業界最低価格である
  • 品質の割に安い(例:「お、ねだん以上。」のニトリ
  • 高価格だが素晴らしいメリットがありお得

要素4:他社より充実したサービス

  • 完全成果報酬(他社が提供していない場合)
  • 〇年間保証(他社よりもかなり長い)
  • サポート体制(対応時間、スタッフの優秀さ)
  • もの凄いホスピタリティ(例:ザッポス

要素5:ブランドイメージ

  • 世界で認められている企業
  • 業界シェアNo.1企業である
  • 先進的、革新的な企業
  • 経営者が有名である
  • SNSでよく知られている

BtoBの発注基準は一般にロジカルですが、安心感、尊敬の念を感じられるブランドは購買動機のひとつです。BtoCのブランド品であれば、顧客はその商品・サービスを使うことでブランドに自身を投影できるので、愛着が長く続きます。

USP(ユニークセリングポイント)を作るステップとは?

ここでは、USPを作るためのシンプルな作成手順を解説します。

ステップ1:自社商品・サービスの強みを洗い出す

まず、自社商品・サービスの強みをリストアップします。顧客アンケート調査、顧客満足度調査、レビューサイトを参考にしたり、営業部門やカスタマーサポート部門など、直に顧客とふれあうセクションのスタッフとディスカッションしたりしながら考えます。

この時点では、できるだけ多数の強みをピックアップします。以下のような質問を出すと意見が出やすいでしょう。

  • 顧客は商品のどこに魅力を感じているか?
  • 顧客からどんな点をよく褒められるか?
  • 技術力は他社より高いか、低いか?
  • 価格は市場において高価格帯か、低価格帯か?
  • 使いやすさは他社に比べてどうか?
  • コンサルティングは親切か?
  • 顧客にとって手間がかかるか? 簡単か?
  • スピードが速いか、遅いか?
  • アフターサポートは他社と比べて親切か?

ステップ2:顧客の求めているメリットを書き出す

自社の顧客層が求める価値、ニーズを書き出します。顧客は一般に現状に100%満足はしていないものなので、潜在的なニーズも拾い上げましょう。レビューサイトのマイナス評価や営業部門、カスタマーサポートに寄せられるクレームなどが参考になります。

ドリルを買う人が欲しいのは「穴」である」という有名な格言を思い出し、機能視点ではなく顧客視点で書き出しましょう。

  • 顧客は〇〇に困っている
  • 〇〇を解決したいと考える顧客が多い
  • 顧客はもっと〇〇なサービスが欲しいと言っている
  • 顧客の理想は〇〇を得ることである
  • 顧客は既存サービスの〇〇な点が不満だ

ステップ3:競合企業の強みをリサーチする

競合他社の強みをピックアップします。他社の強みも最近は各レビューサイトがまとめており、比較表、ランキングまであるため、大いに参考にしましょう。もちろん、競合の動向に敏感な営業員の意見も重要です。

この時点で自社が売りと思っていたものが実は独自性がなく、あまり価値がなかったとわかったら、1からその項目はカットします。逆に他社を研究することで、自社の強みになりうる項目が浮かび上がったら1に追加します。

ステップ4:USPの図にあわせて、USPの要素をまとめる

1と2と3で出した項目を、以下の図に照らし合わせて分類します。

USP作成のテンプレート

クロスするUSPの箇所に相当する項目だけを一カ所に集めます。

改めて、他社にはなく自社が提供できること、顧客が望んでいることの3条件を満たしているかを確認しましょう。

複数の項目が出ているかと思いますので、それをベースに自社(または商品サービス)のコアコンセプトをまとめます。各項目を組み合わせてみたり、すべて包括したコンセプトができないか考えたりしましょう。

※なお、USPの作成アプローチは複数ありますし、活用できるフレームワークには3C4P4Cバリュープロポジションなどもあります。上記はあくまでひとつの例です。

ステップ5:USPを明確な言葉で表現する

3でまとめたUSPのコンセプトを、明確に伝わる言葉へブラッシュアップします。顧客視点に変換した表現にしなければなりません。「これ」という言葉が生まれたらベストですが、ここは簡単そうで奥深い領域なので、外部のプロにまかせてもよいでしょう。

例えば、「目の付けどころがシャープでしょ」というスローガン(今は使われていませんが)は、有名コピーライターの仲畑 貴志氏の制作です。同じ内容の言葉をプロは研ぎ澄まされた表現に仕上げます。

大手広告代理店に発注する必要まではありません。日頃おつきあいしている協力広告会社の方にプロジェクトに入ってもらったり、制作してもらったりする方法があります。社外の人は外部からの視点でプロダクトを捉えられるので、伝わりやすい刺さる言葉に変えてくれる期待ができます。

ステップ6:USPを公表して、USPを守り抜く

USPが決まったら、社内外にリリースします。マーケティング部門は、スローガンとしてプレスリリースを発行したり、商品名に使ったり、Webサイトや広告のキャッチコピーに活用します。

実際の表現方法は媒体に合わせて変わりますが、USPにそっていれば、コピーにもデザインにも自社の独自性、そして顧客のメリットが明快に表れるでしょう。

なお、USPで打ち出したことは、守り続ける必要があります。「アスクル」の配送に3日かかったら頼んだ人は業務に支障をきたすかもしれません(現在のASKULは翌日でないものも取り扱っており、その旨明記しています)。G-SHOCKがすぐ壊れたらニュースになり炎上するでしょう。

この点、USPを打ち出すのは勇気がいることでもあります。だからこそ、多くの企業のUSPがあいまいなのかもしれません。

SaaS業界は、コモディティ化が速く独自の売りを見つけるのが大変な業界のひとつです。それでも、視座を変えてプロダクトだけでなく、自社の体制、カルチャー、歴史、人材のタイプなどの要素も組み合わせてUSPを作って打ち出しましょう。前述の調査のように明快なUSPができれば、マーケティング戦略の成功確率が高まります。

まとめ

マーケティングの本質は「売る仕組みをつくること」です。しかし、そのあまりの奥深さ、複雑さ、覚えることの多さに、マーケターの方はときどき迷子になる感覚を味わうのではないかと思います。

USPはマーケティング戦略を立てるとき、新たなサービスを開発するとき、本質的な目的をクリアに浮かび上がらせてくれる明快で優れたフレームワークです。

経営学者でもなくコンサルタントでもない、バリバリの実務家の作成したフレームワークは、ビジネスマンに理解しやすいよさがあります。

良いUSPは自社の見込み客や顧客にストレートにメッセージをとどけます。自社のUSP、プロダクトごとのUSPを作成して、市場に打ち出していきましょう。

戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

サービスを詳しく知りたい方はこちら

資料請求