ファネルの意味とは?図解を用いて分析方法をわかりやすく解説

2023/07/18
BtoBマーケティング ファネル ファネルの意味とは?図解を用いて分析方法をわかりやすく解説

Webサイトや広告などを通して、多くのリードを獲得できても、最終的に購買に至るのはほんの一握りにすぎません。多くのリードを商談や購買に導くためには、認知から購買に至るまでの各段階で接点を持ち、最適なメッセージを伝える必要があります。その各段階の見込み客にどのように関わりを持っていくのかを考える上で参考になるのがファネルです。

しかし、株式会社イノーバがBtoBマーケティング担当者を対象にした調査では、約7割が「ファネルの策定や活用に至っていない」と回答。ファネルは顧客理解の促進や顧客体験の最適化をするうえで重要なモデルながらも、「ファネルの意味を理解できていない」「ファネルを施策に生かせていない」と悩む方は多いでしょう。

そこで本記事では、ファネル理解が重要な理由や主な種類と構造、ファネル分析について図解を用いながら解説します。

ファネルの意味とは

ファネルとは、顧客の認知から購買に至るまでの流れを可視化したモデルです。ファネルの由来は、その形状の上部が広く、下部が狭い漏斗(funnel)に似ていることからきています。

ファネルの図解

(出典:Sprout Social)

一般的な見込み客の分布では、認知段階から、興味関心や比較検討へと進むにつれてリードの数は減り、最終的にごく少数のリードが顧客化します。その結果、ファネルの上部は広くなり、下に進むにつれて幅が狭くなるのです。

ここからは、ファネルが発展した背景とファネルの重要性についてみていきましょう。

ファネルが発展した背景

1898年、広告とセールスのパイオニアであるSt Elmo Lewis(セント・エルモ・ルイス)がセールスの仕組みを説明するために「AIDA」モデルを開発します。

AIDAとは、「Awareness(認知)・Interest(関心)・Desire(欲求)・Action(行動)」の頭文字をとった略語であり、消費者が購買に至るまでのプロセスを説明したモデルです。

元々セールスマンシップの教育を目的に開発されたAIDAですが、1924年にウィリアム・タウンセンドがAIDAモデルをファネル状にし、セールスファネルの概念を導入します。その後、消費者行動の変化に伴い、学者やコンサルタントによってファネルの考え方も発展しました。

例えば、約100年以上前は買い切り型を前提としたファネルですが、SaaSやサブスクリプション型といったビジネスモデルが普及した現代では、購入後の継続も考慮しなければいけません。

また、調査研究「エデルマン・トラストバロメーター」によれば、Z世代においては「認知」ではなく「購買」がブランドとの関係性の起点になっていると判明しています。実際にZ世代の78%は「購入後にブランドに関する情報を見出したり、発見したりしている」と回答しており、従来のファネルのように購買がゴールではなく、購買がスタートになっているのです。

また、商材単価の低いBtoCでは、Googleが提唱する「パルス型消費行動」を代表するように、突発的な購入が発生するため、認知を起点にしたファネルでは適切に対応できない可能性が高いです。

後ほど詳しく解説しますが、ファネルの種類は多々あります。しかし、すべてのファネルはユニークであるべきであり、実在する顧客やリードのカスタマージャーニーに合わせて調整するようにしましょう。

ファネルを理解することが大切な理由

セールスやマーケティング活動においてファネルを理解することが重要な理由は、顧客にとって適切なタイミングで、適切な情報を、適切なチャネルで提供するためです。

顧客ニーズは購買プロセスの各段階で異なるため、段階に合わせたアプローチが求められます。例えば、認知段階の顧客は深い興味関心を持っていないため、課題に気付いてもらえるようにお役立ち情報やノウハウを配信する施策が有効です。一方、比較検討段階における顧客ならば、リスティング広告の出稿や製品レビューサイトへの露出などが効果的。

また、ファネルの理解は見込み客を失うリスクを減らせます。リードにとって最適なコミュニケーションとタイミングを提供できれば、購買意欲を高めることができ、早すぎる売り込みや詳しすぎる説明の可能性を減らせるためです。

ファネルを考えることで、リードがどのようにファネルを通過していくかを把握し、それぞれのリードにどのようにアプローチするか、どの製品/サービスを売り込むか、どのようなメッセージが最も効果的かを判断できます。

よくあるファネルの種類と利用シーン

ここからは、よくあるファネルの種類と利用シーンを解説します。

パーチェス(購買)ファネル

パーチェスファネルは、AIDMAをベースに作られた最も基本的なファネルです。典型的なパーチェスファネルは以下のステージで構成されています。

パーチェスファネルの図解

(出典:HubSpot)

