キラーコンテンツとは?語源や重要性、マーケティング上の使い方について解説

2025/05/10
BtoBマーケティング キラーコンテンツ キラーコンテンツとは?語源や重要性、マーケティング上の使い方について解説

CMや広告の世界では、いわゆる「美女、子供、動物」が鉄板のキラーコンテンツだそうです。人の感情や本能に直接訴える要素がそろっており、感覚的なイメージが購買に大きな影響を及ぼすBtoCにおいては確かに納得のいく法則です。

しかし、それをそのままBtoBの世界に当てはめることはできません。BtoB領域では、購入に至るまでの意思決定プロセスが複雑かつ長期的であり、感情よりも合理性や信頼性が重視されます。コンテンツとして用意されるものも、ホワイトペーパーや導入事例、製品比較資料、FAQ、セミナー資料、ブログ記事など多岐にわたりますが、その中で「これこそがBtoBにおけるキラーコンテンツだ」と言い切れるものは、実のところ多くありません。

筆者自身、これまで複数のBtoB企業のオウンドメディア運営を支援してきましたが、100本の記事や資料を作っても、本当にヒットするのはごくわずか、せいぜい1割という感覚があります。著者が有名人でもない限り、情報が溢れる中で一つのコンテンツが突出して成果を上げるのは、決して簡単なことではありません。

むしろ、数多くの試行錯誤の中から、ほんの一部の当たりがリード獲得や商談創出をけん引しているというのが実情です。

では、そもそもBtoBビジネスにおける「キラーコンテンツ」とは何なのでしょうか? 単にアクセスを集めるだけでなく、リードを増やし、CVを押し上げ、営業やブランディングにも波及するコンテンツとは、どのような特性を持ち、どうやって生み出すべきなのか?

この記事では、BtoBにおけるキラーコンテンツの定義と重要性、実際に成果を生む作り方のコツ、そして運用・活用におけるポイントまで、実例も交えて解説していきます。成果の出るコンテンツを見極めたい、これから制作を始めたい、あるいは既存コンテンツを改善したい方にこそ参考にしていただきたい内容です。

キラーコンテンツとは

キラーコンテンツとは、文字通り「必殺コンテンツ」「決め手となるコンテンツ」を意味する言葉です。単に目立つコンテンツというわけではなく、ビジネスにおいてはブランドに繰り返し価値をもたらす核となるコンテンツのことを指します。見込み顧客の態度変容を促し、商談や受注といった明確な成果につながる勝負どころの情報資産といえるでしょう。

特にBtoBマーケティングの文脈においては、見込み客に「役立ちそうだから、資料請求してみよう」「購入してみよう」という心理変容やコンバージョンを引き起こすコンテンツが、キラーコンテンツと位置付けられています。

キラーコンテンツが重要となる背景

昨今、コンテンツの品質はさらに重要になりました。現代はコンテンツだらけで、オンライン上のメディアは増える一方です。企業も個人もオリジナルのメディアを持ち、多彩なコンテンツを提供しています。

動画をスキップする人、ググるのではなくSNS検索をする人が増えました。「トップ5%の社員が検索にかける時間は5分」といわれ、「タイパ(タイムパフォーマンス)」という言葉も出てきました。そうしないと増え続ける情報をさばけないからであり、人がリサーチにかける時間はどんどん短くなり、コンテンツを見る見ないの判断は素早くなります。

このような環境では、ありきたりのジェネリックな情報には気づいてもらえません。BtoBの担当者は、勤務中リサーチだけに時間をかけられないので、なおさらでしょう。マーケティング担当者は、これまでよりもコンテンツのクオリティを上げることが重要です。見込み客の気持ちが動くようなキラーコンテンツの作成を目指す姿勢が必要になっています。

キラーコンテンツの真逆「ジェネリックコンテンツ」

キラーコンテンツと正反対に位置するのが、ジェネリックコンテンツです。多くの人に読み飛ばされてしまうような、読んでも記憶に残らない凡庸なコンテンツを指します。

例:

  • SEO対策のためキーワードを詰め込んだよくある見出し
  • 表面的な説明しかしておらず当たり障りない
  • 自社の見込み客にほぼ役立たない内容
  • 他社のコンテンツと区別できない

みなさんも、いざ自分で仕事用になにか調べようとすると、案外役立つコンテンツが少ないのに気づくかと思います。最近のGoogleなど検索結果の1ページを見ると、似た見出しのサイトがならびます。

ジェネリックコンテンツとは

ホワイトペーパ―も同じ状況で、調査によると7割ががっかりしています(わざわざダウンロードしているので、がっかり感もひとしおなのです)。このような平均的なコンテンツでは、今の見込み客には響かなくなっています。

キラーコンテンツがなぜ大事なのか?

キラーコンテンツは競争優位性を確立し、ビジネス成果を最大化するための戦略的資産です。特に、購買プロセスが複雑なBtoB市場においては、単なる認知向上にとどまらず、リード獲得・リードナーチャリング・営業支援・ブランド強化といった複数の役割を果たします。以下では、キラーコンテンツがもたらす4つの主要なメリットについて解説します。

キラーコンテンツがなぜ大事なのか?

競合企業との競争優位性を高められる

テクノロジーが進化した現代では、製品やサービスの模倣が簡単にできるようになり、機能や価格だけで競争優位性を築くのがますます困難になっています。さらに生成AIの台頭により、誰でもコンテンツを量産できる時代になったことで、情報そのものの価値も均一化が進んでいます。ただ情報を発信するだけでは、もはや差別化になりません。

そんな中で注目されているのがキラーコンテンツです。

圧倒的な品質とターゲットのニーズに合致した内容、そして実際の価値を届けることで、競合を大きく引き離す強力な武器になります。特に人的リソースが限られている中小企業にとっては、状況を一変させる突破口にもなり得る存在です。

たとえば、いまやマーケティングの代表的企業となったHubSpotも、創業当初はまったく無名の存在でした。そんな同社が取った戦略は、「インバウンドマーケティング」という言葉を生み出し、その概念に関するコンテンツを地道に発信し続けることでした。

そして2009年に出版された『Inbound Marketing』は、まさに業界にインパクトを与えるキラーコンテンツとなり、CRM・MA市場において「インバウンドといえばHubSpot」という強固なポジションを築くことに成功したのです。

HubSpot創業者のキラーコンテンツ

(引用:Inbound Marketing, Revised and Updated: Attract, Engage, and Delight Customers Online

このように継続的かつ質の高い情報発信は、無数のコンテンツがあふれるデジタル空間の中で、自社の存在感を際立たせ、市場での優位性を築くための基盤となります。たとえ競合が似たような製品やサービスを提供していたとしても、「この会社から買いたい」と思わせるようなコンテンツがあれば、顧客の最終的な選択に大きな影響を与えられます。

つまりキラーコンテンツは、「誰から買うべきか」という意思決定に決定的な差を生み、市場での独自ポジション確立に直結するのです。

認知度を向上させることができる

キラーコンテンツの最大の特徴は、一般的な情報発信とは一線を画す「情報の深さ」と「独自性」にあります。そのため必然的に拡散力が高く、多くの人の目に触れる可能性が高まります。

SNSで発信すれば、共感や学びを得た読者によるシェアが連鎖し、大きなリーチにつながるかもしれません。また、SEOの観点からも、Googleが重視している権威性や独自性を備えたコンテンツは評価されやすく、検索上位に表示される可能性も十分にあります。

実際、筆者自身の事例でもこうした効果を実感しています。

コンテンツプラットフォームnoteに投稿した「BtoB SaaSマーケティングのきほん 1」という記事は、1000件以上の「スキ」(いいね)を獲得し、X(旧Twitter)上でも多くの拡散が生まれました。特に初学者や実務担当者からの反応が多く、結果として弊社そのものの認知度向上に大きく貢献するキラーコンテンツとなりました。

