ダイレクトマーケティングとは?わかりやすく例を交え、その手法を解説

2022/06/24
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テレビの通販、自宅や会社に届く多種多彩なDM、一昔前のFAXDM ……etc、ダイレクトマーケティングは日本でも歴史あるマーケティング手法なため、古いイメージを持つ方も多いのではないかと思います。

しかし、近年はインターネットが普及しデジタルチャネルが増えたので、Webサイト、SNS、メールなどを活用したダイレクトマーケティングもさかんになってきました。紙のDMなどは消えていくかと思いきや、経営者向けの豪華なDMをはじめ、クリエイティブあふれるDMが有効活用され続けています。

CRMなどのデジタルツールも安価になり、小さい企業でも顧客データベースの管理は容易になりました。手法の多様化、データ活用のスムーズさを考えれば、ダイレクトマーケティングはむしろ今、旬の時期を迎えているかもしれません。

2022年6月に開かれた「ダイレクト・マーケティング・フェア2022」も、来場者は上々のようです。本記事では、ダイレクトマーケティングの代表的な手法、成功事例を紹介します。

ダイレクトマーケティングとは

ダイレクトマーケティングとは「中間業者を介さずに、企業がお客様に直接アプローチするマーケティング手法」です。中間業者を介さないため利益率が高いうえに、顧客のニーズを把握しやすく、長期の信頼関係を築きやすいメリットがあります。

ダイレクトマーケティングの手法は、昔から行われていたカタログマーケティング、テレマーケティング、テレビCMなどに加えて、近年はSNSマーケティング、メールマーケティングなど、オンライン上の手法が増えています。

顧客層の年代、特性、商材によって、ある手法に特化する場合もありますが、複数の手法を組み合わせるケースが増えています。

ダイレクトマーケティングの概念図

発展とその背景

15世紀ごろのヨーロッパでは、すでにカタログを活用するダイレクトマーケティングが行われていました。日本でも17世紀には、越中富山の薬売りが存在して全国に薬を売り歩いていました。

ただし「ダイレクトマーケティング」という概念ができて、用語が使われるようになったのは、1967年に世界最初のダイレクトマーケティングエージェンシー Wunderman 社の創業者Lester Wunderman(レスター・ワンダーマン)氏が、マサチューセッツ工科大学での講演で「ダイレクトマーケティング」を定義づけてからです。

ちなみに、ワンダーマン氏は「ダイレクトマーケティングの父」、「20世紀の3大広告人の一人」とも呼ばれる人で、日本の電通と合弁で電通ワンダーマン(現:電通ダイレクトソリューションズ)社を作ったこともあり、日本の広告界でもよく知られています。

書籍『ワンダーマンの売る広告』

(出典:Amazon

当初、米国を中心に発展していったダイレクトマーケティングは、各国の郵便システム、交通インフラ、通信インフラの進歩につれて世界中で発展していきました。

郵便配達のようなインフラがない新興国でも、インターネット普及以降は、EC、SNS、民間の配送サービスが増え、ダイレクトマーケティングが発展しています。

昔も、ダイレクトマーケティングを行う企業は、自社のハウスリストをもとに個々の顧客のニーズをくみ取り、きめ細かいアプローチをするなど、今のデー タベースマーケティングの原型に近いことを行っていました。

1980年代に登場したCRMは、大量の顧客データ活用を短時間で可能にしたため、ダイレクトマーケティングの発展に大きく寄与します。

近年、各国でチャネルの傾向は異なるものの、ダイレクトマーケティングはさかんです。特に2020 年以降はコロナ禍が追い風となり、世界的にダイレクトマーケティング市場は成長しています。

ダイレクトマーケティングの目的

ダイレクトマーケティングの目的は、顧客と直接コミュニケーションをとることで信頼関係を築き、長期的な取引につなげて売上げを拡大していくことにあります。売上げ以外にも、他の施策のアシスト、ブランディングなどにも効果的です。