認知:ファネルの一番上で、顧客は広告やSNS、口コミ、検索エンジンなどのさまざまなチャネルを通じてブランドや製品・サービスを認識します。この段階における目標は、潜在顧客の興味を喚起し、注目を集めることです。

興味関心:顧客は製品やサービスに関心を示し、自身のニーズや課題にあっているかどうかを判断するために情報収集を行います。

比較検討:顧客は選択肢を絞り込み、残った選択肢をより詳細に評価します。製品の特長や評判などを考慮しながら、各製品サービスの利点、特徴、価格、価値提案を検討します。マーケティング担当者の目標は、あらゆる懸念や異論に対処し、顧客が自社の製品やサービスを選択する説得力のある理由を提供することです。

購入:顧客が最終的な決断を下し、購入を完了する段階です。製品導入や店舗での購入、その他のコンバージョンの形態が含まれます。コンバージョンを促進するためには、購入プロセスがスムーズで、摩擦のないものでなければいけません。

パーチェスファネルは、営業やマーケティング活動で活用されます。例えば、各段階における遷移率を分析することで、コンバージョン率や顧客体験の最適化を見込めます。

インフルエンスファネル

インフルエンスファネルとは、「購買後」の顧客行動を図式化したもので、「継続」「紹介」「発信」の3つのステージで構成されます。インフルエンスファネルは、製品サービス購入後にWebやSNSなどで情報共有をする顧客行動を受けて、普及したモデルです。

インフルエンスファネルの図解

(出典:SKYWORD)

  • 継続(Repeat):顧客は製品サービスを活用し、自身の課題や悩みを解決しようとします。このステージの目標は、顧客の成功を支援し、製品サービスを活用した顧客の成功に注力し、継続率を高めることです。
  • 忠誠(Loyalty)・紹介(Referral):製品サービスに満足した顧客は、同業者やクライアントに紹介をします。企業側は、特別オファーやリファラルプログラムなどを実施して、既存顧客による新規リードの創出を促しましょう。
  • 発信(Adovocacy):ファンになった顧客は、ブログやSNSなどを通して能動的にブランドに関する情報発信をします。

G2の調査によれば、BtoB購買担当者の92.4%が「信頼できるレビューを見た後は購買意欲が向上する」と回答。この調査からも、BtoBにおいても消費者の情報共有がブランドの成長に大きな貢献を果たすとわかります。

インフルエンスファネルを活用すれば、製品サービス購入後の顧客の満足度を高められ、紹介や情報共有の促進ができるでしょう。BtoBにおいては、サブスクリプション型やSaaS型などのLTVが重要なビジネスで用いられます。

ダブルファネル

買い切り型製品の場合は購入がゴールとなるでしょう。しかし、SaaSやサブスクリプション型の場合は、顧客に継続して活用してもらわなければいけません。ダブルファネルでは、通常のファネルに加えて、顧客化後のステージを「継続」「紹介」「発信」の3つのステージに分けて表します。

  • 継続:カスタマーサポートの充実、リピート割引、成功事例、メルマガで新製品やお役立ち情報の共有
  • 紹介:リファラルプログラム、成功事例の共有、ウェビナー/セミナーでの勉強会
  • 発信:コミュニティサイト/ページの運営、イベント開催とSNSでのハッシュタグ投稿の呼びかけ

ダブルファネルにも取り組むことで、顧客獲得とファン化を達成するための戦略立案が可能になります。

セールスファネル

セールスファネルとは、リードが営業と接点を持った瞬間から購買に至るまでの流れを可視化したファネルです。主に以下3つのステージで構成されます。セールスファネルは、パーチェスファネルの比較検討と購入を詳細化したモデルです。

セールスファネルのステージ図

  • リードクオリフィケーション:マーケティングから引き継いだリードの確度や自社にふさわしいリードかどうかを判断します。
  • 意思決定:営業担当者は商談や製品デモなどを通して、リードの不安や悩みを解決する情報を提供をします。
  • クロージング:購買直前の段階です。ここでは、価格交渉や導入後の流れなど最終調整が行われます。

マーケティングファネル

マーケティングファネルとは、顧客が自社を認知してからリード化するまでの流れをファネル化したモデルです。セールスファネルとは異なり、自社を認知していない潜在層の集客からリード化まで注力します。マーケティングファネルとセールスファネルを組み合わせたものがパーチェスファネルです。