弊社のキラーコンテンツ

同様の成功例として、すでに触れたHubSpotも忘れてはならない存在です。彼らが提唱した「インバウンドマーケティング」という概念は、いまや業界標準のように語られています。実際に「インバウンドマーケティング」という検索ボリュームの大きなキーワードで、HubSpotのコンテンツはGoogle検索で常にトップ3にランクインしています。

仮に検索順位でトップを逃したとしても、多くのユーザーの中で「インバウンドといえばHubSpot」という認識が自然と形成されており、学ぶならHubSpotで、という信頼が根付いています。これこそが、キラーコンテンツがもたらすブランド印象の強化です。

ユーザーが「この企業の情報は信頼できる」「この人たちから学びたい」と感じるようになると、ブランドはもはや単なる候補のひとつではなく、指名される存在へと進化します。そしてこの信頼と好意の積み重ねは、一時的な拡散にとどまらず、リード獲得や商談の創出、中長期的な顧客関係の構築へとつながっていきます。

質の良いリードの獲得ができる

キラーコンテンツの大きな価値のひとつは、課題が明確化している顕在層に的確にアプローチできることです。

単に多くの人を集めるのではなく、課題意識が明確で、情報を求めているユーザーと接点を持つことができる。その結果として、商談化率の高い、いわゆる質の良いリードを獲得できる可能性が高まります。

もちろん、広告を使えば短期間で数百、数千単位のリードを集めることは可能です。しかし、広告経由のリードには、「なんとなく興味がある」「検討はまだ先」といった温度感の低い層も多く含まれます。こうしたリードに営業リソースを割くのは非効率であり、時に本来アプローチすべき有望なリードへの対応が後回しになるといった機会損失すら招きかねません。

その点、キラーコンテンツは「すでに課題を認識し、解決策を探している層」に届く設計がされています。このようなユーザーは、商談化の可能性が高く、優先的に対応すべきリードといえます。つまり、キラーコンテンツは自己選別されたリードにアプローチできるチャネルなのです。

また、キラーコンテンツはトップ・オブ・ファネル(TOFU)施策と見なされがちですが、実際にはミドル・オブ・ファネル(MOFU)以降でも大きな力を発揮します。たとえば、製品の比較表や導入事例、FAQコンテンツなどは、導入検討段階にあるユーザーにとって価値が高く、あと一歩を後押しする情報として効果的に機能します。

パーチェスファネル

一般的なパーチェスファネル

権威性や信頼性の向上ができる

ビジネスにおける信頼とは、「この会社なら任せられる」と思ってもらえることです。そしてその信頼の根底には、「この企業は自分たちの業界や課題を本当に理解してくれている」という認識があります。

キラーコンテンツは、その信頼構築において極めて有効な手段です。なぜなら、単なる表面的な情報ではなく、業界への深い知見や、独自の視点、具体的な解決策を言語化できるためです。

ユーザーはコンテンツを通して、「この会社は業界の構造や背景をしっかり把握している」「課題の本質にまで踏み込んでいる」「この人たちなら、うちの問題も分かってくれそうだ」と感じるようになります。

実際、Googleもこの信頼される情報発信を重視しています。検索評価の軸であるE-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)においても、被リンクやSNSでのシェア、業界メディアからの引用といった客観的な評価指標が、コンテンツの信頼性を高める重要な要素となっています。つまり、優れたキラーコンテンツはSEO上でも有利に働くのです。

2024年にEdelmanが発表したBtoB業界向けのレポートによると、75%の購買担当者・経営層が、「ソートリーダーシップコンテンツをきっかけに製品やサービスの検討を開始した」と回答しています。また、73%がソートリーダーシップを、従来のマーケティング資料よりも企業の実力を判断する信頼できる情報源として評価しているとしています。

Edelmanの調査レポート

(出典:Edelman

これはつまり、売り込みではなく、知見の共有や業界課題への提言といったかたちで発信されるコンテンツこそが、相手の信頼を勝ち取る鍵になるということです。キラーコンテンツはまさにその役割を果たします。キラーコンテンツは、単なる集客やリード獲得を超えて、ブランドそのものの信頼性や権威性を高める“企業の顔”となり得るのです。