主要な目的には以下があります。

  • 顧客とのリレーションシップ
  • 顧客との長期の取引(LTV拡大)
  • 収益拡大(中間マージンを省く)
  • 個々の顧客ニーズに沿った提案(パーソナライズ)
  • 顧客ニーズをもとにした新サービスの開発
  • ブランディング

ダイレクトマーケティングの例

ここでは、ダイレクトマーケティングの事例を紹介します。

例1:「デル・ダイレクト・モデル」を確立:デル・コンピュータ

Dell公式HP

(出典:https://www.dell.com/html/jp/press/about/dellkk/outline.htm

パソコンメーカーのデル社は、1984年の創業当初から中間業者を排し、在庫を持たない注文生産(BTO)の直販スタイルで、顧客にパソコンを提供するダイレクトマーケティングを実施してきました。このビジネスモデルは「デル・ダイレクト・モデル」と呼ばれ、以下の特徴があります。

  • 他社と同じ価格でより高スペックなパソコンを提供
  • 注文生産(BTO)で1台ごとにパソコンをカスタマイズ
  • パーソナライズされたテクニカルサポートサービス
  • 新製品のローンチのスピードが速い

顧客データベースの活用、サプライチェーンの効率化などによって、顧客が必要な機能のみを搭載したパソコンを提供するデル・モデルは、市場から支持されデル社は大きく成長しました。

また、パソコン業界全体に影響を与えました。デル・モデルを取り入れる新興企業が増え、ついには台湾メーカーのエーサスの台頭をまねいたと言われます。

しかし、ダイレクトマーケティングは価格だけが勝負ではなく、いかにデータベースを活用し魅力的なプロダクトを生めるかにもかかっています。デル社は近年も、数々の賞を受賞した「XPS 13 Plus」ほか、顧客を惹きつける魅力的なパソコンを世に出し続けています。

例2:日本市場に合わせたL.L.ビーンのカタログマーケティング

L.L.Bean公式P

(出典:https://www.llbean.co.jp/catalog/

L.L.Beanは、1912年に創業した米国のアパレルメーカーです。シンプルでクオリティの高い商品と手頃な価格が特徴で、メンズ、ウィメンズ、キッズ、アウトドア、ホームグッズなどを提供しています。

L.L.Beanでは創業以来、カタログマーケテングに力を入れており、現在でも上記のWebサイトから申し込むと最新カタログが1週間程度で届きます。

カスタマーサポートのポリシーは 「100%満足保証」。商品に100%満足できなかった場合、レシートがあれば1年以内なら返金可能という、通販の不安を払拭するサービスで成長。返品に対するFAQページも充実しています。

日本では1989年に商標を取得。カタログマーケティングを補完するために店舗もオープンし、特定層に高品質な商品を提供しました。日本の顧客の声を開発にフィードバックし、日本人女性の体型「JapanFit」のラインを発表しています。

カタログには日本人が好むアースカラーを主に掲載し、米国で好まれるパステルカラー、ピンクなどを控えるなど、日本の消費者ニーズに沿ったダイレクトマーケティングを実施し、市場に受け入れられました。

例3:商談・受注とも予想を上回った中小企業向DM:ビズリーチ社ビズリーチの履歴書型DM

(出典:㈱ダイレクトマーケティングゼロ

ビズリーチと言えば、今やビジネスマンがほとんど知っている転職マッチングサービス企業です。いつからか「転職はリクルート」のイメージから「転職はビズリーチ」「ビズリーチする」という言葉が高年収層でポピュラーになった気もします。企業規模の差を考えればすごいことです。

これは、面白くわかりやすいCMの影響もあったのでしょう。しかし、ビズリーチはハイクラスに特化した戦略の影響もあり、中小企業への営業にかなり苦戦していました。一般に中小企業の人事担当者は「ハイクラスの採用なんてうちには関係ない……」と思うからです。

この課題を解決したのが、DMによるダイレクトマーケティング戦略です。DM制作会社のダイレクトマーケティングゼロ社の力を借り、目を引く「履歴書型DM」を作成し中小企業に発送しました。

