USP(ユニークセリングポイント)とは?競合と差別化するには?事例と作り方をわかりやすく紹介

2023/06/08
BtoBマーケティング USP USP(ユニークセリングポイント)とは?競合と差別化するには?事例と作り方をわかりやすく紹介

Amazonでは、新しい企画を立てる際に最初にプレスリリースを書く決まりがあるそうです。スタート段階で、いの一番に宣伝する際の「売り」を考える、大変合理的なメソッドだと言えるでしょう。

USP(ユニークセリングポイント)という用語をご存知でしょうか? 企業や商品・サービス、ブランドなどが持つ独自の「売り」のことです。今風に言えば、競合他社にない「独自の価値」であり、プレスリリースなら、まさに目玉になるところです。

何かを売る以上、自社のセールスポイントを強調するのは必須。ところが意外にそこがあいまいなまま開発したり、売ったりしているケースは少なくありません。おそらく意識はしていても、大まかすぎるか散漫で特徴がぼやけているのだと思います。

御社の商品・サービスの「売り」は何でしょうか。誰に何を届けたいのでしょう。

USPは非常に重要です。2019年の米国「Research In Action GmbH」というレポートでは「明確なUSPを持つことは、マーケティング戦略の成功の35%に相当する」と報告されています。

本記事では、BtoBマーケティング担当者が知っておくべきUSPの意味、優れたUSPの事例、USPの作成方法を紹介します。

USP(ユニークセリングポイント)とは?

USP(ユニークセリングポイント)とは、その企業、その商品・サービスだけが持ち、他社が提供できない価値(顧客のメリット)のことです。語源は英語の「Unique Selling Proposition」。和訳によって「ユニークセリングプロポジション」「ユニークセリングポジション」と呼ばれることもありますが、同じ意味です。

  • Unique :独自の、唯一無二の
  • Selling :売り
  • Proposition:提案

USPは、顧客へ提供できる自社独自の価値の「コンセプト」であり、広告、CM、Webで使われる商品のキャッチコピー、スローガンなどはその「伝達手段」です。企業のUSP、各プロダクトのUSPを明確にすることは、マーケティング効果を高めます。

考えと発展の背景

USPは、1940年代に米国のTV広告会社テッド・ベイツ&カンパニーのRosser Reeves(ロッサー・リーヴス)氏が提唱した法則です。

リーヴス氏は、30年にわたる広告宣伝の経験をもとに、自社独自のセリングポイント(売り)を提案する重要さと法則性を発見し、USP(ユニークセリングポイント)を提唱しました。

独自の提案という点では、後年McKinsey & Company(マッキンゼー社)が提唱した「バリュープロポジション」と非常によく似ており、ほぼ同義だと言えるでしょう。ただし、視点と活用方法が違います(「よくある勘違いUSP(ユニークセリングポイント)とバリュープロポジションと違いとは」の項目にて後述します)。

ちなみに、リーヴス氏は新聞記者を経て、当時小さかったテッド・ベイツ&カンパニーに入社し、コピーライターとしての才能を遺憾なく発揮しながら、会社を世界第4位の大手代理店へ成長させたことで知られます。米国の「広告の殿堂」入りも果たした凄い人物です。

著書『USP ユニーク・セリング・プロポジション 売上に直結させる絶対不変の法則』は大ヒットし、世界28カ国で50年以上も読まれ続けています。

書籍『USP ユニーク・セリング・プロポジション 売上に直結させる絶対不変の法則』

(出典:Amazon

USP(ユニークセリングポイント)を構成しうる要素

ここでは、USPのもとになる要素を紹介します。「ユニーク」という言葉は、日本では「面白い」という意味で使われることが多いのですが、英語では「独自の、唯一の、他に存在しない」といった意味になります。

他社にもあって、ちょっと自社が優れている程度ではなく、圧倒的に優れている、自社だけが提供できるお客様のメリット、と理解しましょう。USPを構成する要素は以下のように多々あります。

要素1:自社だけが提供できる、自社だけの特徴

  • 〇〇地域に特化している
  • 〇〇領域に特化した唯一のサービス
  • 他社にない最先端のテクノロジーを活用
  • 独自の開発ストーリーがある
  • 創業100年以上(蓄積された技がある)
  • 学生ベンチャー、スタートアップ(未来的、新しいことに強い)
  • サステナブルなビジネスモデル

要素2:際立った品質のよさ

  • 同じ機能でも他社より精度がずば抜けて高い
  • 他社にない優れた機能を持つ
  • 操作性が抜群
  • 頑丈、優美、デザイン性
  • 拡張性(SaaSならエコシステム等)