キラーコンテンツの使い方

キラーコンテンツは、BtoBマーケティングのあらゆるフェーズで活用できる汎用性の高い資産です。リードの獲得からナーチャリング、営業支援、ブランドの認知拡大まで、その効果は多岐にわたります。以下では、それぞれの目的に応じた具体的な活用方法を紹介します。

キラーコンテンツの使い方

使い方①:リードの獲得

キラーコンテンツは、新たな見込み顧客との最初の接点を生み出す「リードマグネット」として有効です。たとえば、e-Bookやホワイトペーパーなどの資料を無償で提供し、ダウンロード時に連絡先情報を取得することで、質の高いリードを効率的に獲得できます。

この際に重要なのは、ターゲットが抱える悩みや課題を深く理解し、それに対する実践的な解決策やヒントを届ける内容にすることです。また、タイトルや導入文で記事を読む価値を明確に提示し、直感的に価値があると判断してもらう工夫も欠かせません。

使い方②:リードナーチャリング

キラーコンテンツは、リードの獲得だけでなく、その後のナーチャリングプロセスにおいても大きな効果を発揮します。特に、自社にすでに関心を持っているリードに対して、深い情報提供や信頼構築を図る段階では、一般的な集客向けコンテンツでは届けきれない、もう一歩踏み込んだ内容が効果的です。

TOFUで使用するコンテンツは、多くの場合、広く認知を得ることを目的とするため、自社に興味のない層や、場合によっては競合他社にまで届いてしまうこともあります。そのため、ノウハウや事例の一部を出し惜しみせざるを得ないという制約があるのも事実です。

一方、リードナーチャリングでは、すでにある程度選別された見込み顧客に向けて情報を届けられるため、より具体的で実践的な内容を含むコンテンツを提供できます。

たとえば、特定の業界の経営層を対象にしたウェビナー招待メールを配信し、そのウェビナー内で「表には出せないが実際に成果が出た成功事例」や「市場の裏事情」といった、機密性の高い情報を共有することも可能です。このような情報は、一部のターゲットにだけ届くクローズドな環境だからこそ、キラーコンテンツとして成立します。

さらにナーチャリングにおいては、リードが登録時に提供した情報や行動履歴をもとにセグメント化を行い、それぞれに最適化されたコンテンツを配信できる点が大きな強みです。業種、役職、閲覧したページ、資料ダウンロードの有無など、複数の視点からリードを分類し、各セグメントに応じたキラーコンテンツを届ければ、ユーザーごとのニーズや関心に深く寄り添ったコミュニケーションが実現するでしょう。

使い方③:営業支援

キラーコンテンツは、マーケティング領域にとどまらず、営業活動においても有効な支援ツールとして活用できます。とりわけ、提案段階で購入を迷っている顧客に対して、決め手となるような情報を提供できれば、商談の進行を加速させ、結果的に受注率の向上へとつながっていきます。

営業の現場でキラーコンテンツとして機能する代表的な資料には、競合との比較表、導入事例、よくある質問とその回答、製品デモの解説資料、あるいは価格のシミュレーションなどがあります。こうしたコンテンツは、顧客が抱える疑問や不安を解消し、導入後のイメージを明確に描くうえで効果的です。

たとえば、提案書に実名企業の導入事例を添えることで、「あの会社も使っている」という安心感を与えられます。さらに、通常は外部に出さないような運用ノウハウや、導入時に起こりがちな課題とその対処法をあえて明文化し、営業資料の一部として提供すれば、顧客に対して誠実さと実務理解の深さを印象づけられるでしょう。これは、ただ口頭で説明するだけでは得られない信頼の醸成につながります。

営業支援におけるキラーコンテンツの真価は、情報を補足する以上の役割があります。それは、顧客社内での稟議資料としてそのまま活用されることもあり、営業担当者が直接話せないキーパーソンに対しても、間接的に訴求力を発揮できるという点です。