採用ファネル

採用ファネルとは、求職者が自社を認知してから入社するまでの過程を図式化したものです。基本的な考えはパーチェスファネルと同様であり、「認知」「興味関心」「応募」「内定」に至るまでの過程で求職者の人数は減ります。

採用ファネルの図解

(出典:TOUCAN)

認知:求人サイトへの掲載や求人イベントへの出展、SNS、スカウトメールなどを通して求職者に認知をしてもらいます。

  • 興味関心:SNSでの発信や採用イベントなどを通して、求職者の興味関心を高めます。
  • 応募:求職者に応募してもらえるように、採用サイトの充実化を実施します。
  • 内定:選考を通して、求職者の内定が決まります。

採用ファネルを明確化することで、従来の受動的なアプローチから能動的なアプローチができるようになり、自社にあった人材の確保を見込めます。

図解でファネルの構造を説明

よく使われるパーチェスファネルは「TOFU」「MOFU」「BOFU」の3つのステージで構成されます。ここからは、各ステージの特徴を見ていきましょう。ファネルの構成要素

TOFU

TOFU(Top Of Funnel)とは、ファネルの最上部(入口)に位置する「認知段階」の顧客です。TOFUに属する顧客は、製品サービスについて大きな興味関心を持っていないため、売り込みではなく、抱えている課題や製品サービスの存在に気付いてもらえる情報発信が有効です。

例えば、テレビCMでBtoBのような高額な新製品を見つけても「すぐに購入しよう」となる人は少ないでしょう。TOFUは、あくまでもファネルの入り口のため、多くの人に課題や自社製品に気づいてもらえる施策が有効です。TOFUが広いほど、多くのリードの顧客化を見込めます。

TOFUに属する顧客には、ブログやSNSなどを通して、お役立ち情報や入門ガイドなど負荷を感じずに情報収集できるコンテンツ配信が望ましいです。

MOFU

MOFU(Middle of Funnel)は比較検討段階です。潜在顧客がeBookをダウンロードしたり、ウェビナーに申し込んだりすると、TOFUからMOFUへと移ります。MOFUに属するリードは、自身の課題に気付き、いくつかの製品サービスに興味を持っています。

複数ある選択肢の中から、自社を選んでもらうためには、リードが持つ「どうしてあなたの製品を選ぶべきなのか?」という問いに答えましょう。具体的には、ホワイトペーパーやLP、事例、ウェビナーなどを通して、競合優位性や自社製品を使うことで得られるメリットを具体的に提示するのが有効です。

Sansanの差別化ポイント

(出典:Sansan株式会社)

例えば、名刺管理ツールSansanの製品ページでは「マーケティングを加速する」や「ガバナンスを強化する」などの製品導入で解決できる課題を訴求しています。

競合のいないブルーオーシャンに属していたり、製品サービス自体が差別化できていたりするのが理想です。そうでない場合はさまざまなチャネルやコンテンツを通して、リードが抱える課題を解決できるメッセージを伝えましょう。

BOFU

BOFU(Bottom of Funnel)とは、購入検討段階であり、ファネルの最下層に位置します。BOFUに属するリードは、複数社の比較を得て、自社製品サービスの購入に前向きです。

あとは詳細な価格の提供や操作性を確かめるデモ、導入後のサポートなどリードの抱える不安を払しょくして、購入の後押しをしましょう。BOFUへのアプローチとしては、Webサイトに下記項目を掲載するのが有効です。

  • 無料デモ申し込みページ
  • 見積もりフォーム
  • FAQ
  • 顧客の声
  • コミュニティ

HubSpotの公式サイト

(出典:HubSpot)

BOFUにアプローチするうえで参考になるのがHubSpotの公式サイトです。トップには「無料デモ申し込み」のCTAボタンを設置しており、グローバルナビゲーションで詳細な価格表や導入事例、導入支援サービス、コミュニティなども掲載することで、リードが導入前における悩みを解決できる仕様になっています。

ファネル分析とは?分析の例をわかりやすく解説

ファネル分析とは、ファネルの各ステージにおける遷移率もしくは離脱率を分析し、改善点を見つける分析手法です。ファネル分析の目的は、多くのリードを次のファネルに誘導すること。

例えば、ブログ記事で集客できているものの、資料請求数が少ない場合、TOFUからMOFUの間に原因があると考えられます。ファネル分析をすることで、フォームの表示タイミングや位置、入力項目などに原因があると判明するかもしれません。