要素3:コストパフォーマンス

  • 業界最低価格である
  • 品質の割に安い(例:「お、ねだん以上。」のニトリ
  • 高価格だが素晴らしいメリットがありお得

要素4:他社より充実したサービス

  • 完全成果報酬(他社が提供していない場合)
  • 〇年間保証(他社よりもかなり長い)
  • サポート体制(対応時間、スタッフの優秀さ)
  • 高いホスピタリティ(例:ザッポス

要素5:ブランドイメージ

  • 世界で認められている企業
  • 業界シェアNo.1企業である
  • 先進的、革新的な企業
  • 経営者が有名である
  • SNSでよく知られている

単独では競合他社と同じあるいは、多少しか優れていなくとも、要素を組み合わせることによって自社しかない特徴になりえます。リストアップして、組み合わせてUSPを見つけてみましょう。

よくある勘違いUSP(ユニークセリングポイント)とバリュープロポジションと違いとは

USP(ユニークセリングポイント)とバリュープロポジションは非常によく似た、ほぼ同義の概念と言ってもいいでしょう。

  • USP:顧客に求められ、競合他社では提供できない、自社だけの販売提案(価値)
  • バリュープロポジション:顧客に求められ、競合他社では提供できない、自社だけが提供できる価値

ただ、1940年代に広告業界で生まれたUSPと1980年代にマッキンゼー社から登場したバリュープロポジションは、似たコンセプトながら視点が異なり、活用目的が多少異なっています。

違い1:販売提案vs.価値提案

USPは、「Selling Position」とあるようにセールス、販売を前提として作られたフレームワーク。おもに広告市場において短いCM、雑誌の限られたスペースですぐ目を引き、この商品を買うべきと理解してもらえる理由を明示するための「販売提案」であり、価値=直接的なメリットというニュアンスです。

一方、バリュープロポジションは経営コンサルティング大手マッキンゼー社の論文『ビジネスは価値提供システムである』で出てきた、クライアントに対して、自社およびプロダクトの価値を見出してもらうためのフレームワークです。

価値という言葉は本来、広範な意味を持つ言葉です。情緒的な価値、機能的な価値、ペルソナのタイプごとの価値もあります。そういう観点では、バリュープロポジションのほうが、より広く、深く顧客のメリットを捉えています。そのため、バリュープロポジションを導き出すフレームワークの多くは難解です。

違い2:短期的な売上げvs.ブランディング、競走優位の確立

リーブス氏の著書のサブタイトル、「売上げに直結させる不変の法則」でもわかるように、USPのメインの目的は「広告の効果アップ」「売上げアップ」です。本の中でも「その提案は売れるものではなければならない」と語っています。

もちろん、これはリーブス氏がBtoCの広告を多数手がけていた背景もあるでしょう。

一方、バリュープロポジションは、当初の定義はほぼ同じでしたが、経営コンサルティング市場において、自社独自の価値を明確にし製品企画、マーケティング、サービス、組織カルチャーなどにおいて競争上の優位性を確立する幅広い目的に活用されてきました。

もっとも、マーケティングプロポーションに活用するなら、どちらでも問題ないでしょう。

違い3:キャッチコピー的 vs.ステートメント

USPはキャッチコピーやスローガン的によく使われます。優れたUSPは、文章が短く、わかりやすく、一度で相手の記憶に残るほどまとまっているからです。広告やホームページの目立つ位置にUSPを持ってくることは、顧客を引き付ける有効な手段です。
一方、バリュープロポジションの価値を説明するには、ある程度のテキスト量が必要であり、USPに比べれば説明的になります。

プロダクトを活用することによって得られる喜び、メリット、さまざまな顧客体験、あるいは、自社の企業哲学などを表現するステートメントの形式をとります。見方を変えれば、バリュープロポジションは、USPを現代の市場に最適化したようなフレームワークとも言えるでしょう。

(参考:GlobisAmazonhttps://karolakarlson.com/advertising-rules/

USP(ユニークセリングポイント)を作るステップとは?

ここでは、USPを作るためのシンプルな作成手順を解説します。

USPを作るステップとは

ステップ1:自社商品・サービスの強みを洗い出す

まず、対象の自社商品・サービスの強みをリストアップします。顧客アンケート調査、顧客満足度調査、レビューサイトを参考にしたり、営業部門やカスタマーサポート部門など、直に顧客とふれあうセクションのスタッフとディスカッションしたりしながら考えます。

この時点では、できるだけ多数の強みをピックアップします。以下のような質問を出すと意見が出やすいでしょう。

  • 顧客は商品のどこに魅力を感じているか?
  • 顧客からどんな点をよく褒められるか?
  • 技術力は他社より高いか、低いか?
  • 価格は市場において高価格帯か、低価格帯か?
  • 使いやすさは他社に比べてどうか?
  • コンサルティングは親切か?
  • 顧客にとって手間がかかるか? 簡単か?
  • スピードが速いか、遅いか?
  • アフターサポートは他社と比べて親切か?