使い方④:ブランドの認知拡大

キラーコンテンツは、リード獲得や営業支援だけでなく、ブランドの認知拡大を促す起点としても効果的に機能します。特にまだ自社の名前が知られていない段階では、「まず見つけてもらう」「信頼してもらう」ための入り口として、良質なコンテンツが大きな役割を果たします。

優れたコンテンツは、それ自体が読み物としての価値を持っており、SNSでのシェアや業界内での引用、他メディアからの紹介など、自然な形で拡散されやすいという特徴があります。結果として、短期的なトラフィックだけでなく、中長期的にブランドとターゲットの接点を増やし続ける資産となるのです。

BtoB企業において、認知拡大のために特によく活用されているのが「調査レポート型コンテンツ」です。これは業界関係者を対象に実施したアンケートや、自社が保有する独自データをもとに、現場のリアルな課題や示唆を導き出す形式のコンテンツです。

たとえば、SEO業界で有名なBacklinkoは、1180万件のGoogle検索結果を独自に分析し、検索順位とドメインパワーの相関や、各順位における平均クリック率など、具体的かつ実用的な知見を記事としてまとめて公開しました。このコンテンツは、2025年3月時点で1万4500以上のシェアを記録しており、まさに「キラーコンテンツとしての理想形」を体現しています。

Backlinkoのキラーコンテンツ

(出典:Backlinko

このようなコンテンツは、読者に驚きや納得感を与え、ブランドの専門性や信頼性の印象を強く残します。そしてそれが、見込み顧客だけでなく、業界内のステークホルダーやメディアなど、多様な層への認知浸透につながっていくのです。

キラーコンテンツの作り方

キラーコンテンツとは、内容、コピー、デザインのすべてのバランスが絶妙に調和するときに出てくるため、100%にすることは無理なものの、目指していれば一定の確率で生まれてきます。

特別に予算がかかったり、ものすごいクリエイターを確保しなければいけなかったり、というわけではありません。ただ、考えるタスク、調べるタスクが必要であり、一定の時間とエネルギーが必要です。

ここでは、まずはBtoB企業がキラーコンテンツを作る重要ポイントを解説します(後半で仕事を楽にするハッキングツールも紹介します)。

キラーコンテンツの作り方

ペルソナの課題を深く知ること

キラーコンテンツの作成において、ペルソナの作成は欠かせません。このステップを省略してしまうと、ターゲットの温度感やニーズとズレたコンテンツになりやすく、成果に直結しづらくなってしまいます。実際、ペルソナを丁寧に設計しているかどうかで、コンテンツのクオリティには明確な差が生まれるため、この工程は飛ばさないようにしましょう。

BtoBビジネスで作るペルソナは、BtoCよりも把握する項目はシンプルです。把握すべき項目は、担当者の役職や事業規模、業種、所属部門、情報収集方法、SaaSの場合はITリテラシーなどが中心となります。

BtoBのペルソナは、感情的な動機よりも、「目の前の課題をどう解決するか」「自分の業務にどんなメリットがあるか」といった合理的な判断軸を持ってコンテンツを見ている点が特徴です。

ペルソナを理解するには、まず一般的な業界の担当者の課題を検索します。たとえば「〇〇担当者 課題」とリサーチすると、採用担当者マーケターSaaS購入担当者など、それぞれの統計が結構でてきます。課題にもトレンドがあるのでつかみましょう。

加えて、セールス、カスタマー部門からヒアリングをします。日々、顧客と直接やり取りしている現場の声は、よりリアルな課題感や心理的障壁を反映しています。可能であれば、実際の顧客へのインタビューを実施するのが理想的です。定量調査では拾いきれない、意思決定の背景にある本音を把握できます。

このようにして得た情報をシートにまとめます。完成したペルソナシートは以下のような感じです。

HubSpotのペルソナのマリーさんの例

HubSpotのペルソナの例

(出典:HubSpot


※HubSpotの2012年ごろのペルソナの1人「マーケティングのマリー」は、日常業務として幅広いマーケティング活動を行っているため、ソフトウェアに求めることは高機能より汎用性。素早く幅広いマーケティング活動を展開できる実用的なツールを大切にしている、という設定。