ファネル分析をすれば、各ファネルにおける摩擦を取り除き、顧客体験やコンバージョン率の最適化を見込めるのです。以下では、ファネル分析の具体例をご紹介します。

具体例1:ブログ経由のリード数3倍を達成|HubSpot

HubSpotは、CRMやMAツールを提供する企業です。同社は、オウンドメディアでマーケティングや営業などビジネス上の課題を解決するコンテンツを無料で公開し、TOFUに属する潜在顧客を集客しています。

集客の目的の一つは、記事を読んでHubSpotに興味を持ったリードにebookなどの資料をダウンロードしてもらうこと。つまり、TOFUからMOFUに誘導することです。そこでCTAの配置位置や文言、表示タイミングなどの最適化に取り組みます。

例えば、同社のブログ記事には7000文字を超えるものが多いですが、CTAが記事の最下部にしか設置されていない場合、ユーザーは何度もスクロールする必要があるという問題を抱えます。記事の途中で興味関心が高まったユーザーは、途中離脱する可能性もあるでしょう。

HubSpotの事例1

(出典:MarkeZine)

ダウンロードまでの摩擦を取り除くため、Google アナリティクスやヒートマップツールを用いてユーザー行動を分析し、下記3つの改善点を把握します。

  • CTAがファーストビューにない
  • ダウンロードコンテンツ(オファー)の中身を見たいユーザーがいるにも関わらず、中身はスクロールしないと見られない状態
  • オファーの中身を確認できる箇所までスクロールするのは全体の約50%

これらの問題を改善するため、3つのパターンのLPを作成して、A/Bテストを実施し、最も改善度の高かったパターンへと改修。また、新たな資料をダウンロードするための導線を600記事に展開したこともあり、1年間でブログ経由のリード数が約3倍、CVRは約1.5倍を達成しました。

HubSpotの事例2

(出典:MarkeZine)

具体例2:ファネル分析で優先度の高い改善点を特定|Web版メルカリ

メルカリはアプリで使用するユーザーが多いですが、新型コロナウイルス感染症の影響でPCを使うユーザーも増えたため、Web版メルカリを使いやすくするという流れが生まれました。そこで同社は、改善すべき課題を発見するためにファネル分析を実施します。

そして同社が考える理想とは、「すべてのお客さまがきちんと購入したい商品と出会うことができ、あんしん・あんぜんにお取引ができる状態にする」こと。これを実現するために、ユーザー体験悪化の原因を特定する目的のもと、ファネル分析を実施します。Web版メルカリの利用の流れは以下の通りです。

  1. メルカリのページへ訪問
  2. 会員登録
  3. 初回購入
  4. アプリにもログイン

まずは各ファネルにおけるコンバージョンを定義し、コンバージョンの発生数をユーザーごとにカウントして、遷移率を算出。そうすることで、どのファネルがユーザーの大きな摩擦になっているのか特定できます。つまり、優先すべき改善点を発見できるのです。

メルカリの各ファネルにおける遷移率の例

(出典:note「ファネル分析実践入門 〜Web版メルカリの事例で学ぶ〜」)

その後、各ファネルの「内訳」と「詳細」を分析します。

  • 内訳分析:デバイスやLP、訪問経路などのグループごとに遷移率を算出
  • 詳細:各ファネルのステップを詳細分析

例えば、会員登録の流れとして下記ステップが考えられます。

  1. 登録ページの表示
  2. 会員情報の入力
  3. 電話番号認証の完了
  4. 会員登録の完了

PCとスマホユーザーで遷移率を比較した場合、ステップ3におけるPCユーザーの遷移率が低かったとすると、PC画面において摩擦が生じていると考えられます。このように各ファネルを詳細に分析することで、改善優先度をつけられるようになりました。

まとめ

ファネルを理解すれば、カスタマージャーニーにおける各ステージで最適なコンテンツやメッセージを届けられるようになります。ただし、ファネルにはさまざまな種類があり、顧客行動も多様化しているため、自社顧客に適したファネルを作成しなければいけません。

例えば、サブスクリプションをはじめとした循環型ファネルでは、一方通行のパーチェスファネルでは不十分であり、顧客の継続も促すダブルパーチェスファネルが有効です。また、突発的な行動のあるBtoCビジネスにおいては、ファネルの適応は難しいでしょう。

大事なことは、自社の顧客に合ったファネルを作成することです。まずは顧客インタビューやGoogle アナリティクスでの分析などをして、顧客の情報収集チャネルや購買に至るまでの経路を確認しましょう。それを基に自社に適したファネルを作成することで、効果的に営業やマーケティング活動を推進できます。

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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