ステップ2:顧客の求めているメリットを書き出す

自社の顧客層が求める価値、ニーズを書き出します。顧客は一般的に、現状に100%満足はしていないものなので、潜在的なニーズも拾い上げましょう。レビューサイトのマイナス評価や営業部門、カスタマーサポートに寄せられるクレームなどが参考になります。

ドリルを買う人が欲しいのは「穴」である」という有名な格言を思い出し、機能視点ではなく顧客視点で書き出しましょう。

  • 顧客は〇〇に困っている
  • 〇〇を解決したいと考える顧客が多い
  • 顧客はもっと〇〇なサービスが欲しいと言っている
  • 顧客の理想は〇〇を得ることである
  • 顧客は既存サービスの〇〇な点が不満だ

ステップ3:競合企業の強みをリサーチする

競合他社の強みをピックアップします。他社の強みも最近は各レビューサイトがまとめており、比較表、ランキングまであるため、大いに参考にしましょう。もちろん、競合の動向に敏感な営業員の意見も重要です。

この時点で自社が売りと思っていたものが実は独自性がなく、あまり価値がなかったとわかったら、ステップ1からその項目はカットします。逆に他社を研究することで、自社の強みになりうる項目が浮かび上がったら1に追加します。

ステップ4:USPの図にあわせて、USPの要素をまとめる

ステップ1、2、3で出した項目を、以下の図に照らし合わせて分類します。

USPの図にあわせて、USPの要素をまとめる

 

クロスするUSPの箇所(USP)に相当する項目だけを一カ所に集めます。

改めて、他社にはなく自社が提供できること、顧客が望んでいることの3条件を満たしているかを確認しましょう。

複数の項目が出ているかと思いますので、それをベースに自社(または商品サービス)のコアコンセプトをまとめます。各項目を組み合わせてみたり、すべて包括したコンセプトができないか考えたりしましょう。

ChatGPTなどのAIライティングツールを活用して壁打ちしながら、原案をまとめてもよいでしょう。

ステップ5:USPを明確な言葉で表現する

ステップ3でまとめたUSPのコンセプトを、明確に伝わる言葉へブラッシュアップします。顧客視点に変換した表現にしなければなりません。「これ!」という言葉が生まれたらベストですが、ここは簡単そうで奥深い領域なので、外部のプロにまかせてもよいでしょう。

例えば、「目の付けどころがシャープでしょ」というスローガン(今は使われていませんが)は、有名コピーライターの仲畑 貴志氏の制作です。同じ内容の言葉をプロは研ぎ澄まされた表現に仕上げます。

大手広告代理店でなくても、日頃おつきあいしている協力広告会社の方にプロジェクトに入ってもらったり、制作してもらったりする方法があります。社外の人は外部からの視点でプロダクトを捉えられるので、伝わりやすい刺さる言葉に変えてくれることが期待できます。

ステップ6:USPを公表して、USPを守り抜く

USPが決まったら、社内外にリリースします。マーケティング部門は、スローガンとしてプレスリリースを発行したり、商品名に使ったり、Webサイトや広告のキャッチコピーに活用します。

実際の表現方法は媒体に合わせて変わりますが、USPにそっていれば、コピーにもデザインにも自社の独自性、そして顧客のメリットが明快に表れるでしょう。

なお、USPは「顧客に対する約束」なので絵空事ではなく、実際にできることである必要があります。そして、そのUSPを守り続ける必要があります。この点、USPを打ち出すのは勇気がいることです。だからこそ、多くの企業のUSPがあいまいなのかもしれません。

SaaS業界は、コモディティ化が速く独自の売りを見つけるのが大変な業界のひとつです。それでも視座を変えて、プロダクトだけでなく、自社の体制、カルチャー、歴史、人材のタイプなどの要素も組み合わせてUSPを作って打ち出しましょう。

前述の調査のように明快なUSPができれば、マーケティング戦略の成功確率が高まります。

USP(ユニークセリングポイント)の事例3つ

ここでは、BtoB2社、BtoC1社のUSPの事例を紹介します。

事例1:HubSpot  『Grow better with HubSpot』

HubSpot公式サイト

(出典:HubSpot

HubSpotはマーケティング、セールス、カスタマーサービス、コンテンツ管理などを一元管理できるオールインワンのCRMプラットフォームです。
競合にはSalesforce、Microsoft、Zendesk、Adobeなどの企業があります。