どのようなカスタマージャーニーを辿るかを可視化

次に、ペルソナがどのような心理で購買を進めるかを掘り下げ、カスタマージャーニーマップにまとめます。一般に、BtoB担当者の大まかな流れは、以下のような感じです。

①日頃の情報収集
②課題が浮上
③リサーチ
④比較・検討
⑤数社に相談
⑥無料デモ・トライアル
⑦社内稟議
⑧契約
⑨導入準備
⑩利用開始
⑪活用
⑫更新

ステージ設定をして、時間軸に沿ってどんなキーワードで検索するのか? どんなメディアを見るのか? どんなイベントにいくのか? 社内資料としてどんなものがあれば有効か? などを推測し、役立つコンテンツを提供する必要があります。

以下は、2018年に米国のB2Bマーケティング担当者に対して行った調査です。見込み客の購買活動の初期、中期、後期で、それぞれ役立ったコンテンツのフォーマット(形式)は以下のように変化しています。

  • 初期の1位:ブログ記事(73%)
  • 中期の1位.:ホワイトペーパー(53%)
  • 後期の1位:事例(40%)

米国のB2Bマーケティング担当者に対して行った調査

(出典:B2B CONTENT MARKETING 2019 - Contentmarketing institute、MarketingProfs

競合他社との差別化ポイントを明確にする

どれだけ手間やコストをかけて高品質なコンテンツを制作しても、他社のコンテンツと似たような内容に見えてしまっては、読み手の印象には残らないでしょう。むしろ、「どこかで見たことがある内容だな」とスルーされてしまう可能性すらあります。

では、どうすれば差別化されたコンテンツを生み出せるのでしょうか。

その第一歩となるのは、競合他社の情報発信内容を徹底的にリサーチすることです。ブログやホワイトペーパーはもちろん、YouTube、ウェビナー、ニュースレター、SNS投稿まで広くチェックし、どんな切り口で情報を伝えているのか、何を強みとして訴求しているのかを把握します。たとえば、競合が初心者向けの入門記事に力を入れているのであれば、自社は中級者〜実務担当者に向けた実践的・専門的な視点で勝負するという選択肢も見えてくるはずです。

こうした差別化を考える際に有効なのが、3C分析(Customer/Competitor/Company)です。顧客が本当に知りたいことは何か、競合があまり触れていない情報領域はどこか、そして自社だからこそ提供できる知見は何か。この3つの視点を掛け合わせることで、自社独自のコンテンツの切り口が浮かび上がってきます。

3C分析

重要なのは、差別化とは決して「奇をてらう」ことではないという点です。大切なのは、他社と同じテーマでも、異なる視点やアプローチで語ること、そしてユーザーが本当に知りたいのに、他では得られない情報を提供すること。つまり、表面的なトピックの違いではなく、中身の深さこそが差を生むのです。

価値のあるコンテンツの内容を決める

ペルソナとカスタマージャーニーを踏まえて、価値あるコンテンツの内容を決めます。注意点としては、ブログ、セミナー、動画などの形式に、先にとらわれないことです。形式ありきで考えてしまうと、中身が表面的になりやすく、せっかく作っても成果が出ないコンテンツになりかねません。形式はあくまで伝える器にすぎず、本当に重要なのは、その中に込める情報の価値です。

また、コンテンツ制作は理想を語り始めるとキリがなくなりますが、現実には「リソースが限られている」という壁に直面することも多いでしょう。しかし、コンテンツの質がしっかりしていれば、すべての形式を網羅しなくても、Webサイトの記事や資料ページの内容を充実させるだけで十分に効果は期待できます。

設計の際には、ペルソナがいまどの段階にいるかを意識して、認知段階と検討段階に分けて決めていくとよいでしょう。

認知段階のコンテンツ例:

  • 入門ガイド的なもの
  • 基本がわかるブログ記事
  • 担当者が使うテンプレートの無料進呈
  • 業界レポート、自社アンケート調査の公表

検討段階のコンテンツ例

  • 他社との比較表
  • 事例(業界別事例、規模別事例、テーマ別事例、etc)
  • FAQページ

コンテンツフォーマットや拡散チャネルを選定する

どれほど質の高いコンテンツであっても、適切な形で、適切な場所に発信しなければ、ターゲットの心には届きません。つまり、キラーコンテンツは作って終わりではなく、ターゲットの心に届けて初めて意味を持つのです。

たとえば、BtoB商材であればLinkedInや業界専門メディアへの寄稿、メールマガジンなどが有効ですし、エンジニア向けの内容であればQiitaやZenn、X(旧Twitter)といった技術者コミュニティでの共有が効果的でしょう。また、潜在層にリーチしたいのであれば、検索流入を狙ったSEOコンテンツや、YouTube広告などの動画チャネルを活用することで広く認知を獲得できます。

ここで大切なのは、届けるチャネルありきでコンテンツ設計するのではなく、「誰に、何を、どう届けたいか」という意図を持ってフォーマットとチャネルを戦略的に選ぶことです。また、チャネルごとの特性に合わせてタイトルや導線を調整することで、同じ内容でも成果の出方が変わってきます。

加えて、作成したコンテンツを点で終わらせず、線として活用していく視点も欠かせません。ブログでの一次接触から、ホワイトペーパーのダウンロード、セミナーの申込み、商談化まで一連の流れを設計し、それぞれのフェーズに応じて適切なフォーマットとチャネルを組み合わせていくことで、コンテンツは売上げに直結する資産になります。

キラーコンテンツの具体例

ここでは、実際に話題を集め、成果を上げたキラーコンテンツ事例を3つご紹介します。

具体例①リハコ「親が亡くなったらやるべきチェックリスト」

リハコのキラーコンテンツ

(出典:リハコ

まず紹介したいのが、不動産整理サービス「リハコ」による「親が亡くなったらやるべきチェックリスト」という記事です。親の死という誰もがいずれ直面する問題に対して、感情的な混乱を抱える読者が、今すぐ何をすべきかを具体的に把握できる構成になっています。

役所での手続きや相続、家の片付けといった複雑なプロセスを、冷静かつ丁寧に言語化したこのコンテンツは、感情への寄り添いと実用性のバランスに優れています。また、親が亡くなったときにどうすればよいのかわからないという、ユーザーの緊急性の高いニーズに網羅的に対応していることもあり、利便性が高いです。

センシティブなテーマを過度に商業的に見せることなく、信頼感を与える語り口でまとめられている点も評価されています。ブランド認知の獲得と問い合わせへの導線の両立が成功している、典型的なTOFU型キラーコンテンツといえるでしょう。

具体例②Volvo Trucks 「The Epic Split」

Volvo Trucks - The Epic Split feat. Van Damme

(出典:Volvo Trucks

次に取り上げるのは、Volvo Trucksが制作した「The Epic Split」というプロモーション動画です。

主演はアクション俳優ジャン=クロード・ヴァン・ダム。彼が2台の大型トラックのサイドミラーの上で脚を広げた状態で走行するというインパクト抜群の映像は、世界中で話題になりました。

この動画の本質は、単なるパフォーマンスではなく、「Volvoのトラックがどれだけ正確な操舵と安定走行ができるのか」という技術力の訴求にあります。専門用語を使わずとも、見る人に製品の特徴を強く印象づけられる表現力、そしてBtoB製品であっても感情を動かすストーリーテリングの重要性を体現したこのコンテンツは、YouTube上で1億回以上の再生数を記録し、ブランドのグローバルな認知向上に大きく貢献しました。