中小企業の導入効果が高いという内容を伝えたところ、商談件数、受注件数とも予想を上回る成果を得られたのです。さらに、「第35回全日本DM大賞」を受賞しました。作品名は、リアルさを追求! 人事があっと驚く「履歴書型」DMです。(参考:全日本DM大賞事務局㈱ダイレクトマーケティングゼロ

ダイレクトマーケティングの手法

ここでは、主要なダイレクトマーケティングの手法を紹介します。

カタログマーケテイング

カタログマーケティングとは、カタログ、小冊子などを顧客に郵送して注文を受け付けるマーケティング手法です。カタログマーケティングは、前述のL.L.Bean、家具のイケア、エイボン化粧品、BtoBならASKULなどがよく知られています。

注文の受付はフリーダイヤル、同封の申込書類&返信用封筒、FAX、Web問い合わせ、LINEほか、顧客の属性にあった活用しやすい方法が複数提示されることが一般的です。
近年はWebからカタログをダウンロードできたり、デジタルカタログをWebで見れたりする場合もあります。今後、デジタルカタログはますますクオリティが上がり、活用されていくでしょう。

例:ASKULの「デジタルカタログ2022」

ASKULのデジタルカタログ

(出典:ASKUL

しかし、紙ベースのカタログマーケティングも業界に拠っては残り続けると思われます。紙のカタログは品質にこだわれば、インターネット上より商品を魅力的に見せられるメリットがあります。

また、上質なカタログはBtoCの顧客にとって、ブランドの世界観、商品の背景にあるストーリーを感じられる媒体です。情報の網羅性が高く、短時間で見ることができるメリットもあります。

近年はオンライン上のリターゲティング広告により、Web上での行動追跡に不快感を持つ人も増えています。化粧品、健康食品などのセンセィティブな領域の商品については、クローズドなカタログマーケティングが好まれていく可能性もあるでしょう。

テレマーケティング

テレマーケティングとは、電話を活用して見込み客にアプローチしていくダイレクトマーケティングです。米国では国土が広く営業マンの移動が大変なため、テレマーケティングが発展しました。

日本では営業アプローチの初期工程に活用され、BtoC商材(健康食品、食品)などではテレマーケティングだけで取引を完結するケースもありました。

アプローチ領域のテレマーケティングについては、近年の固定電話を減らす動き、電話をいきなりかける行為は失礼と考える人の増加もあり、IT業界などでは終わった手法に感じるかもしれません。

しかし、コロナ禍以降は対面訪問が難しくなったため、テレマーケティングはむしろ力を入れられるようになりました。Zoomなどのオンライン会議ツール、「ザ・モデル」に代表される科学的営業管理システムが普及しましたが、インサイドセールスより手前の、最初のコンタクトをとる工程が、現状手薄だからです。

自社だけでなくBPOに外注するケースも多いのですが、一定量のデータベースを作成できれば、その後はインサイドセールスがアプローチし、信頼関係を築きニーズを聞き出し商談につなげていけます。

また、後工程のカスタマーサポート、カスタマーサクセスもテレマーケティングの領域です。SNS社会では既存顧客の評価が新規顧客の増加につながります。

SaaSのようなやや専門的でわかりづらいサービスを活用し続けてもらうために、テレマーケティングも有効な手段でしょう。このように営業プロセス全体を通して、テレマーケティングは有効活用されています。

メールマーケティング

メールマーケティングは、メールを活用するダイレクトマーケティング方法です。なお、メールマガジン発行はメールマーケティングの一部ではありますが、メールマーケティングとイコールではありません。

CRMなどのデータベースに名前、住所、電話番号、取引状況、電話の際のコメントなどを蓄積し、顧客ニーズをつかみながら行うのがメールマーケティングです。

メールマーケティングの開封率は15~24といわれます。それでも母集団が蓄積できていれば一定の成果が期待できます。定期的に最新情報やイベント案内を送ることで、見込み客と長期間信頼関係を保ち続け、何割かのニーズを喚起できるでしょう。