他社が持っておらず、HubSpotが持っており、顧客が欲している要素は以下のとおり。

  1. 完全無料のCRMを中心としたオールインワンのプラットフォームであること。
  2. 直感的に操作できるUIであり多くの人が使いやすい
  3. Marketing HubSales HubService Hubなどの無料プランにも期間制限なし
  4. 無料ツールだけでも基本的なマーケティングが行える必要十分な機能あり

1〜4をまとめると、HubSpotのUSPは、まさしく公式サイトにある『Grow better with HubSpot』。HubSpotを活用すれば、マーケティングに予算をかけられないフリーランスやスタートアップ企業を使って、徐々にビジネスを成長させていくことができます。

また、「完全無料のCRM」があることも強力なUSPです。

競合他社は、ここまでスモールビジネス、Webの知見の少ない人に対して優しい商品設計、価格プランを用意していません。

USPは複数あるので、訴求したいプロダクトや機能によってどれを強調するかは異なります。HubSpotに関して言えば、HubSpotの包括的なUSPとしては、『Grow better with HubSpot』、具体的なツールの詳細ページには「完全無料のCRM」を強調しています。

事例2:Google Drive  「コンテンツに簡単かつ安全にアクセス」

Google Drive公式サイト

(出典:Google

Google Driveは、オンライン上でファイルの保存や編集ができるクラウドベースのストレージサービスです。競合にはMicrosoftOneDrive、Droboxなどがあります。

競合ツールのいずれも機能、エコシステム、安全性ともレベルが高いツールですが、Googleが保有して他社がもっておらず、顧客が欲している要素は以下のように少なくありません。

  • フリープランの容量: 15GBと大容量。Dropboxは2GB、OneDriveは5GB
  • 価格:有料プランでは3社中最も安価な2TBオプションを提供
  • Gmail、GoogleドキュメントほかGoogleエコシステムとのスムーズな連携
  • サードパーティ連携先が他2社より多い
  • 直感的に誰でも使える操作性

Google Drive のUSPはまさしく「コンテンツに簡単かつ安全にアクセス」です。これほどの高度な機能を持ちながら、多くの人が直感的に、セキュリティの心配もせず安全に使えるところが、Google Driveの優位性であり、ユーザーに愛されるポイントだと言えます。

事例3:BASE FOOD『完全栄養食』というUSP

完全栄養食-BASE-FOOD公式サイト

(出典:ベースフード株式会社

日本のフードサービスは世界的にもレベルが高く、美味しく、種類も多く、価格帯もバラエティに富んでいます。オーガニック、健康食品という切り口も今は珍しくありません。

そのような市場で、「完全栄養食」というUSPで市場を切り開き、2022年に上場したベンチャー企業が、ベースフード株式会社です。

ベースフードが提供する「BASE BREAD」「BASE PASTA」「BASE Cookies」のような食品のライバル商品はほぼなく、IPOの際に同社CEOも「現時点で完全に競合となる商品はほぼない印象だ」と語っています。

世の中には、美味しいけれどカロリーが高い、健康にいい食事だけど味が今ひとつ、手軽な食事だけど添加物だらけ、といったフードがたくさん存在します。料理する時間すらない人も多いでしょう。

そこに、「栄養が手軽にとれて、リーズナブルで、そこそこ美味しい」というUSPを持つプロダクトを投入したベースフード社の売上げは2020年から2022年にかけて13倍以上成長。いかに、市場に求められているかがわかります。

1食で1日に必要な栄養素の1/3がとれる完全栄養食ベースフード

BASE-FOOD(ベースフード)の栄養素

もちろん、今後は、似たようなコンセプトの競合商品が出てくるでしょう。

しかし、リーブス氏は「Unique Selling Proposition を最初に使用する広告主がその USP を所有する」と語っているように、先にUSPを得た企業にアドバンテージがあります。今後も、「完全栄養食」で第一想起されるブランドはBASE DOODであり続けることでしょう。

まとめ

マーケティングの本質は「売る仕組みをつくること」です。しかし、そのあまりの奥深さ、複雑さ、覚えることの多さに、マーケターの方はときどき迷子になる感覚を味わうのではないかと思います。

USPは、マーケティング戦略を立てるとき、新たなサービスを開発するとき、本質的な目的をクリアに浮かび上がらせてくれる明快で優れたフレームワークです。

経営学者でもなくコンサルタントでもない、バリバリの実務家の作成したフレームワークは、ビジネスマンに理解しやすいよさがあります。

良いUSPは自社の見込み客や顧客にストレートにメッセージをとどけます。自社のUSP、プロダクトごとのUSPを作成して、市場に打ち出していきましょう。

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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