BtoBでも語り方次第で大きく拡散されることを示した、象徴的な事例です。

具体例③Shirofune「国内最高峰シリーズ」

Shirofuneのキラーコンテンツ

(出典:Shirofune

最後に紹介するのは、広告運用自動化ツールを提供するShirofuneが展開する「国内最高峰シリーズ」です。

このシリーズは、Shirofuneが保有する膨大な広告データ、具体的には250万件以上のクリエイティブ分析にもとづいて作成されたホワイトペーパー型のコンテンツです。内容としては、成果を出している広告に共通するデザインやコピー、ターゲティングの傾向といった成功要素を体系的にまとめたもので、広告運用に関わる実務担当者にとって極めて実践的かつ再現性の高いヒントが詰まっています。

この資料は、メールアドレスなどの個人情報と引き換えにダウンロードできる形式で、明確な課題意識や情報ニーズを持つユーザーとの接点をつくる、質の高いリード獲得のチャネルとして機能しています。

単なるノウハウ集ではなく、膨大なデータを分析し、使える形に落とし込んでいるという驚きや納得感があり、Shirofuneというブランドの専門性と信頼性を強く印象づけることに成功しています。結果的に、既存ユーザーのLTV向上だけでなく、比較検討段階にある潜在顧客への認知拡大・商談創出にもつながる、戦略的なキラーコンテンツです。

キラーコンテンツの作成の手助けになるツールの紹介

キラーコンテンツを生み出すうえで何より大切なのは、届ける相手、つまり顧客への理解をどれだけ深められるかという点に尽きます。誰に向けて、どんな課題に対し、どのような価値を提供するのか。その方向性が定まって初めて、コンテンツに一貫性が生まれ、読み手の心を動かす訴求力が備わります。

表面的な流行や思いつきでは、決して刺さるコンテンツにはなりません。「いまの自分に必要だ」と読み手に感じてもらえるような情報に仕上げるためには、その人の行動や心理、そして置かれている環境を具体的に把握できるペルソナの作成が不可欠です。

とはいえ、いざペルソナを設計しようと思っても、「どこから着手すればよいのか分からない」と感じる方も少なくないでしょう。そんなときに役立つのが、HubSpotが無料で提供しているツール「Make My Persona」です。

キラーコンテンツ作成に役立つHubSpotのツール

(出典:HubSpot

このツールでは、いくつかの質問に答えていくだけで、ターゲット像を具体化し、1枚のペルソナシートとして自動生成してくれます。名前や職種、業界といった基本情報から、その人が抱える課題や目標、どのように情報を収集するかといった行動パターンまで、体系的に整理できる構成です。

テンプレートはマーケティング視点で設計されているため、BtoBやSaaSといった専門性の高い商材にも十分に対応しています。完成したペルソナはPDF形式でダウンロード可能であり、チーム内での共有はもちろん、記事制作やホワイトペーパーの構成設計、営業資料のターゲティングなど、幅広い場面で活用することが可能です。

まとめ

どれだけ優れた製品やサービスを提供しても、Webサイト、オウンドメディアの記事やホワイトペーパーの内容が浅ければ、「きっとプロダクトの中身もその程度だろう」と連想されかねません。

コンテンツの質は、企業の印象や信頼に直結します。だからこそ、一定以上の品質を担保することが何より重要です。

とはいえBtoBの世界では、見た目の華やかさや演出性よりも、いかにペルソナのニーズに沿って本質的な価値を届けられるかが問われます。その姿勢があれば、必ずキラーコンテンツは生まれます。

そもそも、なぜSNSはこれほど人気なのでしょうか? それは情報発信者が普通の個人であり、個人の本当の意見、リアルな情報があふれてるからです。同じように、実は社内で当たり前だと思っている情報も、見込み客にとって、まったく知らなかった価値ある情報ということは少なくないのです。

まずは、王道である導入事例をしっかりとそろえましょう。事例はBtoBにおける鉄板のキラーコンテンツであり、顧客の検討を大きく後押ししてくれます。そして、ブログやホワイトペーパーなどでは、業界内でもあまり語られていない視点や、自社だからこそ知っている現場の知見を積極的に発信していくことが、独自性のあるキラーコンテンツを生み出す近道です。

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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