他のマーケティング手法と組み合わせることもできる柔軟さが魅力です。さまざまな目的に活用できます。

  • ブランド認知度(通常はより安いオファーで)
  • コールドリードをウォームアップ
  • ウェビナー登録を生成する
  • 見本市のブースに見込み客を招待する
  • 失われた機会を再活性化する
  • イベント後のフォローアップ

メールマーケティングイメージ

(出典:https://pixabay.com/ja/

ダイレクトマーケティングの進化と現在の立ち位置

ダイレクトマーケティングは、インターネットの登場、デジタルツールの進歩、デバイスの増加、オンラインメディアの増加などにより、現在さまざまな手法が出てきています。

多彩な手法・進化するツール

カタログマーケティングにデジタルカタログが出て、テレマーケティングにはWeb会議が登場、SNSによるインタラクティブなマーケティングもできるようになりました。

MA(マーケティングオートメーション)等を活用すれば、顧客の属性だけでなくメール開封状況、Webサイトの訪問ページなども確認できるでしょう。デジタルツールは近年どこの企業もそれなりのレベルです。今後はAIツールがさらに進歩するので、トレンドをウォッチしておくことが重要です。

昔も今も重要なのはデータベース

しかし、ダイレクトマーケティングの肝は昔から変わっていません。顧客リスト、つまりデータベースが重要です。華やかな未来にかくれて見えにくくなりがちですが、基本ができていないと、ダイレクトマーケティングで成果をあげることはできません。

など、入口戦略を整えることが大切です。その上で、CRMなどで見込み客のデータベースを管理しさまざまなセグメンテーションを行う必要があります。個々の顧客ニーズに沿ったマーケティングを行ったり、ロイヤル顧客に特化した特典・サービスなどを提供したりすることがポイントです。

顧客と直接コミュニケーションをとって得た情報を蓄積したデータベースがあれば、顧客の課題やニーズにもとに新しい商品・サービスの開発も行えます。

今後、AI搭載ツールがさらに進化すれば、顧客の潜在的なニーズをつかみやすくなり、ダイレクトマーケティングの可能性はますます広がるでしょう。

だからこそ、顧客との距離感を適切に保ち、適切なマーケティングで信頼関係を醸成していくことが大切です。

手法が増えたからといって安易に露出だけ増やせばよいわけではありません。改めて自社のブランドイメージを考え、ペルソナの特性を理解し、どのようなダイレクトマーケティングなら顧客との信頼関係を保てるか、トータルに設計していきましょう。

まとめ

BtoC企業で、販路開拓を経験した人ならわかるかと思いますが、百貨店、スーパー、コンビニなどに商品をおいてもらうのは本当に大変です。棚を抑えるのに熾烈な競争があり、店舗に売ってもらうために人を出したり、斬新な企画をたてたりします(協力金とかさしあげたりするときも)。
BtoBでも代理店契約を結んだだけでは、他社の積極的な協力は得られません。そもそも、代理店候補を探すことは難しく、なかなか、ひと様に商品を売っていただくのは大変です。営業・マーケティングを他社に依存せず、自社で直接顧客データを持ち、直接アプローチしてコミュニケーションをとれるのは、実に素晴らしいことなのです。

今は、さまざまなダイレクトマーケティング手法があります。メールマーケティングのように比較的投資が少ない手法もあるので、ぜひ直接の取引先を増やすダイレクトマーケテイングを始めてみましょう。

戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

著者情報 戸栗 頌平(とぐりしょうへい)

株式会社LEAPT(レプト)の代表。BtoB専業のマーケティング支援会社でのコンサルティング業務、自社マーケティング業務、営業業務などを経て、HubSpot日本法人の立ち上げを一人で行い、後に日本法人第1号社員マーケティング責任者として創業期を牽引。B2Bの中小規模企業のマーケティングに精通。趣味で国外のマーケティングイベント、スポーツイベント、ボランティアなどに参加している。

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